「ふぁ……」
龍也は目を覚まし、上半身を起こす。
上半身を起こしてから暫らくボーっとしていると、龍也の頭が少しずつ覚醒していく。
頭がある程度覚醒すると龍也は周りを見渡し、
「……ああ」
思い出す。
博麗神社に泊まっていった事を。
その後、
「んー……」
体を覚醒させるかの様に上半身を伸ばしていく。
そしてある程度上半身を伸ばし終えると、龍也は布団から出て何時もの学ランスタイルに着替える。
着替えが済むと、龍也は寝床として使わせて貰っている部屋から出て霊夢を探す。
龍也は居間に居るかなと思いながら縁側の方に向けて歩いて行くと、
「おはよう」
挨拶の声が聞こえて来た。
聞こえて来た声に反応した龍也は声が聞こえて来た方に顔を向ける。
顔を向けた先には、霊夢の姿が在った。
挨拶をして来たのが霊夢だと分かったからか、
「おはよう」
龍也も霊夢に挨拶を返す。
すると、
「朝ご飯出来てるから食べちゃって」
霊夢が朝ご飯が出来ていると言う事を伝える。
「ああ、分かった」
龍也から分かったと言う返事が返って来た為、
「それじゃ、付いて来て」
霊夢は龍也に背を向け、居間に向って歩き出す。
歩き出した霊夢の後に続く様にして龍也も居間に向けて足を進めて行く。
居間に着くと、卓袱台の上は白いご飯と味噌汁と漬物と焼き魚と言った物が見えた。
そして、龍也と霊夢は向かい合う様な形で卓袱台の前に座り、
「「いただきます」」
二人は朝食を食べ始める。
朝食を食べ始めて直ぐに龍也は美味いと思った。
昨日の夕食もそうであったが、霊夢の作るご飯は美味い。
一人暮らしをしていると料理が上手くなるのかなと龍也は思いながら箸を進めていく。
しかし、殆ど一人暮らしに近い形であった龍也の料理の腕はかなり低い方ではある。
まぁ、コンビニ等で食べ物を買ってばかりで自分で作ろうとしなければ料理の腕が上がる事はないであろうが。
龍也と霊夢が朝食を取り、雑談を始めてから少しすると、
「ん?」
廊下を誰かが歩く音が聞こえて来る。
「お客さんか?」
龍也がそう尋ねた時、
「多分、魔理沙よ」
霊夢は魔理沙が来たのだと言う。
その瞬間、
「おーっす、霊夢」
そんな声と共に襖を開けた魔理沙が居間へ入って来た。
居間の中に入るのと同時に、
「お、龍也じゃないか。こんな所会うなんて珍しいな」
魔理沙は龍也の存在に気付く。
「こんな所とはどう言う意味よ」
霊夢が少しムッとした表情になりながらそう言うと、
「悪い悪い」
魔理沙は軽く謝りながら卓袱台の前に座る。
因みに魔理沙が座った位置は、霊夢と龍也の間だ。
「そう言えば、あんた達知り合いだったの?」
先程の魔理沙の発言から、霊夢は魔理沙に龍也と知り合いだったのかと問うたタイミングで、
「おう、この前な……」
魔理沙は霊夢に香霖堂で龍也と会った事を話す。
「ふーん……」
二人が出会った経緯の話を聞き終えた後、
「で、何しに来たの?」
霊夢は魔理沙に何をしに来たのかを尋ねる。
尋ねられた魔理沙は、
「朝食を貰いに来たんだぜ」
満面の笑顔で朝食を貰いに来たのだと言う。
「やっぱりね」
霊夢はやれやれと言った感じで溜息を一つ吐く。
霊夢が溜息を吐いたからか、
「そう言うなよ、お土産を持って来たんだしさ」
魔理沙はお土産を持って来たと言い、袋に入れて来た茸の山を霊夢に見せる。
魔理沙が見せた袋の中は茸で一杯だ。
一杯なのだが、中には珍妙な色や形をした茸が幾つか見えた。
なので、
「その茸、全部食えるのか?」
龍也は魔理沙に持って来た茸は全て食べれるのかと聞く。
聞かれた事に、
「全部食べれるぜ」
魔理沙は自信満々と言った態度を見せながら食べれる事を断言する。
魔理沙がそう言うのならそうなのだろうと龍也が納得していると、霊夢は霊夢でお昼は天ぷらねと言いながら茸を台所の方に持って行った。
それを見届けた後、
「それじゃ、私も頂くとするぜ」
魔理沙は何所からか自分用の茶碗を取り出し、それにご飯を注ぐ。
その様子を見た龍也は随分とここに馴染んでいるなと思いつつ、箸を進めていった。
朝食を食べた終えた後、龍也、霊夢、魔理沙の三人は縁側でまったりしながら過ごしていた。
適当に空を見上げながら三人で幻想郷の事や外の世界の事を話していると、
「そういや、龍也って弾幕ごっこは出来るのか?」
話題が弾幕ごっこになったからか、魔理沙が龍也に弾幕ごっこは出来るのかと尋ねる。
「ああ、多分出来ると思うぞ」
龍也はそう言って懐に手を入れ、幽香の家で作った五枚のスペルカードを取り出して魔理沙に見せた。
龍也が取り出したスペルカードを見た魔理沙は、
「ならさ、私とやろうぜ」
自分と弾幕をし様と言う。
それに対し、
「と言っても俺は取り敢えずルールを知ってるってだけで、弾幕ごっこがどんなものかまでは知らないぞ」
龍也はそう返す。
翌々考えてみれば、幽香から弾幕ごっこのルールなどは聞いていても実際に弾幕ごっこを体験していなかったなと言う事を龍也が思い返し始めた時、
「ならさ、私と霊夢がやるから見ててくれよ」
魔理沙がそんな事を口にする。
どうやら、魔理沙は龍也に弾幕ごっこがどの様なものなのかを見せる気の様だ。
勝手に弾幕ごっこをする事を決められた霊夢ではあるが、
「また勝手に決めて。ま、暇だから別に良いけどね」
暇をしていたからか、弾幕ごっこを行う事に反対する気は無い様である。
魔理沙も霊夢も準備は整っているからか、二人は縁側から降りて空中に向って行く。
霊夢がその儘浮かび上がったの対し、魔理沙は箒に跨って浮かび上がる。
箒に跨って空中に向った魔理沙を見た龍也は、格好もそうであるが御伽話などに出て来る魔法使いにそっくりだなと言う感想を抱いた。
本人曰く、普通の魔法使いとの事なのでお話の中に出て来る魔法使いを意識していたりするのであろうか。
龍也がそんな事を考えている間に魔理沙と霊夢の弾幕ごっこが始まった。
二人が弾幕ごっこをしている様子を見た龍也は、正に弾幕だなと言う感想を抱く。
無数の弾幕を放ち、迫って来る弾幕を余裕を持って避けたり紙一重で避けたりなどと言う光景が龍也の目に映っていたからだ。
因みに魔理沙は魔力で出来た弾を、霊夢は御札と霊力で出来た弾を弾幕にしている様だ。
それを見て、龍也は弾幕として撃ち出す物は何でも良いんだなと思った。
魔理沙と霊夢が弾幕を放ち合い、迫り来る弾幕を避けると言う状態が暫らく続いていたが突如状況が変わる。
魔理沙から極太のレーザーが発射されたのだ。
その極太レーザーを見た龍也は自分の霊流波に似ているなと感じたのと同時に幽香が言っていた事を思い出す。
霊流波と同じ原理の技を使うの者が幽香と龍也の他にもう一人いると言っていた事を。
あのもう一人と言うは魔理沙の事だったのかと龍也は理解する。
龍也がそんな事を理解している間に、霊夢は魔理沙が放った極太レーザーを避けていた。
避けたと言っても、かなりギリギリで避けられた様ではあるが。
極太レーザーを避け切った後、今度は霊夢から七色に光る弾が次々と発射された。
発射された七色に光る弾は全て魔理沙へと向う。
迫って来ている弾を魔理沙は一つ一つ上手い具合に回避していく。
だが、魔理沙が何発目かの七色に光る弾を回避した先には霊夢が放った弾幕が迫って来ていた。
それに気付いた魔理沙は慌てて回避行動を取るが、回避は間に合わずに弾幕が命中してまう。
弾幕を受けてしまった事で魔理沙の動きが止まってしまい、その間に弾幕が立て続けに命中していく。
そして、弾幕が途切れたのと同時に魔理沙が地面に墜落していってしまう。
墜落している魔理沙を見て龍也は慌てて落下予測地点にまで行き、
「……おっと!!」
落ちて来た魔理沙を両腕で受け止める。
受け止めた後、龍也は大丈夫かと思って魔理沙の顔を覗き込んだ時、
「あー、くそ!! 負けたー!!」
悔しそうな顔をしながらそんな言葉を口にした。
思いっ切り元気そうだ。
龍也はその事に安心しながら魔理沙を地面に下ろした瞬間、
「今回は私の勝ちね」
霊夢が地面に降りて来た。
霊夢の自分の勝ちと言う台詞を聞き、
「ちぇー……」
魔理沙は少し拗ねた表情になる。
龍也はそんな二人のやり取りを見ながら、
「そーいや、結構な高さから落ちて来たけど大丈夫なのか?」
結構な高さから落ちたけど大丈夫なのかと問う。
「あれ位の高さからなら真っ逆さまから落ちても何の問題もないぜ。なぁ」
魔理沙はあの程度の高さか落ちても何の問題も無いと言い、霊夢に同意を求める様な事を言うと、
「そうね、あの程度の高さだったらどうって事は無いわね」
霊夢は魔理沙の同意する発言をする。
そんな二人の発言を聞き、
「あー……」
龍也は自分もあれ位の高さからなら落ちても平気だなと思う。
レミリアと戦ってた時には壁に叩き付けられたり、壁を突き抜けたり床に叩き付けられたりなど色々な事をされたが、龍也は深刻なダメージを受けたりする事は無かった。
自分も大分人間離れしたなと龍也が思っている間に、
「それじゃ、お昼ご飯の準備よろしくね」
霊夢が魔理沙にお昼ご飯の準備をする様に言う。
「分かったよ」
魔理沙はそう言いながら神社の中に入って行く。
今のやり取りを見て、龍也は弾幕ごっこでこう言う事も決められるんだなと思った。
「色々と世話になったな。ありがとな、霊夢」
「どういたしまして」
魔理沙が作った茸の天ぷらを食べて腹が膨れた龍也はそろそろ出発する事にした。
その見送りに来ているのは霊夢一人だ。
因みに魔理沙は茸の天ぷらの食べすぎでダウンしてしまっている。
自分で採ってきた茸だったのだが予想以上に美味しかったらしく、ついつい食べ過ぎた様だ。
まぁ、弾幕ごっこで負けてしまった自棄食いも幾らか含まれているであろうが。
「それで、何所かに行く予定はあるの?」
霊夢が何所に向うのかと尋ねると、
「ああ、紅魔館に行こうと思ってる」
龍也は紅魔館に向うのだと答える。
紅魔館を目指す事にした理由は、先程三人で話していた時に紅魔館には非常に大きな図書館がある事を聞いたからだ。
それを聞いた龍也は思った。
若しかしたら、紅魔館の図書館には自分でも読める歴史書などがあるかもしれないと。
「そ、気を付けてね」
「おう」
そんな会話を交わした後、龍也が石段に向けて歩き出そうとした時、
「また来なさい。その時もちゃんとお賽銭を入れてよね」
霊夢はそんな事を口にする。
「はは、分かったよ」
賽銭を強請る霊夢に若干呆れながらも、龍也はまた来た時には賽銭を入れると言って博麗神社を後にした。
「確か、この辺りだった筈……」
龍也は森の中を駆け巡りながら霧の湖を探す。
何故霧の湖を探しているのかと言うとこの前の異変の時に紅魔館に行った際に霧の湖を通って向った為、霧の湖を通って行けば迷わずに行けると判断したからだ。
森の中を駆け巡っている中、妖怪の襲撃も妖精の襲撃も無い事を龍也は珍しいと感じつつもある事に驚いていた。
驚いている事と言うのは自分の走るスピードに。
何故ならば、走るスピードが外の世界に居た時と比べて桁違いに速くなっているからだ。
走るスピートが速くなっているお陰で龍也は大した時間を掛けずに霧の湖周辺の森に来る事が出来た。
そうでなかったら、博麗神社から霧の湖周辺の森の来るまでに相当な時間が掛かっていた事であろう。
龍也は自身の戦闘能力の上昇を含め、身体能力が大きく上昇したのは紅魔館の面々と戦ったお陰だなと思いながら長い草を掻き分けて突き進むと、
「お、見っけ」
霧の湖が見える場所に出る。
まだ、そんなに時間が経っていないのに非常に懐かしい感じを龍也は受けた。
かなり濃い日々を送ったからかなと龍也は思いつつ、空中に躍り出ようとした時、
「あー、お前は!!」
急にそんな声が聞こえて来る。
「ん?」
その声に何処か聞き覚えがあった龍也は声が聞こえて来た方に顔を向けると、青い髪に氷の羽を生やした女の子が居た。
「チルノ……だったよな?」
龍也がその女の子の名前を確認する様に呟いた瞬間、
「そうだよ」
女の子……チルノは合っていると言う。
一体何の用かと尋ねようとしたら、
「チルノちゃーん」
チルノの後ろから誰かがやって来る。
やって来たのは緑色の髪に羽を生やした女の子。
背中に見える羽が今まで出会って来た妖精の羽に似ている部分が結構見られたのでこの子も妖精かな龍也が思っていると、龍也の存在に気付いた女の子はペコリとお辞儀をする。
お辞儀をされたので龍也もお辞儀を返し、
「えーと……誰?」
誰なのかと問う。
すると、
「私は大妖精と言います」
そう名乗ってくれたので、
「あ、俺は四神龍也だ」
龍也も自分の名を名乗る。
その後、チルノの方を向き、
「それで、何か用か?」
何か用があるのかと問うと、
「この前の借りを返しに来たのよ!!」
チルノは元気良くそう言う。
「借りって何? チルノちゃん」
大妖精は首を傾げながらそう尋ねたタイミングで、
「この前、俺がこいつに喧嘩売られて返り討ちにしたからな。その事じゃないか?」
チルノではなく龍也が借りに付いて話す。
それを聞いた大妖精は、
「チルノちゃん……」
何か言いたそうな目でチルノを見る。
そんな大妖精の視線をチルノは無視し、
「兎に角!! あたいと勝負だ!!」
龍也にそう言い放つ。
どうやら、何が何でも龍也と戦いたい様だ。
チルノの宣戦布告に龍也は少し考え、
「弾幕ごっこでいいのか?」
戦いの方法は弾幕ごっこでいいかと問うと、
「いいよ」
チルノは弾幕ごっこで構わないと口にする。
了承の発言を聞き、龍也は実際に弾幕ごっこを実際に体験する良い機会だと思った。
魔理沙と霊夢の弾幕ごっこを見て、弾幕ごっこでどう立ち回ればいいか何となくではあるが理解した。
後はそれを実行に移せるかどうか。
龍也がそんな事を思っている間にチルノは空に上がって行ったので、それを追う形で龍也も空に上がって行く。
龍也とチルノの二人が地表から大分離れた位置に来たのと同時に弾幕ごっこが始まる。
先手を取ったのはチルノだ。
チルノは龍也に向けて氷の弾幕を幾つも放つ。
自身に迫って来る氷の弾幕を、龍也は苦も無く回避していく。
その時、龍也は疑問を覚えた。
何に疑問を覚えたかと言う、チルノの放つ弾幕の密度に。
この前戦った時よりも弾幕の密度が薄い。
様子見をしているのかと考えた所で、
「あ……」
幽香が言っていた事を思い出す。
幽香曰く、妖精は異変の時だと強さを増すが異変でない時はそれ程の強さは無い事が多いとの事。
要するに妖精は強さにムラがあるのだ。
それならば、この弾幕の薄さにも納得がいく。
チルノは妖精なのだから。
まぁ、今のチルノの強さでも異変の時に大量に出て来た妖精よりはずっと強いが。
今は異変の時ではないのでチルノの強さが落ちているのだと龍也は納得していると、
「もー!! 何で当たらないのよ!!」
チルノは弾幕が当たらなくてイライラし始めて来ていた。
熱くなって来ているのなら当たるかなと思い、龍也は狙いを付ける様に掌をチルノに向け、
「はっ!!」
掌から霊力で出来た弾を一発だけ放つ。
放たれたそれはチルノの弾幕を掻い潜ってチルノに迫っていくが、
「……おっと」
チルノには難なく避けられてしまう。
簡単に避けられてしまった事から龍也は狙いが甘かったかと思い、もっと良く狙いを付けてからもう一度弾を放つ。
しかし、
「当たらないよ!!」
それもチルノに避けられてしまう。
龍也はチルノが放つ弾幕を避け、チルノは龍也が放つ弾を避ける。
二人が何度も何度も弾幕を避け、放つと言った行為を繰り返していく内に龍也は段々とコツを掴んでいく。
そして、コツを掴んだ龍也が放った弾は、
「そこっ!!」
「きゃう!!」
見事チルノに命中する。
チルノは弾が命中した場所を擦りながら恨めしそうな顔で龍也を睨む。
その後、チルノは懐からカードの様な物を取り出し、
「氷符『アイシクルフォール』」
チルノがそう口にした瞬間、何やら変った弾幕が放たれた。
チルノの両サイドから龍也の方へと進み、中央に移動すると言ったタイプの弾幕だ。
チルノから放たれた弾幕を見た龍也はこれがスペルカード発動と言うものなのかと思い、回避行動を取っていくが、
「く……妙に避け難いな」
この弾幕は妙に避け難いと龍也は感じていた。
避けれない事はないが、判断を誤ったり油断をしたりすれば確実に被弾すると言ったレベルの弾幕だ。
被弾して動きが止まってしまえば立て続けに残りの弾幕をその身に受けて墜落してしまうかもしれない。
そんな事態に成るのを避ける為、龍也はこの弾幕を良く観察しながら避けに徹していると、
「……ん?」
ある事に気付く。
気付いた事と言うのは真ん中……正確に言えばチルノの正面付近には弾幕が行ってはいないと言う事に。
龍也は何かの罠かと思ったが、少しもその様子は見られない。
なので、龍也はチルノの正面付近に移動する。
チルノの正面付近に移動して少し経つが、
「……やっぱりか」
やはりと言うべきか、龍也の居る場所には弾幕が来なかった。
幽香の家で幽香から弾幕ごっこでは殺傷行為や回避不可能な攻撃は禁じられていると言う事を龍也は聞いている。
が、威力は兎も角この弾幕の攻撃範囲と言うのは幾ら何でも露骨過ぎるのでは龍也は思う。
だが、これは攻勢に移るチャンスだ。
龍也は懐からスペルカードを取り出し、掌をチルノに向ける。
龍也がスペルカードを取り出したのを見たチルノは慌てて自分が発動しているスペルカードの発動を止めて龍也から距離を取る。
そしてある程度の距離が取れると、チルノはスペルカードの発動を止め様と龍也に向けて弾幕を放つ。
龍也は迫って来る弾幕を目に入れつつ、初めて使うスペルカードに少しドキドキしながら、
「霊撃『霊流波』」
スベルカードを発動させる。
すると龍也の掌から青白い閃光が迸った。
青白い閃光はチルノの弾幕を物ともせずに突き進み、
「ッ!!」
チルノを呑み込む。
そして龍也が放った青白い閃光が晴れると、気絶したチルノが地面に向けて墜落して行く。
このままではチルノが地面に激突してしまうので、
「……おっと」
地面に激突する前に龍也がチルノを両腕で受け止める。
同時に、自分も魔理沙も霊夢もこの程度の高さから落下しても平気なので別に助けなくなくても良かったのではないかと思った。
まぁ、平気でも助けたであろうが。
龍也とチルノの弾幕ごっこが終わってから暫らく経つと、
「はっ!?」
気絶していたチルノが目を覚ました。
「よ、大丈夫か?」
龍也がそう声を掛けると、チルノは周りを見ながら何かに気付いたかの様に顔を下に向ける。
弾幕ごっこに負けた事がショックだったのだろうか。
龍也が何て声を掛け様か悩んでいると、チルノが顔を上げ、
「あんた、中々やるじゃない!!」
そんな事を言う。
どうやら、落ち込んではいなかった様だ。
思っていたよりも元気そうだなと龍也が思っている間に、
「あたいのライバルにしてあげる!!」
龍也はチルノに勝手にライバル認定されてしまった。
余りに突然の展開に龍也がフリーズしてしまったが、チルノの中では龍也はライバルで決まった様だ。
「次は負けないんだから!! 行こ、大ちゃん」
そう言ってチルノは森の中に向かって飛んで行く。
「待ってよ、チルノちゃーん!!」
飛んで行ったチルノを追いかける様にして大妖精も森の中へと飛んで行く。
チルノと大妖精が去った後、龍也が再起動する。
その後、状況を確認し、
「……ま、いっか」
色々あったがこれで良かったんだと思う事にした。
そして上空に上がって紅魔館の位置を探し始める。
霧が出ていて少々見難いが、紅い霧が出ていた時程ではない。
目を凝らしながら探していくと、
「……お」
紅魔館を発見する。
発見したのと同時に、龍也は紅魔館目掛けて空中を駆けて行く。
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