日が落ち、月が天を支配し始めた時間帯。
龍也は玄武の力で作った簡易型の家の中で寝る準備をしていた。
幸いアリスが作ってくれた防寒具の性能が良い為、そのまま寝ても凍死すると言った事は無い。
もし防寒具の性能が良くなかったら、冬場は毛布などを背負いながら旅をする事になっていただろう。
何度目になるか分からないが、龍也はアリスに感謝の念を抱きながら横になる。
そして腕を組みながら目を閉じ、銀色の髪をした少女との戦いをシミュレートしていく。
少女の動きや剣技と言ったものを正確に思い出していきながら。
こう言ったイメージトレーニングも勝つ為に必要であるからか、龍也は寝る前にこれを必ず行う様にしている。
必ずと言っても、やり始めたのはここ最近の事ではあるが。
イメージトレーニングを始めてから暫らくすると、
「んー……」
龍也は夢の世界に旅立とうとしていた。
まぁ、寝る前にイメージトレーニングしているので仕方が無いと言えば仕方が無い。
そのまま完全に寝入ってしまいそうになった時、
「……あ」
龍也は突如、ある事を思い出して目を開く。
何を思い出したのかと言うと、銀色の髪をした少女は剣技だけではなく弾幕も扱うと言う事をだ。
どうやら、彼女の凄まじい剣業にばかりに意識が向いていて弾幕の事はすっかり龍也の頭から抜け落ちていた様である。
「弾幕に対する修行もしないといけないよな……」
銀色の髪をした少女が弾幕を放つ頻度はそう多くはなかったが、弾幕で龍也の隙を作って必殺の一撃を放って来たのだ。
弾幕に対する修行は必要だろう。
だがどうやって修行し様かと頭を捻らせていくと、
「……魔法の森」
魔法の森の存在が龍也の頭を過ぎる。
「魔理沙かアリスに俺の修行に付き合って貰える様に頼んでみるかな……」
何らかの対価は取られるであろうが、あの二人なら付き合ってくれそうだ。
「そういやこの家を作ってる時、先の方に森が見えたよな……」
龍也は玄武の力で土で出来た家を作っていた時の事を思い出した後、
「……よし、明日はあの森に行くか。あの森が魔法の森じゃなかったら空中から魔法の森を探すか」
明日の予定を立てて目を瞑り、眠り始めた。
翌朝、龍也は土で出来た家を作る時に見た森の中へと入っていた。
龍也が入った森は、
「この瘴気は……よし、ここは魔法の森だな」
魔法の森で合っていた様だ。
幸先が良いなと思いながら龍也は足を進め、
「にしても相変わらずだな、ここは」
魔法の森は相変わらずだと言う事を口にする。
瘴気に珍妙な色や形をした茸、そして変な木の実。
これらを感じ、見る事で龍也は魔法の森にやって来たと言う確かな実感を得た。
「問題は魔理沙かアリスの家に何時着けるかだが……迷ったら確実に余計な時間を喰うよな……」
迷ったら余計な時間を喰うと言いながらも、龍也は足を止める様な事はしない。
動かなければ魔理沙の家にもアリスの家にも辿り着けないからだ。
「……よっと、しっかし魔理沙もアリスもよく魔法の森の中を自分の庭みたいに歩けるよな」
足元に見えた木の根を避けながら、龍也は魔理沙とアリスは魔法の森を迷わずに動き回れるなと呟く。
何時だったかアリスが魔法の森に住んで長いと言っていたので、龍也も何年か魔法の森に住めば魔法の森の中を自分の庭の様に歩き回れるのだろうか。
そんなどうでも良い事を考えつつも足を休ませずに動かしていたからか、
「ん……」
龍也は少し開けた場所に出た。
出た場所に少々見覚えがあったからか、龍也は周囲を見渡す。
すると、
「あれは……魔理沙の家か」
魔理沙の家を発見した。
結構短時間で、しかも魔法の森特有の妖怪などには出会わずに。
魔法の森に入って直ぐに龍也は幸先が良いと思ったが、これは本格的に運が向いて来たのかもしれない。
これなら案外簡単に自分の申し出を受けてくれるのではと考えながら龍也は魔理沙の家に近付き、ドアをノックする。
ノックしてから少しするとドアが開かれて魔理沙が顔を出し、
「お、龍也じゃないか」
龍也の存在を認識した。
自分の存在を認識されたからか、
「よっ」
龍也は挨拶の言葉を掛ける。
「おう」
掛けられた挨拶に魔理沙はそう返し、
「どうしたんだ?」
ドアを大きく開き、開いたドアを手で支えながらどうしたのかと問う。
「ああ、一寸頼みがあってな……」
龍也が問われた事に頼みがあると返すと、
「頼み?」
魔理沙は首を傾げる。
「ああ、俺の修行に付き合って欲しい」
龍也が自分の修行付き合って欲しい事を伝えると、
「修行か……」
魔理沙は少し考え込む。
考え込んだ魔理沙を見て都合が悪いのでは考えた龍也は、
「勿論嫌なら断って貰っても構わない。俺も無理強いする気はないしな」
無理強いをする気は無いから断ってくれも構わないと口にする。
断るものだと龍也は思っていたが、
「いや、それ位の事なら構わないぜ」
魔理沙は構わないと言ってくれた。
「そっか、ありがとな」
自分の頼みを引き受けてくれた魔理沙に龍也が礼を言うと、
「別に礼はいらないぜ。但し、後で私の家の掃除をしてくれよな」
魔理沙は礼はいらないと返しつつも、修行に付き合う代価として自身の家の掃除を要求する。
「ああ、分かったよ」
龍也が了承の返事を返すと、
「それで、修行に付き合って欲しいそうだが……私は何をすれば良いんだ?」
魔理沙は何をすれば良いのかと問う。
「俺に弾幕などの遠距離攻撃をして欲しい」
「弾幕を?」
魔理沙が再び首を傾げると、
「ああ、そうだ。俺はお前に近付こうとするから、お前は弾幕などを放って俺の接近を防いでくれ。あ、それと放つ弾幕などは弾幕ごっこのルールを
無視してくれ。要は通常戦闘で使う様な弾幕などを放って俺の接近を阻止して欲しいんだ」
龍也は魔理沙が口にした言葉を肯定し、自分の動きとどう言った弾幕を放って欲しいのかを伝える。
「弾幕ごっこ外で使う様な弾幕でだな……了解したぜ。やって欲しいのはそれだけか?」
魔理沙が注文はこれだけかと言うと、
「ああ」
龍也はそうだと言う返事を返す。
「分かった。と言ってもここでやったら私の家に被害が出るから上に行こうぜ」
魔理沙が自分の家に被害を出さない為に完全に外に出て空中に躍り出ると、その後を追う様に龍也も空中へと躍り出る。
空中に躍り出た二人はどんどん上昇して高度を上げて行く。
そしてある一定の高度に達すると、
「……よし、これ位上がれば十分だろ」
「だな」
魔理沙と龍也は上昇を止め、互いの距離を離す。
二人の距離が離れたのと同時に龍也は自身の力を変える。
朱雀の力へと。
力の変換に伴って瞳の色は黒から紅に変わると、龍也は二本の炎の剣を両手から生み出す。
龍也の準備が完了したと判断したからか、
「それじゃ……いくぜ!!」
魔理沙は龍也に向けて星型の弾幕を放つ。
迫って来た弾幕を龍也は二本の炎の剣で捌きながら一歩、また一歩と魔理沙に近付いて行く。
先ずは堅実にと言ったところであろうか。
少しペースは遅いものの、龍也は確実に魔理沙へと近付いていく。
この分なら案外簡単に行くのではと龍也が思ったその時、
「何!?」
弾幕の量が一気に増加した。
この量ではとてもじゃないが進む事は出来ない。
龍也が進行を止めて迫って来ている弾幕の対処に専念していると、
「おいおい、そんな遅いスピードで直線上に動いているだけじゃ狙ってくださいと言ってる様なものだぜ」
魔理沙が今の動きでは狙ってくださいと言っている様なものだと口にする。
全くもってその通りだ。
何せ、今の龍也の進み方では放つ弾幕を一点に集中するだけで楽に対処出来るのだから。
それでも龍也は弾幕を捌きながら強引に進もうとするが、
「ぐ……」
弾幕があまりにも濃すぎた為、進む事が出来なかった。
しかも、弾幕の密度は少しずつ更に濃くなっていっていく。
このままでは弾幕に呑まれてしまうと感じた龍也は弾幕を捌くのを止めて後ろへ跳び、円を描く様に移動する。
一箇所に留まらなくなったのだから当然、
「……よし」
龍也に向かって来る弾幕の密度は薄くなり、数も大きく減った。
まぁ、一点にのみ集中した弾幕を放っていたのだから当然と言えば当然だ。
だが、移動した龍也に直ぐ反応した魔理沙が弾幕の範囲を広げた事で再び龍也に迫る弾幕が数が増えて濃くなってしまう。
しかし、濃くなったと言っても先程の時と比べたら十分に薄い。
この程度の密度なら近付く事は可能だと龍也は判断し、龍也は回り込む様にして魔理沙に近付いて行く。
が、魔理沙との距離が縮まるにつれて龍也に迫って来る弾幕の数は増えて濃くなっていった。
魔理沙との距離が縮まった事と、近付いた事で移動する範囲が狭くなったのが原因かと考えながら龍也は再び二本の炎の剣で弾幕を捌き始める。
現状では魔理沙の弾幕は十分に捌ききれるが、更に距離が縮まればまた捌ききれなくなる事だろう。
そうなる前に一気に距離を詰めた方が良いと龍也は判断し、今居る地点の反対側へと素早く移動し、
「今だ!!」
魔理沙との距離を一気に詰めに掛かった。
幸い、魔理沙はついさっきまで龍也が居た場所に体を向けている。
龍也が内心で貰ったと思ったその時、魔理沙はニヤリと言う笑みを浮かべながら龍也の方に体を向けて弾幕を放って来た。
高密度、高スピード、広範囲の弾幕を。
「しまっ!?」
迫り来る弾幕が目に入ったのと同時に龍也は悟る。
魔理沙はこの瞬間を狙っていたのだと。
「くそ!!」
この弾幕を炎の剣で捌くのは無理だと瞬時に判断した龍也は咄嗟に両腕を交差させて防御の体勢を取る。
龍也が防御の体勢を取ったタイミングで魔理沙が放った弾幕は着弾し、龍也は爆発と爆煙に包まれてしまう。
そして爆発と爆煙を突っ切る様にして、
「ぐ……」
龍也は真っ逆さまに墜落していった。
どうやら、ダメージを受けた時にふら付いたせいで見えない足場から足を踏み外してしまった様だ。
しかも、弾幕を受けた衝撃のせいで二本の炎の剣が消失してしまっている。
消失した二本の炎の剣を龍也は再び生み出そうとしたが、
「ッ!! 地面が近い……」
地面が近い事に気付き、体勢を立て直す為に慌てて体を動かす。
が、本能的に間に合わないと言う事を感じ取った龍也は近いうちに来るであろう衝撃に身構えていると、
「おっ……と」
魔理沙が龍也の足首を掴んで地面への激突を防いだ。
「大丈夫か?」
魔理沙が大丈夫かと声を掛けると、
「……ああ、大丈夫だ。ありがとな」
龍也は大丈夫だと返しながら助けて貰った礼を言い、先程の自分の失態を反省していく。
絶好の好機と判断して突っ込んだらこれである。
と言うより、一番の反省点は勝機を見付けた事で心に隙が生まれた事だろう。
次からはもっと用心した方が良いと龍也が考えていると、
「ほら、地面に着いたぜ」
魔理沙が地面に着いた事を伝える。
どうやら、地上まで降下してくれた様だ。
「ああ、ありがとな」
龍也は再び礼を言いながら両手を地面に着けると、魔理沙は龍也の足首から手を離す。
魔理沙の手が離れると龍也は下半身を勢い良く振り下ろし、その勢いを利用して龍也は上半身と下半身の位置を入れ替える。
その後、龍也は自分の体の調子を確かめ、
「もう一回頼めるか?」
もう一度頼めるかと問う。
「おう、構わないぜ」
魔理沙は構わないと返し、上昇して行く。
上昇して行った魔理沙の後を追う様に龍也も上昇し、ある一定の高度に達すると二人は距離を取る。
ある程度距離が取れると、今度は心に隙を生まない様にと言う事を頭で反復しながら龍也は両手から二本の炎の剣を生み出した。
日が暮れ始めると修行を切り上げ、約束通り掃除をする為に魔理沙の家に入ると、
「これはまた……随分と散らかしたものだな……」
あまりの惨状に龍也は思わずそう漏らしてしまう。
何せ、爪先立ちで何とか床を踏めると言う有様であったのだから。
「いやー……何か気付いたらこんな惨状になっていてな……」
そう言って、魔理沙は苦笑いを浮かべながら後頭部を掻く。
そんな魔理沙に龍也は少し呆れつつも、
「ま、約束は約束だからな。ちゃんと掃除はするさ」
ちゃんと掃除をする旨を伝える。
「おう、頼んだぜ!!」
魔理沙が笑顔で龍也の肩に手を置くと、
「あ、そうだ。暫らくの間、俺の修行に付き合って貰って良いか?」
龍也は暫らくの間、自身の修行に付き合って貰って良いかと問う。
「おう、別に構わないぜ」
「ありがとな、魔理沙」
構わないと答えてくれた魔理沙に感謝の言葉を返した後、
「それで、床に置いてある物はどうすれば良いんだ? 全部捨てれば良いのか?」
龍也は床に置いてある物は全部捨てて良いのかと尋ねる。
「んー……そうだな……」
魔理沙は龍也の肩から手を離して少し考える素振りを見せた後、
「散らばっている本は本棚に入れて置いてくれ。並び順は気にしなくて良いぜ。それ以外は……確か本棚の一番上に袋があるからそれに入れてくれ」
本が以外は袋に入れてくれと口にした。
「捨てるんじゃないのか?」
「ああ、香霖なら買いとってくれそうだからな。まぁ、二束三文の値にしかならないだろうけどな」
どうやら、魔理沙は床に散らばっている本以外の物は霖之助に売り付ける気の様だ。
殆どゴミやガラクタを売り付けられる事になるであろう霖之助に龍也が同情していると、
「それじゃ、私はこの前採って来た珍しい茸を使って実験をするから後は頼んだぜ。あ、それと台所の鍋の中に茸のシチューが入っているから腹が減ったら
勝手に食べてくれ。後、掃除が終わったらソファーで寝ててくれて構わないぜ」
魔理沙は実験に向かう事と、食事、掃除が終わった後の事を口にして奥の方へ向って行く。
床に錯乱している物を踏まない様、器用に歩きながら。
奥の方に行った魔理沙を見送った後、龍也は爪先立ちで歩きながらソファーに近付き、
「部屋の中は暖かいから、これを着ている必要は無いな」
防寒具、マフラー、手袋をソファーに掛けていく。
そして、
「……さて、頑張りますか」
龍也は掃除を始めた。
そして、魔理沙が龍也の修行に付き合い始めてから数日後の早朝。
魔理沙は、
「悪い!!」
両手を合わせて龍也に悪いと謝っていた。
何故謝ったのかと言うと、本日行う実験は始めると丸一日付きっ切りで行わないといけないので龍也の修行に付き合えなくなったからだ。
「気にすんなって。元々無理言って頼んだのはこっちなんだしさ。て言うか、ここ何日も俺の修行に付き合ってくれてありがとな」
龍也は気にするなと言いながら自分の修行に付き合ってくれた事に礼を言う。
「ほんと、悪いな」
魔理沙が再び謝ると、
「いいっていいって。元々、お前の予定を崩させてまで俺の修行に付き合わせる気は無かったし」
龍也は魔理沙の予定を崩させてまで自身の修行に付き合わせる気は無いと返す。
それ聞いた魔理沙は、
「そうだ、修行はアリスに付き合って貰ったらどうだ?」
何かを思い付いた表情をしながら修行はアリスに付き合って貰ったらどうだと提案する。
「アリスにか……」
魔法の森に入った時に魔理沙かアリスに自分の修行に付き合って貰おうと考えていたので、
「そうだな……アリスに頼んでみるよ」
龍也はアリスの家に行く事を決めた。
「アリスの家は上空から探せば見付かり易いと思うぜ」
「分かった。ありがとな」
アドバイスを受けた龍也は礼を言いながら魔理沙から背を向ける。
そして、
「それじゃ、またな」
「おう、またな」
軽い挨拶を交わし、龍也は魔理沙の家を出た。
外に出るのと同時に龍也は空中に躍り出て、
「さて……と、行くか」
アリスの家を探す為に空中を駆けて行く。
空中を駆け始めてから暫らくすると、
「お、あれは……」
眼下に木が見えない場所を見付ける。
そこに近付くと、龍也の目に洋館が映った。
間違いなくアリスの家だろう。
善は急げと言わんばかりに龍也は降下し、地に足を着けてアリスの家のドアに近付いてノックをする。
ノックをしてから少しするとドアが開かれ、
「っと、アリスの人形か」
アリスの人形が顔を出す。
どうやら、アリスの人形がドアを開けてくれた様だ。
龍也はアリスの人形に顔を向け、
「アリスは居るか?」
アリスが居るかどうかを尋ねる。
すると、アリスの人形はドアを大きく開く。
入れと言う意思表示だと判断した龍也がアリスの家に上がると、アリスの人形は奥の方に行ってしまう。
靴を脱ぎ、アリスの人形を追って行くと居間に着く。
そこで椅子に座って本を読んでいるアリスの姿を発見したからか、
「よっ、アリス」
龍也は挨拶の言葉を掛ける。
掛けられた挨拶に反応したアリスは本から視線を外し、声が聞こえ来た方に視線を移す。
視線を移した先に龍也が居たからか、
「あら、龍也じゃない。いらっしゃい」
アリスは出迎える言葉を口にした。
「ああ、邪魔させて貰っている」
出迎えの言葉にそう返しながら龍也はアリスに近付き、
「実は、頼みがあるんだけど……良いか?」
頼みがある事を口にする。
「頼み? 後少しでこの本が読み終わるから……その後で良い?」
頼みを聞くのは本が読み終えてから良いかとアリスが言うと、
「ああ、頼んでるのはこっち何だからそっちの都合に合わせるさ。あ、本を読み終わるまでまで待たせて貰って良いか?」
龍也は本を読み終えるまで待つと言い、本を読み終えるまで待っていても構わないかと問う。
「ええ、構わないわ。何処かその辺に座っていて」
「分かった」
アリスの許可が得られたからか、龍也は近くの椅子に腰を落ち着かせて一息吐く。
アリスが本を読み終えるまでは暇だなと思いながら龍也はボケーッとした表情を浮かべる。
それから少しすると、アリスの人形が紅茶とクッキーを運んで来た。
アリスの人形が運んで来た紅茶とクッキーがテーブルの上に置かれると、
「ありがとな」
龍也は礼の言葉を口にしながらクッキーを食べ、紅茶を飲む。
相変わらず美味いなと言う感想を抱きながら龍也はクッキーの数と紅茶の量を減らしていく。
そして、出されたクッキーと紅茶が無くなったタイミングでアリスは本を読み終えた様で椅子から立ち上がって龍也に近付き、
「それで、頼みって何かしら?」
頼みたい事は何かと問う。
「ああ、俺の修行に付き合って欲しいんだ」
「修行に? どんな?」
修行に付き合って欲しいと言われたアリスがどんな修行と言って首を傾げると、
「俺がアリスに近付こうとするから、アリスはそれを弾幕などの遠距離攻撃を行って阻止して欲しい。放つ弾幕は弾幕ごっこのルールを無視で、通常戦闘を
想定したもので頼む」
龍也はアリスにどう言った事をして欲しいのかを伝える。
伝えられた事を理解したアリスは少し考え、
「良いわよ、貴方の修行に付き合って上げる。但し、それが終わったら外の世界のロボットアニメやロボットが出て来るゲームとかの話をまた聞かせてね」
修行に付き合う代わりに外の世界のロボットアニメやロボットの出て来るゲームの話をすると言う条件を出す。
「ああ、それ位ならお安い御用だ」
龍也が出された条件を呑むと、
「交渉成立ね」
アリスは嬉しそうな表情を浮かべる。
そんなにロボットの話が聞けるのが楽しみなのかと龍也が思っていると、
「それじゃ、早速外に出て始めましょうか。あ、家に被害は出したくないから空中でやりましょう」
アリスは龍也の修行は空中でやろうと言う提案をし、玄関へと向って行く。
先に行ってしまったアリスを追う為に龍也も玄関に向かい、二人揃って外に出る。
外に出ると龍也とアリスは空中に躍り出て高度を上げ、ある一定の高度に達すると二人は間合いを離す。
ある程度間合いが離れると、龍也は自身の変える。
朱雀の力へと。
力の変換に伴い瞳の色が黒から紅に変わると、龍也は両手から二本の炎の剣を生み出す。
それを見たアリスは自身の周囲に何体かの人形を展開させ、
「私の方の準備は完了したわ」
準備は完了した事を伝える。
「そうか、なら……いくぜ」
準備が完了したのなら遠慮はいらないと言わんばかりに龍也はアリスに向けて突っ込んで行く。
但し、スピードを落としながら。
先ずは様子見と言った感じの様だ。
龍也とアリスの距離が半分程に縮まると、
「……ッ」
アリスの人形が弾幕を放って来た。
それを見た龍也は進行を止めて後ろに跳び、迫り来る弾幕を炎の剣で捌いていく。
龍也は弾幕を捌きながら見えない足場を作ってそこに足を着け、円を描く様に移動する。
回り込んでアリスに近付く気の様だ。
しかし、円を描く様に移動して近付くと言う方法は中断を余儀なくされた。
何故ならば、
「ッ!?」
龍也の進行方向上にアリスの人形が現れ、弾幕を放って来たからだ。
どうやら、龍也の狙いは直ぐにアリスに気付かれた様である。
「くっ!!」
迫って来た弾幕を避ける為に龍也は体を屈め、大きく距離を取ってアリスの人形から離れて行く。
龍也がアリスの人形から離れたからか、アリスは人形を自分の元へと戻す。
人形を自分の元に戻したのは追撃を行って人形を破壊される事を嫌ったからであろうか。
用心深いなと思いつつ、魔理沙との時とは勝手が違うなと言う事を龍也は感じた。
魔理沙の時は魔理沙一人だけに意識を向ければ良かったが今回はアリスだけではなく、アリスの人形にも意識を向けなければならない。
魔理沙との修行で得られた経験は参考程度にして置くのが得策かと判断していると、
「ッ!!」
龍也はアリスの人形が自分を取り囲む様に動いている事に気付く。
囲まれてしまっては非常に厄介なので龍也は包囲網が完成する前にスピードを大きく上げて人形を引き離そうとする。
が、直ぐにこれではアリスと距離が開いて不利になってしまうと思った龍也は進行方向を反転させてアリスの方へ突っ込む。
この行動はつい反射的にやってしまった事ではあるが、突然龍也の動きが変わったからかアリスの人形は一瞬動きを止めてしまった。
おそらく人形を操っているアリスの反応が遅れたからであろうが、何はともあれチャンスである。
アリスの人形が再び行動を開始する前に龍也はアリスとの距離を大きく詰めに掛かった時、
「何っ!?」
龍也の目の前にアリスの人形が現れた。
しかも、人形の両手に魔力が収束していっているのが見て取れる。
「……そうか!! 別の人形!!」
目の前の人形は自分を包囲し様としていた人形とは別の人形である事に龍也が気付いたのと同時に、目の前の人形から赤いレーザーが放たれた。
自分の体に吸い込まれる様に迫って来るレーザーを、
「ぐっ!!」
龍也は咄嗟に動かした二本の炎の剣で防ごうとする。
「ぐうっ!!」
防ぐ事には何とか成功したものの、龍也はレーザーを受け止めた衝撃で後方へと下がって行ってしまう。
体勢を崩さない様に龍也は歯を喰い縛り、両腕と下半身に力を籠めて耐えていく。
それから少しすると、
「……止んだか?」
両腕に走っていた衝撃が感じられなくなり、レーザーの照射が止んだと思った龍也は防御の体勢を解く。
龍也が思った通りレーザーの照射は止んでいたが、代わりに大量の弾幕が迫って来ていた。
迫り来る弾幕を見て、
「ちっ!!」
一発一発斬り払うよりも纏めて防いだ方が良いと感じたからか、龍也は二本の炎の剣の柄頭を合わせて回転させる事により炎の盾を作る。
炎の盾に弾幕が激突するの同時に、
「ぐ……」
龍也の体に衝撃が走っていく。
今は何とか防いでいられるものの、何時突破されるのかは分かったものでは無い。
ここは被弾覚悟で強引にでもアリスに近付くべきかと龍也が考えていると、
「……ん?」
体に走っていた衝撃が消えた。
おそらく、弾幕が止んだのだろう。
この状況下で弾幕を放つのを止めたアリスを龍也は不審に思いつつ、炎の盾を二本の炎の剣に戻すと、
「ねぇ……」
アリスは龍也に話し掛けて来た。
「何だ?」
龍也が応答の返事を返すと、
「弾幕ごっこのルール外なら弾幕を避けたり捌いたり防いだりしているだけじゃ限界が来ると思うの。考えて避けたりする事も大切だけど、例えば貴方も
弾幕を放って迫って来た弾幕を打ち消すと言う行動も加えてみたらどうかしら?」
アリスからそんなアドバイスが聞ける。
「打ち消す……」
アリスのアドバイスを聞いて龍也が少し考え込むと、
「弾幕は基本的に攻撃力より量。休む間も無く大量に当ててダメージを与えたり牽制したり、動きを制限したり誘導したりするのが本来の使い方だから、
同じ弾幕で打ち消す以外にも強い攻撃で打ち消すと言う事も出来ると思うわ。一発一発の威力が物凄く高いって事は殆ど無い筈だしね。まぁ、動き等々の
話は弾幕ごっこでも一緒なんだけどね」
アリスは更にアドバイスを行う。
「強い攻撃……あ」
そのアドバイスの中にあった強い攻撃と言う単語で龍也は何かを思い付き、
「一寸、弾幕を撃ってくれないか」
アリスに弾幕を放つ様に頼む。
「分かったわ」
アリスは了承の返事をしながら自身の人形に弾幕を放たせる。
放たれた弾幕は当然、龍也の方へと向かって行く。
自身に向けて迫って来る弾幕を龍也は落ち着いた様子で見詰め、弾幕が自身の間合いに入るまで後少しと言う所まで迫ると、
「しっ!!」
龍也は炎の剣を振るう。
炎の剣の切っ先に爆炎を迸らせながら。
すると、振るった炎の剣の軌跡から爆炎が迸って迫って来ていた弾幕を呑み込む。
爆炎に呑みこまれた弾幕が消滅したのを感じると、
「……よし」
今の方法は有効であると龍也は判断した。
弾幕を一掃出来る処か爆炎で自分の姿を隠す事も出来る。
これで少しでも相手が龍也の姿を見失えば御の字だ。
もう少し迸らせる爆炎の威力を上げれば爆炎で相手を呑み込む事も可能だろうと言う事を龍也が考えている間に爆炎は晴れ、
「そうそう、そんな感じよ」
アリスはそんな感じだと言う言葉を掛ける。
「ありがとう。お前のアドバイスのお陰だ」
龍也はアリスに有用な方法を伝えてくれた事に対する礼を言い、
「しかし、よくこんな方法を思い付いたな」
感心した表情を浮かべた。
弾幕を回避し、防いで突っ込むと言う事しか考えていなかった龍也では思い付きもしなかっただろう。
そんな風に感心している龍也に、
「弾幕ごっこに限らず、戦いなどに必要なのはブレインよ。だからその程度の事位は……ね」
アリスはその程度の事位、大した事ではないと返す。
その台詞から、アリスは何事にもブレインを重視しているのかと龍也が推察していると、
「それじゃ、続きといくけど……良い?」
アリスは続き始めても良いかと尋ねる。
「ああ、続きといこうぜ」
龍也が肯定の返事を返すと、アリスの人形から弾幕が放たれた。
「さて、それじゃ早速ロボットの話を聞かせて貰いましょうか」
日が暮れ始めた時間帯に修行を切り上げ、家の中に入って居間に着いたの同時にアリスはそう言ってのけた。
因みに、居間にあるテーブルの上には紅茶とクッキー乗っかっている。
おそらく、龍也の修行に付き合っている間に家の中の人形を操って準備をさせていたのだろう。
大したものである。
「とと、これじゃ立ったまま話せと言っている様なものね。そこに座って」
少々気持ちが逸っていた事を自覚したアリスは気持ちを落ち着かせ、龍也に椅子に座る様に促した。
アリスの表情と雰囲気から余程楽しみにしていたんだなと言う事を察しながら、
「あ、ああ」
椅子に腰を落ち着かせる。
その後、
「あ、そうだ。暫らくの間、俺の修行に付き合って貰っても良いか」
龍也は思い出したかの様に暫らくの間、自分の修行に付き合って貰っても良いかと問う。
「ええ、構わないわ」
アリスが椅子に座りながら構わないと返すと、
「ありがとう、アリス」
龍也は礼の言葉を口にする。
そして、
「それじゃ、先ずは……」
自分の修行に付き合ってくれた礼と楽しみにしているアリスの想いに応える様にしてロボットの事を話し始めた。
アリスに修行に付き合って貰ってから一週間程過ぎた頃、
「色々と世話になったな、アリス」
龍也はアリスに世話になったと言う。
「あら、もう行くの?」
アリスがもう行くのかと問うと、
「ああ、これ以上俺の修行に付き合わせても悪いしな。それに、アリスも俺の修行に付き合っていたら自分のやりたい事も出来ないだろ」
龍也はこれ以上自分の修行に付き合わせるのは悪いと口にする。
「私も貴方からロボットの話を色々聞かせて貰ったのだからお相子だと思うけどね」
アリスは龍也にロボットの話の聞かせて貰ったのだからお相子だと言うと、
「それは俺の修行に付き合って貰った事に対する代価みたいなものだからなぁ。実質、衣食住の面倒は只で見て貰っている様な感じだしな」
それは自身の修行に付き合って貰った事に対する代価だと言い、衣食住の面倒は只で見て貰っている様なものと返す。
「私は別に気にしていないんだけど……ま、そう言うのであれば止めはしないわ。それで、これから如何する積りなの?」
アリスはそう言うのであれば止めたりはしないと言った後、これから如何する積りなのかと尋ねる。
「そうだな……対弾幕戦って言うのは結構理解出来たと思う。だから、暫らくは基本的な身体能力を上げ様と思う」
「そう。取り敢えず、頑張ってね」
龍也の今後の予定を聞いた後、アリスが応援する言葉を掛けてくれたので、
「ああ、ありがとう」
龍也はありがとうと言う言葉を返す。
その後、二人は玄関に向かい、
「それじゃ、またな」
「ええ、またね」
別れの挨拶を交わし、龍也はアリスの家を後にした。
アリスの家を出た龍也は魔法の森の中を歩きながら考える。
アリスに基本的な身体能力を上げるとは言ったものの、何所で体を鍛えたものかと。
道中では体を鍛えている最中に妖怪が襲いかかって来る事が容易に想像できる。
それでは効率が悪過ぎるが故に道中で体を鍛えると言う方法は無しの方向になった。
何所か一つの場所で鍛えると言うのが理想的なので、龍也は考える。
襲撃者が来なく、集中して鍛えられる場所はないかと。
考え始めてから暫らくすると、
「……あった」
龍也は思い付く。
襲撃者が来なく、集中して鍛えられる場所を。
思い立ったら何とやら。
龍也は空中に躍り出て、思い付いた場所へと大急ぎで向かって行った。
「と、言う訳で修行したいから暫らく泊めてくれ」
「やって来て早々にそんな事を言うとはねぇ……」
現在、龍也が居る場所は博麗神社。
そう、龍也が思い付いた場所と言うのは博麗神社であったのだ。
博麗神社なら、間違い無く安心して鍛える事が出来る。
だから、龍也は博麗神社にやって来たのだ。
「で、泊めてくれるのか」
「……ま、お賽銭も沢山入れてくれたから好きなだけ泊まっていってくれて構わないわ」
霊夢の許可が無事に得られたからか、
「ありがとな」
龍也は礼を言って神社の裏手へと向かう。
神社の裏手に回り、大きな木の前に着くと、
「……ふぅ」
龍也は一息吐き、防寒具、マフラー、手袋、学ラン、ワイシャツ、シャツを脱いで上半身裸になる。
上半身裸になった瞬間、
「……寒ッ!!」
かなり寒さを感じたからか龍也は屈んでしまう。
が、直ぐに温まるだろうと思ったから龍也は体勢を戻しながら跳躍を行って太い木の枝を掴む。
そして、龍也は懸垂を始めた。
要するに、龍也がやっている事は筋トレだ。
基本的な身体能力の上げる為にはこれが一番だと龍也は考えた様である。
本当にこれが一番かどうかは分からないが、龍也は黙々と筋トレに励んでいった。
「夕飯が出来たから呼びに来たんだけど……まだやってたのね」
霊夢が何処か呆れた様にそう言うと、
「ん?」
木の枝に脚を引っ掛けて逆さまになっている体勢で龍也は霊夢に顔を向ける。
どうやら、腹筋をしていた様だ。
「何か言ったか、霊夢」
「だーかーらー、夕飯が出来たって言ったのよ」
「あ、分かった」
夕飯が出来たと言う言葉を受けた龍也は脚を伸ばして落下し、両手を地面に着けて着地する。
そして上半身の下半身の位置を入れ替えて脱いだ服を置いてある場所に足を進めると、
「汗掻いているんだからこれで拭いたら?」
霊夢がタオルを投げて来た。
「ああ、サンキュ」
龍也は礼を言いながらタオルを受け取り、汗を拭いていく。
汗を拭き終えると龍也は脱いでいた物を着直し、霊夢に近付くと、
「タオルは脱衣所に在る洗濯籠の中に入れて置いてね」
霊夢はタオルを脱衣所に在る洗濯籠の中に入れる様に指示を出す。
「ああ、分かった」
龍也が了承の返事を返すと、
「それを置いて来たら居間に来なさい。さっきも言った様に夕飯が出来てるから」
霊夢はそれだけ言って居間へと向かって行った。
去って行く霊夢を見届けた後、龍也は脱衣所に行って洗濯籠にタオルを入れる。
それが終わると、龍也も居間へと向かう。
居間の前に着くと襖を開けて中へ入り、料理が並んでいる卓袱台の前に座り、
「「いただきます」」
龍也と霊夢は食事を取り始めた。
二人が箸を進めている中、
「そう言えば暫らくって言ってたけど、どれ位ここに居る積り?」
霊夢はふと何かを思い付いたと言う様な表情をしながら龍也にどの位博麗神社に滞在するのかを訪ねる。
「んー……暫らくは暫らくだな。具体的な日数は分からん」
龍也が具体的な日数は分からないと返すと、
「ふーん……まぁ、何時まで居ても別に良いけど泊まっている間が掃除とかしてよね」
霊夢は泊まっている間は掃除とかしてねと言う。
「世話になっる身だからな。それ位の事はするさ」
世話になってる身なのだからそれ位は同然と龍也が口にすると、
「これで龍也が料理も出来たら完璧何だけどね……」
霊夢は龍也が料理も出来たら良かったのにと呟く。
おそらく、龍也が料理も出来たら料理当番も押し付ける気だったのだろう。
少し残念そうな霊夢の表情を見て、龍也は相変わらずだなと思いながら食事を進めていった。
博麗神社に泊まり始めてからと言うもの、龍也は一日の大半を体を鍛える事に費やしていた。
懸垂、腹筋、腕立て伏せ、背筋、スクワット等々。
時たま博麗神社に遊びに来た魔理沙が面白がって筋トレをしている龍也にぶら下がったり乗っかったりしたと言う事もあったが、龍也は順調に鍛錬を続けていった。
鍛錬以外にやっている事と言ったら、霊夢にやる様に指示された雑用。
それに瞑想。
指示された雑用と言っても雑巾掛けや埃落とし、掃き掃除に風呂掃除位のものだが。
瞑想をしていた理由は、自身の精神世界に赴く為だ。
尤も、瞑想をしても龍也は自身の精神世界には行けなかったが。
そんなこんなで博麗神社に泊まり始めてから一ヶ月程経った頃、
「それじゃ、そろそろ行くな」
龍也は霊夢にそろそろ博麗神社を後にする旨を伝える。
準備は完了したと思ったからだ。
「あら、もう行くの? と言うか、よくもまぁ一ヶ月も毎日続けたものね」
霊夢が感心した表情を龍也に向けると、
「ま、こう言うのは毎日の積み重ねが大事だからな」
龍也は毎日の積み重ねが大事だと返す。
「ふーん……そう言うものなの?」
「そう言うもんだ」
「とてもじゃないけど、私にはマネ出来ないわね」
「お前はグータラ巫女だからな」
「失礼ね、ちゃんと巫女らしい事もしてるわよ」
そんな軽い会話を交わした後、
「ま、それはそれとして色々と世話になったな。ありがとう、霊夢」
龍也は礼の言葉を口にし、
「またな」
そう言って、霊夢に背を向ける。
「ええ、またいらっしゃい」
またいらっしゃいと言う霊夢の声を背に受けながら龍也は博麗神社を後にした。
銀色の髪をした少女を探す為に。
銀色の髪をした少女が何所に居るかは龍也には分からない。
ならば、虱潰しに探すだけだ。
勝つ為に。
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