「ん……」
龍也は目を開き、目に映った天井をボーッと見詰める。
それから暫らくすると、
「ああ……」
昨日の事と自分がここで寝ていた理由を思い出す。
それと同時に龍也は上半身を起こし、体を少し動かして、
「……治ったみたいだな」
完全に治った事を確信した。
何故ならば、頭痛も気だるさも感じられなかったからだ。
その後、龍也は立ち上がって近くに置いておいた学ランを来て部屋を出る。
部屋を出た後、そのまま博麗神社の中を歩いていると、
「ん……」
居間へと続くと襖が開いている事に気付く。
誰か居間に居るのかなと思った龍也はそこまで足を進めて行く。
そして居間の中が見える位置まで来ると、卓袱台の前に座ってボーッとしている霊夢の姿が見えた。
居るのは霊夢だけかなと思いながら龍也は居間へと入り、
「おはよう」
龍也は朝の挨拶を言葉を掛ける。
その挨拶で龍也の存在に気付いた霊夢は龍也の方に顔を向け、
「おはよう」
挨拶を返す。
互いに朝の挨拶を交わした後、龍也は卓袱台の前に腰を落ち着かせると、
「顔色良くなってるわね。もう治ったの?」
霊夢がもう治ったのかと尋ねて来た。
「ああ、完全に治ったみたいだ。霊夢は?」
龍也はもう治ったと言い、霊夢の容態を問う。
すると、
「私ももう治ったわ」
霊夢はもう治ったと返す。
自分も霊夢も治っているのなら魔理沙とアリスも治っているだろうと言う事を龍也が考えていると、
「……ん?」
台所の方から物音が聞こえて来た。
台所から物音が聞こえて来ると言う事は、誰かが料理を作っていると言う事だろう。
そう判断したからか、
「誰が料理を作ってるんだ」
龍也は霊夢に誰が料理を作っているんだと尋ねる。
「アリスが作ってるわ」
「アリスが?」
「ええ、只で泊めて貰うのは悪いからって」
そう言った後、霊夢は私は楽が出来て良いけどねと続けた。
「へー……」
アリスが作ると言う事は洋食がメインだろうかと龍也が思っていると、
「もう少ししたら出来ると思うから、このまま待っていたら?」
霊夢はこのまま待っている様に促す。
「そうだな……そうする」
龍也は霊夢の提案を受け入れ、料理が出来るまで霊夢と雑談をして過ごす事にする。
雑談を始めてから暫らく時間が経つと、
「お待たせ」
アリスが台所から出て来た。
どうやら料理が出来た様だ。
しかし、アリスの手には何も無い。
龍也はその事に疑問を覚えたが、直ぐにその疑問は氷解する事になる。
何故ならば、アリスの後ろからアリスの人形を出来た料理を持ちながら出て来たからだ。
便利だなと龍也が思っていると、
「あ……」
アリスは龍也の存在に気付き、
「おはよう」
朝の挨拶を行う。
「おはよう」
龍也が挨拶を返すと、アリスの人形が卓袱台の上に料理を並べていく。
並べられた料理を見ながら、
「やっぱり洋食か」
龍也は自分の予想が当たったと思いながらそう口にした。
「ええ、私は洋食の方が得意だしね」
アリスが洋食の方が得意だと言うと、
「てゆーか、結構食材使ったでしょ」
霊夢がそんな文句を口にする。
並べられた料理を見て、どれだけの食材が使われたのかを大体察した様だ。
「四人分だもの。それなりに使うわよ」
四人分だからそれなりの量を使ったと言う事をアリスが言うと、
「後、どの位残ってるの?」
霊夢は残りの食材がどれだけかと問う。
「貴女一人ならそうね、大体……二、三日は持つわね」
「もうそれしかないの?」
残りの食材の量を聞き、霊夢が少し驚いた表情になると、
「一昨日の宴会でも結構使ったんでしょ?」
アリスは一昨日の宴会の件を口にした。
「まぁ……ね」
一昨日の宴会の事を思い出したからか、霊夢は溜息を一つ吐く。
その溜息から、もっと残っていると思っていたのにと言う想いが感じられた。
だが、
「ま、それはそれとして、食べましょ」
霊夢は直ぐに持ち直して並べられた料理を食べ様とする。
それを見ながら、
「あれ、魔理沙は?」
龍也は魔理沙の事を思い出して周囲を見渡す。
そんな龍也を見て、
「魔理沙ならそろそろ……」
霊夢がそう呟くと、
「おはよーだぜ」
魔理沙が目を擦りながら居間の中に入って来た。
魔理沙は眠たそうな顔をしていたが、料理の匂いを嗅ぐと少しずつ表情を覚醒させていき、
「お、美味しそうじゃないか」
そう言いながら卓袱台の前に座る。
「現金ねぇ……」
料理の匂いを嗅いで頭を覚醒させた魔理沙を見て、アリスは何所か呆れた様な表情になった。
因みに龍也と霊夢、アリスと魔理沙がそれぞれ対面になる様に座っている。
呆れた表情になっているアリスは余所に霊夢と魔理沙が食事を取り始めていたので、
「私達も食べましょうか」
「そうだな」
アリスと龍也も食事を取る事にした。
「ごちそうさん、美味かったよ」
「お粗末様」
龍也の感想を聞いたアリスはそう返し、
「で、あんた達は何か無いわけ?」
霊夢と魔理沙の方に顔を向ける。
すると、
「楽が出来て良かったわ」
「ああ、美味しかったぜ」
霊夢と魔理沙がそんな感想を口にした。
明らかに無理矢理言わされた感がある霊夢と魔理沙を見たアリスは、
「まったく……」
呆れた表情をしながら食器を纏め、それ等を台所へと持って行く。
その様子を見ながら、
「水に浸けとくだけで良いわよ。後で私がやって置くから」
霊夢は水に浸けて置くだけで良いと言う。
「分かったわ」
アリスは了承の返事を返し、台所へと向かう。
それから少しすると、アリスが居間へと戻って来た。
アリスが戻って来ると、四人は雑談をしながら時間を潰していく。
「それじゃ、そろそろ行くかな」
雑談している最中に結構時間が過ぎている事に気付いた龍也がそう切り出すと、
「そうね……結構長居しちゃったみたいだし、私もそろそろお暇させて貰うわね」
アリスが龍也の発言に同意する事を言う。
「そうだな、私もそろそろ失礼させて貰うぜ」
魔理沙も二人に同意する様な事を言うと、
「あ、そうだ。そろそろ掃除しないと」
霊夢が掃除をしなければいけない事を思い出す。
全員が全員外に用がある為か、四人は一緒に外に出る。
外に出ると、
「それじゃ、またな」
「ええ、またね」
軽い挨拶を交わした後、アリスは飛び上がって博麗神社を後にした。
それに続く様にして魔理沙は箒に跨り、
「またなー」
空に浮かび上がって、博麗神社を後にする。
そして最後に、
「じゃ、またな霊夢」
「ええ、またね龍也」
軽い挨拶を行い、龍也は歩いて博麗神社を後にした。
龍也が飛んで博麗神社を後にしなかったのは、少し鈍った体を解すのに丁度良いと思ったからだ。
勿論、地に足を着けて歩いた方が旅をしている気分になると言うのもあるからであろうが。
長い階段を降り、残り半分位と言った所で、
「ッ!!」
体毛が白く、龍也の倍以上の大きさのゴリラの様な妖怪が襲い掛かって来た。
その妖怪は真上から襲い掛かって来たので、
「っと」
龍也は前方に跳んで回避行動を取る。
龍也が回避行動を取ったのと同時に龍也が先程まで立って居た場所にその妖怪が攻撃を当たり、土煙が舞う。
土煙が晴れると、周囲の林から同じ様な妖怪が次々と現れて来た。
現れた妖怪達を見ながら、
「お、何か懐かしいな」
龍也は思わずそんな事を呟いてしまう。
前に博麗神社に行く時に襲われた妖怪と同じタイプの妖怪であったからだ。
龍也がそんな事を思っている間に、妖怪は敵意剥き出しで龍也を睨む。
単に龍也を食べたいのか、それとも前に倒した妖怪の群れの一員なのか。
それは龍也には分からない。
唯一つ、龍也にも分かっている事がある。
それは、戦闘が避けられないと言う事。
ならば、降り掛かる火の粉は払うだけ。
「良いぜ、ウォーミングアップには丁度いい。掛かって来いよ」
そう言いながら、龍也は人差し指をチョイチョイと動かす。
明らかな挑発行為。
そんな挑発に妖怪達は見事に掛かり、妖怪達は雄叫びを上げながら龍也へと一斉に襲い掛かって行った。
一斉に襲い掛かって来たからか龍也は少し屈み、
「……ッ!!」
攻撃が自分の体に当たる直前に大きく跳躍を行う。
龍也が跳び上がった事により妖怪達の攻撃は外れた。
攻撃を外した事で妖怪達が驚いて統率を失ったかの様な動きを見せると龍也は空中で体を反転させ、足の裏側に見えない足場を作る。
そしてそれを蹴って急降下をし、地面に近くなったら体を回転させ、
「らあ!!」
回転させた勢いを利用して妖怪の一体に踵落としを放つ。
放った踵落としは見事命中し、踵落しが当った妖怪が怯んだかの様に踏鞴を踏む。
その間に龍也は着地し、
「おらあ!!」
踏鞴を踏んでいる妖怪に蹴りを放ち、その妖怪を蹴り飛ばす。
仲間を蹴り飛ばされた事に怒った妖怪のうち一体が、龍也を叩き潰す為に腕を振り降ろす。
「おっと!!」
龍也はそれを横に跳んで回避し、攻撃を放った妖怪の反面に膝蹴りを叩き込む。
膝蹴りの直撃を受けた妖怪は鼻血を出し、背中から地面に倒れ込んだ。
それを見た後、龍也は一息入れるが、
「ッ!!」
それがいけなかった。
何故ならばその隙を突くかの様に龍也は後ろから羽交い絞めにされ、拘束されてしまったからだ。
「くそ!!」
何とか逃れ様と龍也はもがくが、拘束は外れない。
龍也が拘束を外そうと必死になっている間に、妖怪の一体が腕を振り被りながら近付いて来た。
このままでは振り被った拳の直撃を受けてしまう。
そうなってしまってはそれ相応のダメージを受けてしまうと判断した龍也は更に力を籠めて拘束から逃れ様とするが、逃れられない。
「ッ!!」
拳を振り被っている妖怪がかなり近付いて来ている事に気付いた龍也は足元に見えない足場を作ってそこに足を着け、
「うううううううぅぅぅぅぅぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
霊力を解放しながら一本背負いの要領で羽交い絞めにしている妖怪を投げ飛ばそうとする。
その瞬間、迫って来た妖怪が拳を放つ。
放たれた拳は、
「……セーフ」
間一髪、龍也には直撃せずに龍也を羽交い絞めしていた妖怪の背中に直撃した。
羽交い絞めをしていた妖怪に一本背負いした事が幸を成した様だ。
拳を叩き込まれた事で妖怪の力が緩んだ瞬間、龍也は拘束から抜け出して瞬時に体勢を立て直して背後へと跳ぶ。
そして、
「はあ!!」
龍也は跳んだ状態のまま両手を合わせて霊力で出来た大き目の弾を一発放つ。
放ったそれは龍也を羽交い絞めしていた妖怪に命中し、少し大きな爆発と爆煙が発生する。
爆煙が晴れると、二体の妖怪は倒れている様子が龍也に目に映った。
それを目に入れながら地面に着地し、次は誰かと身構えていると、
「ん……?」
龍也は自身に影が出来ている事に気付く。
何があるのか気になった龍也が顔を上げると、一体の妖怪が龍也の真上に居た。
何時の間に上空に上がったのだろうと龍也が思っていると、妖怪は口を開ける。
妖怪の口内には桃色に近い光が充満している事に龍也は気付く。
龍也は砲撃の様なものを放つ気かと思い、自信の右手を真上に居る妖怪に向ける。
その瞬間、妖怪から桃色に近い色をした光線が放たれた。
放たれた光線合わせる様にして龍也は右手に霊力を集中し、圧縮させて放つ。
「霊流波!!」
己が技を。
龍也の右手から青白い閃光が迸り、閃光は妖怪が放った光線へと一直線に向かっていく。
閃光は光線と一瞬均衡した後、光線を呑み込んだ。
光線を呑み込んだ後、閃光はそのまま突き進んで光線を放った妖怪を呑み込む。
そして閃光が消えると、光線を放った妖怪は影も形も無くなっていた。
どうやら、完全に消滅した様である。
容易く妖怪達を倒していく龍也の姿を見たからか、残りの妖怪達は倒れている妖怪を担いで蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った。
周囲から妖怪の気配が感じられなくなると、
「ふぅ……」
龍也は疲れを吐き出すかの様に息を一つ吐き、体調は万全だなと思いつつ少し油断したなと思った。
何せ敵に拘束されて重い一撃を貰うところであったからだ。
油断して殺されては元も子も無いと判断し、
「……よしっ!!」
龍也は気を入れ直して階段を降りて行った。
博麗神社へと続く長い階段を降りた後、龍也は人里にやって来ていた。
何故人里に来たかと言うと、阿求にお礼を言いに来たのだ。
阿求がくれた薬のお陰で二日酔いなどが完全に治ったとも言えるのだから。
人里の中を歩きながら手ぶらで行くの悪いと思った龍也はお土産でも買って行こうと考え、先に団子屋を目指す事にする。
暫らくの間人里の中を歩いていると、
「お、見っけ」
団子屋を発見した。
龍也は早速団子屋の中に入り、
「すみません、三色団子を三人前ください。お持ち帰りで」
注文を行う。
「分かりました!!」
注文を受けた店員が店の奥に引っ込む。
それから少しすると、
「お待たせしましたー!!」
店員が注文品を持って戻って来た。
龍也はそれを受け取り、お金を渡して団子屋を後にする。
そして、龍也は今度こそ阿求の屋敷を目指して足を進めて行く。
また暫らく人里の中を歩いていると、
「ここだここだ。相変わらずデカイな」
龍也は阿求の屋敷の門の前に辿り着いた。
取り敢えず声を掛け様としたところで、
「あ……」
ここから声を掛けても屋敷の中には伝わらない事を思い出す。
なので龍也は門を開けて中に入り、序に玄関の扉を開け、
「すみませーん」
龍也は声を掛ける。
暫らくすると、女中がやって来た。
やって来た女中が来客が龍也であると認識すると、
「これは龍也様、いらっしゃいませ」
女中は深々と頭を下げる。
どうやら、稗田家の女中の中では龍也はかなりの立ち位置に居る様だ。
阿求と親しくしてた事が原因かなと龍也は思いつつ、
「阿求、居ますか?」
阿求が居るかどうかを尋ねる。
「はい、いらっしゃいます。ご案内致しましょうか?」
案内が必要か問われたので、
「お願いします」
龍也は案内をお願いし、歩き出した女中の後を付いて行く。
少しすると、阿求の部屋の前に着き、
「阿求様、よろしでしょうか?」
女中が声を掛ける。
「ええ、良いわ」
阿求から了承の返事が返って来たからか、
「失礼致します」
女中が襖を開ける。
「何か用ですか?」
阿求が女中の方に顔を向けると、
「お客様です」
女中は客が来ていると言う。
そのタイミングで、
「よっ」
龍也が女中の後ろから顔を出す。
「あ、龍也さん」
龍也の姿を見て阿求が少し驚いた表情を浮かべていると、
「では、私はこれで」
女中は頭を下げた後、去って行った。
女中の姿が完全に見えなくなると龍也は阿求に近付き、
「昨日はありがとな。あ、これお土産」
昨日の礼を言い、買って来た物を卓袱台の上に置く。
「態々、ありがとうございます」
「いや、昨日世話になったしこれ位どうって事ないって」
阿求の礼に龍也はそう返し、腰を落ち着かせる。
「あ、顔色が良くなりましたね。もう体調は良いんですか?」
「ああ、お陰様でな」
龍也は体調が良くなった事を肯定し、
「あ、若しかして何か仕事してた?」
卓袱台の上に巻物が見えた事から何か仕事をしていたのかと問う。
「はい。書物の纏めを」
阿求が仕事をしていた事を肯定すると、
「……俺、邪魔だったか?」
龍也は自分が邪魔だったと尋ねる。
すると、
「いえ、そろそろ休憩し様と思っていたの丁度良かったです」
阿求が笑顔で休憩し様と思っていたから気にしないでと返す。
邪魔にならなかった様で良かったと龍也は思いながら、
「あ、その中身は三色団子だから」
持って来た物の中身が何であるかを教える。
「あ、ありがとうございます」
阿求が嬉しそうな表情をしたからか、龍也は三色団子を買って来て良かったと思った。
その後、龍也は阿求と雑談をして過ごす。
それが一段落着くと、龍也は稗田家を後にした。
日が落ち始めた時間帯。
龍也は、
「ここだここだ」
森近霖之助が経営している店である香霖堂の前に来ていた。
何故龍也がここに来たのかと言うと、腕時計のパーツを売るのとレミリアから貰った懐中時計の事を聞く為だ。
龍也は香霖堂の扉を開け、
「こんにちはー」
そう声を掛け、中に入る。
そして、そのままカウンターの方に足を進めて行くと本を読んでいる霖之助の姿が目に映った。
本を読んでいたから自分の声に気付かなかったのかと思った龍也は、
「こんにちは、霖之助さん」
もう一度声を掛ける。
すると霖之助は読んでいた本から目を離して龍也の方に顔を向けると、
「おや、龍也君じゃないか」
龍也の存在に気付き、読んでいた本をカウンターの上に置く。
「今日も買取かい?」
霖之助が龍也に買い取って欲しい物があるのかと尋ねると、
「それもあるんですが、霖之助さんに鑑定して貰いたい物があるんです」
龍也はその事を肯定し、鑑定して欲しい物があると言ってポケットからレミリアに貰った懐中時計を取り出す。
「これ何ですけど……」
「ふむ……」
霖之助は懐中時計を手に取って鑑定を始めていくと、
「これは……緋々色金で出来ているね」
懐中時計は緋々色金で出来ていると口にした。
「緋々色金?」
聞いた事の無い単語であったからか龍也が首を傾げると、
「ああ、緋々色金と言うのはね……」
霖之助は緋々色金に付いての説明を行う。
専門的な単語もあってか良く分からない部分が多々あったが、極めて頑丈で希少価値が非常に高い金属である事だけは龍也でも理解出来た。
そんな金属で出来た懐中時計をレミリアは自分にくれたのかと龍也が思っていると、
「それにしても……緋々色金製の懐中時計何て何所で手に入れたんだい?」
霖之助がこの懐中時計を何所で手に入れたのかと尋ねる。
どうやら、緋々色金製と言う事もあってか気になる様だ。
「ああ、それはレミリアから貰った物です」
龍也は正直にレミリアから貰った物であると言うと、
「レミリア……紅魔館の主のレミリア・スカーレットの事かい?」
霖之助は驚いたと言う表情をしながら紅魔館の主のレミリアかと問うと、
「はい、そうです」
龍也はそのレミリアであると言う。
「驚いたな……」
龍也はから返って来た肯定の返事を聞いた霖之助は改めて驚いた表情になり、
「彼女が緋々色金で出来た物を渡すとは……龍也君は余程彼女に気に入られている様だね」
何処か感心した様な表情になった。
「そう……かもしれないですね」
龍也は自分のものになれと言って来るレミリアの姿を思い出しながらそう口にする。
その後、
「それで、買い取って欲しい物って言うのは何かな?」
霖之助が買い取って欲しい物は何かと言って来たので、
「ああ、これです」
龍也は懐中時計をポケットの中に仕舞い、財布の中から腕時計のパーツを取り出した。
そして腕時計のパーツをカウンターの上に置いていくと、
「ふむ……」
霖之助はそれぞれのパーツを手に取って鑑定していく。
それから少しすると、
「この値段で良いなら買い取ろう」
鑑定が終わったからか霖之助はお金をカウンターの上に置く。
龍也はカウンターの上に置かれたお金を見て、
「この値段で売らせて貰います」
提示された値段を売る事を決め、置かれたお金を財布の中に仕舞う。
そのタイミングで、
「あ、龍也君。この後何か予定はあるかい?」
霖之助は龍也にこの後何か予定があるかと尋ねる。
「いえ、別にありませんけど……何か用ですか?」
龍也は別に予定は無いと言い、何か用があるのかと問うと、
「新しい電化製品が手に入ってね。出来れば君にそれの扱い方などを説明して貰いたいんだけど……」
霖之助は新しい電化製品が手に入ったからそれの説明を欲しいと言う。
別に断る理由は無かったので、
「俺は構いませんよ」
別に構わないと龍也が返すと、
「それは良かった!! 先ずこれ何だけどね……」
霖之助は次々と電化製品をカウンターの上に置いていく。
それに続ける様にして次々と置かれていく電化製品を見て、龍也は安請け合いをしてしまったかと思った。
「……っと、もう夜か」
霖之助が見付けた電化製品に付いての説明を終えると、何時の間にか完全に日が落ちてしまった事に龍也は気付く。
思っていた以上に時間が掛かってしまったと龍也が思っていると、
「すまないね、つい熱中してしまって……」
こんな時間まで龍也を引き止めてしまったからか霖之助が謝罪をして来た。
「別に構わないですよ」
龍也は別に気にしていない言った様子でそう返しながらもう一度外の様子を確認する。
完全に日が落ちている事を改めて実感しながら何所で野宿をし様か考えていると、
「もう完全に日が落ちてしまったし、泊まっていくかい?」
霖之助はここに泊まっていくかと尋ねて来た。
「良いんですか?」
「こんな時間まで引き止めてしまったのは僕だからね」
ここまで言われたのなら断るのは失礼と考えた龍也は、
「それじゃ、お世話になりますね」
香霖堂に泊まる事にする。
余談ではあるが、泊まった事で龍也は霖之助は意外に料理上手である事を知った。
前話へ 戻る 次話へ