「起きろー!!」
起きろと言う声と共に金属同士が激しくぶつかり合う大きな音が発生し、
「うおおおおおおおおおおおおおおおう!?」
発生した音に驚いた龍也は飛び起きるかの様に目を覚まし、キョロキョロと周囲を見渡していく。
その過程で龍也の目に金属製の鍋とお玉を持った魔理沙の姿が目に入った時、
「やっと起きたか、おはよう」
少し呆れた表情になった魔理沙が朝の挨拶をして来た。
「おはよう」
された挨拶に返す様に龍也もおはようと言う返事を返し、ベッド代わりにしていたソファーから降りて上半身を伸ばしていると、
「それにしても良く寝てたな。もう朝ご飯は出来てるぜ」
良く寝てたなと言う感想と共に魔理沙は龍也に朝ご飯が出来ている事を教える。
「何か悪いな。俺の分まで用意して貰って」
「別に良いって。私だけ食べて龍也に食べさせないって言うのもあれだしさ」
態々自分の朝食まで用意しくれた魔理沙に少し申し訳無さそうな感情を抱いた龍也に、魔理沙はそう言う。
そして、魔理沙はテーブルを指でさし、
「もう並べちまったから、さっさと食べ様ぜ」
早く食べる様に促す。
「ああ、そうだな」
促された事に龍也が同意した後、朝食が並べられているテーブルへと移動した二人は椅子に腰を落ち着かせ、
「「いただきます」」
朝食を取り始めた。
因みに献立は目玉焼きに白米に焼き茸と言った物である。
ともあれ、一人で食事をしている訳でも無いので、
「やっぱ、茸料理が在るんだな」
「そりゃ当然だぜ」
「でもよ、毎回茸って飽きたりしないのか?」
「幾つかの種類の茸をローテーションで回したり味付けを変えたりしてるから飽きは来ないぜ」
「成程」
「それに、食用の茸は結構安定して採れるからな。云わば白米みたいなものだぜ」
「安定して採れるものが在るのは良い事だな」
「だろ」
龍也と魔理沙は雑談を交わしながら箸を進めていく。
それから幾らか経った頃、
「「ご馳走様」」
二人は食事を取り終えた。
すると、魔理沙が食器を纏めて台所へ持って行こうとした為、
「食器洗い位、俺がやろうか?」
世話になるだけなのもどうかと思った龍也がそんな提案を行なう。
「それじゃ、頼むぜ」
龍也からの提案を魔理沙は瞬時に受け入れ、纏めた食器を龍也の方に移動させ、
「台所はあっち。洗い終わった食器は適当の重ねて置いてくれ」
簡単な指示を出す。
「あいよ」
出された指示に了解の返事をしながら龍也は纏められた食器を手に持ち、台所へ向かう。
台所に着いたのと同時に龍也は青龍の力を使って食器洗いに取り掛かり、
「よし、終わり」
大した時間を掛けずに食器洗いを終わらせた。
その後、
「おーい、終わったぜー」
終わったと言う言葉を口にしながら龍也は居間へと戻る。
「おう、ごくろうさん」
終わったと言う言葉を聞き、ソファーで寛いでいた魔理沙は龍也の方に顔を向けながらそう言い、
「今日って暇か?」
ふと思ったと言った感じの表情になった魔理沙が今日は暇かと龍也に尋ねて来た。
「ああ、暇だけど」
「よし!!」
尋ねられた龍也が暇だと言うと、魔理沙は嬉しそうな表情を浮かべながら立ち上がって龍也へと近付き、
「今日は私に付き合ってくれ」
今日は自分に付き合って欲しいと言う頼みを行なう。
「付き合えって……何所にだ?」
「玄武の沢だ」
行なわれた頼みを耳に入れた龍也は疑問気な表情になると玄武の沢と言う地名を魔理沙は述べた。
「玄武の沢?」
玄武の沢と言う地名が初めて聞くものであったからか、ついと言った感じで龍也は首を傾げてしまう。
だからか、
「魔法の森の奥地に在るんだが……行った事は無いのか?」
玄武の沢が在る場所を魔理沙は簡単に教えて行った事が無いのかと言う確認を取る。
「ああ、行った事は無いな」
取られた確認を肯定しながら龍也は頷いた。
まぁ、玄武の沢の存在を龍也が既に知っていたとしてもそこ辿り着けたかは疑問ではあるが。
何せ、龍也は基本的に陸路で幻想郷中を旅して回っているのだ。
迷って辿り着けないと言う可能性は十分に考えられる。
ともあれ、龍也が玄武の沢に行った事が無いのを知った魔理沙は、
「なら丁度良いな。私が案内してやるよ」
序と言わんばかりに玄武の沢の案内を買って出た。
玄武の沢と言う場所に興味が出て来たので、
「じゃあ、案内頼むな」
玄武の沢の案内を龍也は魔理沙に頼む事にする。
「おう、頼まれたぜ」
頼まれた魔理沙は満面の笑みでそう言って外へと向かおうとした。
それを見た龍也はソファーに掛けて置いたジャケットを着て、魔理沙の後を追う。
そして、外に出た二人は空中から玄武の沢へと向って行った。
龍也と魔理沙が魔理沙の家を出てから暫らく。
空中を移動している時に魔理沙が急に降下をした為、龍也は少し慌てた動作で魔理沙を追う様にして降下して行く。
そして、二人が地に足を着けた瞬間、
「ここが玄武の沢だぜ」
今居る場所が玄武の沢だと言う事を魔理沙は龍也に教える。
「ここが……」
教えられた事を耳に入れた龍也は興味深そうな顔付きで周囲を見渡していく。
見渡した結果、中央部分には川が流れていてこの辺り一帯は岩石系の壁で囲まれている事が分かった。
分かった事から谷の間に居るみたいだと言う感想を抱きつつ、
「それにしても、玄武の沢ねぇ……」
ふと、自身の胸元に視線を落として龍也は思う。
自分の中には玄武が居るので、玄武の力を使えばこの玄武の沢と何か反応を起こすのかもしれないと。
だからか、龍也は自身の力を変えた。
玄武の力へと。
力の変換に伴って龍也の瞳の色が黒から茶に変化する。
無事自身の力が玄武の力に変わったのを認識した龍也は少し集中しながら周囲の様子を軽く探ってみたが、何か変化があったと言う事は感じられなかった。
なので、自分の中の玄武と玄武の沢は関係無さそうだと言う判断を下す。
すると、
「どうかしたか?」
集中していた事で黙ってしまった龍也を不審に思った魔理沙が、龍也に声を掛けて来た。
掛けられた声に反応した龍也は周囲を探るのを止め、
「何でもねえよ」
力を消し、顔を上げて何でも無いと返す。
因みに、龍也の瞳の色は顔を上げた時点で茶から黒に戻っていた。
ともあれ、玄武の沢にやって来たのは魔理沙に今日は付き合って欲しいと言われたからであるので、
「それで、俺は何をすれば良いんだ?」
龍也は魔理沙の方に体を向けて何をすれば良いのかと言う事を聞く。
「ああ、茸とか草とかそう言うのを集めて欲しいんだ」
聞かれた魔理沙は龍也にして欲しい事を答えながら袋とゴム手袋を突き出す。
「そんなんで良いのか?」
「ああ。二人の方が数が集まるだろ」
突き出された物を見ながら龍也がその様な事を漏らすと、魔理沙は笑顔でそう返した。
「了解。少なくとも、飯代分位の仕事はさせて貰うぜ」
返された事に龍也は了承の返事をしながら袋とゴム手袋を受け取り、ゴム手袋を両手に着ける。
龍也の準備が整ったのを見て、
「それじゃ、宜しく頼むぜ。一通り集まったらここに戻って来てくれ」
簡単な指示を魔理沙は龍也に出しながら箒に腰を落ち着かせ、飛んで行った。
飛んで行った魔理沙を見届けた後、
「さて、俺も探しに行くか」
頼まれた茸や草を探しに龍也は足を動かし始める。
「見っけ」
見っけと言いながら龍也は虹色をした茸を手に取り、取った茸を袋の中に入れ、
「しっかし、玄武の沢って魔法の森の面影があんまりないから普通の茸や草も在ると思ったけど……そんな事は無かったな」
一寸した感想を零しながら袋の中を覗き込む。
覗き込まれた袋の中には珍妙な形をした茸、光を発している茸、毒々しい色をした草、やけに硬い草等々。
普通の茸や草は一つも見られなかった。
この事から、
「ま、奥地で余り森って感じはしないが……ここも魔法の森の一部って事かな」
そんな推論を立て、改めてと言った感じで龍也は周囲を見渡していく。
見渡した結果、周囲に在る茸や草は既に採取した物ばかりである事が分かった。
ならばもっと奥の方に行くかと龍也は考え、足を動かし始める。
それから少しすると、
「……ん?」
ふと何かに気付いたかの様に龍也は足を止め、ある方向に目を向けた。
龍也が目を向けた先には幾つもの洞穴が在り、その洞穴の内の一つから僅かながら黄緑色の光が漏れ出している。
黄緑色の光が漏れている洞穴に興味が引かれた龍也は、光が漏れている洞穴に近付いて行く。
そして、光を発しているものが見える距離にまで来た時、
「……おお」
その光に見惚れたと言った感じで龍也は足を止めてしまった。
因みに、洞穴の奥に在る岩が光源の様だ。
ともあれ、発せられている光には不思議と惹き付けられる魅力が在った。
だからか、ついつい時間を忘れて龍也はその光を見続けてしまう。
と言った感じで龍也が黄緑色の光に見惚れ始めてから幾らか経った頃、
「おーい、どうしたんだ?」
どうしたんだと言う声が龍也の背後から聞こえて来た。
聞こえて来た声に反応した龍也は我に返り、背後へと振り返る。
振り返った龍也の目には、
「魔理沙」
魔理沙の姿が映った。
どうやら、龍也に声を掛けて来たのは魔理沙であった様だ。
兎も角、声を掛けて来た者の正体が分かったからか、
「どうしてここに?」
取り敢えずと言った感じで龍也は魔理沙にここに居る理由を問う。
「私の方は大体集まったから集合場所に戻る為に飛んでいたら、龍也を見付けたんで取り敢えず降りて来たんだ」
問われた事に魔理沙はそう返し、
「それより龍也は何してたんだ? 洞穴の奥に何か面白い物でも在ったのか?」
龍也は何をしていたのかと言う事を問い返した。
「ああ。あれを見てくれよ」
問い返された中に在った面白い物でも見付けたと言う部分を龍也は肯定しつつ、魔理沙に洞穴の中を見る様に促す。
促された魔理沙が視線を洞穴の方に向けると、
「おお!!」
驚いた言う様な声を上げながら魔理沙は黄緑色の光を発する物体を注視する。
やはりと言うべきか、魔理沙も黄緑色の光には興味津々の様だ。
魔理沙も龍也と同じ様に黄緑色の光に見惚れたからか、暫らくの間二人揃って黄緑色の光を発する物体を眺めていく。
その状態は暫らく続き、何時まで眺めているのかと思われたその時、
「あれは光苔だな」
ポツリとした小さな声で光源の正体を魔理沙が言い当てた。
「光苔?」
光苔と言う単語は初めて聞くものであったからか龍也は首を傾げてしまう。
なので、
「光苔って言うのは光を発するって言う珍しい苔だな。私も噂程度にしか聞いた事がなかったが……まさかこんな所に在るとはな……」
光苔が何のかを魔理沙は簡単に説明し、ここに光苔が在るとは思わなかったと言う事を呟く。
そして、
「それにしても、綺麗な光だな」
「ああ」
光苔の光は綺麗だと称した魔理沙に龍也は同意し、再び二人揃って光苔を眺めていく。
それからまた暫らく経った頃、
「折角だ、この光苔を研究させて貰うか」
光苔を研究すると言って魔理沙は洞穴の中に体を入れ、光苔を一欠けら程回収して洞穴から体を出す。
すると、
「研究ってどんな?」
「どうやって光を発しているのかとか、魔法の触媒に使えるのかとかさ」
一体どんな研究をするのかと言う疑問を龍也が発した為、魔理沙は人差し指を立てながら研究の中身を少しだけ語り、
「それはそうと収穫の方はどうだった?」
話を変えると言った感じで龍也に収穫はどうだったのかと聞く。
「この通り」
聞かれた龍也はこれが証拠だと言う感じで袋を差し出す。
差し出された袋を受け取った魔理沙は早速と言わんばかりに袋を開き、
「どれどれ……おお!! 大量じゃないか!!」
喜びの声を上げながら袋の中身を確認していく。
一通り袋の中身を確認した後、
「へへ、龍也に協力を頼んで正解だったな」
満面と言う言葉が付く位の笑顔を浮かべながら魔理沙はそう口にする。
「ま、飯代分は働くって言ったからな」
口にされた事を受けた龍也はその様に返しながらゴム手袋を魔理沙に返す。
返されたゴム手袋を魔理沙は仕舞い、
「私は一旦戻るけど、龍也はどうするんだ?」
自分は戻るが龍也はどうするのかと言う事を問う。
「俺は暫らくの間この玄武の沢を探索する予定だけど」
「なら、これを渡しておくぜ」
隠して置く事でも無いので問われたこれからの予定を龍也が正直に教えると、魔理沙は帽子の中に仕舞っていた包みを龍也に差し出した。
「これは?」
差し出された包みを受け取った龍也が疑問気な表情を浮かべてしまった為、
「おにぎりだぜ」
おにぎりだと魔理沙は答え、
「ここでの採取に時間が掛かると思って持って来たんだが、そんな事無く終わっちまったからな。龍也が貰ってくれるんなら無駄にならなくて済むんだが」
序と言わんばかりに龍也におにぎりが入った包みを渡した理由を語る。
「そう言う事なら、ありがたく貰って置くよ」
語られた内容を頭に入れた龍也がありがたく貰うと言う台詞を発したのと同時に魔理沙は箒に腰を落ち着かせて浮かび上がり、
「それじゃ、まったなー!!」
またなと言う言葉と共に玄武の沢を去って行く。
去って行った魔理沙が見えなくなると龍也は再度洞穴に視線を向け、
「さて、もう暫らくこれを見ているか」
再び光苔の観察を始めた。
余談ではあるが、魔理沙から渡されたおにぎりの具は茸であった。
日が暮れて月が出始めた時間帯、龍也は、
「さて、そろそろ寝床を探すか」
玄武の沢を歩きながら寝床を探し始めた。
それから少しすると、
「お、ここは良いんじゃないか?」
大き目な洞穴を龍也は発見した。
早速と言わんばかりに龍也は洞穴の中を覗き込む。
覗き込んだ結果、中々に広いと言う事が分かった。
ここならば寝床としても申し分は無いと言う結論を龍也が下した時、
「……ん?」
近くから大きな水音が聞こえて来た。
聞こえて来た水音から誰か居るのかと龍也は思い、水音が聞こえて来た方に足を動かす。
そして、水音が聞こえて来た場所に辿り着いた龍也の目には、
「サニーミルクにルナチャイルドにスターサファイアじゃないか」
何時も一緒に居る三妖精の姿が映る。
因みにその内の一人、ルナチャイルドは水で濡れていた。
この事から、大方足でも滑らせて水にダイブしたのだろうと言う推察を龍也は行なう。
それはさて置き、声を掛けられた三妖精はビクッとしながら恐る恐ると言った感じで龍也の方に体を向ける。
が、声を掛けて来た者が龍也であると言う事が分かったからか三妖精は揃って安堵した表情になり、
「……って何だ、龍也さんじゃないですか。脅かさないで下さいよー」
三妖精を代表するかの様にサニーミルクが脅かさないでと言う文句の言葉を発した。
「ああ、悪い悪い」
発せられた文句の言葉に龍也はそう返しつつ、
「それはそうと、お前等はこんな所で何やってるんだ?」
こんな所で何をしているのかと言う問いを三妖精に投げ掛ける。
「私達は一寸探し物を……」
「探し物?」
投げ掛けられた問いにスターサファイアが探し物としていると言う事を答えると龍也は首を傾げてしまう。
すると、
「あ、そうだ。龍也さん、光る苔って知ってますか?」
光る苔に付いて何か知らないかと言う事をサニーミルクが尋ねて来た。
「光る苔……光苔の事だな。お前等、それを探してるのか?」
光る苔とは光苔であると言う結論を下しつつ、龍也は三妖精に探しているのは光苔かと言う確認を取る。
取られた確認を肯定するかの様に三妖精はコクンと頷き、
「探してるんですけど全然見付からないんですよ。夜中なら直ぐに分かると思ったんですが……」
ルナチャイルドが光苔が見付からないと言う事を呟く。
呟かれた事を受け、
「それなら仕方がねえよ。あの苔、日中しか光らないんだ」
夜中に探しても見付からないと言う事を龍也は三妖精に教える。
教えられた事を頭に入れた三妖精は驚きの表情を浮かべ、
「そ、そうなんですか!?」
サニーミルクはそうなのかと口にしながら龍也に詰め寄った。
「ああ。俺は今日、日が暮れるまでずっと光苔を観察してたからな。あの苔、日が落ち始める頃になると光を発しなくなったし」
詰め寄られた龍也は光苔を日が暮れるまで観察した事で分かった情報を三妖精に伝える。
「はぁー、通りで見付からない訳だわ」
伝えられた内容を理解したサニーミルクは疲れを吐き出すかの様に息を一つ吐き、そう漏らす。
その後、
「そういや、お前等って結構行動範囲が広いよな」
「え、そうですか?」
「ここは私達が住んでる場所からそんなに離れた場所じゃないけど……かなり離れた場所に行く事もあるわね」
「ま、そう言う時は大体サニーがどっかに行こうって言い出すんだけどね」
「ああ、何かサニーミルクが二人を引っ張ってくって感じがするな」
「えへへ、そりゃもう。私は優秀ですから」
「優秀って。私の能力が無かったらかくれんぼの時に音を消せないじゃない」
「そうね。私の能力が無ければ近付いて来る者の気配に気付けないし」
「お前等三人の能力が合わされば、かなりの精度の隠密になるんだっけか」
「そうですよ。私の能力で姿が見えなくなりますしね。一番重要なポジションってやつですよ」
「違う違う。音を消せる私が一番重要」
「私の能力が無ければ、姿が消えて音が消えても見付かる事になるでしょうけどね」
龍也、サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの四人は雑談を交わしていったが、
「何言ってるの!! 私の能力が一番重要でしょ!!」
「私の能力が無かったら移動の時とかの音で気付かれるじゃない」
「サニーとルナだけだったら誰かとぶつかって直ぐに見付かっちゃうわよ」
途中から誰の能力が一番隠密に役立っているかと言う言い争いをサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの三人が始める。
だからか、
「まぁまぁ……」
言い争いをしている三妖精を龍也は仲裁し始めた。
言い争いをしていた三妖精を龍也が仲裁をしてから暫らく経った頃。
落ち着きを取り戻した三妖精は自分達の家に帰っていった。
何でも、龍也から得られた情報から明日の朝一番で光苔を探すんだとか。
と言った感じで去って行った三妖精を見届けた後、寝床として目を付けていた場所に向かおうとした時、
「今、飛んでったのって何時も一緒に三人一組で居る三妖精だろ。あいつら、こんな所で何やってたんだ?」
背後からそんな声が龍也の耳に入って来た。
耳に入って来た声に反応し、振り返った龍也の目には、
「よっ」
片手を上げている魔理沙の姿が目に映った。
「何だ、また来たのか」
「ああ。夜中だからこそ新しく見付かる物が在るかも知れないからな」
魔理沙の存在を認識した龍也がそう口にすると、再び玄武の沢にやって来た理由を魔理沙は口にし、
「それよか、あいつ等何しに来たんだ?」
三妖精がここにやって来た理由を龍也に聞く。
「ああ、それは……」
別に隠して置く必要も無いので龍也は三妖精が玄武の沢にやって来ていた理由を教える。
「成程、あいつ等も光苔を探しに来たのか。と言う事は、私と霊夢の会話を聞いてたな」
教えられた事を頭に入れた魔理沙が自分と霊夢と会話を三妖精が聞いていたなと言う推察をしたからか、
「何だ、光苔の事を霊夢に話したのか?」
ついと言った感じで龍也はそんな事を尋ねてみた。
「おう、自慢しにな」
尋ねられた魔理沙が悪戯が成功したと言った様な笑みを浮かべ、自慢しにと答える。
「そういや、魔理沙ってあの三妖精の事を知っているのか?」
「ああ、一寸前にあいつ等から依頼を受けたんだ」
そんな魔理沙を見ながらふと気になった事を問うてみると、前に三妖精から依頼を受けた事を魔理沙は話し、
「そういや、龍也は光苔が光を発する条件に気付いたか?」
今度は自分の番だと言わんばかり光苔の話題を出した。
光苔に付いて気付いた事。
気付けた事は一つだけであるので、
「俺が気付いたのは日が出てる時間帯にしか光らないって事位かな」
その気付けた事を龍也は魔理沙に伝える。
すると、
「ほう、そこまで分かったのか。だが、私は更にその上を行ったぜ」
感心した表情に魔理沙はなるも、直ぐに自慢気な表情になって自分は更にその上を行ったと言う事を語った。
「お、なら他に何か分かったのか?」
「ああ。あの苔な、光を集めて乱反射させているんだ」
語られた内容から自分が得た情報以上のものを魔理沙が得た事を龍也が察したのと同時に、魔理沙は光苔がどうやって光を発しているのかを簡単に説明する。
「と言う事は、自分で光を発しているって訳じゃないのか」
「ああ。尤も、どの程度の光で光を乱反射するのかって言うのを含めて光苔にはまだまだ調べる事が沢山在るけどな」
光苔の新たな特徴を見付けた魔理沙に龍也が感心したと言う表情を向けたタイミングで、光苔に関してはまだまだ調べる事が沢山在ると言う台詞を魔理沙は呟く。
そして、
「さて、魔理沙さんの講釈を聞いたんだからその礼代わりにまた素材集めを手伝って貰おうか」
再び素材集めを手伝ってくれと言う頼みを魔理沙がして来た。
「……え?」
「どうせ暇なんだろ?」
行き成り頼み事をされてつい間の抜けた表情になってしまった龍也に、どうせ暇なのだろうと言う指摘を魔理沙は行なう。
された指摘を受けた龍也は何も言い返す事が出来ず、押し黙ってしまう。
指摘の通り、寝床として目を付けていた場所に戻って寝る以外に龍也はしなければならない事は無いのだ。
ともあれ、押し黙ってしまった龍也を見て図星を突いたと判断した魔理沙は、
「なら、決まりだな」
龍也を手伝わせる事を決める。
何やら勝手に自分の予定を魔理沙に決められた事に気付いた龍也ではあったが、
「はぁー……」
仕方が無いと言った感じの溜息を一つ吐き、魔理沙の手伝いをする事を内心で決定した。
実際、寝るまで暇なの確かなのだ。
おまけにまだ眠いと言う訳でも無い。
なので、この儘魔理沙に付き合うのも良いかと龍也は思ったのだろう。
兎も角、龍也は眠りそうになるまで魔理沙の素材集めに付き合う事になった。
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