神奈子との戦いに決着が着いた後、湖の上では落ち着いて話も出来ないと言う事で龍也達は妖怪の山の頂上に現れた神奈子の神社である守矢神社へと向かう事にした。
そして、守矢神社に着いた龍也達は神社の中へと入って行く。
すると、入って直ぐにある一室で倒れている神社の巫女を発見する。
倒れている神社の巫女を見た神奈子は慌てた素振りを見せたが、気絶しているだけと言う事が分かると直ぐに落ち着きを取り戻す。
因みに、この神社の巫女の名前は東風谷早苗と言うらしい。
ともあれ、早苗の名前を知れたのを合図にしたかの様に龍也達は腰を落ち着かせ、

「それで、何で幻想郷に神社と……と言うより土地も纏めてか。兎も角、あんた達が幻想郷にやって来た理由は何?」

妖怪の山にやって来た三人を代表するかの様に霊夢が幻想郷にやって来た理由を神奈子に尋ねる。

「私達が幻想郷に来た一番の理由は、外の世界では殆ど信仰が得られなくなったからだね」

尋ねられた神奈子がそう答えると、

「確かに今の時代……と言うか今の外の世界で信仰を得ろって言うのは厳しいよなぁ……」

龍也は外の世界の事を思い出しながら神奈子の発言に同意する事を口にした。

「おや、龍也は外の世界の事を知ってるのかい?」
「まぁ、俺も外の世界から来た外来人だからな」

口にされた事を受けて少し意外そうな表情を浮かべた神奈子に龍也は自分も外の世界からやって来た事を教える。
龍也も自分達と同じで外の世界からやって来た事を知った神奈子が少し驚いているのを見て、

「まぁ、幻想郷を旅して回ってる外来人何て龍也位だけだけどな」
「因みに、外の世界に帰らなかった外来人は人里で暮らしてたりするわよ」

補足する形で魔理沙と霊夢が外来人に付いて一寸した説明を行なう。

「はぁー……何かカルチャーショックを受けた気分だねぇ……」

された説明を頭に入れた神奈子が何所が気の抜けた表情になっている間に、

「幻想郷にやって来た理由は分かったけど、何で態々妖怪の山の頂上何かに来たのよ?」

納得と呆れが入り混じった様な表情になった霊夢が妖怪の山の頂上にやって来た理由を問う。

「転移した場所が何所に出るかは私にも分からなかったんだよ。一応、転移した先に誰も居ない場所に……と言った様な配慮はしたけど……何か拙かったのかい?」

問われた神奈子は良く解っていないと言う様子であった為、

「あんた達がやって来た妖怪の山って言うのはね……」

仕方が無いと言った感じで霊夢は妖怪の山がどう言った場所であるかを神奈子に教える事にした。
霊夢からの教えで妖怪の山がどの様な場所であるかを知った神奈子は、

「ははーん……成程ねぇ。それで昨日今日とずっと探る様な視線を感じてたのか。まぁ、その視線の正体が天狗達だとは思わなかったけど」

納得したと言う感じでそう漏らす。
やはりと言うべきか、神奈子自身も見られていると言うか監視されている事には気付いていた様である。

「ふーむ……しっかし、どうしたものかね? この儘妖怪の山に居座っていても何れ、天狗達と一戦交える事になりそうだし……」

ともあれ、妖怪の山がどの様な場所が知れた神奈子は腕を組みながらそう零して悩み始めた。
悩み込む際に神奈子が零した通り、神奈子達が天狗達と戦う事になる可能性は十分過ぎる程に存在している。
今後の事を考えれば、神奈子としてはこの件を早くに解決したいであろう。
悩んでいる神奈子を見てどんな結論を出すのかと言う事を三人が思い始めた時、

「……天狗に交渉を持ち掛けるか」

天狗と交渉を行なうと言う答えを神奈子は出した。

「天狗達相手に交渉して妖怪の山に住む事を認めさせるのか? それはかなり厳しいんじゃないか?」

神奈子が出した答えが耳に入った魔理沙は当然とも言える疑問を口にする。
神奈子達は天狗達にかなり警戒されている存在。
であるならば、天狗社会とも言える妖怪の山に住む事を認めさせるのは魔理沙が口にした通り厳しいであろう。
しかし、

「何、これでも長い時を生きて来たんだ。交渉の一つや二つ位何とかするさ」

当の神奈子は不敵な笑みを浮かべながら交渉を上手く纏める様な事を述べた。
どうやら、天狗達を説き伏せる自信が神奈子には有る様だ。
取り敢えず、話に一段落着いたからか、

「一寸聞きたかったんだが、ここに来るまでに会った連中がお前の事を戦いの神みたいだって言ってたけど、その辺はどう何だ?」

気になった事に付いて龍也は神奈子に尋ねてみる。

「戦いの神ねぇ……まぁ、少しは合ってるかな」
「「「少しは?」」」

尋ねられた事に対する神奈子の返答を受けて龍也、霊夢、魔理沙の三人は首を傾げてしまった為、

「昔の話さ。昔は軍神みたいな事をしてたのさ。今は只の風雨の神さね」

嘗ては軍神の様な事をしていたと神奈子は話す。
話された内容を頭に入れた魔理沙は納得した表情になりつつ、

「そう言えばさ、何で霊夢の神社に営業停止命令何て出したんだ?」

自分達がここに来る事になったそもそもの原因に付いて聞く。

「営業停止命令? 私はそんな事を言ってはいないけどね……」

聞かれた事を神奈子は否定して疑問気な表情になりながら何かを考え始めた時、

「言って来たのはここの巫女……早苗よ」

補足する様な形で霊夢は早苗が言って来たのだと言う発言を行なう。

「ああ、成程ねぇ」

霊夢からの発言を受けた神奈子は納得した表情になり、

「早苗は幻想郷に来た事でかなり浮かれていたからねぇ。そのせいで私が言った事を変に誇大解釈したんだと思うよ」

営業停止命令を早苗が言った理由を述べる。

「何だ、早苗は幻想郷に来れた事がそんなに嬉しかったのか?」
「まぁ、そうだろうね」

述べられた事からそう考えた魔理沙を神奈子に相槌を打ち、

「自分の力を十二分に発揮出来る場所に来れたのが嬉しいんだろうさ。龍也なら分かるだろ? 外の世界で空を飛んだり弾幕を出したり車より速く走ったら
どうなるかを」

一寸した補足を行いながら龍也に同意を求めた。

「ああ、分かる分かる。そんな事をしたら文字通りとんでもない騒ぎになって身動き取れなくなるだろ。確実に」
「何か、外の世界ってかなり窮屈そうね」
「私もさっき龍也からその話を聞いて面倒臭いって言う感想を抱いたぜ」

求められた同意に龍也がそう応えると、霊夢と魔理沙の二人はそれぞれが抱いた感想を零す。
その後、一寸した雑談をしていると、

「そういやさ、さっき早苗が誇大解釈をしたって言ってたけど神奈子は何て言ったんだ?」

ふと思い出したと言った感じで魔理沙は神奈子に誇大解釈に付いて問うてみた。

「私が言った事かい? うちの神社の傘下になってくれる様に交渉して来てくれないかいって言ったね」
「何よ、言ってる事は殆ど同じじゃない」

問われた神奈子がそう言うと霊夢からその様な発言が発せられるが、

「いや、傘下に入れと営業停止は大分違うと思うぞ」
「だよなぁ」

間髪入れずに龍也と魔理沙から突っ込みが入り、

「別に悪意が有ってあんたの所の神社を傘下に入れ様と思った訳じゃないんだよ。唯……あんたの所の神社の寂れっぷりを見て何とかしてやりと思ってねぇ……」

続ける形で傘下に入る様に言った理由を神奈子は述べた。
述べられた理由を耳に入れた魔理沙と龍也は何とも言えない表情をしながら霊夢の方に視線を向ける。

「…………何よ」

魔理沙と龍也からの視線に気付いた霊夢が二人の方に顔を向けると、

「いや、余所の神社の神様に心配されるお前の神社ってどんだけだよって思ってな」
「同じく」

二人は思っていた事をストレートに霊夢に伝えた。

「…………ふんだ」

伝えられた内容を受けた霊夢は思いっ切りしょ気てしまう。
そんな霊夢を哀れに思ったからか、

「ま、まぁ、神社は寂れているがその神社の巫女の実力は相当なものだからそこまで問題は無いとは思うけどね」

フォローする様な事を神奈子は口にした。
すると、

「ん……うーん…………」

四人の近くから四人以外の者の声が聞こえて来たので、四人は会話を中断して声が聞こえて来た方へ顔を向ける。
そんな四人の目には、

「ここは…………」

上半身を起こしている早苗の姿が映った。
どうやら、気絶していた早苗が目を覚ました様である。
目を覚ました早苗はキョロキョロと周囲を見渡していき、

「神奈子様……って、貴女達は!? そこの男の子も彼女達の仲間ですか!? って、ここは私達の神社!? 何で!?」

龍也達の姿を見て驚いたり、自分が居る場所を理解して驚いたりしていた。
少し、と言うかかなり混乱している様だ。
まぁ、目を覚ましたら自分と戦っていた敵が自分の神社の神と一緒に居ればそうもなるであろう。
だからか、混乱している早苗に対して神奈子は現状を説明する事にした。






















「はー……そんな事が起こってたんですか……」

現状を含めて一通りの事情を神奈子から説明された早苗は、

「うう……井の中の蛙になった気分です……」

そう言いながら肩を落とし、落ち込み始める。
まぁ、意気揚々と魔理沙に挑んで敗北したのであってはそう言う気分になっても無理も無い。

「これ位で落ち込んでいる様じゃこの先、幻想郷でやっていけないぜ」

落ち込んでいる早苗を慰める様な事を魔理沙が言うと、

「精進します……」

早苗は顔を上げた。
どうやら、持ち直した様である。
その後、早苗は龍也の方を見て、

「さっき神奈子様からお聞きしましたが、龍也さんも私達と同じ様に外の世界から来たんですよね?」

確認する様にして龍也が外の世界から来たのかを尋ねる。

「ああ」

尋ねられた事を龍也が肯定した瞬間、

「私達は転移の術式を使って幻想郷に来ましたけど、龍也さんはどうやって幻想郷に来たんですか?」

幻想郷にやって来た方法に付いて早苗が聞いて来た。

「俺は八雲紫って言う妖怪の手でだな」
「へぇ……あの八雲紫の手でねぇ……」

別に隠して置く事でもないので幻想郷に来た方法に付いて龍也が教えると神奈子は少し驚いた表情を浮かべる。

「神奈子様はその……八雲紫って言う妖怪を御存知なのですか?」

神奈子の反応から早苗がその様な事を聞いて来た為、

「ああ、知ってるよ。八雲紫って言う妖怪は神々の間でも妖怪達の間でもかなり有名な妖怪でね。何時から存在してるのかは誰にも分からなく、胡散臭く、
相当強い力を持っている妖怪って言うのもあるけど、彼女の能力……"境界を操る程度の能力"で一気に名を広めたって言う感じがあるね。最近だと……そう
だね……私達がやって来たここ、幻想郷を創った存在であると言う事で有名かな?」

八雲紫に付いての簡単な解説を行なう。
行なわれた解説の中に有った胡散臭いと言う部分に、

「まぁ、胡散臭いと言う同意するわ」
「同じく」
「同感」

霊夢、龍也、魔理沙の三人が同意している中、

「神奈子様、最近ってどれ位前ですか?」

ふと思った疑問を早苗は神奈子に投げ掛ける。

「え? うーん……千年単位では無い筈だから……ここ数百年の事だった筈……」

投げ掛けられた問いに、神奈子は悩みながらそう答えた。
長い時を生きて来た存在にとって最近と言う言葉でも結構な年月を現す様だ。
取り敢えず、幻想郷が生まれたのはここ数百年の事であると早苗は思う事にした。
八雲紫に付いて少し知れた後、早苗がもう一度龍也達の方に顔を向けた直後、

「……って、龍也さん!! 怪我してるじゃないですか!!」

龍也が怪我を負っている事に気付き、その事に付いて指摘する。
された指摘で龍也は自分の肩口に目を向け、

「……ああ」

自分が怪我をしている事を思い出す。
それに釣られる様にして魔理沙と霊夢は龍也の肩口に目を向け、

「ああ、そう言えば肩を怪我してたな」
「見事に斬られてるわねー」

呑気とも言える感想を零した。
今まで忘れていた怪我に付いての指摘された事で、

「……怪我してる事を思い出したからか、痛くなって来たな」

龍也は痛みを感じ始める。

「あ、今救急箱を持って来ますね」

痛みを感じ始めた龍也を気遣ってか、早苗は立ち上がって箪笥の上に在る救急箱を取りに向う。
救急箱を取ると早苗は龍也達の近くに戻って救急箱を畳の上に置き、開く。

「へぇー……これが外の世界の傷薬か……」
「永遠亭の連中が使っている薬に少し似てるわね」

開けられた救急箱の中身を魔理沙と霊夢の二人は興味深そうに眺め始めた。
やはりと言うべきか、二人に取って外の世界の道具と言うのは珍しい様だ。
そんな二人を余所に龍也はジャケットとシャツを脱ぐ。
ジャケットとシャツを脱いだ理由は、この二つを着た儘では傷の治療が出来ないからだ。
ともあれ、治療の準備をしていたら行き成り龍也が上半身裸になった事で、

「わ!? わ!?」

早苗は顔を少し赤らめてしまった。
そんな早苗を見て、

「初心だねぇ……」

初心だと言う感想を神奈子は抱き、

「これ位で狼狽えていたらこの先困るんだけどねぇ。主に跡取り問題とか。そう言えば外の世界に居た時も浮いた話何て一つも無かったし。やれやれ、
早苗の子供をこの手に抱く日は一体何時になる事やら……」

次の世代の心配をし始める。

「神奈子様!!」

余計な心配をし始めた神奈子に早苗は顔をより赤くして突っ込みを入れている中、

「消毒液……へぇー、外の世界の消毒液ってこんな筒の中に入ってるのか……」
「錠剤……って言うのよね、この瓶に入ってるの。これも沢山種類があるのね……」

魔理沙と霊夢は救急箱の中から興味を持ったのを取り出して観察していく。
そして、

「さて、取り敢えずこの消毒液を龍也に付ければ良いのか?」

取り出した物が消毒液であったからか、魔理沙はその中身を龍也に付ける為に蓋を外そうとする。
蓋を外そうとしている魔理沙に気付いた早苗は、

「魔理沙さん、それは少し強く押せば消毒液が出るタイプの物なので蓋を外さなくて良いんですよ」

魔理沙に蓋を外さなくて良いと言う言葉を掛けたが、

「え?」

そう言葉を掛けた時には既に魔理沙は消毒液の蓋を外してしまっていた。
更に運が悪い事に早苗の言葉に気を取られた魔理沙は思わず手を傾けてしまい、消毒液が龍也の傷口に降り注がれてしまう。
となると当然、

「いってええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」

傷口に消毒液が染み込んだ痛みで龍也は反射的に叫び声を上げてしまった。

「あ、悪い」

龍也の叫び声で自分がした事に気付いた魔理沙は謝りながら傾いた手を戻し、清潔なタオルで消毒液で濡れた龍也の体を拭いていく。
一方、

「もう、耳元でそんな大きな声を出さないでよ」

近くで龍也の叫び声を聴いてしまった霊夢は迷惑そうな表情で文句の言葉を投げ掛ける。

「お前な、そこは大丈夫? って声を掛ける場面何じゃないのか?」
「それ位でどうにかなる様な奴じゃないでしょ、あんたは」

投げ掛けられた言葉に突っ込みを入れた龍也に霊夢はそう返しながら救急箱の中に入っている丸いケースを取り出し、

「早苗ー、傷薬ってこれで良いのよね?」

取り出したケースが傷薬であるのかと言う確認を早苗に取った。

「あ、はい。そうですよ」

取られた確認が正しい事を早苗が述べると霊夢は傷薬の入ったケースの蓋を取り、

「ほら、傷薬を塗って上げるからジッとしてなさい」

龍也の傷口に傷薬を塗り込んでいく。

「いちちちち……もう少し優しく……」

傷口を直接触られているからか、龍也は痛みが有ると訴えるが、

「十分優しくしてるわよ。と言うか、これ以上塗る力を弱めたら薬が塗らさらないわよ」

霊夢はそう返した。
返された内容を受けた龍也はそれならば仕方無いかと思い、痛みに耐えていく。
龍也が痛みに耐え始めてから少しすると、

「はい、終わり」

龍也の傷口に傷薬を塗り終えた事で、霊夢は龍也の傷口から手を離す。
すると、

「それじゃ、包帯を巻いていきますね」

手に包帯を持った早苗が龍也に近付き、包帯を巻いていく。
その様子を見て、

「へぇ……元々は外の世界の人間なのに、よく見ればしっかりと筋肉が付いてるじゃないか」

神奈子はそんな感想を漏らし、

「部活とかに入ってたのかい?」

ふと思った事を聞いてみた。

「いや、俺は帰宅部だったぞ」

聞かれた事に龍也はそう返しつつ、喧嘩等は普通にしていたなと言う事を思い返す。
それから少し経った辺りで、

「はい、終わりましたよ」

包帯が巻き終わった。

「ありがと」

包帯を巻いてくれた早苗に龍也は礼を言いながら、包帯が巻かれいる肩を軽く動かす。
が、

「あ、そんなに動かしたらダメですよ」

早苗から肩を動かす事を嗜められてしまった為、

「あ、悪い悪い」

謝罪の言葉と共に龍也は肩を動かすのを止め、代わりだと言わんばかりに脱いだジャケットとシャツに目を向け、

「あー……結構血が染み付いてるな、これ」

愚痴を零しながら裂けた部分を縫って貰う前に洗濯が先かと考える。
そんな龍也の考えを察したからか、

「それ位なら、迷惑を掛けた詫びに私が何とかしてやるよ」

神奈子は龍也のジャケットとシャツに手を向ける。
一体何をと言う疑問を龍也が抱いたのと同時に神奈子の手が一瞬光り、龍也のジャケットとシャツが元通りになった。

「おお、凄え!!」

一瞬でジャケットとシャツが元通りになった事に龍也が驚いる間に、

「一応、神だからこれ位はね」

神奈子はどうって事ないと言う表情で手を降ろし、

「まぁ、普段はあまり使わないんだけどね。これを使ってばっかだと家事全般の技術は落ちるし、早苗の花嫁修行にならないしね」

その様な事を言ってのけた。

「神奈子様!!」

花嫁修業と言う単語が耳に入ったからか、早苗は再び顔を赤くしながら神奈子の方を向く。

「いや、結婚した時に家事全般が全く出来ない女って言うのはどうかと思うよ、私は。大体、早苗位の年齢なら何時結婚しても可笑しくないだろ。まぁ、
その場合は早苗を嫁に出すんじゃなくて男の婿入りになるだろうけど」

早苗からの視線に気付いた神奈子が花嫁修業の話題を出した理由を述べると、

「結婚って……私の年じゃまだ早いですよ!!」
「そうかい?」

結婚は早いと言う突っ込みが早苗から入った事で神奈子は疑問気な表情を浮かべて首を傾げてしまう。

「そうですよ!! 大体、神奈子様は考えが古過ぎるんです!!」

疑問気な表情を浮かべている神奈子に少し声を荒げながら突っ込みを入れる。
そんな二人を見て長くなりそうだと感じた霊夢は、

「そんな事より、さっき天狗達に交渉するって言ってたけど何時にするの?」

話を変えるかの様にして天狗達との交渉に付いて尋ねてみた。

「んー……日が暮れ始めた今の時間帯に行ったら夜襲だと思われる可能性があるから……明日の朝にでも行くさ」
「あ、本当だ。もう日が暮れ始めてる」

尋ねられた事に神奈子がそう答えた事で服を着終わった龍也は外の景色に視線を向け、日が暮れ始めている時間帯である事を知る。

「……あれ? 魔理沙さんはどちらに?」

ふと、早苗は魔理沙が居ない事に気付いて周囲を探る。
それに釣られる様にして龍也、霊夢、神奈子も周囲を探っていると、

「呼んだかー?」

奥の方から魔理沙が現れる。
その手には少し大きめの白い箱が在った。

「ああー!!」

魔理沙が持っている白い箱に気付いた早苗は、声を上げながら魔理沙に近付く。
早苗の視線が白い箱に向いてる事に気付いた魔理沙は、

「ああ、これか? 台所に大きな白い箱が在っただろ。何だろうなと思って中を開けて色々探ってたら甘い匂いを感じた紙製の箱が在ったから
取ってみたんだぜ」

白い箱を何所で見付けたのかを教え、

「処で、この箱の中身は何なんだ?」

白い箱の中身を聞いてみる。

「ケーキですよケーキ!! もう食べれないと思ってこっちに来る前に外の世界で買って来たんですよ!!」
「ケーキだったら早めに食べた方が良いんじゃないか? 冷蔵庫は使い物にならないだろうし」

中身はケーキだと言う答えを出した早苗に龍也は何気なく思った言葉を口にした。
すると

「……え」

ピシリと言う音が聞こえて来そうな動作で早苗は動きを止める。
が、直ぐに再起動をし、

「あの、冷蔵庫が使い物にならないとはどう言う……」

龍也に何かを問い掛け様とした。
早苗が何を問おうとしているのかを理解した龍也は、

「そのまんまの意味だ。幻想郷に電気は通ってないから電化製品は全部使えないんだ。序に言えば、ガスも水道も使えないぞ」

電化製品に加えてガスや水道が使えないと言う事を伝える。
伝えられた内容を頭に入れた早苗が慌てて台所に向い、それから少し経った辺りで、

「きゃー!! 本当に冷蔵庫動いてなーい!! 水もガスも出なーい!!」

台所からそんな悲鳴が聞こえて来た。

「気付いてなかったのか? 一寸考えれば分かりそうなものだけど……」

聞こえて来た悲鳴を耳に入れながら疑問気な表情を浮かべた龍也が神奈子の方に顔を向けると、

「こっちに来たのは早苗が寝た後だったからねぇ。朝、目を覚ました早苗に私が夜中に調べた事やここが幻想郷である事や計画の事等を色々話したらかなり
テンションが上がった状態で博麗神社に向って行ったんだよねぇ。帰って来てからもテンション上がりっぱなしだったし。あの子、一つの事に熱中すると他
の事が目に入らないところがあるからねぇ」

神奈子から溜息混じりにそう言った答えが返って来る。
神奈子の答えを聞いて龍也が納得している間に、

「そう言えば、外の世界の道具って電気がなければ使えない物がかなり多いって龍也に教えて貰ったっけか」

以前、龍也から教えて貰った事を思い出しながら魔理沙はケーキが入った箱を卓袱台の上に置いて開き、

「へぇー……外の世界のケーキって種類と言うか形が多種多様なんだな」
「そうね。咲夜やアリスが作るケーキは見た事があるけど、それとは似ても似つかない形のケーキも在るわね」
「あの二人の作るケーキも美味しいけどな。とは言え、外の世界のケーキとか久しぶりに見るな」
「そう言えば、私もここ最近はケーキ何て食べてなかったね」

箱の中に入っているケーキを見ながら魔理沙、霊夢、龍也、神奈子の四人がそれぞれ思い思いの感想を零す。
そして、誰からともなくケーキを取り出して食べ始め、

「美味い」
「美味しいわね」
「美味いな」
「この味は……あそこの店か」

これまた四人が思い思いの感想を零した。
一つ目のケーキを食べ切り、四人が二つ目にケーキに手を伸ばそうとした時、

「何、勝手に食べてるんですか!!」

台所から戻って来た早苗が少々声を荒げながら龍也達に近付いていく。
まぁ、後で食べ様と思っていた物を勝手に食べられたのであれば声を荒げても無理はない。
そんな怒り心頭の早苗に、

「そうは言うがね、流石に冷蔵庫が使い物にならない以上、さっさと食べないとケーキが痛むよ」

神奈子は正論を投げ掛けた。

「う……し、しかしですね……」

投げ掛けられた正論で早苗は一瞬押し黙るも、直ぐに何かを言おうとしたが、

「それにさ、これだけの数のケーキを一人で食べると……太るよ」

続ける様にして神奈子からケーキの食べ過ぎは太ると言う指摘をされ、

「はう……」

完全に押し黙ってしまう。
流石に太ると言うリスクを負ってまでケーキを独り占めしたくは無い様だ。
その後、早苗は少し間悩みつつ、

「な、なら私も皆さんと一緒に今食べます!!!! それなら大丈夫です!!!!」

四人と一緒にケーキを食べる事を決め、ケーキを食べ始めた。






















ケーキを食べ終わった後、もうケーキを食べれないと思った早苗が若干落ち込んでしまう。
が、人里のカフェでケーキを食べられる事を教えて貰った事で早苗は元気を取り戻した。
その後、適当に雑談をし始めてから幾らか経った辺りで、

「……何か、腹減って来たな」

龍也が空腹を覚えたと言う事を呟く。
それを皮切りにしたかの様にして、

「そう言えば朝、食べたっ切りだったわね」
「だな。私も朝、食べた後に霊夢の所に行って異変解決だからな」
「そう言えば私、朝……食べてませんでした」

霊夢、魔理沙、早苗三人も空腹だと言う事を訴える。
四人とも腹を空かしている事を知ったからか、

「なら、うちで食べてくかい?」

神奈子からそんな提案がなされた。
された提案を、

「食べる」
「食べてく」
「食べてくぜ」

龍也、霊夢、魔理沙の三人は何の迷いも無く瞬時に受け入れる。
三人の反応の速さから、現金な子達だなと言う事を神奈子が思っている間に、

「そうですね……冷蔵庫が使い物にならなくなってしまった以上、お肉とかは早めに処分したいです。ですので、今日は焼肉にしませんか?」

早苗は三人が食べていくと言う事を受け入れ、今晩は焼肉にし様かと考え始めた。
そんな早苗の表情は、何所と無く嬉しそうに見える。
大人数で食事を取るのが楽しみなのであろうか。
ともあれ、肉が食べれると言うからか、

「お肉か……食べるのは久しぶりね……」

霊夢は夕食が楽しみだと言う表情を浮かべた。
もう肉を食べる事が殆ど決まったからか、

「それじゃ、バーベキューセットでも取りに行くかね」

そう言いながら神奈子は立ち上がる。
それを見た早苗も立ち上がり、肉を取りに向おうとした時、

「あ……」

何かに気付いたと言う声を早苗は上げる。

「どうかしたのかい?」
「いえ、火をどうし様かと思いまして」

早苗が上げた声に反応した神奈子がそう尋ねると、早苗から火に付いての話が出された。
出された話からガスは止まっているからなと龍也が思っていると、早苗はライターとマッチは何所に在ったっけと考え始める。
そんな早苗を見て、

「火なら俺が用意するぞ」

自分が火を用意すると言う事を龍也は口にした。

「龍也さんはライターかマッチを持っているのですか?」
「いや。持っていないけどさ……」

口にされた事を受けた早苗がそう尋ねると、龍也は尋ねられた事を否定しながら自身の力を変える。
朱雀の力へと。
すると、龍也の瞳の色が黒から紅に変わる。
力の変換が完了すると、

「俺はこんな感じで炎とか生み出せるからさ」

龍也は掌から炎を生み出す。
龍也が掌から炎を生み出した事に驚いている早苗を余所に、

「そう言えば、私と戦っている時も炎の剣とか使ってたねぇ」

龍也達と戦ってた時の事を神奈子は思い出し、

「そう言えば、さっき聞きそびれたけど玄武の甲羅だ何て何所で手に入れたんだい?」

気になった事に付いて龍也に尋ねてみた。

「いや、手に入れたって訳じゃないんだけどな……」
「? どう言う事だい?」

尋ねた事に付いて今一つ要領を得ない答えを龍也が口にした事で神奈子が首を傾げてしまった為、

「俺の中……と言うか俺の精神世界だな。そこに朱雀、白虎、玄武、青龍の四神が居るんだ。だから俺は炎、風、地、水を生み出したり操ったり
出来るし、玄武の甲羅を生み出したり出来るんだ」

自分の能力を含めて、どう言った理由で玄武の甲羅を扱えるかの説明を龍也は行なう事にする。
された説明を受けた神奈子は物凄い驚いた表情になり、

「し、四神がその身に宿っているって言うのは本当なのかい!?」

された説明が本当なのかと言う確認を取りに掛かった。

「ああ、そうだ」

神奈子からの確認に龍也はそうだと答えながら掌の炎を握り潰す様にして消す。

「はぁー……四神をその身に宿していて平然としていられるとは……器がでかいと言うか何と言うか、大した男だねぇ……」

四神を自身の身に宿している事が本当であるのを知れた神奈子が感心した表情になると、

「まぁ、私等は龍也の中に居る四神を見た事が無いけどな。取り敢えず、龍也は炎と風と地と水を操れる便利な能力を持っていると思って置けば良いぜ」
「そうね、龍也が居るとお風呂も直ぐに沸くし洗濯物も直ぐに乾くから助かる程度に思って置けば良いんじゃないかしら。実際、龍也が泊まりに来た時は
それで助かってるし」

魔理沙と霊夢が龍也の能力に付いて簡単に纏める。
丁度そのタイミングで早苗が固まっている事に魔理沙は気付いたので、

「どうしたんだ?」

どうしたんだと言う声を早苗に掛けた。

「……はっ!! いえ、幻想郷は私が思っている以上に凄い所何だなと思いまして。龍也さんに四神が宿っている事を知っていてもお二人共、特に
何とも思ってない様ですしないですし」

掛けられた声で意識を戻した早苗がそう口にする。

「おいおい、さっきも言ったがこの程度の事で驚いていたら幻想郷ではやっていけないぜ」
「それよりも、早く焼肉の準備をしましょうよ」

口にされた事を受けて一寸したアドバイスの様なものを行なった魔理沙に対し、霊夢は我関せずと言った感じで早く焼肉の準備をする様に急かした。

「食い意地を張ってんなー……」
「あ、はい。今、お肉を持って来ますね」

そんな霊夢を若干呆れた目で見ている龍也に対し、早苗は肉を取りに台所にへと向かう。
台所へと向かった早苗を見届けた神奈子は、

「それじゃ、私はバーベキューセットを取りに向うかね」

バーベキューセットを取りに向った
それから少しすると、守矢神社の敷地内で肉を焼く準備が整ったので、

「ほら、龍也!! 早く火!! 火!!」
「はいはい」

霊夢に急かされる様にして龍也は掌から炎を生み出し、それを木炭に投げ付けるようにして放つ。
火が着いた木炭を程好く燃え上がり、鉄板を熱していく。
鉄板が十分に熱せられると、早苗は鉄板の上に肉を並べ始めた。
そして肉が焼き上がると、霊夢はいの一番で肉を箸で掴む。
一番乗りと言った感じで肉を箸で掴んだ霊夢を見て、食い意地が張ってるなと四人は改めて思いながら箸を肉に伸ばしていった。






















焼肉を食べ終わると日も完全に落ちていた。
こんな暗い中を帰すのは気が引けたからか、神奈子達は龍也達に守矢神社に泊まる事を勧める。
その提案を受けた龍也達が守矢神社で一泊した次の日の朝、

「また、いらして下さいね」

帰る為に外に出た龍也達に早苗はそう口にした。

「来れるかどうかはこれから次第じゃないか?」
「そうね、私達が普通に来たら妖怪の山の連中に攻撃されるでしょうし」
「だな。流石に天狗全てを敵に回す何て事はしたくないしな」
「あ、あははははは……」

口にされた事に対する返答を龍也、霊夢、魔理沙の三人から受け、早苗は苦笑いを浮かべる。
そして、一言二言交わして龍也達は帰って行った。
龍也達が帰って行く姿を見送った後、

「そう言えばさっきから機嫌が良いみたいだけど、何か良い事でもあったのかい?」

機嫌が良さそうな早苗に神奈子はそう尋ねる。
すると、

「あ、はい。昨日の夜に霊夢さんと魔理沙さんと一緒に遅くまでお喋りしてましたので……」

そんな答えが返って来た。
どうやら、夜中に霊夢と魔理沙の二人と話せた事が楽しかった様だ。

「ああ、そう言えば結構遅くまで明かりが点いてたっけか」

返って来た答えを受けて神奈子は昨夜の事を思い出しつつ、

「どうせなら龍也も交えて話せば良かったじゃないか」

ふと思った零す。

「い、いえ、流石に男の人と一緒の部屋で寝るのは一寸……」
「初心だねぇ。これじゃ将来男と……」

零された言葉が耳に入った早苗は顔を少し赤らめながらそう呟くと、下世話とも言える様な発言を神奈子がし掛けた為、

「神奈子様!!!!」

顔を真っ赤にしながら早苗は突っ込みを入れる。

「悪かった、悪かったて、早苗はあれだろ? 白馬に乗った王子様が来るのを……」
「そこまで夢見がちじゃありません!!」
「ごめん、ごめんって!!」

された突っ込みに謝罪を入れるも余計な事を言ってしまったせいで早苗が怒ってしまい、神奈子は早苗を落ち着かせる様にして両手を合わせて謝った。
それから少しすると早苗の怒りが収まったので、

「さて、そろそろ天狗達の所に交渉に向うとするかね」

神奈子は天狗達の所に向かおうとする。
すると、

「あ、そう言えば神奈子様。諏訪子様どちらに? 昨日今日と姿を見ていないのですが」

ふと思い出した事を早苗は神奈子に尋ねた。

「諏訪子ならまだ寝てるんじゃないかい?」
「寝てるって……昨日からずっとですか?」

尋ねた事に対する返答を受けた早苗が疑問気な表情を浮かべながら首を傾げると、

「ほら、二日前に携帯ゲーム機のソフトを沢山買ってただろ」

諏訪子がゲームを買っていた事を教える。

「あー……そう言えば買ってましたね」

教えられた内容を頭に入れた早苗が二日前の事も思い出している間に、

「きっと限界までやり続け、力尽きて寝たんだろうね。まぁ、そう言うところは早苗も似てるけどね」

その様な事を神奈子が零した。

「そ、そうですか?」
「そうだよ。まぁ、限界まではいかなくともロボット物のゲームが出たら殆ど部屋に篭りっ切りじゃないか」
「あ、あはははは…………」

零された内容が耳に入った早苗がそう聞き返すと神奈子が一例を出してしまったので、早苗は苦笑いをしながら神奈子から目を逸らしてしまう。
そんな早苗を見ながらやはり諏訪子と似ているところがあると思いつつ、

「私もシミュレーションとかRPG系は好きだけど、二人程時間を忘れたりはしないよ」

そう言いながら神奈子は空中に浮かび上がり、

「一応……諏訪子にも幻想郷に引っ越すと言う旨は伝えてあるけど、起きて来たら改めて伝えて置いてくれるかい?」

一寸した伝言を早苗に頼む。

「分かりました。神奈子様もお気を付けて」
「ああ。出来るだけ早く帰って来るよ」

頼まれた事に早苗が了承の返事をすると、神奈子は天狗達の居る場所を目指して飛んで行った。






































前話へ                                                    戻る                                          次話へ