橙と別れ、マヨヒガを抜ける為に移動を始めてから暫らくすると、

「寒ッ!!」

冷風が龍也の体を襲う。
どうやら、無事にマヨヒガを抜ける事が出来た様だ。

「……さっきまで暖かい場所に居たせいか、余計に寒く感じるな」

龍也はそう口にするも、屈み込む様な事はしない。
寒いと言っても、アリスが作ってくれた防寒具のお陰で十分に耐え切れる寒さであるからだ。
異変のせいで冬が長くなっている事もあってか、龍也はアリスに深い感謝の念を抱きがら先へと進んで行くと、

「お……」

妖精の大群が現れ、大量の弾幕を放って来た。
迫って来る弾幕を避けながら龍也も弾幕を放ち、妖精達を撃ちと落としていく。
現れた妖精を全て撃ち落すと、

「ん……」

一際強い風が吹き、雪が舞い吹雪く。
龍也は腕を眼前に翳しながら目を瞑ってやり過ごす。
そして、風が弱くなったのを感じるのと同時に腕を降ろして目を開くと、

「うーむ……」

雪が舞った影響で少し先が少々不明瞭になっている事が分かった。
少々視界が悪くなった程度では先へ進む事に何の問題も無いが、妖精達が現れた時に反応が遅れてしまうかもしれない。
このまま進むか少し雪が晴れるまで待つか。
どちらにするか考えながら周囲を見渡すと、

「お……」

龍也の目に森らしきものが映った。
森の中ならば此処よりも視界が良い筈だ考えた龍也は森の中を通って進む事を決め、突っ込む様にして森の中へと入って行く。
木と言う障害物が多数ある為か、森の中の視界は比較的良好であった。
が、

「行き成り手荒い歓迎だな、おい」

視界の良さと引き換えにするかの様に森の中に入って早々に妖精達の弾幕による歓迎を龍也は受けてしまう。
だからと言って、龍也がやられてしまうと言う事はない。
迫り来る弾幕を龍也は器用に避けながら弾幕を放ち、妖精達を撃ち落しながら先へと進んで行く。
進んでも進んでも途切れる事なく現れて弾幕を放って来る妖精に少々苛付いてると、

「そういや……」

龍也はある事に気付いた。
気付いた事と言うのは妖精の強さだ。
どうも、人里を出てから現れた妖精よりもこの森の中で現れた妖精の方が強いのである。
単純に住んでる場所によって妖精の強さが違うと言ってしまえばそれまでだが、龍也にはそれが妙に引っ掛かっていた。
この引っ掛かりを取る為に龍也は弾幕を放ちながら頭を捻っていくと、

「そうだ、レミリアが起こした時の異変でも……」

思い出す。
レミリアが起こした異変を解決する為に紅魔館に向かった際、先へ進めば進む程に妖精が強くなっていった事を。
特に弾幕の量や速度などは最後の方に出て来た妖精の方が大きく上回っていた。
これが全ての異変に当て嵌まるのなら、異変の首謀者に居所に近付けば近付く程に妖精は強くなると言う事になる。
無論、これは何の確証も無い只の仮説だ。
しかし、この仮説が正ければ龍也は順調に目的地へと近付いていると言う事。

「……ま、今はそれを信じるしかないか」

龍也は自分が立てた仮説を正しいと思う事にし、進行スピードを上げていく。
基本は暖かいと感じる場所を目指して行き、途中で妖精が強くなっていないと感じたら進路変更。
と言う予定を龍也が立てた時、

「……あれ?」

突如、妖精の襲撃が止んでしまった。
行き成り予定の一つが崩れ去ってしまったではないか。
幸先悪いなと龍也が思っていると、

「あら、龍也じゃない」

アリスが現れた。

「アリス」

アリスの姿を見た龍也は少し驚いた顔をしながら、

「アリスがここに居るって事は、ここは魔法の森か?」

現在地は魔法の森かと尋ねと、

「ええ、ここは魔法の森よ」

アリスはここが魔法の森である事を肯定する。
どうやら、龍也が入った森は魔法の森であった様だ。

「処で、龍也は魔法の森で何をしてたの? 旅をしている途中で魔法の森に立ち寄ったのかしら?」

アリスが旅の途中で魔法の森に立ち寄ったのかと尋ねると、

「いや、違う。一応……異変解決って事になるのかな?」

龍也は旅の途中で立ち寄った事を否定し、一応異変解決であると答える。
正確に言うのであれば、銀色の髪をした少女へのリベンジ行う序に春を取り戻すと言う事ではあるが。

「異変解決……ああ、成程。この長い冬の事ね」

アリスが納得がいったと言う顔になった。
そんなアリスの表情を見て、

「若しかして、アリスはこの長い冬が異変だって知ってのか?」

龍也は長い冬が異変だと知ってのかと問う。

「ええ。と言っても気付いた少し前にだけどね」

アリスは少し前にこの長い冬が異変である事に気付いたのだと言い、

「日付を確認したら五月だって言うのに雪が思いっ切り残ってるじゃない。それで少し調べてみたら遠くの方に春度が集中しているのが分かったのよ」

遠くの方に春度が集まっていると言う事を龍也に伝える。

「春度ねぇ……そういや、気になっていたんだが春度って何なんだ?」
「そうね……簡単に言うと春にする為に必要なものね」
「成程」

アリスの説明で良く分かったと言う表情を龍也が浮かべると、

「春度が自然現象で一箇所に集まると言うのは考え難いから、おそらく人為的なものね。犯人は春告精辺りかしら?」

アリスは春度は一箇所に集まるのは人為的なものだと言い、犯人は春告精ではないかと考えていく。

「春告精?」

初めて聞く単語であったからか、龍也が思わず首を傾げると、

「春を告げる妖精の事よ」

春告精とは春を告げる妖精の事だとアリスは龍也に教えた。

「妖精ねぇ……」

龍也はふと、銀色の髪をした少女の風貌を思い浮かべる。
龍也が今まで出会って来た妖精は皆が皆、羽を生やしていた。
しかし、銀色の髪をした少女は羽を生やしていない。
この事から、

「いや、あいつは妖精じゃ無い。春度を集めているのは妖精とは別の存在だ」

龍也は春度を集めているのは妖精ではなく別の存在だと言う。

「あら、春告精じゃ無かったの。それじゃあ、そいつは何の為に春度を集めてるのかしら?」

アリスは犯人が春告精では無いと聞いて少し驚いた表情を浮かべ、それならば犯人は何の為に春度を集めているのかと言う事を口にすると、

「いや、そこまでは俺も分からん」

龍也はそこまでは分からないと返しつつ、こんな事なら何の為に春度を集めているのか聞いて置けば良かったと思った。
流石に春を独り占めにして自分だけ暖まろうと言うのではないだろうが。

「あ、そうだ。春度って何所に集まってるんだ?」
「えっとそうね……ここからだと……あっちの方よ」

問われた事に答える様にアリスはある方向に向けて指をさす。
アリスが指をさした方向に龍也が顔を向けると、

「誰もこの冬を終わらせに行かなかったら私が行く積りだったけど、龍也が行くのなら任せても大丈夫そうね。異変解決、頑張ってね」

アリスは龍也に応援の言葉を掛ける。

「ああ、頑張るさ」

応援の言葉を受けた龍也は頑張ると返し、アリスが指をさした方へと進んで行く。





















アリスが指をさした方向へ一直線に進んでから暫らくすると、

「随分暗い場所に来たな……」

龍也は周囲の様子を見ながらそう漏らす。
移動やら弾幕ごっこやら色々している間に夜になってしまったのだろうか。
現在の時刻を確認する為に龍也がレミリアから貰った懐中時計が入っているポケットに手を入れ様とした時、

「ん……あれは……」

回転する謎の飛行物体が編隊を組んで近付いて来ているのが龍也の目に映る。
龍也がその存在を認識するのと同時に、回転する謎の飛行物体はかなりの速度と密度を持った弾幕を放って来た。

「っとお!!」

行き成り攻撃された事に龍也は驚きながらも、大きく移動して迫り来る弾幕を避けていく。
そして、龍也も弾幕を放って回転する謎の飛行物体を撃ち落そうとする。
龍也が放った弾幕は回転する謎の飛行物体が放つ弾幕と相殺し合って数を減らすものの、龍也の弾幕は無事に回転する謎の飛行物体に着弾していく。
数の減った弾幕で撃ち落せるかと言う不安が少しあったが、弾幕が一発二発当たっただけ回転する謎の飛行物体は撃ち落されていった。
それを見るに、耐久性はそこ等辺の妖精と変わらない様だ。
次々と撃ち落されていく回転する謎の飛行物体を見ながら、

「あ、そう言えばレミリアの起こした異変を解決する為に紅魔館に向かっている道中でこいつ等を見たな。確か……霧の湖辺りで」

レミリアの異変を解決する際に霧の湖付近で回転する謎の飛行物体と出会っていた事を思い出す。

「でも、普段の旅の中で見た事は無いな。偶然か、それとも異変の時にだけ現れるのかな……」

回転する謎の飛行物体が現れるのは異変の時限定かそうでないのかを考え様とした時、

「あ……終わってた」

龍也は回転する謎の飛行物体を一掃し終えていた事に気付き、弾幕を放つのを止めて息を一つ吐く。

「……さて、先へ進んで行けば襲撃も激しくなるだろうし気を引き締め直すか」

ここに来るまで然程激しい襲撃が無かった為、龍也は緩んでいた気を引き締め直して移動を再開する。
移動を再開して直ぐに回転する謎の飛行物体と妖精が現れ、弾幕を放って来た。
今度は気を引き締めていたと言う事もあってか、龍也は余裕が見られる動きで迫って来る弾幕を避けていく。
その中で、妖精の放つ弾幕が魔法の森で襲って来た妖精が放つ弾幕よりも強いと言う事を感じていた。
異変の首謀者の居所に近付けば近付く程に妖精が強くなると言う推察は合っているのかもしれないと龍也は考えながら、

「そら!!」

弾幕を放って回転する謎の飛行物体と妖精を撃ち落していく。
襲撃者を撃退しながら順調に先へと進んで行くと、

「春ですよー!!」

一体の妖精が現れた。

「……ん?」

現れた妖精に何処か見覚えがあった龍也は頭を捻らせた時、

「あ、思い出した。あの時の妖精か」

思い出す。
銀色の髪をした少女に出会う少し前に今と同じ春ですよと言う台詞を口にしながら行き成り現れて弾幕を放って来た妖精の事を。
あの時の妖精がどうしてこんな所にと言う疑問を龍也が抱いた瞬間、現れた妖精は弾幕を放って来た。

「行き成りかよ!!」

考える暇は与えんと言わんばかり放たれた弾幕に龍也は悪態を吐きながらも回避行動を取る。
まぁ、幻想郷で急に戦いを挑まれるのは何時もの事ではあるが。
何時もの事と言ってもこの妖精が進行の邪魔をしている事は事実。
さっさと撃退して先に進む為に龍也が妖精に向けて弾幕を放とうとした時、

「消えた!?」

妖精の姿が消えた。

「何所だ!?」

消えた妖精が何所に行ったか探す為に龍也が顔を動かしていると、

「ここですよー!!」

消えた場所の直ぐ近く妖精が現れ、弾幕を放つ。
離れた場所に現れるものだと思っていた龍也は反応が遅れてしまったものの、何とか弾幕を避けていく。
そして弾幕を避け切った後、反撃を行う為に妖精が現れた方に体を向ける。
が、龍也が体を向けた先には妖精の姿は無かった。
どうやら、また姿を消した様である。

「ちぃっ!!」

龍也は舌打ちをしながら消えた妖精を探そうとすると、妖精はまた消えた場所の付近に現れて弾幕を放って来た。
妖精の姿を捉え切れない事もあってか、龍也も回避行動に専念しながらどうすべきか考える。
正直な話し、妖精が現れて弾幕を放ち、その弾幕を避けて反撃に移ろうとした時には妖精は消えてしまっているので有効な手が無い。
しかし、何か良い手を考えなければジリ貧だ。
突破口を探す為に妖精の動きと弾幕を観察していくと、

「……ん?」

龍也は気付く。
一旦消えてから次に再び現れる位置はそこまで離れていない事に。

「……そうだ」

その事に気付いた龍也は何かを思い付いた表情を浮かべ、弾幕よりも妖精の方に注意を向ける。
注意を弾幕から妖精に向けたせいで龍也の体に弾幕が掠り始めるが、龍也は気にした様子を見せない。
弾幕が体に掠り始めてから少しすると、妖精が再び姿を消した。
妖精の姿が消えた瞬間、

「今だ!!」

龍也は残っている弾幕の中を掻い潜る様にして妖精が消えた場所へと向って行く。
そして妖精が消えた場所まで後半分と言った所まで来ると、龍也は進行を止めて大量の弾幕を広範囲に向けて放つ。
放たれた弾幕が妖精が消えた付近にまで迫ると、消えていた妖精が現れ、

「ッ!?」

驚きの表情を浮かべる。
それも無理はない。
姿を現したら目の前に大量の弾幕が迫って来ていたのだから。
そう、龍也が思い付いた事と言うのは妖精が現れるであろう場所に大量の弾幕をばら撒くと言う事だったのだ。
妖精が驚いている間に龍也が放った弾幕は妖精に着弾して爆発を起こして爆煙を発生させる、
発生した爆煙に妖精が包まれていく様子を見た龍也は一旦弾幕を放つのを止め、爆煙が晴れるのを待つ様に少しの間静観に徹していると、

「お……」

爆煙が晴れ、爆煙の中から多少ボロボロの姿となった妖精が姿を現した。
そこ等の妖精なら既に撃ち落せていた弾幕量であったが、やはりと言うべきかこの妖精はそこ等の妖精よりもずっと強い様だ。
多少ボロボロになったと言ってもまだまだ健在と言う様な妖精の姿を見て、龍也は何時仕掛けて来ても良い様に身構えたが、

「……あれ?」

妖精は何所かへと逃げて行ってしまった。
肩透かしを受けた気分になりながら、

「そう言えば、春ですよって言ったけど……あいつがアリスの行ってた春告精って奴かな?」

龍也は今現れた妖精は春告精ではないかと考える。
何でこんな所にと言う疑問を抱いたが、直ぐに春である事を伝える為に様々な場所を飛び回っているのかもと言う考えが頭を過ぎった。
ああやって様々な場所を飛び回って春である事を伝えるのは大変だなと思いつつ、龍也は先へと進んで行く。
それから暫らくすると、

「お……」

龍也は明るい場所に出た。
少し眩しさを感じるも状況を確認する為に一旦止まって周囲の様子を伺っていくと、

「……雲の上まで来ていたのか」

雲の上まで来ていた事を知り、龍也は驚きの表情を浮かべる。
流石にここまで来る事になるとは思わなかったからだ。
驚きの表情を浮かべながら、

「てか、夜になってたって訳じゃなかったのか。雲の層が厚かっただけかな?」

先程まで暗かった理由を推察しつつ改めて周囲を様子を伺い始めた時、龍也は気付く。
然程息苦しくないと言う事に。
ここまで高度を上げれば息苦しくなっても可笑しくないのが。

「んー……強くなったからかな?」

龍也は息苦しくない無い原因を強くなったらからではと言う推察を立るも、

「ま、別に悪い事じゃないし考えても答えは出ないだろうから」

悪い事じゃなないし考えても仕方が無いと結論付け、移動を再開する。
移動を再開して少しすると、また大量の妖精達が現れて弾幕を放って来た。

「……ま、妖精ってのは何所にでも居るって話だからな。ここに居ても不思議じゃないか」

雲の上にも妖精が現れた事に龍也は少し驚くも、直ぐに弾幕を放って妖精達を撃ち落していく。
無論、妖精の放つ弾幕に当たらない様に気を付けながら。
そんな風に順調なペースで進んで行くと、妙に強い妖精が一体現れた。
大体、大量に出て来る妖精の十体分位であろうか。
少なくとも、弾幕量はそれ位ある。
しかも、

「頑丈だな、おい」

弾幕の二発三発では落ちる様子が全く見られ無い。
耐久面でも普通の妖精よりもずっと上の様だ。
だが、幾ら強いと言っても相手は一体。
それに先程現れた春告精と思わしき妖精よりも強くはなく、落ち着いて対処した事もあってか現れた妖精は直ぐに倒す事が出来た。
妖精を倒し、再び移動を始めてから暫らくすると、

「あれは……でっかい扉? いや、門か」

龍也の目に巨大な門の様なものが映る。
更に、門の近くには幾つか角材らしきものが下から伸びていた。
中々と言うより、普通は見られない様な光景である。
龍也は一旦止まって周囲を見渡すが、

「……何もないな」

巨大な門と角材らしきもの以外は特にこれと言ったものは見られなかった。
ならば、銀色の髪をした少女はこの門の先に居るのではと考えた龍也は改めて門に視線を移し、

「どうやってあの門を越えるかな……」

門を越える為にはどうすれ良いか考える。

「流石に押したら開くって訳でもないだろうし……」

そう呟きながら頭を回転させていくと、

「こんな所にお客さんが来るなんて、珍しいね」

何所からか、そんな声が聞こえて来た。
声が聞こえて来た方に顔を向けると肩口位までに揃えられた茶色い髪に赤い帽子を被り、赤い服を来た明るい雰囲気をした少女の姿が龍也の目に映る。

「……誰だ、あんた?」
「私? 私はリリカ・プリズムリバー」

現れた少女は快く自分の名を名乗り、

「そう言う貴方は誰?」

龍也は誰かと問う。

「俺は龍也。四神龍也だ」

龍也の自己紹介を聞くと、

「ふむふむ、龍也ね」

リリカは龍也の名を覚えたと言う表情を浮かべる。
そんなリリカを見ながら、

「なぁ……」

龍也が何か言葉を紡ごうとした時、

「あれ、お客さんかい? リリカ」
「誰と話してるのー?」

二人の少女が現れた。
一人は肩口付近で揃えられた金色の髪に黒い帽子を被り、黒い服を来たクールと言う雰囲気がする少女。
もう一人は薄い水色の髪を肩を少し越す程度に伸ばし、白っぽい帽子と服を身に着けて楽しそうと言う雰囲気がする少女。
現れたのはこの二人の少女だ。
二人ともリリカと顔立ちが似ている事から姉妹か何かかと考えながら、

「誰だ?」

龍也はリリカに現れた二人は誰だと訪ねる。

「ルナサとメルラン。二人とも私の姉さんだよ」

リリカの返答を聞き、やはり姉妹だったかと龍也が思っていると、

「貴方はだーれ?」

メルランが龍也は誰かと尋ねて来た。
それを聞いて龍也は自分の名を名乗ろうとしたが、

「龍也って言うらしいよ」

その前にリリカが龍也の名を伝える。
出鼻を挫かれたと言う表情を龍也が浮かべていると、

「龍也か。それで、龍也はここに何しに来たんだい?」

ルナサがここに来た理由を問う。

「そのでかい門の先に用があるんだ。出来るんなら、その門を開けて欲しいんだが……」

龍也は門の先に用がある、出来るのなら門を開けて欲しいと口にする。
すると、リリカは何かを思い付いた様な笑みを浮かべた。
その笑みを見て、龍也は何か嫌な予感を感じていると、

「良いよ、この先に行っても。但し、弾幕ごっこで私に勝てたらね」

リリカは弾幕ごっこで自分に勝てたら通すと言う。
リリカの笑みを見て感じた嫌な予感はこれだったのかと龍也は思いつつも表情を引き締め、

「良いぜ、だったらお前を倒して先へ進ませて貰うぜ」

勝って押し通ると言う旨を口にする。
龍也の宣戦布告の様な言葉を受けてリリカが嬉しそうな表情を浮かべると、

「頑張ってねー」
「手助けが必要なら何時でも受け付けるよ」

メルランとルナサはリリカに応援の言葉と救援要請は何時でも受け付けると言う言葉を掛けて龍也とリリカから離れて行く。
二人が十分に離れると、

「それじゃ、いっくよー!!」

リリカは龍也に向けて中々に密度の高い弾幕を放つ。
迫って来る弾幕を見て、僅かな隙を見付けた龍也は弾幕と弾幕の間に体を滑り込ませ、

「そら!!」

リリカに向けて弾幕を放つ。
が、

「おっと!!」

龍也が放った弾幕は容易く避けられてしまう。
リリカの弾幕と相殺し合わないように弾幕の量を抑えてコースを考えたのがいけなかったと考えた龍也はリリカから距離を取りながら高度を上げ、弾幕を放つ。
弾幕の雨に曝される様な形ではあるが、リリカはそれを器用に避けていく。
龍也が上から、リリカが下からと言う形で弾幕を放ち合い始めてから少しすると、

「やるねぇ、龍也」

リリカは龍也に賞賛の言葉を掛ける。

「そいつはどうも」

龍也がどうもと返すと、リリカは龍也と同じ高度にまで上がって懐に手を入れてスペルカードを取り出す。
そして、

「冥鍵『ファツィオーリ冥奏』」

リリカはスペルカードを発動した。
その瞬間、リリカから弾幕が放たれる。
放たれた弾幕を目で追いながら、

「……左右から迫って挟み込むのがメインのスペルカードか」

どの様なスペルカードであるか理解していく。
龍也は間合いの取り方を間違えれば容易く挟み撃ちに合うと判断を下し、慎重に距離を調整していくと、

「……ん?」

ある事に気付く。
何に気付いたのかと言うと、挟み込み始める場所がバラバラであると言う事だ。
このスペルカードで放たれる弾幕にある程度相手を追尾する機能があるのではと龍也は考えながら回避を続けていくが、一向に攻めに転じられない。
しかも移動可能な範囲にリリカが放った弾幕が結構残っている為、回避先も徐々に少なくなっていく。
弾幕に呑まれるのも時間の問題だと感じた龍也は懐に左手を入れてスペルカードを取り出しながら右手をリリカの方に向け、

「霊撃『霊流波』」

スペルカードを発動させる。
すると、龍也の右手の掌から青白い閃光が迸った。
閃光は弾幕を打ち消しながらリリカヘと突き進んで行くが、

「ッ!?」

リリカは閃光が当たる寸前で何とか反応し、迫り来る閃光を回避した。
飛んで行った閃光を見送った後、

「ふぅ……危ない危ない」

リリカは冷や汗を流しながら龍也の方に視線を戻す。
健在のリリカを見て、これで決まりと言う都合の良い展開にはならなかったかと言う事を龍也が思っていると、

「大丈夫?」
「苦戦してるわね」

ルナサとメルランが戻って来た。
先程の一撃を見て、不安になったのだろうか。

「手助け必要?」
「うん、必要」
「おっけー!! それじゃ、何時も通りに!!」

ルナサ、リリカ、メルランに三人はそう会話を交わした後、線を繋げば三角形に成る様なフォーメーションを取った。
フォーメーションを取った三人を見て龍也が思わず身構えると、プリズムリバー三姉妹は懐に手を入れてスペルカードを取り出し、

「「「合葬『プリズムコンチェルト』」」」

スペルカードを発動させる。
スペルカードが発動するとルナサが弾幕を放ち、メルランとリリカが少し射程の短いレーザーを放ちながら動き回って龍也の移動を制限する様に動く。
三人で発動するスペルカードを初めて見た龍也は驚きの表情を浮かべてしまうも、

「ちぃっ!!」

直ぐに回避行動に移る。
初めて見るタイプのスペルカードであったからか、龍也は危な気な動きで攻撃を回避して行く。
危な気な動きでも直撃を受けずに体で掠らせるだけで済んでいるのは、偏に魔理沙とアリスが龍也の修行に付き合ってくれたお陰だろう。
早い内にこのスペルカードにも慣れて反撃に転じなければと思いながら龍也は迫り来る弾幕を避ける為に移動するが、

「ッ!?」

回避先の近くにメルランとリリカの二人の姿があった。
どうやら、ルナサが放つ弾幕ばかりに警戒がいっていた為にこの二人に対する警戒が薄くなっていた様だ。
このままではメルランとリリカが放つレーザーの直撃を受けてしまうと直感的に感じた龍也は慌てて回避行動を行うと、

「「……え!?」」

メルランとリリカは驚きの声を上げる。
同時に、

「……ん?」

龍也は驚きの表情を浮かべた。
今、龍也が取った回避行動は一種の緊急措置。
メルラン、リリカが放つレーザーは兎も角、ルナサが放つ弾幕には当たると龍也は思っていた。
だと言うのに、

「被弾……していない……?」

龍也に被弾した様子は見られない。
しかも、

「俺……一瞬でここまで移動したのか……?」

今居る位置と先程まで居た位置は大きく離れていた。
白虎の力を使っている時ならまだしも、それを使っていない状態で一瞬でここまで移動出来るのかと考え始めた時、

「ッ!!」

龍也は弾幕が迫って来ている事に気付く。
弾幕が迫って来ているのなら考えるのは後回しだと言わんばかりに回避行動に徹する。
最初は弾幕だけで余裕であったが、途中からレーザーを放っているメルランとリリカ合流して来たので弾幕を避ける困難になって来た。
この状況から脱する方法は一つある。
先程行った様に一瞬で移動する事だ。
幸いな事に、龍也は体をその感覚を覚えている。
なので、覚えている感覚で移動してみると、

「出来た……」

また一瞬で移動する事が出来た。
龍也はこの感覚を忘れない様にし様と、今の移動方法を繰り返していく。
この移動方法を繰り返す中で移動した先が弾幕が密集していた所で焦ったと言う事が何度かあったが、龍也はこの感覚を覚える事が出来た。
今覚えた移動方法は今後とも役立つであろう。
しかし、現状では迫って来る弾幕やレーザーを避け続けるのが精一杯で反撃も儘ならない。
ならば、瞬時に反撃を取れば良いだけ。
龍也はそう考えながら懐に手を入れてスペルカードを取り出し、

「龍腕『青龍の鉤爪』」

スペルカードを発動させる。
その瞬間、龍也の瞳の色が黒から蒼に変わってに上空に水で出来た龍の腕が現れた。
現れた龍の腕はルナサ、メルラン、リリカの三人に目掛けて振るわれる。
振るわれた腕を見た三人は攻撃を止めて慌てて回避行動に移った時、水で出来た龍の腕は三人の居た場所を通過する。
攻撃が外れた事で三人が安堵の息を漏らすも、直ぐに腕が通った跡から水の弾幕が生まれて全方位に向けて飛んで行く。
これは予想外であったからか弾幕の幾らかは三人に当たってしまう。
水で出来た龍の腕が振るわれ、その軌跡から放たれた水の弾幕を三人が必死に避けると言う事を何度か繰り返すと、

「お……」

龍也のスペルカードは発動を終わらせた。
どうやら、スペルカードの制限時間が過ぎた様だ。
龍也は自分のスペルカードの発動が終わった事を知るのと同時にプリズムリバー三姉妹のスペルカードの発動も終わっている事に気付き、

「……あ、そう言えばスペルカードには制限時間があったな」

今更ながらにスペルカードに制限時間があった事を思い出す。
これならスペルカードの発動が終わるまで回避に徹すると言う方法もあったが、

「……ま、それは俺の趣味じゃないな」

その方法は自分の趣味ではないと呟く。
龍也がそんな事を呟いている間にプリズムリバー三姉妹は線を繋げば綺麗な三角形を描く様なフォーメーションを取りながらスペルカードを取り出し、

「「「大合葬『霊車コンチェルトグロッソ』」」」

スペルカードを発動させる。
三人で一斉に放つタイプのものであったからか弾幕の量や密度が今までよりも桁違いに多い。
先ずは回避に徹し、龍也は反撃の糸口を探していくが、

「ッ!?」

見付からなかった。
弾幕を放ってもプリズムリバー三姉妹が放つ弾幕を僅かに相殺させるだけだろう。
雀の涙。
焼け石に水だ。
プリズムリバー三姉妹が放つ大量の弾幕のせいで回避先がどんどんと無くなっていく中、このままでは弾幕に呑まれると感じた龍也は、

「四の五の言ってる暇は無いか……」

懐に手を入れてスペルカードを取り出そうとする。
その瞬間、

「なっ!?」

龍也の後方から星型の弾幕が大量に飛んで来た。
まるで龍也を守るかの様に。
驚いた表情を浮かべながら後ろを振り向くと、

「助っ人その一、参上だぜ!!」
「魔理沙!?」

魔理沙の姿が龍也の目に映った。
何でこんな所にと言う台詞を龍也が言おうとしたが、

「一対一なら手を出す気は無かったんだが、三対一だったんで手を出させて貰ったぜ。ちなみに私達も異変解決だぜ」

その前に魔理沙がここに来た理由を口にする。

「その一と私達って事は……」

魔理沙の言葉で何かに気付いた表情を龍也が浮かべると大量のナイフがプリズムリバー三姉妹に向かっていったのと同時に、

「となると、私は助っ人その二かしら」

咲夜が現れた。

「咲夜」

龍也が咲夜の存在を認識すると、咲夜は龍也に向けてペコリとお辞儀をする。
そして咲夜が顔を上げると、

「……ん?」

龍也に影が掛かった。
上空に何かあるのと思った龍也が顔を上に向けると、

「霊夢」

霊夢の姿が龍也の目に映る。
龍也が霊夢の存在を認識していると、

「神霊『夢想封印』」

龍也はスペルカードを発動させた。
霊夢をからに七色に光る弾が次々と放たれ、プリズムリバー三姉妹に向っていく。

「……あ、これは無理。数の暴力ってやつね」
「多勢に無勢ねぇー」
「ちょっ!? 四対三はずるっ!?」

プリズムリバー三姉妹の悲鳴の様なものが聞こえたところで、七色に光る弾が直撃していった。
七色に光る弾が直撃していっている様子を見ながら、

「いや、三対一で挑んできたお前等が言っても……」

龍也のそんな事を呟いたが、その呟きは風に流され消えてしまう。























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