「いつつつ……」

龍也は目を覚ますのと同時に激しい頭痛に襲われた。
頭痛に耐えながら何でこんなに頭が痛いのだろうと考え始めたところで、

「……あ」

龍也は昨日の宴会を思い出す。
そして、昨日大量に酒を飲んだ事が原因ではないかと言う考えに達した。
一人で後片付けをした後にも大量の酒を飲んだなと昨日と言うより今日の夜の事も思い返しながら、

「これが二日酔いってやつか……」

二日酔いである事を実感する。
同時に体調が少々悪い事も実感した。
だからと言って何時までもこの部屋の中に居る訳にもいかなかったので、龍也は痛む頭を押さえながら部屋へと外に出る。
因みに龍也が寝ていた部屋は以前博麗神社に泊まった時に使わせて貰った部屋だ。

「あー……頭がガンガンするな……」

歩く度に痛む頭に苛立ちつつも、龍也は他の皆はどうしてるかと思って皆を纏めた部屋へと向かう。
そして皆を纏めた部屋の襖を開くと、

「うわぁ……」

死屍累々の光景が目に映った。
頭を押さえている者、気分を悪くしている者、まだ寝ている者と目に映る者達の様子は様々だ。
唯一つ共通している事と言えば全員の顔色が悪い事だけであろうか。
取り敢えず一番元気そうな霊夢に、

「おはよう」

龍也は挨拶の言葉を掛けた。
それに反応した霊夢は龍也の方に顔を向け、

「おはよう」

頭を押さえながら挨拶を返す。
思っていた以上に顔色が悪かったからか、

「大丈夫か?」

龍也は霊夢にそう声を掛ける。

「多分……それにしても、可笑しいわね、何時もならこれ位で二日酔いになったりはしない筈何だけど……」

霊夢は大丈夫だと返し、何時もならこれ位の量で酔ったりはしない筈であると下唇に指を当てながら疑問気な表情を浮かべた。
そんな表情を浮かべた霊夢を見ながら、

「飲んだ量、覚えてるか?」

龍也は酒を飲んだ量を覚えているかと尋ねる。

「……覚えてないわ」

霊夢の表情から察するに、飲み比べをしていた付近から記憶が曖昧になっている様だ。
その後、霊夢は再び頭を押さえながら、

「悪いんだけど、水を持って来てくれない?」

龍也に水を持って来てと頼む。
それを聞いて龍也は二日酔いには水が良いと言う事を思い出し、

「ああ、いいぞ」

水を持って来る事を了承する。
龍也が簡単にこの頼みを了承した理由の一つとして、この面々の中で自分が一番元気であると感じたからだ。

「ありがと」

霊夢が礼の言葉を口にすると、

「水は何所にあるんだ?」

龍也は水が何所にあるのかと尋ねる。

「神社の裏の方に井戸があるからそこから汲んで来て。井戸の近くに桶があるからそれで汲んでね」
「了解」

水のある場所と水を汲む方法を聞いた龍也は了解の返事を返して神社の外に出て地に足を着けると、

「おっと……」

少しふら付いてしまう。
自分の体感以上に体調が悪いのかと龍也が思っていると、

「大丈夫?」

霊夢が大丈夫かと聞いて来た。

「大丈夫だ」

龍也は少し気を入れないと転ぶなと思いながら大丈夫と返し、神社の裏まで歩いて行く。
すると、

「お。見っけ」

直ぐに井戸と桶を発見した。
中々大きな桶だなと思いながら龍也は桶を手に持ち、井戸の滑車を使って水を汲んでいく。
水を汲み終えると龍也は先程の部屋まで戻り、

「戻ったぞー」

そう声を掛ける。
が、

「……あれ?」

霊夢の姿が見えなかった。
何所に行ったんだろうと思った龍也が周囲を見渡すと、

「あ、お帰り」

霊夢が大量の湯飲みをお盆に乗せ、廊下の方から歩いて来る様子が目に映る。
その様子を見て、龍也は水を飲む為の湯飲みを持って来たんだなと思いながら水が入った桶を床に置く。
それを見た霊夢もお盆を床に置くと、グロッキーだった連中の一部がフラフラとした足取りで湯飲みを手に取る。
そして、桶に入っている水を汲んで水を飲んでいく。

「あんたも飲んだら?」

霊夢も水を飲みながら龍也に水を飲む様に促すと、

「そうする」

龍也は湯飲みを手に取り、水を汲んで水を飲み始める。
水を全部飲むと、近くで魔理沙が水を飲んでいる事に龍也は気付く。
なので、魔理沙が全部の水を飲み干したタイミングで、

「大丈夫か、魔理沙?」

龍也は大丈夫かと問う。
すると、

「おー……」

魔理沙からそんな返事が返って来るが、その声からは何時もの元気が感じられない。
魔理沙も相当参っているなと龍也が思っていると、

「二日酔いに続いて快晴とか……」

レミリアが愚痴っているのが聞こえて来た。
その声に反応した龍也はレミリアの方に顔を向け、

「ああ……吸血鬼って日光苦手だったっけか」

吸血鬼は日光が弱点である事を口にする。

「ええ、日光何て吸血鬼にとっては天敵よ」

レミリアは日光は弱点である事である事を肯定し、

「おまけに二日酔いのこの状態。この状態で紅魔館まで飛んで行ったら紅魔館に着く前に灰になる可能性が高いわ」

今の状態で紅魔館に行ったら灰になってしまうと言う。
どうしたものかと考え始めたところでレミリアは何かを思い出した表情になり、

「あ、そうだ龍也」

龍也の方に顔を向ける。

「ん? どうした?」
「私の傘知らない?」

レミリアに傘を知らないかと尋ねられた龍也は、

「ええっと……傘って昨日来た時に持ってたやつか?」

レミリアとフランドールの二人が博麗神社に来る時に差していた日傘の事を思い出しながら問うと、

「ええ、その傘よ」

肯定の返事が返って来た。
因みに、日光が弱点と言っても傘などを差せば大丈夫な様だ。
それは兎も角、龍也は少し記憶を遡って思い出そうとしたがレミリアの傘に関する事は思い出せなかった。

「いや、俺は知らないな」
「そう……」

龍也に知らないと言われたからか、レミリアも記憶を遡って思い出そうとしたが、

「……………………………………」

表情から察するに、思い出せなかった様だ。
まぁ、あれだけ酒が入っていたのだから思い出せないのも当然と言えば当然である。
レミリアはどうしたものかと考えながら、

「咲夜」

咲夜を呼ぶ。

「……ここに」

レミリアの声から少し遅れて咲夜が悪い様だ。
顔色が悪い事から咲夜の体調も優れない様だと龍也が思っていると、

「私の傘知らない?」

レミリアは咲夜に自分の傘を知らないかと尋ねる。

「申し訳ありません。存じておりません」

咲夜は申し訳なさそうな表情で頭を下げるが、

「そう……」

レミリアの表情にはあまり落胆の色は見られなかった。
若しかしたら、この死屍累々惨状を見て今の返答を予測していたのかもしれない。

「紅魔館に行って取りに……無理そうね。途中で倒れそうだわ」

咲夜に紅魔館まで傘を取りに行かせようしたが、咲夜の状態を見てそれは無理だとレミリアは判断し、

「あ、横になってていいわよ」

咲夜に横になる様に言う。

「申し訳ありません」

謝罪の言葉を述べ、咲夜は横になった。
普段の咲夜なら大丈夫ですと言いそうだが、素直に横になる辺りかなり体調が悪い様だ。

「龍也は……」

そう言いながらレミリアは龍也の方を見て、

「咲夜はよりは大丈夫そうだけど、傘のある場所何て分からないだろうし無理ね」

龍也に持って来る様に頼んでも無理だと判断する。
他に誰か持って来られそう存在が居ないかとレミリアは周囲を見渡す。
最初に霊夢と魔理沙の二人がレミリアの目に映るが、

「……無理そうね。と言うか、あの二人も傘の在る場所なんて知らないだろうし」

霊夢と魔理沙の顔色を見た事と、傘を置いてある場所を知らないだろうと言う事から無理と言う判断を下した。
他に誰か居ないかと再びレミリアが周囲を見渡すと美鈴の姿を見付けるが、

「……無理ね」

幸せそうな表情をしながら爆睡していたのでこれまた無理と言う判断を下す。
とてもじゃないが起きそうに無いからだ。
そして、

「パチェは……」

続ける様に美鈴の近くに居たパチュリーに視線を移すが、

「ダメね。行かせたら死にそうね」

かなり具合の悪そうなパチュリーの様子を見てそう言う。
小悪魔は小悪魔でそんなパチュリーを必死に介抱している。
妖精メイドに持って来させるのも無理だ。
自分の傘を持って来させるのは無理だと言う結論をレミリアが出したところで、

「頭痛いー……」

フランドールが龍也の近くにやって来て倒れ込んだ。
フランドールも他の面々と同じ様に顔色が悪い。
このままでは可哀想だと思ったからか、龍也はフランドールの頭を撫でる。
すると、若干フランドールの表情が安らいだ。
それから暫らくすると、

「龍也、今の貴方の体調はどう?」

レミリアは今の龍也の体調を尋ねる。

「俺の症状は頭痛と吐き気、後、ちゃんと気を入れてないと歩く時にふら付く位だな。他の皆に比べたら結構楽だな。レミリアは?」
「私も似た様なものね」

レミリアが頭を押さえながら龍也と似た様なものだと言うと、

「んー……龍也」

魔理沙が声を掛けて来た。
どうかしたのかと思った龍也が魔理沙の方に顔を向けると、

「何か食べる物ないか?」

何か食べ物はないかと尋ねて来た。

「確か、何所かに宴会の時の残りが幾らかあると思うが……食べれるのか?」
「多分。何か食べないと余計気分が悪くなりそうでな」
「分かった」

龍也はそう言ってフランドールの頭を撫でるのを止め、宴会の余りを探しに向かう。
頭を撫でられる事を止められたフランドールは不満気な表情を浮かべたが、何か文句を言う事は無かった。
何故ならば、頭が痛くて文句を言える様な状態ではなかったからだ。
龍也が食べ物を探し始めてから少しすると、

「有ったのはおにぎりと団子とサラダだけだぞ」

龍也は食べ物をお盆の上に乗せて戻って来た。

「さんきゅー……」

魔理沙が礼を言いながら龍也が持って来た食べ物を取ると、他の皆もノロノロと龍也に近付いて食べ物を取り始める。
龍也は群がって来る皆の様子をボケーッと見ていると、

「……ん?」

人形が食べ物を持って行く様子が目に映った。
その人形が移動した先を目で追って行くと、横になったアリスの姿が見える。
分かり切っていた事ではあるが、人形を操っていたのはアリスであった様だ。
人形を使って食べ物を持って行く辺り、アリスは動くのも億劫な様である。
アリスは大丈夫かなと思いながら龍也はもう一杯水を飲もうと桶に顔を向けると、

「殆ど無いな……」

水が殆ど無くなっている事に気付く。

「あ、水が無くなって来たから汲んで来るな」

龍也はそう断りを入れ、再び水を汲みに井戸へと向かう。
そして水を汲み終わった後、

「そーいや、ここに食料ってあるか?」

龍也は霊夢に食料はあるのかと尋ねる。
この事を尋ねた理由は、龍也が先程持って来た宴会の残りが無くなったからだ。

「あるけどにあるけど……今の私じゃ作れそうにないわよ」

霊夢は食料はあるにはあるが、作る事は出来ないと言う。
確かに、体調が悪い今の状態で料理を作る気にはなれないだろう。
龍也はその事に納得しつつ、

「他は……」

他に料理が作れそうなのは居ないかと周囲を見渡すが、

「作れそうなのは全滅してるな」

作れそうな面々は全滅していた。

「そうね」

霊夢は龍也の発言に同意しながら溜息を一つ吐き、

「龍也は?」

龍也は作れるのかと尋ねる。

「俺? 料理は……作れない事は無いとは思うけど……味の保障は出来ないぞ」

そう言い、斬って焼くだけで何か出来る料理はなかったかと龍也が考えていると、

「そう」

霊夢はまた溜息を一つ吐いた。
どうやら、龍也に料理は無理だと判断した様だ。
誰も料理を作れないと分かったからか、龍也の腹が一段と強い空腹を訴えて来た。
だからか、

「人里で何か買って来ようか?」

龍也は人里で何か買って来ようかと言う提案を行う。

「それはありがたいけど、良いの?」

その提案を聞いた霊夢は少し心配そうな表情を龍也に向ける。
霊夢も龍也の体調の悪さを知っているからだ。

「今一番動けるのは俺だろ」

龍也に最もな事を言われたからか、

「そう……ね……」

霊夢は納得した表情になり、

「お願いしても良いかしら?」

龍也に食べ物を買って来る様に頼む。

「ああ、分かった」

了承の返事を返し、龍也は外に出る。
そして跳躍を行って見えない足場を作り、それに足を着けるが、

「お……っと」

足元がふら付き、足場から落ちそうになってしまう。
だが、直ぐに体勢を強引に戻して踏み止まり、

「ふぅ……」

一息吐く。
同時に、龍也は自分の体調が思っていた以上に悪い事を自覚した。

「これは……確り気合を入れて行かないと途中で落ちそうだな。後、体調の悪さを考えたら何時もの数倍位のスピードで行った方が良いな。
でなきゃ、どれだけ時間が掛かるか分かったものじゃない……」

龍也はそんな事を呟きながら人里へ向かって行った。





















人里の近くまで来た龍也は見えない足場を消し、地に足を着ける。
同時に、

「う……っぷ」

吐きそうになった。
どうやら、動いている間に体調が更に悪化してしまった様だ。
おまけに眩暈も起き始めた。
龍也としては横になって休みたかったが、それをしてしまったら何時博麗神社に戻れるか分かったものではない。
なので龍也は何とか体調の悪さを何とか堪えながら人里の中へと入って行く。

「いつつつつ……何買うかな?」

龍也は痛む頭を押さ、何を買うか考える。
全員の体調が体調の為、軽く食べれる物が良いと判断し、

「……おにぎりと……サンドイッチでいいか」

買う物をおにぎりとサンドイッチの二つに決めた。
その瞬間、頭の痛みが若干和らいだ様な感じを龍也は受ける。
若しかしたら、考え事を止めたからかもしれない。
本当かどうかは分からないが、これ以上頭を使わない事を龍也は決めて近くに見えたカフェへと向かう。
体調が悪いせいかフラフラとした足取りではあるが。
カフェに着き、店員が近くにやって来ると、

「すみません、サンドイッチを……三十セットください。お持ち帰りで」

龍也は注文を口にする。

「畏まりましたー」

店員が注文された物を持って来る為に店の奥に引っ込むと、龍也は近くにある椅子に腰を落ち着かせた。
体力を少しでも回復させる為だ。
椅子に座ってから暫らくすると、

「お待たせしましたー」

店員がサンドイッチが入った袋を持って戻って来た。
龍也は代金を払ってカフェを後にする。
先程と同じでフラフラとした足取りではあるが。
それから少しすると、

「お……」

茶屋を発見した。
昨日もここでおにぎりを買った事を思い出しながら龍也は茶屋の中に入り、

「すみません、おにぎり三十個ください。具はおかかで。後、お持ち帰りで」

おにぎりを注文する。

「畏まりましたー」

店員が店の奥に引っ込むと、龍也は壁に背中を預けながらおにぎりが来るの待つ。
それから少しすると、

「お待たせしました」

店員がおにぎりを入れた袋を持って戻って来た。
龍也はこの事に一寸した既視感を感じながらも代金を払い、フラフラとした足取りで茶屋を出る。

「あー……さっさと戻った方が良さそうだな……」

龍也は自身の体調の悪さを改めて実感し、早く戻る為に跳躍し様としたところで、

「龍也さん」

声を掛けられた。
龍也はその声に反応して跳躍を止め、声が聞こえて来た方に顔を向けると、

「阿求……」

阿求の姿が目に映った。

「はい。それより、どうしたんですか? 顔色がかなり悪い様ですが……」

阿求が龍也を心配する様な言葉を掛けると、

「ああ、実はな……」

龍也は顔色が悪い理由を話す。

「それで顔色が悪いんですか……」

話を聞いた後、阿求は龍也に呆れた視線を向ける。
阿求の目から二日酔いになるまで飲むなと言っているのを感じたから、龍也は苦笑いを浮かべてしまう。
すると、

「それより、龍也さんは大丈夫なんですか?」

阿求が龍也の体調を気遣う言葉を口にする。

「多分……」

龍也はそう返すが、声に元気が見られない。
だからか、

「お薬、お渡ししましょうか?」

阿求は龍也に薬が必要かと問う。

「あるの? 薬?」
「はい、私の屋敷に行けば」
「じゃ、頼めるかな」
「分かりました。それでは、付いて来てください」

そう言って歩き出した阿求の後に様にして龍也も足を進め行く。
それから少しすると稗田家の屋敷に着いた。
相変わらず大きい屋敷だなと龍也は思っていると、

「中に入って、お休みになられますか?」

阿求がそんな提案をして来た。
体調の悪い龍也を気遣っての事であろう。
その提案に龍也は乗りそうになるも、

「……いや、大丈夫だ」

早く博麗神社に食べ物を持って行かねばと言う事を思い出し、その提案を断った。

「分かりました。直ぐに取って来ますね」

そう言い、阿求は屋敷の中へと入って行く。
薬を取って来ると言っていた事から時間が掛かると思われたが、

「こちらになります」

予想に反して阿求は早く戻って来た。
そして、

「中身は二日酔いの薬です。人間用ですけど、人間以外にもそれなりの効果がありますよ」

阿求は薬の入った袋を龍也に渡し、薬の説明を行う。
その説明を聞いた龍也は、

「やっぱ、こう言う屋敷には専属の医師とかが居るのか?」

ふと頭に思い浮かんだ事を尋ねる。

「いえ、厳密に言えば本格的な医師などはいません」

そう言った後、阿求は人里に医師などは居なく書物に書かれたものを読みながら治療をしたり薬を作ったりしているのだと続けた。
その話を聞いた龍也は納得した表情になる。
流石に現代医学などが幻想入りする訳が無いと思ったからだ。
ならば、昔の人間が残した書物から医学などの知識を得るしかないであろう。
若しかしたら医学の知識を持つ者はいるが身を隠しているのではと言う事を龍也は考えたが、直ぐに考えても仕方が無いと思い、

「じゃ、ありがとな」

阿求に礼を言って博麗神社に戻る事にする。

「いえ、お大事に」

阿求の言葉を受けた後、龍也は跳躍を行う。
そして見えない足場を作ってそこに足を着け、博麗神社目掛けて駆けて行った。





















「ただいま……」
「お帰り……顔色悪いみたいだけど大丈夫?」

帰って来た龍也を霊夢は出迎え、龍也の顔色を見てそう声を掛ける。

「動いたら……体調が……悪化しただけだ……」

龍也は苦しそうな表情で自身の体調が悪い事を口にして持って来た荷物を降ろし、

「そっちがおにぎりで……そっちがサンドイッチ。そしてこれが薬だ。食べ終わったら飲んでくれ」

持って来た荷物の説明を行う。

「分かったわ」

霊夢が了承の返事をしたのと同時に、他の面々が食べ物が入った袋を漁り始めた。
皆のそんな様子を見ながら、

「あんたは食べないの?」

霊夢は龍也に食事を取らないのかと尋ねる。

「今食べたら戻しそうだからパス。それより水をくれ」

龍也は今食べたら戻しそうだから要らないと言い、代わりに水が欲しいと口にすると、

「はい」

霊夢は水が入った湯飲みを龍也に渡す。

「あんがと……」

龍也は礼を言いながら湯飲みを受け取り、水を飲む。
そして水を全て飲み干すと、

「そういや聞いてなかったんだが、宴会の後って何時もこうなのか?」

龍也は思い出したかの様に宴会の後は何時もこんな感じなのかと問う。

「そんな事は無いわよ。何時もならこうなる前にお酒が切れるはずだし」

霊夢は何時もはこんな風になる前に酒が切れると言い、

「唯……」

何かを思案する表情になる。

「唯……何だ?」

龍也が続きを言う様に促すと、

「何かお酒が……増えていた様な気がするのよね……」

霊夢は酒が増えていた様な気がしたと言う。

「酒が?」
「うん」
「宴会の最中に?」
「うん」
「まさか。唯、今回の酒がかなり強かっただけじゃないか?」
「そうかな……」

龍也の説明に霊夢が納得し掛けたところで、

「そうだぜ」

魔理沙も会話に入って来た。

「酒が増えるなんてそんな幸せな事、起こる訳ないだろ」

魔理沙が尤もらしい事を言ったからか、霊夢は納得した表情になる。
直ぐに納得したのは頭が痛いのでこれ以上考えたく無いと言う想いがあったからであろうが。

「て言うか、こんな状態になっても酒は好きか」

龍也がそんな事を呟くと、

「とーぜんだぜ」

魔理沙はおにぎりを食べながら当然と返す。
そんな魔理沙の返答に龍也は若干呆れるも、きっと自分も普通に酒は飲むだろうなと思った。
結局、龍也を含めてここに居る全員酒が好きなのだ。
そんな事を龍也が実感していると、

「う……っぷ……」

吐き気を感じ、口元を押さえる。

「おいおい、大丈夫か?」

龍也を心配する様な声を魔理沙が掛けると、

「喋ってれば気が紛れて少しは良くなると思ったけど……んな事は無かった」

龍也は苦しそうにそう返し、

「横になりたいんだけど、今布団とか空いてるか?」

布団が空いているかどうかを問う。

「ああ、空いてるぜ」

魔理沙が布団は空いていると言う事を口にすると、

「じゃ、休ませて貰うぜ」

布団が引かれている場所へとフラフラとした足取りで向かった。
そして布団を被り、目を瞑る。





















「んあ……」

龍也は目を開き、天井をボケーッと見ていると、

「お、起きたか」

魔理沙からそう声を掛けられた。

「魔理沙……」

声の主である魔理沙の姿を確認した後、龍也は上半身を起こす。

「体調はどうだ?」
「んー……大分回復したな……」

上半身を少し動かした後、魔理沙の問いに龍也はそう返す。
その後、軽く首を回していると、

「しっかし、結構寝てたな。もう夜だぜ」

魔理沙がもう夜になっていると口にする。

「そんなに寝てたのか……」

それを聞いた龍也は少し驚いた表情をしながら周囲を見渡すと、

「お、綺麗になってるな」

部屋の中が綺麗に片付いている事が分かった。
龍也が寝ている間に誰かが片付けてくれたのだろう。
龍也はそう考えながらもう一度周囲を見渡し、

「もう皆、帰ったのか?」

部屋の中に自分と魔理沙しか居なかったので他の皆はもう帰ったのかと尋ねる。

「紅魔館の連中と妖精達とルーミアはもう帰ったぜ。今ここに居るのは私等の他に霊夢とアリスだな」

魔理沙が現在博麗神社に居る面々を龍也に教えると、

「あら、起きたの?」

アリスが部屋の中に入って来た。
話していたら何とやらだなと龍也は思いながら、

「ああ」

アリスに返事を返す。
同時にアリスの体調が結構悪かったのを思い出し、

「もう大丈夫なのか?」

体調はもう平気なのかと尋ねる。

「ええ、お陰様でね」

アリスは笑顔でそう返す。
アリスの表情から察するに、もう大丈夫そうだ。

「龍也は?」

アリスも龍也の体調を尋ねて来たので、

「俺も平気だ」

龍也は自分も平気だと返す。
そして立ち上がってアリスの方に近付くと、

「……ん?」

アリスの髪が濡れている事に気付く。
その事から、

「風呂に入ってたのか?」

龍也は風呂に入っていたのではと言う推察を口にする。

「ええ。汗も掻いたしね」

アリスが風呂に入った事を肯定すると、

「私と霊夢ももう入ったぜ」

魔理沙が自分と霊夢も既に風呂に入ったと言う。
すると、

「今、霊夢がお粥作ってるからそれ食べたら龍也も入ったら?」

アリスが龍也に風呂に入って来る様に勧める。
そう言われて寝汗を掻いている事を感じた龍也は、

「そうする」
風呂に入る事を決め、お粥が出来るまで三人で雑談をする。
それから少しすると、

「お粥、持って来たわよ」

霊夢が四人分のお粥を持って部屋の中に入って来た。
同時に、

「あ、起きたの。丁度よかったわ」

霊夢は龍也が目を覚ました事を認識し、卓袱台の上に作って来たお粥を置く。
良い匂いだなと龍也が思っていると、

「食べれる?」

霊夢が食べるかどうかを尋ねる。

「ああ、食えそうだ」
「そう。無駄にならなくて良かったわ」

そんな霊夢の言葉を合図にしたかの様に、一同は雑談を交えながらお粥を食べていく。
食べ易いお粥であるから、箸の進みが早い。
まぁ、使っているのは箸ではなく散蓮華であるが。
そんな風に食事を続けていくと、

「ご馳走様」

お粥を食べ終わる。
そして、

「美味かったよ」

龍也はお粥の感想を口にした。

「お粗末様」

霊夢が素っ気無い表情でそう返すと、

「あ、そうだ。薬ってまだ残ってるか?」

龍也は薬がまだ残っているか尋ねる。
体調が良くなったとは言っても、薬は飲んだ方が良いと思ったからだ。

「ええ、あるわよ」

そう言って、アリスは龍也に薬と水が入った湯飲みを手渡す。

「あんがと」

龍也が礼を言いながら薬を飲むと、

「あ、そうだ。お風呂入れる?」

霊夢が風呂に入れそうかと尋ねる。

「ああ、入れそうだ」
「なら、入っちゃって。あんたで最後だから」
「分かった」

そんな会話を霊夢と交わした後、龍也は風呂場に向かう。
そして脱衣所に入ると服を脱ぎ、体を洗ってから湯船に浸かる。
その瞬間、

「はぁー……」

龍也は体に残ってた疲れが全て抜けて行く様な感じを受けた。
だからか、

「あー……やっぱ風呂は良いな……」

自然とそんな言葉が口から漏れる。
暫らくすると、

「……っと」

龍也は頭がボーッとし始めた事に気付く。
のぼせて来たと判断した龍也は風呂から上がり、着替えて神社の中を歩き回る。
霊夢、魔理沙、アリスの三人を探す為だ。
取り敢えず先程の部屋の中を探そうと思い縁側の方に出ると、

「あ、見っけ」

霊夢、魔理沙、アリスの三人の姿を見付ける。
どうやら、三人は縁側で涼んでいる様だ。
龍也はそんな三人に近付きながら、

「上がったぞ」

風呂から上がった事を伝える。
そして一番近くに霊夢の隣に腰を落ち着かせると、

「はい」

霊夢は龍也にお茶が入った湯飲みを差し出す。

「あんがと」

龍也が礼の言葉を発し、お茶を飲み始めたところで風が吹いて来た。
その風を感じながら、

「んー……涼しいな。冬はまだまだ先に感じるな」

龍也はそんな感想を漏らす。
すると、

「そう? 私は少し肌寒いと思うけど……」

アリスがそう返す。

「別に寒いとは思わないけど……」

霊夢が龍也に同意する事を口にすると、

「貴女は何時もそんな腋が露出した格好をしてるから平気なんでしょ」

アリスは霊夢が寒く無いと感じている理由を言う。
それに返すかの様に、

「アリスは何時も家に篭ってばかりいるから寒いと感じるんじゃないのか?」

魔理沙がそう言うと、

「そう言うあんたは野生過ぎるのよ」

アリスは魔理沙が野生過ぎるのだと返す。

「何ー」
「何よ」

基本時にロードワークを中心とした魔理沙に対し、アリスは自宅に篭っての研究を中心としている。
そう言った意味ではこの二人の相性が悪いのかもしれないと睨み合いをしている魔理沙とアリスを見て龍也は思った。
それは兎も角、何だか喧嘩をしそうな雰囲気だったので、

「まぁまぁ……」

龍也は仲裁に入る。
因みに、霊夢は我関せずと言わんばかりにお茶を飲んでいた。
龍也が仲裁に入ったお陰で魔理沙とアリスの雰囲気が戻った後、四人で眠くなるまで雑談をして夜を過ごす。















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