自分に向かって迫り来る炎の大剣を見た瞬間、龍也は自身の力を瞬時に変える。
朱雀の力へと。
瞳の色が黒から紅に変わったのと同時に龍也は二本の炎の剣を生み出し、
「ぐっ!!」
その二本の炎の剣でフランドールが振るった炎の大剣を受け止める。
龍也は両腕に力を籠め、歯を喰い縛って何とか均衡状態を維持していると、
「へぇ……龍也も炎の剣を使うんだ」
龍也の炎の剣を見たフランドールは少し驚いた表情でそう呟き、
「お揃いだね」
満面の笑顔でお揃いだと言う。
「そうだ……な!!」
龍也はその発言に返す様にして二本の炎の剣を力一杯払い、
「わっ」
フランドールを弾き飛ばす。
弾き飛ばされて体勢を崩したフランドールに龍也は肉迫し、炎の剣を振るう。
が、
「……ちっ」
炎の剣が当たる直前にフランドールは空中に上がってしまったので、炎の剣は空を斬るだけに終わってしまった。
攻撃を避けられた事に龍也は舌打ちをし、自身も空中に躍り出て、
「はあ!!」
フランドールに向けて炎の剣を振るう。
振るわれた炎の剣を迎撃するかの様にフランドールも炎の大剣で振るい、炎の剣を受け止める。
その後、二人は自分の得物を引いて再度を互いの得物を激突させていく。
何度も何度も。
暫らくの間、炎の剣と炎の大剣が斬り結んでいくと、
「なっ!?」
フランドールが突如、後ろに下がって間合いを取る。
突然の事であったからか龍也が体勢を崩してしまうと、
「ッ!!」
フランドールが炎の大剣を大きく振り被った。
それを見た龍也はフランドールが何をする積りなのかを理解し、慌てて体勢を立て直して防御の体勢を取る。
龍也が防御の体勢を取ったのと同時にフランドールは炎の大剣を振り下ろす。
振り下ろされた炎の大剣を龍也が二本の炎の剣で受け止める。
受け止めた事で均衡すると思われたが、フランドールの炎の大剣は龍也の炎の剣を押していき、
「があっ!!」
龍也を斜め下へと叩き落とす。
叩き落された龍也は本棚に激突し、幾つもの本棚と本を巻き込みながら飛んで行く。
かなりの量の本棚や本を巻き込んだ所で龍也は漸く止まった。
同時に、龍也は今の衝撃で炎の剣が消失した事を知る。
そして、
「痛ぅ……」
全身に感じる痛みを無視して起き上がろうしたところで、
「ッ!?」
フランドールが炎の大剣を振り被っている姿が龍也の目に映った。
このままでは炎の大剣の直撃を受けてしまうので、龍也は後転を行うのと同時に地面を掌で弾いて距離を取る。
そのタイミングで龍也が居た場所にに炎の大剣が振り下ろされた。
一瞬でも遅れてたら直撃していたなと思い、龍也は冷や汗を流しながら本棚や本の瓦礫の上に足を着け、
「はあ!!」
両手をフランドールに向け、両手から特大の火炎放射を放つ。
フランドールは自身に向けて迫って来る炎を炎の大剣で受け止め、
「いっくよー!!」
炎を斬り裂く様にして龍也に向かって突き進んで行く。
龍也は自身の炎を斬り裂きながら迫って来るフランドールに驚きながらも、無意味となった火炎放射を放つのを止める。
そして、龍也は両手を合わせて一本の炎の大剣を生み出し、
「はああああああああああああああああ!!!!」
フランドールの炎の大剣を迎え撃つ様にして炎の大剣を振るう。
龍也とフランドールの炎の大剣が激突した時、先程の様に龍也が押されてしまうのかと思われたが、
「ぐ……ぐぐ……う……ぅぅ……」
均衡していた。
自身が振るった炎の大剣を受け止められたにも係わらず、
「あはははは、凄い凄い!!」
フランドールは嬉しそうな表情を浮かべている。
それに対し龍也は歯を喰い縛って必死そうな表情を浮かべていた。
おまけに龍也の体中からは青白い光が漏れ出ている。
この青白い光は霊力だ。
そう、龍也は霊力の解放による基本能力の大幅な強化を行っているのである。
だと言うのに、
「ぐうぅぅ……」
龍也は何とか押し切られずに均衡状態を維持するので一杯一杯だ。
フランドールは魔力を解放していなければ、全然本気を出していない。
龍也はその事をフランドールの全体像や表情を見て理解し、この現状を苦々しく思いながら、
「ううぅぅ……ぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!」
龍也は更に霊力を解放して両腕に力を籠めて、
「わっ!!」
フランドールを弾き飛ばす。
それと同時に龍也が解放した霊力の影響で辺り一帯に散らばっていた本棚の欠片や本が宙を舞い、二人は互いの姿を認識出来なくなる。
そして宙を舞っていた本棚の欠片や本が落下して互いの姿が認識出来る様になると、フランドールが弾幕を展開している様子が龍也の目に映った。
フランドールが展開している弾幕が放たれると、龍也は炎の大剣を二本の炎の剣にし、
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
迫って来る弾幕を斬り払っていく。
全ての弾幕を切り払った瞬間に、
「ッ!!」
フランドールが超スピード龍也へと肉迫する。
フランドールの接近に気付いた龍也は防御の体勢を取ろうとするが、
「がっ!?」
その前にフランドールの拳が龍也の胴体に叩き込まれてしまった。
フランドールの拳をまともに受けた龍也は血を吐き出し、背後に有る本棚を巻き込みながら吹き飛んで行く。
幾つもの本棚を破壊した末に漸く龍也が止まった時には、炎の剣が再び消失してしまっていた。
「……くそ」
龍也は炎の剣が消えてしまった事に悪態を吐きつつも体を起こすと、
「……ん?」
自分の体に影が掛かっている事に気付く。
それが何のなのか確認する為に龍也は顔を上げると、
「なっ!!」
フランドールが自分に向けて降下して来る様子が見て取れた。
それを見た龍也は反射的に横に飛び込んで回避行動を取る。
その次の瞬間、龍也は先程まで自分が居た位置に目を向けると、
「ッ!!」
本棚の欠片と本の瓦礫を蹴って自分に迫り、拳を振り被っているフランドールの姿が目に映った。
自身に迫って来るフランドールを見て、龍也は反射的に両腕を交差させて防御の体勢を取る。
龍也が防御の体勢を取ったのとフランドールが拳を放ったのは同じタイミングであった。
龍也の腕にフランドールの拳が当たると、
「ぐっ!?」
龍也は後ろに押し出される様にして下がってしまう。
後ろに下がってしまったのは反射的に防御の体勢を取ったのと、先程胴体に受けた拳撃よりも威力が上だったせいだと龍也は考えつつ、
「ぐ……お……おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
下半身に力を籠めて無理矢理後退を止める。
後退が止まったのと同時に、
「らあ!!」
龍也はフランドールに向けて蹴りを放つ。
しかし、
「おっと」
龍也が放った蹴りはフランドールが後ろに跳んだ事で避けられてしまう。
しかし、蹴りは避けられたがフランドールは龍也から離れた。
その間に龍也は両手に炎を纏わせ、
「はあああああああああああああああああああ!!!!」
床を蹴ってフランドールに格闘戦を仕掛ける。
連続して放たれた龍也の拳をフランドールは少々危な気な動きで回避していく。
その様子を見て龍也は疑問を覚えた。
あれだけ強いのに何故あんな危な気に避けるんだろうと。
少し考えを張り巡らせると、龍也はある一つの可能性に思い至る。
思い至った可能性と言うのは、フランドールは実戦経験がそんなに多くは無いのではないかと言う事だ。
龍也はそんな事を考えながら拳を振るっていると、
「なっ!?」
炎を纏った拳はフランドールに掴まれてしまった。
「これ位の炎のなら、全然熱くないよ」
フランドールの台詞を聞き、龍也は一寸した既視感を覚えていると、
「うお!?」
上空へと投げ飛ばされしまう。
龍也の体は回転しながら高度をどんどんと上げていく。
ある程度高度を上げた所で龍也は無理矢理体勢を立て直し、空中に見えない足場作って減速しながらフランドールの方に視線を移すと、
「ッ!! 速い!!」
かなりのスピードで迫って来ているのが見て取れた。
このまま戦っていてもフランドールのスピード翻弄されるだけだと判断した龍也は自身の力を変える。
朱雀の力から白虎の力へと。
瞳の色が紅から翠に変わったのと同時に龍也の両腕両脚に風が纏わされる。
同時に、龍也は両手をフランドールに向け、
「はあ!!」
突風を放つ。
龍也が突風を放つと言うのは予想外であったからか、
「わっ!?」
フランドールはその突風をまともに受けてバランスを崩し、少し吹き飛ばされてしまう。
ある程度吹き飛ばされた所でフランドールはブレーキを掛け、顔を上げて龍也の方を見る。
そして、フランドールは龍也が今までとは違うと言う事を理解した。
「へぇー、炎だけじゃなくて風も操れるんだ」
フランドールが炎だけではなく風も操れる事に感心していると、龍也の姿が消える。
常人の目には全く追えないスピードではあるが、フランドールには追えた。
フランドールは自身の背後へ振り返りながら裏拳を放つと、
「ッ!!」
龍也の放った回し蹴りと激突する。
自分の後ろに回ったのと同時に蹴りを放ったのかとフランドールが考えていると、
「わっ!?」
突如、フランドールが吹き飛ぶ。
何故フランドールが吹き飛んだかと言うと、フランドールの放った裏拳が激突していた場所は龍也が風を纏っていた場所であったから。
激突している間に龍也はその部分の風を炸裂させてフランドールを吹き飛ばしたのだ。
これに警戒されていたらこうも容易く吹き飛ばされなかっただろうなと龍也は思いながら、炸裂させた風を纏い直してフランドールへと肉迫する。
龍也がフランドールを自身の間合いに入れた瞬間、フランドールは体勢を立て直した。
思っていた以上に体勢を立て直すのが早いなと龍也は思いつつ、
「らあ!!」
拳を放つ。
放たれた拳に反応したフランドールは、その拳を迎え撃つ様にして自身も拳を放つ。
そして二人の拳が激突し、
「ぐっ!!」
龍也の拳が弾かれた。
解り切っていた事ではあるが、力と力の勝負ではフランドールの方にかなりの分がある様だ。
フランドールは弾かれて体勢を崩した龍也に追撃を行おうとするが、
「わとと……」
龍也から突風が放たれ、それで体勢を崩してしまったので追撃の中断を余儀なくされた。
突風で崩れた体勢を立て直し、龍也の方を見ると、
「ッ!?」
フランドールは何かを感じ、少し慌て気味に回避行動を取る。
その瞬間、フランドールの服の肩の部分が僅かに斬れた。
自身の服の一部が斬られた事をフランドールは認識し、再び龍也の方を見ると何やら腕を振るっている姿が目に映る。
その瞬間、
「ッ!!」
フランドールは何かが自分に迫って来るの感じ取り、それを紙一重で避ける様に体を逸らす。
紙一重で回避したからか、フランドールは何が飛んで来たのかを理解する。
飛んで来たものは風の刃だ。
龍也は風の刃をフランドールに向けて飛ばしているのである。
それならばと思ったフランドールは強めの弾幕を生み出し、
「いっけー!!」
それ等を一斉に射出する。
龍也の放った風の刃とフランドールの放った弾幕が激突すると、
「なっ!?」
フランドールの弾幕は龍也の風の刃を容易く破壊し、龍也へと突き進んで行く。
自身が放った風の刃を容易く破壊された事に龍也は驚くも、弾幕を避ける為に回避行動を取る。
弾幕が飛んで来るコースは避け難いと言うものでは無かったので、龍也は順調に放たれた弾幕を回避していく。
そんな中、
「……ん?」
不意に弾幕が止む。
急に弾幕が止んだ事を不審に思った龍也はフランドールに顔を向けると、
「ッ!?」
驚愕の表情を浮かべる。
何故ならば、フランドールの後方に高密度で大量の弾幕が展開されていたからだ。
龍也が驚愕の表情を浮かべている間に、その弾幕は一斉に射出された。
射出された弾幕を見た龍也は範囲外に逃げるのは不可能だと悟り、弾幕の一発一発を避ける事にする。
一発、二発、三発とある程度までは普通に回避出来ていたが時間が経つに連れて掠る弾幕が多くなっていき、龍也の体をどんどんと傷付けていく。
そして最終的には、
「ぐっ!!」
回避出来なくなってしまう。
このまま回避行動を取っていても意味無く体を傷付けるだけと判断し、龍也は回避止めて防御の体勢に移って弾幕が止むまで耐える事にする。
最初のうちは腕や脚に纏っている風が弾幕を弾いてくれた。
だが、次第にその風は大量の弾幕の前に削れていき、意味を為さなくなり始める。
おまけに弾幕が止む気配は全然見られない。
このままでは全ての弾幕を受けて戦闘不能になると龍也は思い、自身の力を変える。
白虎の力から玄武の力へと。
瞳の色が翠から茶に変わった瞬間に、弾幕が龍也に直撃し始めた。
連続した爆音が響き、発生した爆煙が龍也を包み込む。
そして煙が晴れると、
「く……」
龍也の姿が見えて来る。
玄武の力に変えたお陰か、龍也は致命的なダメージを負わずに済んだ様だ。
防御の体勢を解き、フランドールが何所に居るかを探そうとすると、
「あははははは!! 今ので壊れれない何て凄いね、龍也!!」
そんなフランドールの声が聞こえて来た。
声が聞こえて来た方に顔を向けると、炎の大剣を振り被っているフランドールの姿が龍也の目に映る。
弾幕を受け切った事でまだ思う様に動いてくれない今の体では回避は不可能であると龍也は判断し、
「玄武の甲羅!!」
目の前に玄武の甲羅を生み出す。
そのタイミングで玄武の甲羅にフランドールの炎の大剣が激突し、大きな激突音が辺りに響き渡る。
だが、玄武の甲羅には皹処か掠り傷一つ付いてなかった。
傷一つ付ける事が出来なかった事にフランドールは思わず驚きの表情を浮かべてしまう。
が、直ぐに表情を戻して再度炎の大剣を振り上げる。
そして炎の大剣を両手で持ち、一気に振り下ろす。
炎の剣は再び玄武の甲羅に激突し、先程よりも大きな激突音が辺りを包み込む。
しかし、
「凄く硬いねそれ。本気でやっても傷一つ付かないなんて」
それでも玄武の甲羅には傷一つ付かなかった。
玄武の甲羅ならばフランドール攻撃を何の問題なく防げる。
龍也がそんな確信を得ていると、
「でも、邪魔だなそれ」
フランドールはそう言って玄武の甲羅から炎の大剣を離し、右手の掌を玄武の甲羅へと向けた。
「壊れちゃえ」
そして、
「ぎゅっとして……ドカーン」
フランドールが掌を握るのと同時に玄武の甲羅は粉々に破壊されてしまう。
「なん……だと……」
玄武の甲羅が粉々に破壊された事で龍也の驚愕の表情を浮かべる。
玄武の甲羅は龍也が自信を持って最強最硬の盾であると言える代物だ。
だと言うのにこう容易く破壊された。
その事が龍也に理解出来ていなかったからか、龍也の思考は止まってしまう。
故に、
「ちょっと硬かったけど……うん、やっぱり破壊出来た」
フランドールのそんな呟きは龍也の耳に入らず、フランドールの接近にも気付けなかった。
フランドールが龍也に接近し、龍也の顔面を掴んだ瞬間に、
「ッ!?」
龍也は再起動をする。
だが、その時にはもう遅く、
「いっけー!!」
「う、お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
龍也はフランドールに投げ飛ばされてしまう。
投げ飛ばされている最中に龍也は体を回転しさせ、見えない足場を作る。
そして見えない足場に右手と両足を着けて減速していくと、
「ッ!?」
フランドールが直ぐ近くにまで迫って来ている事に気付く。
その瞬間、
「玄武の甲羅!!」
龍也は再度玄武の甲羅を前方に生み出す。
龍也が玄武の甲羅を生み出したタイミングでフランドールの拳が玄武の甲羅に激突し、大きな激突音が発生した。
すると、
「いったーーーい!!」
フランドールは若干涙目になりながら玄武の甲羅から拳を離して手を押さえる。
流石に玄武の甲羅を素手で思いっ切り殴ったら痛かった様だ。
痛みに堪えながらもフランドールが右手を玄武の甲羅に向け、
「うー……壊れちゃえ!!」
先程と同じ動作で玄武の甲羅を破壊する。
再び玄武の甲羅を破壊されたのを見て、龍也はフランドールが玄武の甲羅を破壊したのは偶然でもまぐれでも無い事を確信した。
つまり、フランドールは玄武の甲羅を破壊する程の強力な技を持っていると言う事。
おまけにその攻撃は不可視だ。
だが、その攻撃を行う為には掌を相手に向ける必要があると言う事だけは分かっている。
龍也はフランドールが自分に掌を向けたら要注意だな思い、後ろに下がりながら無数の土の塊を生み出す。
そして、
「いけ!!」
生み出した土の塊の全てをフランドールへと放つ。
「わっ」
フランドールは龍也が土の塊を生み出した事に驚くも、迫って来る土の塊を確実に避けていく。
その様子を見ながら、龍也は斜め後ろ上空へ跳ぶ。
龍也が移動した事に気付いたフランドールは、
「待てー!!」
龍也の後を追う。
フランドールが自分を追って来ている事に気付いた龍也は右手から土を生み出していく。
生み出された土が巨大な拳を型作ると、龍也は体を半回転させる。
頭部と足の位置が入れ替わると、龍也は足元に見えない足場を作ってそれを蹴ってフランドールへと一直線に向かって行く。
それと同時に龍也は拳を振り上げる。
龍也が拳を振り上げたタイミングでフランドールも拳を振り上げた。
そして、土で出来た拳とフランドールの拳は激突し、
「ぐっ!!」
土で出来た拳にフランドールの拳がめり込む。
フランドールの拳がめり込んだ場所から皹が放射状に広がり、
「ッ!?」
土で出来た拳が崩れ落ちる。
このまま距離を詰められた厄介だと感じた龍也は間合いを取る為に突き出していた拳を引くが、
「遅いよ!!」
その隙を突く様にフランドールは龍也に近付き、体を回転させるかの様にして龍也の脇腹に蹴りを叩き込む。
「がっ!!」
蹴りを叩き込まれた龍也は地上に向けて吹っ飛んで行く。
幾つもの本や本棚を巻き込みながら。
吹き飛びが止まり、瓦礫の様に自分の体に乗っかっている本や本棚の欠片を退かしながら立ち上がると、
「ッ!?」
目の前にフランドールが迫って来ている事に気付く。
龍也が反射的に腕を盾にする様に動かしたのと同時にフランドールの拳が放たれる。
フランドールの拳が龍也の腕に当たると、
「……やっぱり硬くなってるね、龍也」
フランドールは殴った感触からそんな感想を漏らす。
そして、
「じゃ、もう一寸強くいくよ」
再度拳を放つ。
再び放たれた拳を龍也は腕で受けるが、
「ぐうっ!?」
吹き飛ばされてしまう。
また幾つもの本と本棚を巻き込みながら。
だが、今度は吹っ飛ばされるが儘と言う訳ではなかった。
龍也は途中で床に無理矢理足を着けて減速していったからだ。
床を破壊しながら減速し、龍也が止まった頃には、
「ッ!!」
フランドールは再び龍也の目の前まで迫って来ており、拳を放って来た。
それを避ける為に龍也は回避行動を取ろうとするが、
「しまっ!!」
足場が悪かったせいか、龍也は体勢を崩してまう。
このままではフランドールの拳は龍也に当たってしまうと思われたが、
「……あれ?」
幸か不幸か、龍也は体勢を崩した事でフランドールの拳の範囲外に逃れたのだ。
これは完全に予想外であったからか、フランドールは思わず動きを止めてしまう。
それをチャンスと龍也はフランドールの腕を掴む。
「え?」
腕を掴まれた事にフランドールが驚いていると、龍也は掴んでいる手から大量の土を生み出してフランドールの腕と
床を土で繋げ、フランドールが動きを封じられている間に龍也は空中に躍り出て距離を取る。
ある程度龍也が距離を取った所でフランドールは土の塊を破壊し、
「逃がさないよ!!」
龍也の後を追う。
龍也は土の塊を破壊するのが思っていたよりも早いなと思いつつ、この距離ならまだ間に合うと判断して自身の力を変える。
玄武の力から青龍の力へと。
瞳の色が茶から蒼に変わるのと同時に龍也は掌をフランドールに向け、
「いけ!!」
掌から水流を放つ。
自身に迫って来る水流を見たフランドールは、
「水!?」
大慌てで回避行動を取り、龍也から大きく距離を取る。
「……え?」
そんなフランドールを見た龍也はある疑問を覚えた。
何故あんなに慌てるかの様に距離を取ったのかと。
答えを出そうと龍也は頭を回転させた結果、
「……あ」
吸血鬼の弱点は流水である事を思い出す。
かなり朧げではあるが、レミリアとの戦いでレミリアに向けて水を放った時に大ダメージを与えた記憶が龍也にはあった。
レミリア・スカーレットは吸血鬼。
その妹であるフランドール・スカーレットも当然吸血鬼である。
何故、龍也はこんな重要な事を今まで忘れていたのだろうか。
早いうちから青龍の力を使っていれば結構楽に戦えていたであろう。
龍也は弱点で攻め続けると言う戦い方は好きな方ではないが、そんな事を言える程に龍也とフランドールの実力は近くはない。
この儘フランドールにやられる訳にもいかないので龍也は頭を切り替え、大量の水の弾幕を生み出し、
「こいつで……どうだ!!」
それ等を一斉にフランドールに向けて放つ。
迫って来る水の弾幕を、フランドールは少々危なげない動きながらも大きく距離を取りながら避けていく。
フランドールが弾幕を避けていく様子を見て、このまま弾幕を放っていても距離が離されるだけに終わると判断した
龍也は弾幕を放つのを止めて両手から二本の水の剣を生み出し、フランドールとの距離を詰め、
「はあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
斬り掛かった。
「ッ!!」
フランドールは大きく後ろに下がる事でその斬撃を回避する。
龍也は避けられた事を気にせずに更に斬撃を放つが、それも回避されてしまう。
龍也が斬撃を放ってフランドールがそれを避ける。
そんな行為を二人は何度も繰り返す。
何度も何度も。
そして何度目かの時、僅かな隙が龍也に生まれる。
その隙を見逃さなかったフランドールは龍也の胴体に蹴りを叩き込む。
「ぐうっ!?」
蹴りを叩き漏れた龍也はそのまま蹴り飛ばされ、フランドールとの距離を離してしまう。
龍也は腹部に走る痛みに耐えながら二本の水の剣を消す。
水の剣を消したのと同時に龍也は両手を水で龍の手に様に覆いながら無理矢理体勢を戻し、
「水爪牙!!」
右腕を振るう。
すると爪先から水で出来た五本の斬撃が飛び出し、フランドールへと向かっていく。
「ッ!?」
迫って来る水の斬撃を見たフランドールは慌てて回避行動を取り、水の斬撃を避ける。
水の斬撃を避けれた事でフランドールは安心するも、直ぐに第二第三の水の斬撃が飛んで来た。
それ等も何とか避けていくが、
「ッ!!」
回避する為に移動した場所に、水の斬撃が迫って来ていた。
このままでは水の斬撃がフランドールに当たってしまう。
そう思われたその時、命中するかと思われた水の斬撃が粉々に破壊された。
水の斬撃が破壊された様子を見た龍也は、玄武の甲羅が破壊された時と同じだと理解する。
同時に、このまま水爪牙を放っていてもフランドールに当たりそうには無いと思った。
力の無駄な浪費を避ける為にも色々と考えを纏めないと突破口が開けそうにないと考えた龍也は水爪牙を放つのを止め、
フランドールよりも高い位置にまで上昇する。
急に水の斬撃が来なくなったのに気付いたフランドールは龍也を探すと、
「ッ!!」
両手を天に掲げ巨大な水球を生み出している龍也の姿が目に映った。
巨大な水球を見たフランドールは若干怯えた表情になりながた後退りを始める。
それを合図にしたかの様に、
「豪水球!!」
龍也は巨大な水球をフランドール目掛けて振り下ろす。
自身に向けて迫って来る水球を見たフランド−ルは慌ててその場から離れる。
そのタイミングで水球は床に激突して破裂し、辺りに大量の水を飛び散らせた。
飛び散った水の一つ一つにもそれ相応の攻撃力があった為か、フランドールは更に大きく距離を取る。
大量の水が龍也とフランドールがお互いの姿を確認出来なくすると龍也は自身の力を青龍の力から白虎の力に変え、
瞳の色が蒼から翠に変わったのと同時に全速力でその場から離れた。
先程まで戦っていた場所とは大きく離れた位置で、
「はぁ、はぁ……はぁ……はぁ」
龍也は息を整えながら考えを纏めていく。
まずはフランドールの戦闘力。
パワーやスピードや技の破壊力と言った点は姉のレミリアを上回っているが戦闘技術などの点はレミリアよりも
大きく下回っていると龍也はフランドールと戦っていてそう感じた。
次に玄武の甲羅を破壊した技。
あの技はまず相手に掌を向けて数秒程した後に手を握ると言う条件があるものの、どんなものでも一撃で破壊出来ると言う極めて強力な技だ。
あれを自身の体に放たれらと考えた瞬間、龍也の背中に寒気が走った。
掌を自分に向けられたら超スピードで距離を取って身を隠すと言った位しか対処法は無さそうだ。
そして、弱点たる水。
これがフランドールに対して決定的なダメージを与えるものとなるであろう。
だが、フランドールのスピードの前では当てる事は容易ではない。
普通に水を放っても避けられるだけ。
それは先程の事で解り切っている事。
水の用いた攻撃を当てる為には何か策を講じなければならない。
龍也がそこまで考えると、
「見ー付けた」
「ッ!!」
背後からそんな声が聞こえて来た。
龍也は慌てて背後に顔を向けると、
「かくれんぼはお終いだね」
フランドールは右手に持っている悪魔の尻尾の様な物を見せ付ける様に立っており、
「それじゃ、続きを始めましょ」
それから炎を迸らせて炎の大剣を作る。
そのタイミングで龍也が後ろに跳ぶと、炎の大剣が振り下ろされた。
炎の大剣から発せられる熱気を感じながら、龍也は自身の力を白虎の力から青龍に力に変える。
瞳の色が翠から蒼に変わると、水の弾幕を幾つも生み出して放つ。
放たれた水の弾幕を目に入れながら、フランドールは目の前で炎の大剣を回転させる。
すると、
「なっ!?」
水の弾幕は全て炎の大剣に当たり、蒸発して消えてしまった。
まさかそんな方法でと思いながら龍也は驚きの表情を浮かべるが、これは考えられた事である。
火は水で消えるが水は火で蒸発するのだから。
龍也の放った水の弾幕よりもフランドールの振るう炎の大剣の方が威力が大きいから今回の様な事を可能としたのだ。
これでは数に物を言わせた弾幕では意味を為さいと龍也が思っていると、
「ッ!!」
フランドールが炎の大剣を振り被って肉迫して来るのが目に映った。
回避が間に合わないと判断した龍也は両手から水の剣を生み出し、炎の大剣を受け止める。
受け止めた事で炎の大剣が直撃と言う事態は避けられた。
耐久度の低い水の剣が崩壊しなかったのは運が良かった事であろう。
だが、
「ぐっ……!!」
水の剣が蒸発していくと言う事態は避けられなかった。
龍也の水の剣は物凄い勢いで蒸発していっていると言うのに、フランドールの炎の大剣は少しも衰える様子を見せない。
それだけ炎の剣の出力が高いと言う事だ。
龍也は水の剣が消失しない様に水の剣を再構成し続けているが、これでは水の剣が消失してしまうのも時間の問題であると判断した龍也はまず左手の水の剣を消す。
その瞬間、
「ぐうっ!!」
右手に掛かる負荷が増大した。
だが、龍也はそれを歯を喰い縛りながら何とか堪えて左手をフランドールに向ける。
「ッ!!」
何かに気付いた様にかの様にフランドールが龍也から距離を取ると、龍也の左手から水流が放たれた。
放たれた水流を、フランドールは炎の大剣の腹で受け止めて自分に命中するのを防ぐ。
水流を炎の大剣で防いだのと同時に大量の水蒸気が発生し、龍也とフランドールは互いの姿が視認出来なくなってしまう。
互いの姿が見えなくなっている間に龍也は空中へと向かった。
自身の力を青龍の力から白虎の力に変えながら。
龍也の瞳の色が蒼から翠に変わるのと同時に水蒸気を突っ切る様にして飛び出して来た。
やはりと言うべきか、水流は駄目でも水蒸気は全然平気な様だ。
龍也がそんな事を考えている間にフランドールは龍也と同じ高さを近付いて来ていた。
それ気付いた龍也は全速力でフランドールに接近する。
「ッ!!」
炎の大剣では迎撃では間に合わないと判断したフランドールは左手で龍也を突き刺そうと手刀を放つ。
「ッ!!」
それを見た龍也は反射的に体を傾ける。
そのお陰が、
「痛ッ!!」
フランドールの手刀は龍也の頬を掠るだけに終わった。
龍也は頬から血が流れるのを感じながらフランドールの左手を右手で掴み、炎の大剣の鍔にあたる部分を左手で掴む。
フランドールは掴まれている部分に力を籠めながら、
「力比べ?」
力比べかと尋ねる。
「まさか。悔しいが今の俺じゃ、純粋な力ではお前に勝てないからな」
龍也が少し悔しそうな表情でそう言った時、フランドールは気付く。
「でも、この状態なら俺の攻撃を避けられも防げもしないだろ」
龍也の瞳の色が蒼色になっている事に。
フランドールがその事に気付いた瞬間、龍也の右手から水流が放たれる。
水流が放たれると、フランドールの左手には激痛が走り、
「ううううううぅぅぅぅぅぅ!!!!」
その激痛から逃れるかの様にしてフランドールは龍也の腹部に蹴りを叩き込む。
蹴りを叩き込まれた龍也は、
「がっ!?」
血を吐き出しながらフランドールとの距離を開けてしまう。
フランドールとの距離が開いてしまったが、龍也の目的は達せられた。
何故ならば、フランドールの左手及び左手から少し先が焼け爛れた様になっているからだ。
「……これで、玄武の甲羅を破壊した技は使えなくなったな」
龍也は腹部を押さえながら、
「あの技、手を向けて対象を捕捉した後握るとその対象を問答無用で破壊出来るんだろ?」
自分の考えを言う。
「でも、まだ右手が……」
フランドールが何かを言い掛けるが、
「その炎の大剣を使わないで俺の水を防げるのか?」
龍也はそれを遮る様にして自身の周りに大量の水の弾幕を展開する。
「俺の予想通りなら破壊出来る対象は一回の動作で一つ。違うか?」
龍也の指摘に、
「……………………………………」
フランドールは何も答えない。
それを龍也は図星と判断し、水の弾幕を射出する。
「ッ!!」
迫って来る水の弾幕に気付いたフランドールは炎の大剣で迎撃していく。
水の弾幕が炎の大剣に当たる度に水蒸気が発生し、周囲が水蒸気で包まれ始める。
水蒸気で互いの姿が視認出来なくなると龍也は自身の力を変を青龍の力から白虎の力へと変え、瞳の色が蒼から翠に
変わったのと同時に水蒸気の中に居るフランドール目掛けて突っ込む。
その様に突っ込んだからか、
「……え?」
フランドールの目には水蒸気の中から龍也が行き成り現れた様に映った。
そのせいか、フランドールは思わず動きを止めてしまう。
その隙を突くかの様に龍也は左手でフランドールの炎の大剣の鍔の部分を掴み、力尽くでフランドールの体勢を背中が床に向く様に変える。
龍也に掴み掛かれているフランドールはそれから逃れ様と抵抗を始めるが、
「俺の勝ちだ」
フランドールが抵抗を始めた時には龍也の右手に風の塊が生み出されており、
「暴風玉!!」
生み出された風の塊はフランドールの腹部に叩き込まれた。
その瞬間、
「ッ!?」
風の塊は炸裂し、龍也とフランドールは床に向かって急速に落下して行く。
そして、
「かっ!!」
フランドールは背中から床に激突し、激突した衝撃でクレーターが生み出される。
それと同時に悪魔の尻尾の様な物から発生していた炎の大剣が消失した。
「倒した……のか……?」
龍也は左手を悪魔の尻尾の様な物の鍔と思わしき場所から離し、フランドールの様子を見ると、
「……気絶してるな」
気絶している事が分かった。
それが分かるのと同時に龍也は安心した表情になり、思う。
よく勝てたなと。
フランドールが加減抜き掛かって来ていたり、龍也が青龍の力を使えなかったり、フランドールの戦闘経験が豊富であったら
確実に殺されていたであろう。
色々と運の要素が絡んだ勝利ではあったが、
「俺の……勝ちだ」
龍也とフランドールとの戦いは、龍也の勝利で幕を閉じた。
「あ……」
フランドールが目を覚ますと、
「お、起きたか?」
龍也はそう声を掛ける。
声を掛けられたフランドールは周囲を見渡し、自分が机を並べられて作られた簡易的なベッドの上で寝ていた事に気付く。
戦い始めた頃の様な気配を感じなかったからか、龍也はフランドールに布団代わりに掛けていた学ランを取り、
「で、何で行き成り俺と戦ったんだ?」
学ランを着ながら自分と戦った理由を尋ねる。
すると、
「うん……」
フランドールは小さな声で色々な事を話し出す。
自分の事。
自分の力の事。
紅魔館での生活の事。
皆、自分の事を恐れれている事などなど。
要するに、誰も自分と遊んでくれずに寂しかったとの事らしい。
そんな日々を送っていたある時、フランドールは姉のレミリアから弾幕ごっこなる遊びを教えて貰った。
これなら自分も皆と遊べると思ったが、皆色々と忙しかったからか誰も遊んでくれなかった。
それで寂しい気持ちを味わい、イライラしていた時に霊夢と魔理沙が紅魔館にやって来たのだ。
霊夢と魔理沙の二人はフランドールの事を恐れなかったし弾幕ごっこで遊んでくれもしたのだが、フランドールは今一つスッキリした気分には成れずにいた。
心の中にモヤモヤしたものを抱いて日々を過ごしていたある日……つまり今日、図書館の中を歩いていると龍也を発見する。
気になったフランドールは龍也の名前を聞き、姉であるレミリアが言っていた面白い人間だと確信した。
姉の言っていた人物ならそれなりに力を出してで遊んでも大丈夫だと思い、心の中のモヤモヤを晴らすと言う意味合いを籠めて戦いを挑んだとの事。
弾幕ごっこではなく、普通の戦いであったのはそれ等が理由らしい。
フランドールが自分に戦いを挑んだ理由を聞いた龍也はあれでも全然本気で無いと言う事を知り、少し自信は喪失しそうになった。
それは兎も角として、龍也はフランドールが色々と悩んでいる事は分かった。
ここまで聞いてしまった以上、何かしらのアドバイスをした方が良いと龍也は考え、
「あんまり俺が言えた義理じゃねぇけどよ、もう一寸周りと接する様にしてみたらどうだ?」
頭を捻らせながら言葉を紡いでいく。
「え?」
フランドールは少し驚いた顔をして龍也の方を見ると、
「ま、お前の中に抱えている物は誰かと接して、話したり、笑ったり、泣いたり、怒ったりしていれば
晴れると思うぞ。例え、怖がられたとしても自分が無害だって事をアピールしながら根気よくさ」
龍也はフランドールの目を見ながらそう口にする。
同時に、龍也は自身の幼少期の頃を思い出した。
基本、家に帰れば何時も一人。
寂しい想いを抱いたりもしたが、幸いお金だけは家に置いてあったので生きる事に困る事はなく生活する事が出来た。
そのお金でゲームや漫画などの娯楽品を買ったりしていたので寂しさなどは紛れた。
まぁ、そのお陰で色々と染まったりはしたが。
当時、寂しさを紛らわせる為に誰かと接すると言う事を龍也は考えたが親が親だったし様々なニュースをテレビで見たからか
今一他人が信用出来ずに誰かと接する事はあまりしなかった。
だが、戦った時の感覚から紅魔館の住人は信じても問題無いだろうと龍也が思っていると、
「でも……」
フランドールは俯いてしまう。
そんなフランドールを見て龍也は首を傾げるが、
「……あ、そっか。お前は力のコントロールが上手く出来ないんだっけか」
フランドールは力のコントロールが不得意だと言う事を思い出す。
引き篭もっていた時間が長く、あまり周りと接して来なかったせいかフランドールは力のコントロールが苦手らしい。
龍也、霊夢、魔理沙、咲夜と言った力を持った人間が平気な位の力のコントロールは出来るが、普通の人間が平気な位のコントロールは無理との事。
紅魔館で言えば妖精メイドがフランドールの相手をしたら大変な事になってしまうであろう。
なのでそれを避ける為に、
「ならさ、最初は俺とかレミリアとか咲夜とか美鈴とか魔理沙とか霊夢辺りで慣れていけば良いんじゃないか?」
龍也はフランドールの力で接しても問題無さそうな者の名を上げる。
「え?」
「力加減なんて一寸ずつ慣れていけば良いさ」
「でも……」
「恥ずかしいのか? ならさ、レミリアとだけでももっと接していけばいいんじゃないか? 聞いたところ、殆どレミリアの方から会いに行ってるんだろ。偶にはお前の方から会いに行ってみろ。
同じ所に住んでいて姉妹なんだから遠慮するなよ」
今一つ決心が付いていないフランドールに龍也はそう言うが、
「……………………………………」
フランドールは何かを想う様に顔を俯ける。
そんなフランドールに、
「待ってるだけじゃ何も変らないぜ。一寸だけ、勇気出して頑張ってみろ」
龍也がそんな言葉を掛けると、
「……うん!! 頑張ってみる!!」
フランドールは顔を上げ、何か吹っ切れた様な表情になった。
若しかしたら、フランドールに必要だったのは背中を押してやる事だったのかもしれない。
そんな事を考えつつ、
「あ、後は我慢することも覚える事」
フランドールは若干癇癪持ちなのを思い出し、龍也はその事も注意する様に言う。
「うん!!」
フランドールが元気良く笑顔を見せると、龍也も釣られる様にして笑顔になる。
そして、二人で笑顔を見せ合っていると、
「綺麗に纏まったところ、悪いんだけど……」
不意に二人の背後から誰かの声が聞こえて来た。
妙に怒気を感じさせる声であったからか、龍也とフランドールはゆっくりと後ろへ振り返ると、
「あ……」
非常に怒っているパチュリーの姿が二人の目に映る。
「あ、あのパチュリー……」
龍也が何で怒っているのか問おうとすると、
「どうして私の図書館がこんなに滅茶苦茶になってるのかしら?」
その前にパチュリーが口を開く。
パチュリーの発言を聞いた龍也は周囲を見渡すと、
「わあお……」
破壊された本棚に倒れた本棚、散らばった本などが無数に見て取れた。
おまけに龍也とフランドールが居る場所の直ぐ近くにクレーターもある。
これらの被害はこの図書館にとっては、ほんの極一部であろう。
だが、パチュリーとっては許せるものではなかった様だ。
パチュリーの怒りを感じた龍也は、自分よりパチュリーとの付き合いがあるフランドールに助けを求め様とするが、
「おい……」
フランドールは龍也の背中に隠れていた。
そんな時、
「ッ!?」
パチュリーから感じられる威圧感が強くなる。
龍也は恐る恐るパチュリーの方に顔を向けると、パチュリーが体中から魔力を溢れ出させている様子が目に映った。
これはマズイと龍也は思い一歩後ろに下がると
「……ん?」
フランドールが自分の陰に隠れながら逃げ様としている事に龍也は気付く。
フランドールの逃亡を阻止する為に龍也はフランドールの翼を掴む。
「あう……」
翼を掴まれ、フランドールが後ろに倒れそうになるのを堪えていると、
「何、一人だけ逃げ様としてんだよ」
龍也が文句を言う。
「私、左手が痛いからこれ以上は……」
「俺なんて全身が痛えよ」
そんな風に龍也とフランドールが軽い口喧嘩していると、パチュリーが詠唱を唱え始める。
パチュリーの詠唱に気付いた龍也とフランドールはビクっとなると、龍也とフランドールの二人は光に包まれた。
そして、光が晴れると
「「あ……」」
龍也とフランドールの傷が癒えていた。
その事に二人が驚いていると、
「見ての通り私はその程度の傷なら癒せるし、体力も回復させる事が出来る」
パチュリーは今やって見せた事を説明する。
そして、
「貴方達が破壊した物を全て直すまで、寝かせないから」
パチュリーは二人を絶望に叩き込む様な事を口にした。
前話へ 戻る 次話へ