幻想郷に春が来ないと言う異変を解決してから一週間程の時が過ぎると、幻想郷で何時までも見られていた雪の大半は溶けていた。
この分なら、近日中に完全な春が幻想郷に訪れる事であろう。
春が来訪が待ち遠しいと言った感じの幻想郷の何所かで、

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

龍也は妖怪達と戦っていた。
戦っている龍也の瞳の色は紅。
朱雀の力を使っている様だ。

「……春にかなり近くなったからか、冬の時に出て来た妖怪は全然見ないな」

周囲の様子を伺いながら殆ど春であるからか冬に見た妖怪は見ないなと呟いた時、

「ん……」

龍也は正面から妖怪が迫って来ている事に気付く。
周囲の様子を伺っていた龍也を見て隙有りと判断したのだろうか。
向こうがどの様な判断をしたのかは龍也には分からないが、迫って来ているとなればやる事は一つ。
迎撃するだけだ。
龍也はタイミングを計りながら腰を少し落とし、迫って来ている妖怪が自分の間合いに入った瞬間、

「だりゃああああああああああああああああああああ!!!!!!」

龍也は両足に炎を纏わせながら迫って来ていた妖怪に向けてドロップキックを叩き込んだ。
ドロップキックを叩き込まれた妖怪は燃えながら吹っ飛んで行き、地面に激突してから少しすると完全に燃え尽きてしまった。
自分達の仲間が容易く返り討ちにあったのを見て、残っていた妖怪達は思わず後退りを始めてしまう。
その様子を見た龍也は敵が弱気になったと判断し、自身の力を変える。
朱雀の力から白虎の力へと。
力の変換に伴い、龍也の瞳の色が紅から翠に変わる。
そして両腕両脚に風が纏わさられると、龍也は妖怪が一塊になっている方に体を向け、

「しっ!!」

腕を大きな動作で上げた。
するとどうだろう。
妖怪達が固まっている場所に超小型の竜巻が発生したではないか。
竜巻が発生した事で妖怪達は次々と宙へと舞い上げられ、竜巻から弾かれる様に墜落して行って辺り一帯に大きな激突音が響き渡った。
同時に、発生していた超小型の竜巻が消滅する。
結構な高さから墜落したのでこれで終わったと龍也は思ったが、そうはならなかった。
何故ならば、

「……しぶといな」

墜落した妖怪達は何とかと言った感じで立ち上がったからだ。
野生で生きているからか、生命力に満ち溢れているのかもしれない。
だからか、龍也は気合を入れ直した表情をしながら構えを取り直す。
しかし、

「……あれ?」

生き残った妖怪達は悲鳴を上げて逃げて行ってしまった。
どうやら、先程の竜巻で完全に戦意を喪失してしまっていた様だ。
龍也は肩透かしを喰らってしまった様な気分になったものの、戦いが終わったので自身の力を消す。
力を消した事で両腕両脚に纏わさっていた風が四散し、瞳の色が翠から黒に戻ると、

「ふぅ……」

龍也は一息吐きながら自分の掌に目を向け、改めて理解する。
自分の力が上がっている事に。
上がっているのは何も基本能力だけはない。
四神の力を使った技の威力も上がっているのだ。
炎を使った技、風を使った技、地を使った技、水を使った技の全てが。

「でも、力が上がっただけじゃないんだよな……」

龍也はそう呟きながら、新たに出来る様になった事を思い返す。
今までは炎、風、地、水と言ったものは基本的に手からしか出せなかったが、今回の様に足からも生み出せる様になった。
この分なら、全身から生み出すと言った事も可能であろう。
更に、自分から生み出したものだけではなく既に存在する炎、風、地、水と言ったものも操れる様になったのだ。
いや、操れると言うよりは支配出来る様になったと言った方が正しであろうか。
先程の様にある場所から超小型の竜巻を発生させる事など容易く出来る。
これだけ見ればかなり万能の様に見えるが、そんな事は無い。
欠点が二つあるのだ。
一つは既に存在する炎、風、水を操って攻撃などに使った場合、自分で生み出した炎、風、水に比べて威力がかなり劣ると言う点。
もう一つは剣や盾と言った様な複雑な形に変える事が出来ないと言う点。
欠点と言うのはこの二つの事だ。
これでは、既に存在しているもの操って攻撃させる場合は牽制程度にしかならないであろう。
龍也と相手の実力差によっては牽制にもならないかもしれない。
しかし、玄武の力で扱う地だけは話が変わって来る。
何故ならば、玄武の力で操る既に存在しているものは大地と言う広大で雄大なものだからだ。
例を上げると、広範囲の大地を隆起させて攻撃するとなればかなりの威力となるであろう。
他にも地割れを起こして割れた大地の中に敵を落とし、割った大地を閉じて敵を圧殺すると言う方法も取る事が出来る。
と言う様に玄武の力ではこの様な方法が取れるので、既に存在する地を操る場合は炎、風、水と違ってそれなりの威力を出す事が可能なのだ。
尤も、現在の龍也では相手にダメージを与える程の大地を操る事は出来ないが。
仮に操れたとしても、操り切るまでにかなりの時間が掛かる事であろう。
とてもじゃないが実戦では使えない。
この辺は要練習と言ったところである。
何はともあれ、戦いの幅は広がるであろうと言う事を龍也は考えながら、

「そういや、こう言う事が出来る様になったのは……妖夢と戦った後だったな……」

出来る事が増えたのは妖夢と戦った後であった事を口にする。
その事を口にした龍也は妖夢との戦いを思い返し、

「……まだ、あれを試してなかったな」

そう呟きながら自身の力を変える。
朱雀の力へと。
力の変換に伴い瞳の色が黒から紅に変わると、龍也は妖夢との戦いを思い出しながら、

「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

霊力を解放した。
龍也の体中から青白い光が溢れ出すと、龍也の姿が変わり始める。
紅い瞳が輝きを発し、髪の色が黒から紅に変わっていく。
外見的な変化が終わると、龍也は両手を合わせて炎の大剣を生み出す。
生み出された炎の大剣は普段朱雀の力を使っている時に生み出している炎の大剣よりも出力が高く、より紅く見える。
普段よりも紅く見えるのは出力が高いからであろうか。
少しの間炎の大剣を観察した後、龍也は炎の大剣の切っ先から爆炎を迸らせながら振り被り、

「はあ!!」

勢い良く振り下ろす。
すると、炎の大剣から爆炎が放たれた。
放たれた爆炎は少し先の方に在った雪に激突し、雪を容易く蒸発させる。
無論、この放たれた爆炎も普段朱雀の力を使っている時に放つ爆炎よりも威力はずっと上だ。
そう、龍也が試していなかった事と言うのは妖夢との戦いで突如目覚めたパワーアップ。
正確に言うと四神の力を一段階上のレベルに引き上げると言う事なので、パワーアップと言うよりは力の解放と言った方が正しいだろう。
兎も角、力を解放した状態になると技の威力と龍也の基本能力が大幅に上がるのだ。
但し、力を解放した状態は、

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

消耗が激しいのである。
力の解放を少しの間維持しただけで息が切れてしまう程に。

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

龍也は切れている息を何とか整えながら炎の大剣を消し、力を消す。
髪と瞳の色が元の黒色に戻ると、龍也は膝に手を付けながら思う。
力を解放した状態での戦闘可能時間は大よそ五分程であると。
こんな短い時間しか維持出来ないのであれば、ここぞと言う時に使おうと考えるのが普通である。
だが、龍也の考えは違った。
龍也は力の解放に体を慣れす為に出来るだけ使っていこうと考えているのだ。
使い続けていけば何れは力の解放を行っても消耗する事は無くなるだろう。
但し、そうなるまでは力の解放の使い所と使用時間は考えなければならない。
幻想郷を自身の足を使って旅をしている以上、何時襲撃を受けるか分かったものではないからだ。
最低でも、襲って来た相手を返り討ちにする位の力は残して置く必要がある。
龍也はその事を頭に入れながら膝から手を離し、

「ふぅ……」

一息吐き、自分の体の調子を確かめていく。
力の解放をしていた時間が短かった為か、動けない程の疲労感を龍也は感じていなかった。
これらな、今直ぐ出発しても問題ないだろう。

「……よし!!」

龍也は気合を入れ直しながら、目の前の方向へ足を進め始めた。





















龍也が力の解放を体に慣らさせる事を決意してから数日程の時が流れると、チラホラと見られていた雪も見られ無くなっていた。
幻想郷に春が訪れたと言って良いだろう。
それは良い事なのだが、龍也には一つだけ問題があった。
問題と言うのは、

「……暑い」

暑さだ。
あの長かった冬は終わりを告げ、幻想郷は急激な早さで春になった。
つまり、急激な早さで気温が上がっていったと言う事。
そんな中で、龍也は防寒具を着込んでいる。
しかも手袋とマフラー付きで。
これでは暑がるなと言うのは無理と言うもの。
普通のペースで暖かくなっていったのならばまだ耐えられたかもしれないが。
龍也は暑くて堪らないと言った表情をしながら、

「どうすっかな……これ」

自身の防寒具を見ながらそう呟く。
龍也にはこの防寒具を捨てたり売ったりと言う選択肢は存在しない。
何故ならば、龍也が着ている防寒具はアリスが龍也の為に作ってくれたものだからだ。
それに、自分の為に作ってくれた物を売ったり捨てたりする事はアリスに対して失礼に値する。

「ほんと、どうするかな……」

龍也は幻想郷に自分の家と言う物を持っていないので、また次の冬が来るまで防寒具をちゃんとした場所に置いておく事は出来ない。
いや、レミリアに頼めば紅魔館の一室を何時までも貸してくれる事であろう。
なので、防寒具を紅魔館の一室に置いておくと言う方法は取れるであろうが、

「だからと言って、荷物置きの為だけに紅魔館の一室を借りるってのもな……」

流石に荷物置きの為だけに紅魔館の一室を貸して貰うのも気が引ける。
なので、

「んー……」

龍也は何か良い方法はないかと考えていく。
それから少しすると、

「……そうだ」

龍也は何か思い付いた様だ。
龍也が思い付いた事と言うのは、

「家を作るなり探せば良いんだ」

家を作るか探せば良いと言う事。
何とも単純な発想である。
が、家さえ持てば今龍也が持っている問題は解決する。
作るのは兎も角、見付けるのなら洞窟の様な場所が良いなと考えていると、

「…………あ」

龍也の頭の中に一つの問題は浮かんで来た。
浮かんだ問題と言うのは、

「防犯面……どうするかな……?」

防犯面である。
幻想郷を旅している以上、家を手に入れたとしても龍也がその家に居る事は殆どないであろう。
龍也が居ない間に妖怪や妖精が盗みに入ると言う可能性は十分にある。
家に結界などを張ればこの問題は解決するだろうが、生憎龍也に結界を張ったりする技能は無い。
問題が解決したら直ぐに次の問題が出て来るなと思った時、

「……霊夢」

龍也の頭の中に霊夢の姿が過ぎる。
その瞬間、

「……そうだ、霊夢に相談してみよう」

龍也は霊夢に相談すると言う事を考え付く。
霊夢は巫女だ。
結界の知識の一つや二つ持っていても何の不思議は無い。
もし結界の知識を持っていなかったとしても、何らかのアドバイスをくれる事だろう。
思い立ったら何とやら。
龍也は空中に躍り出て空中に霊力で出来た見えない足場を作ってそこに足を着け、空中を駆ける様にして博麗神社へと向かって行った。





















博麗神社に着くと龍也は賽銭箱にお賽銭を入れ、掃き掃除をしていた霊夢に事情を話し、

「と、言う訳で何かないか?」

何かないかと問う。

「そうね……」

何かないかと問われた霊夢は少し考え、

「要は、龍也以外を弾く様な結界を張るお札でも作れば良いんでしょ?」

龍也以外を弾く様な結界を張るお札を作れば良いんだろうと口にする。
思っていた以上に早くに解決策が提示されたからか、龍也は期待を籠めた目で霊夢を見ながら、

「頼む、それを作ってくれ」

結界を張るお札を作ってくれと頼む。

「……良いわ、何時もお賽銭入れてくれてるし。作って上げる」

霊夢は了承の返事を返しながら龍也に背を向け、

「お札が完成するまで、掃き掃除をしといてね」

手に持っていた箒を近くの木に立て掛け、自分に代わりに掃き掃除をして置く様に言って神社の中へと入って行った。
結界を張れるお札を作って貰う代償が掃き掃除なら安いものだなと思いながら、龍也は立て掛けられている箒を手に取って掃き掃除を始める。
掃き掃除を始めてから少しすると、龍也は力を解放した状態で掃除をしたらどうだと考える。
ここ、博麗神社なら動けない程に消耗したとしても外敵に襲われる事は無い。
力の解放を体に慣らすには絶好の機会だ。
思い立ったら何とやら。
龍也は早速力を解放した状態になる為に一旦掃除を止め、自身の力を変え様としたところで、

「……止めるか」

突如、力を解放した状態になる事を止めた。
何故か。
答えは簡単。
力を解放した状態になる為には霊力を解放する必要があるからだ。
霊力を解放したら当然、解放した余波で折角掃除した場所がまた散らかってしまう事であろう。
そんな事になったら、霊夢の怒りが爆発しそうだ。
序に言えば、力を解放してヘトヘトになって掃除が全然進んでいなかったら爆発とまではいかなくても怒る事は容易く予想出来る。

「……ま、余計な事はせずに大人しく掃除しとくか」

龍也はそう呟き、掃き掃除を再開した。
龍也が来るまでの間に霊夢が掃き掃除をしていたからか、

「うっし、こんなもんか」

結構早くに掃き掃除が終了する。
龍也は振り返って自分の掃除の出来栄えを確認していると、

「ちゃんと掃除はしてたみたいね。感心感心」

霊夢が神社から出て来た。

「ま、この程度の事はな」

その様に返しながら龍也は霊夢の方に体を向け、

「もう出来たのか?」

もう出来たのかと問い掛ける。

「ええ、出来たわよ」

霊夢は龍也に頼まれていたお札が出来た事を肯定しながら龍也に近付き、

「はい、これ」

作ったお札を龍也に手渡す。
手渡されたお札を龍也が受け取ると、

「それは貼り付けたら結界が展開されるタイプのお札。因みに結界の形は球状よ。で、注文通りこの結界は龍也以外の存在を弾く様に出来てるわ。
展開されている結界に龍也が触れたりすれば結界は解除され、解除されてから少しすると再び結界が展開されるの」

霊夢は渡したお札の説明をする。

「へー……」

龍也は霊夢の説明を聞きながらお札を観察をしていると、

「そのお札には私の霊力が入っているから暫らくは大丈夫だけど、何ヶ月か経ったらお札に霊力を補充しなさいよ。お札の霊力が切れたら結界は
展開されなくなるから」

お札に霊力を定期的に補充する様に霊夢は言う。

「分かった」

結界が展開されなくなったら困るので、龍也は忘れない様にしなければと決意しながらお札を懐に仕舞うと、

「あ、そうだ。そろそろお昼ご飯を作る積り何だけど……食べてく?」

霊夢は昼ご飯を食べていくかと尋ねて来た。

「お、良いのか?」
「ええ、昨日はお肉が沢山手に入ったからね」
「成程。その肉を腐らせる前に処分したいと」
「正解。龍也は男何だから女の私よりも沢山食べれるでしょ」

残飯処理をさせられる様な感じではあるが、龍也の腹は減っている。
なので、

「分かったよ、残飯処理位してやるよ」

龍也はお昼をご馳走になる事を決めた。

「残飯処理とは何よ残飯処理とは」

残飯処理と言われて霊夢が不機嫌になると、

「あー……違う違う。霊夢の手料理を食べられて俺は大層な幸せ者です」

龍也は霊夢の機嫌を直す様な言葉を口にする。
が、それでも霊夢の機嫌が直る気配は見られない。
なので、

「今度来る時は賽銭の量を奮発してやるから」

賽銭の話を持ち出す事にした。
すると、霊夢の機嫌は目に見えて良くなり、

「私はご飯を作ってるから、その間は居間で待ってなさい」

龍也に居間で待つ様に言って神社の中に入って行く。
そんな霊夢を見て、龍也は現金だなと思いながら博麗神社の居間へと向かって行った。



















博麗神社で昼食を取った後、龍也は博麗神社を後にして上空から自分の家になりそうなものを探す事にした。
適当に上空から見下ろせば直ぐに見付かるだろうと思いながら。
が、現実はそう甘くはなく、

「……見付からないもんだな」

龍也は自分の家になりそうなものを見付けられずにいた。
博麗神社を後にしてから暫らく時が経ったと言うのにだ。
見積もりと言うか想定が甘かったかと言う事を内心で愚痴り、もう暫らくはこの防寒具と一緒だなと言う事を思っていると、

「……ん?」

龍也は前方の方から何かが近付いて来ているのを感じる。
かなりのスピードで。
敵襲かと思った龍也が思わず身構えた時、近付いて来ていた者が龍也の目の前で止まった。
止まった事で、近付いて来た者の姿が確認出来る様になる。
龍也に近付いて来ていた者は、黒い髪を肩口近くにまで伸ばした少女。
この他の特徴として少女は黒い羽を生やし、下駄を履いている。
少女からは妖力が感じられるので妖怪だと言うのは分かるが、襲い掛かって来る気配は微塵も感じられない。
自分を食い殺しに来た訳では無いと判断した龍也は構えを解き、

「えーと……誰だ?」

誰だと問い掛ける。
すると、

「初めまして!! 私、"文々。新聞"の記者をしております、鴉天狗の清く正しい射命丸文と申します!!」

少女は元気良く自己紹介をして来た。
どうやら、この少女は鴉天狗である様だ。
天狗と言うからには椛と同じで妖怪の山に住んでいるのかなと考えつつ、龍也は自己紹介をされたのだから自分も自己紹介をし様と思い、

「ご丁寧にどうも。俺は……」

自分の名を名乗ろうとしたが、

「四神龍也さんですよね」

その前に文が龍也の名前を言い当ててしまう。
文が自分の名を知っている事に龍也は驚きながら、

「俺の事知ってるのか?」

確認を取る様に自分の事を知っているのかと問うと、

「ええ、龍也さんは結構有名ですよ。幻想郷を歩いて旅して回っている強い外来人と言う事で」

文は知っている事を肯定しながら、龍也の噂の様なものを話す。

「はー……」

どうやら、龍也の知らない所で龍也の存在は結構有名になっていた様だ。
自分が有名になっていた事に龍也が驚いていると、

「それ以外にも、風見幽香さんやレミリア・スカーレットさんと言った様なかなりの実力者の方達が龍也さん事を高く評価していますからね」

文は幽香やレミリアと言った様な存在が龍也の事を高く評価しているのだと言う事を伝えた。

「あ、幽香とレミリア事を知ってるんだ」
「ええ、私は新聞記者ですからね。ネタ集めで色々と飛び回っていれば知り合いは自然と増えていくのですよ」

ネタ集めで色々と飛び回っていると言う事を聞いた龍也は、

「若しかして、俺をネタにしに来たのか?」

文に自分をネタにしに来たのかと尋ねる。
文は尋ねられた事に対し、

「はい。強い外来人って事ならそれなりの需要があると思いますので、是非龍也さんにはインタビューに応じて貰いたいのです!!」

肯定の返事を返し、是非ともインタビューに応じて貰いたいと言いながら龍也へと詰め寄って行く。
詰め寄られた龍也が別にインタビューを受けても良いかと考えた時、

「……そうだ」

龍也は何かを思い付いた表情を浮かべ、

「文ってさ、幻想郷の地形とかに詳しいか?」

文に幻想郷の地形などは詳しいかと問う。

「それは勿論!! 私は自分の足でネタ集めをしてますから」

文が胸を張りながら幻想郷の地形に詳しいと言う様な事を口にすると、

「ならさ、洞窟とか知らないか?」

龍也は期待を籠めた目で文を見ながら洞窟とか知らないかと聞く。

「洞窟ですか?」

龍也が聞いて来た事が予想外であったからか、文は思わず首を傾げてしまう。
そんな文を見て、

「ああ。実はさ、今住める場所を探しているんだ。それで、第一候補の様なのが洞窟何だけど……」

龍也は洞窟を探している理由を説明する。

「成程……」

理由を聞いて文は納得した表情になりながら少し考える素振りを見せ、

「……あ、在りますよ。龍也さんが気に入るであろう洞窟が」

龍也が気に入るであろう洞窟が在る事を口にした。
すると、

「ならその洞窟が在る場所を教えてくれないか? そしたら、お前のインタビューに答えるぞ」

龍也は洞窟が在る場所を教えてくれたらインタビューに答えると言う。

「本当ですか!?」

龍也をインタビューに応じさせるにはまだもう少し掛かると思っていたからか、文が嬉しそうな表情を浮かべながら更に龍也へと詰め寄ると、

「あ、ああ。約束は守るさ」

龍也は文の熱意に押されながらも約束は守ると返す。
龍也がインタビューに応じると約束したからか、

「分っかりました!! それでは、私に付いて来てください!!」

文は嬉しそうな表情をしながら素っ飛んで行った。
素っ飛んで行った文のスピードがかなりのものである
普通に移動しては容易く見失ってしまうので、龍也は見失わない様に一瞬で移動出来る移動術を連用して文に付いて行く事にした。





















龍也と文の二人が移動を開始してから暫らくすると、

「ここは……何所だ?」

眼下には初めて見る景色が龍也の目に映る。
幻想郷には自分の知らない場所がまだまだ沢山あるなと龍也が思っていると、

「ここは無名の丘と言われる場所です」

文が今見えている場所は無名の丘と呼ばれる場所である事を教えてくれた。

「この無名の丘に洞窟が在るのか?」
「はい、そうです。あ、そろそろ見えて来ますよ」

無名の丘に洞窟が在る事を文は肯定し、そろそろ見えて来ると言う。
その台詞を聞いた龍也は視線を前方の方に移すと、鈴蘭畑が目に映った。
綺麗だなと言う感想を抱いていると、

「ここですよ」

文はここだと言いながら降下して行く。
鈴蘭畑に少々目を奪われていた龍也は少し慌て気味に降下し、地に足を着けて顔を上げると、

「こいつは……」

龍也の目に大きな洞窟が映った。

「どうです、かなり大きな洞窟でしょう」

何処か唖然とした表情をしている龍也に文は得意気な表情をし、

「ここならば住むのには十分な広さが在ると思いますよ」

住むには十分な広さが在る思うと言う。

「……中に入ってどれ位広いか確認しても良いか?」

龍也が洞窟の中に入って広さ確認しても良いかと尋ねると、

「ええ、構いませんよ。私自身も直接中に入って広さを確認した訳では無いですしね」

文は構わないと返す。
文の許可が得られたので、龍也は早速洞窟の中へと入って行く。
少し奥の方に行くと暗くなっていたので、龍也は一旦足を止めて自身の力を変える。
朱雀の力へと。
力の変換に伴い、瞳の色が黒から紅に変わると

「よっ……と」

龍也は掌から炎を生み出す。
すると、周囲が明るくなって周囲が照らし出される。
明るくなった事を確認し、再び足を進め行くと、

「思ってた以上に広いな……」

中々に広い空洞に出た。
洞窟の中は龍也が思っていた以上に広く、しかも今まで誰かが住んでいたと言う形跡が欠片も見られない。
かなり良い場所を紹介して貰えたなと龍也は思いながら来た道を引き返し、出口付近で生み出していた炎を消す。
そして、龍也が洞窟から出て来ると、

「どうでしたか?」

文はどうだったかと尋ねて来た。

「ああ、かなり広かったよ。良い場所を紹介してくれてありがとな」

龍也が礼の言葉を述べると、

「じゃあ!!」

文は目を輝かせながらペンとメモ帳を取り出す。

「インタビューだろ。何が聞きたいんだ?」
「そうですね……先ずは龍也さんの瞳の色が変わっている事から聞かせて頂きましょうか」

文の発言を聞き、龍也は朱雀の力を消していなかった事に気付く。
同時に、徹底的に色々と聞かれそうだなと感じたが約束は約束なので龍也は大人しく文のインタビューを受ける事にした。





















龍也が文のインタビューに応じてから幾らかの時間が過ぎ、日が落ち始めた頃、

「取材のご協力、ありがとうございました!!」

文のインタビューが終わった。

「インタビューって結構時間が掛かるもの何だな……」

龍也は軽く肩を動かしながらそう呟くと、

「龍也さんには聞きたい事は文字通り山の様にありますからね。これでも少なくしたんですよ」

文はこれでも少なくしたのだと言う。
少なくしなかったらインタビューに丸一日掛かってたかもしれないなと言う事を龍也が思っていると、

「ですから、また私のインタビューに答えてくださいね」

文は満面の笑みを浮かべながらまたインタビューに答えてくれと頼んで来た。
インタビューに答える程度の事なら別に良いかと龍也は考える。
だから、

「ああ、別に構わないぞ」

またインタビューに応じる旨を龍也が伝えると、

「言質は取りましたよ!! 約束ですからね!!」

文は目を輝かせながら約束だと言って来た。
目を輝かせている文を見て、龍也は安請け合いしてしまったのではと感じつつ、

「そういやさ、新聞ってのは天狗の中で文しか作ってないのか?」

話を変える様に新聞を作っているのは文だけなのかと問う。

「いえ、新聞自体は沢山の天狗が作っていますよ」

文は自分以外の天狗も新聞を作っている事を話し、

「だから、中々新聞大会で入賞出来ないのですよ」

肩を落としながら新聞大会で入賞出来ないのだと言う。
購読数などが多ければ入賞し易くなるのかなと龍也が推察していると、

「と、言う事でどうす? これを機に"文々。新聞"を購読してみては?」

文が龍也に"文々。新聞"を購読しないかと提案して来た。
急な提案であったが、"文々。新聞"に書かれるであろう自分の記事が気になるからか、

「そうだな……購読させて貰うよ」

龍也は文が作っている"文々。新聞"を購読する事を決める。
すると、

「ありがとうございます!!」

文は物凄く嬉しそうな表情を浮かべた。
それだけ、龍也が"文々。新聞"を購読する事を決めた事が嬉しかった様だ。
ここまで喜ばれるとは思えなかったからか、龍也が少し驚いていると、

「あ、でも……何処新聞を置けば良いでしょうか?」

文は新聞を何処に置けば良いかと言いながら周囲を見渡す。
それに釣られる様にして龍也も周囲を見渡すと、新聞を入れたりする様な物が無い事が分かる。
序に言えば、洞窟内に家具などと言った物も無い。
どうしたものかと考えた時、龍也の頭に香霖堂の存在が過ぎる。
香霖堂になら自分が欲している物があると思った龍也は、

「後で家具を揃える序にポストみたいな物も買うからそこに入れて置いてくれ」

後で家具やポストなどを買って来るから、新聞はそこに入れて置いてくれと言う。

「分かりました!!」

文は了承の返事を返し、ペンと手帳を仕舞い、

「それでは、またお会いしましょう!!」

黒い羽を羽ばたかせて空の彼方へと素っ飛んで行った。
文の姿を見送った後、

「さて、香霖堂に行って色々と買って来るか」

龍也はそう呟きながら空中に躍り出て、空中に霊力で出来た見えない足場を作ってそこに足を着ける。
そして、龍也は空中を駆ける様にして香霖堂へと向かって行った。























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