「あ、そこに置いて在る醤油を取ってくれ」

龍也が霊夢に醤油を取ってくれと言うと、霊夢は近くに置いて在る醤油瓶を手に取り、

「はい」

一声掛けながら龍也に醤油瓶を手渡す。
手渡された醤油瓶を、

「ありがと」

龍也は軽い礼の言葉を述べながら受け取り、焼き魚に醤油を掛けていく。
ここまでの流れを見れば解るだろうが、龍也と霊夢の二人は博麗神社で食事を取っているのだ。
因みに時間帯は朝。
つまり、二人は朝食を取っているのである。

「……お、焼き加減が良いな。この魚」
「焼き魚は結構作ってるからね。どれ位焼けば美味しくなるかは大体分かるのよ」

龍也と霊夢はそんな会話を交わしながら箸を進めていく。
只黙って食事を取るのでは無く、雑談を交えながら食事を取っていったからか、

「「ごちそうさま」」

龍也と霊夢は思っていたよりも早くに食事を取り終えた。
そのタイミングで、

「じゃ、食器を洗って来てね」

霊夢は龍也に空になった食器を洗って来る様に指示を出す。
指示を出された龍也は、

「ああ、分かってるって」

文句の言葉を言わずに了承の返事をした。
文句の言葉を言わずに了承の返事をしたのは、世話になっている身であるからだ。
それはさて置き、指示を出された龍也は立ち上がって空になった食器を一箇所に集め始める。
空になった食器を一箇所に集め終えると、龍也は集めた食器を手に取って台所へと向かう。
台所に向かっている龍也に、

「途中でバランスを崩して転んでも、食器だけは死守しなさいよね」

霊夢は転んでも食器だけは死守する様に言い聞かせた。

「そこは普通、食器じゃなくて俺の身の安全を最優先にしろって言うところ何じゃないのか?」

霊夢の物言いに呆れている間に台所に着いたので、

「……さて、早速始めるか」

龍也は気持ちを切り替えるかの様に食器を洗っていく。
二人分の食器を龍也一人で洗う事になってはいるが、洗う食器の数自体は大して多くはなかったので、

「……よし、終わり」

然程時間を掛けずに全ての食器を洗い切る事が出来た。
食器を洗い終えた龍也は、

「終わったぞー」

終わった事を伝えながら居間へと戻る。
すると、

「それじゃ、次は庭の掃き掃除をお願いね」

霊夢は満面の笑顔で今度は庭の掃き掃除をする様に言って来た。

「お前、人使いが荒いな」
「あら、文句でもあるの?」
「世話になってる身だ。この程度の事で文句を言う気はねぇよ」

そんな会話を交わしながら龍也が庭の掃き掃除をする為に居間を後にし様とした時、

「あ、箒は玄関の方に在るからね」

霊夢は箒が何処に置いて在るのかを教える。
箒が置いて在る場所を教えられた龍也は、

「あいよ」

何処か適当さが感じられる声色で返事を返し、玄関の方へと足を進めて行った。





















「掃除、終わったぞー」

掃き掃除が終わった事を口にしながら龍也が縁側の方に向かい、縁側の近くにまで来た時、

「お疲れ様」

霊夢はお茶を啜りながら労いの言葉を掛ける。
茶を啜っている霊夢を見て、

「俺の分の茶は無いのか?」

龍也は自分の分の茶は無いのかと聞く。
聞かれた霊夢は無言で自分の隣を指をさす。
霊夢が指をさした先には茶が入った湯飲みが置かれていた。
どうやら、霊夢は龍也の分の茶も用意してくれていた様だ。

「サンキュ」

龍也は軽い礼を言いながら霊夢の隣に腰を落ち着かせ、湯飲みを手に取って茶を啜り始めると、

「いやー、ここ最近は龍也が掃除をしてくれるから楽が出来て良いわー」

霊夢は湯飲みから口を離し、龍也が居る間は楽が出来て良いと呟く。
霊夢の呟きが耳に入ったからか、龍也も湯飲みから口を離し、

「余り横着するなよ」

余り横着しない様に言う。
そう言われた霊夢は、

「はいはい、分かってるわよ」

お気楽さが感じられる声色で分かっていると返し、再び茶を啜り始めた。
相変わらずの霊夢に龍也は呆れと感心を混ぜた様な感情を抱きながら、思う。
ここ最近、博麗神社にずっと泊まりっ放しだと言う事を。
何時もの龍也ならとっくに博麗神社を後にし、旅を再開している事だろう。
だと言うのに、龍也は未だ博麗神社に居る。
何故かと言うと、龍也自身理由は分からないのだが博麗神社から離れる気にはなれないからだ。
更に言えば、ここ暫らくは博麗神社で宴会が立て続けに開かれているからでもある。
故に、龍也は博麗神社を後にし様とはしないのだ。
ふと、ここ最近の事を思い返したからか、

「……そーいや、少ししたらまた宴会が開かれるんだよな?」

龍也は霊夢に確認を取る様に少ししたらまた宴会が開かれるのかと尋ねる。
尋ねられた事を、

「ええ、今日を入れて三日後に宴会が開かれる予定よ」

霊夢は肯定しながら宴会が開かれる正確な日数を口にした。

「今日を入れて三日後ね、了解。にしても、ここ最近はずっと定期的に宴会が開かれるよな」
「そうね……言われてみれば初めてかしらね。こうも短い頻度で連続して宴会が開かれるのは」

龍也が漏らしたここ最近はずっと宴会が開かれると言う発言に、今回の様に短い頻度で連続して宴会が開かれるのは初めてだと霊夢が返した瞬間、

「そう言えば……あんたが泊り込む様になってからよね。こうも宴会が続く様になったの」

霊夢は思い出しかの様にこんな風に宴会が続く様になったのは龍也が博麗神社に泊まり込むなってからだと言う。

「そう言われてみれば……」

霊夢にそう言われた龍也はここ最近の記憶を思い返し、

「そうだな」

確かに霊夢の言う通りだと言う結論に達した。
その様な結論に達して一人で納得している龍也に、

「若しかして……あんた、何かした?」

霊夢は疑いの視線を向ける。
まぁ、龍也が博麗神社に泊まり込み始めてから宴会が短い頻度で連続して開かれる様になったのだ。
霊夢が龍也を疑うのは無理もない。
霊夢から疑いの視線を受けている龍也は、

「俺は何もしてねぇよ」

無実を主張しながら再び茶を啜り始める。

「龍也が何もしてはいないとなると……やっぱり偶然? でも、妖力は感じるし……」
「妖力……?」

霊夢の妖力を感じると言う発言を聞き、龍也は湯飲みから口を離して神経を集中させていく。
そして、

「あー……確かに妖力は感じるな。妙に薄いけど」

龍也も霊夢と同じ様にこの近辺に妖力が在る事を感じ取った。

「んー……宴会に参加しているのが人間より妖怪連中の方が圧倒的多いからまだ妖力を感じるのかしら?」

宴会に参加している者の殆どが妖怪なのでまだ妖力が残っているのではと霊夢は考える。
そんな霊夢の考えに、

「かもな」

龍也は同意しながら顔を上げて空を見始めた。
それに釣られる様にして、霊夢も顔を空へと向ける。
顔を空に向けた龍也と霊夢の目には青い空に白い雲、光り輝く太陽と言った極々普通のものが映った為、

「平和だな」
「平和ねぇ」

龍也と霊夢は二人揃って平和だと漏らす。
暫しの間空を見上げていると、龍也はふと何かを思い付いた表情になりながら、

「若しかして、この連続して開かれている宴会って異変なのかもな」

この連続して開かれている宴会は異変なのではと言う考えを口にする。
普段であれば異変の影響で宴会が開かれていると言われたら、只の戯言と切って捨てられるのがオチだろう。
だが、普段であれば切って捨てられる様な発言も、

「異変……」

今の霊夢には切って捨てられる様なものでは無かった様で、

「そうよ、異変よ!!」

霊夢は何か憑物が落ちた様な表情になりながら勢い良く立ち上がる。
勢い良く立ち上がった霊夢は、

「可笑しいとは思っていたのよ。こんな短い頻度で宴会が開かれ続ける何て」

自分に言い聞かせる様に短い頻度で連続して宴会が開かれる事は可笑しいとは思っていたのだと口走り、

「そうと決まれば、早速異変解決ね!!」

気合を入れる様にこれから異変を解決しに行くと宣言した。
まだ今回の短い頻度で宴会が連続して開かれていると言うのが異変だと決まった訳では無いのだが、霊夢の勘の精度はかなり高い。
その霊夢が今回のこれは異変だと言ったのだ。
だから、龍也も霊夢と同じ様に今回のこれは異変であると判断する。
同時に、どう言った理由で犯人はこの異変を起こしたのかと言う事を考えていると、

「と言う訳で、先ずはあんたから倒すわ」

何時の間にか龍也の方に視線を向けていた霊夢が、先ずは龍也を倒すと言って来た。
突然の宣戦布告に、

「……え?」

龍也は呆気に取られるも、直ぐに表情を戻し、

「何故に俺を?」

何故自分を倒す事にしたのかを尋ねる。
尋ねられた事に、

「取り敢えず、怪しいと思ったから」

霊夢は取り合えず怪しいと思ったからだと返す。

「……俺の疑いは晴れたんじゃ無かったのか?」
「疑いが晴れたのでは無く、あくまであんたが犯人の可能性が低くなったと言うだけよ」

自分の疑いは晴れたのではと問うて来た龍也に、霊夢は疑いが晴れたのでは無く犯人の可能性が低くなっただけだと口にし、

「それに、取り敢えず怪しい奴を片っ端から倒していけばその内犯人に辿り着くのよ」

怪しい奴を片っ端から倒していけばその内犯人に辿り着くのだと言い切った。
霊夢の態度から戦闘は避けられない事を悟った龍也は、

「……生憎、俺は黙って倒される様な御人好しじゃ無いぞ」

戦う意志を示しながら立ち上がる。
二人ともこれから一戦交える気ではあるが、今この場で戦えば博麗神社にダメージがいってしまう。
なので、

「神社を傷付ける訳にはいかないから、場所を変えるわ。付いて来て」

霊夢は場所を変えるから付いて来る様に言い、歩き出す。
歩き出した霊夢に付いて行く様に龍也も足を進め様としたところで、

「……あれ? 戦うと言っても弾幕ごっこだろ? 普通に空中に移動すれば良いんじゃないか?」

龍也はどうせ弾幕ごっこで戦うのだから空中に移動すれば良いだけなのではと言う疑問を述べる。
龍也の疑問が耳に入った霊夢は一旦足を止めて振り返り、

「ほら、ここ最近の宴会で近接戦込みの弾幕ごっこが流行り始めているって言う話題が上がってたじゃない。折角だからそれをやろうと思ってたのよ」

ここ最近流行り始めている近接戦込みの弾幕ごっこをやってみたいのだと言う。
それを聞き、

「あー……そう言えばそんな話題も出てたな。その話題が出た時は結構盛り上がってたし」

龍也はそんな話題が宴会で出ていた事と、その話題が出た時は盛り上がっていた事を思い出す。
弾幕ごっこは遠距離戦が基本となるものであるが、近接戦込みの弾幕ごっこは文字通り近接戦が基本となるのだ。
基本となるものが今までの真逆となった弾幕ごっこに興味を引かれるなと言うのは無理なのかもしれない。
序に言えば、龍也自身も近接戦込みの弾幕ごっこには興味が有るので、

「……よし分かった。近接戦込みの弾幕ごっこでやろうぜ」

龍也は近接戦込みの弾幕ごっこで戦う事を了承する。
龍也が近接戦込みの弾幕ごっこで戦う事を了承した事で霊夢は再び足を進め、龍也も足を進め始めた。
そして、足を進めた二人が博麗神社の境内に辿り着いた時、

「……この辺りなら戦っても神社に被害は出なさそうね」

霊夢はここで戦う事を決め、龍也の方に体を向けて間合いを取る為に後ろへと跳ぶ。
自分から間合いを取った霊夢を見た龍也は足を止め、構えを取る。
龍也が構えを取ったタイミンで霊夢は地に足を着け、何処からか取り出したお払い棒を手に持って霊夢を構えを取った。
構えを取った二人が睨み合う様な状態になっていると、

「……そう言えば、こうやってお前と戦うのは何気に初めてだな」

ふと、龍也は思い出したかの様に霊夢と戦うのは今回が初めてだと呟く。
龍也の呟きを聞き、

「そう言われれば……そうね。一緒に異変解決に赴いた事はあったけ……ど」

霊夢は同意を示しながら一気に龍也へと肉迫し、お払い棒を振るう。
振るわれたお払い棒を、

「……っと、行き成りだな」

龍也は少々驚きながらも後ろに跳び、回避する。
攻撃を避けられる事となった霊夢ではあるが、

「ま、そう簡単には当たらないか」

避けられる事は想定の範囲内だと言わんばかりの表情を浮かべながら懐に手を入れ、懐から手を出したのと同時にお札を数枚程龍也に向けて放った。
かなりのスピードで迫って来ているお札を見て、龍也は地に足を着けた瞬間に跳躍を行う。
跳躍を行った事でお札を回避する事は出来たが、お札を放った霊夢が確りと自分の動きを捉えている事を龍也は感じていた。
この儘では直ぐに霊夢の追撃が来ると思ったからか、龍也は霊夢が何か行動を起こす前に霊夢に向けて霊力で出来た弾幕を放つ。
自身に向けて迫って来る弾幕を見て、霊夢は少し悔しそう表情になりながら後ろに下がって弾幕を避けて行く。
後ろに下がって行く霊夢の表情を見るに、龍也が思った通り霊夢は追撃を行おうとしていた様だ。
霊夢の追撃を中断させる事に成功した龍也は、この勢いに乗るかの様に両脚を屈めながら両足を斜め上に向ける。
両足が斜め上に向いたのと同時に龍也は両足の裏辺りに霊力で出来た見えない足場を作り、

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおりゃ!!!!!!」

作った足場を思いっ切り蹴り、体を回転させながら霊夢に向けて飛び蹴りを放つ。
飛び蹴りを放った龍也は勢い良く霊夢へと向って行くが、龍也の蹴りが霊夢に当たる直前、

「甘い」

霊夢は一歩後ろに下がり、龍也の飛び蹴り回避する。
霊夢が回避行動を取った事で龍也の飛び蹴りが地面に激突した瞬間、

「そこ!!」

霊夢はお払い棒による刺突を龍也の顎に向けて放つ。
放たれた刺突を、

「ぐっ!!」

龍也は寸前の所で頭部を後ろに倒し、何とか回避した。
これで一安心と思えるかもしれないが、実はそうでも無い。
飛び蹴りを避けられ、強引に回避行動を取った事で体勢を崩している龍也に対して霊夢はお払い棒による刺突を避けられただけで体勢を崩した訳では無いからだ。
更に言えば、霊夢は突き出したお払い棒を振り下ろすだけで龍也に攻撃を加える事が出来る。
霊夢は確実にお払い棒を振り下ろして来るだろうと言う事を感じ取った龍也は、頭部を後ろに倒した勢いを利用し、

「りゃあ!!」

バク転の要領で体を後ろに回転させながら蹴りを放つ。
放たれた蹴りを、

「おっと」

霊夢は冷静な表情で数歩後ろに下がって避ける。
崩れた体勢で強引に放った蹴りであるからか、避ける事は容易であった様だ。
しかし、

「……よし」

霊夢が後ろに下がっている間に、龍也は体を一回転させて体勢を立て直していた。
結果だけ見れば、お互い攻めの一手を仕損じたと言ったところであろう。

「……………………………………」

既に体勢を立て直した龍也を見て、これで仕切り直しかと思った霊夢が一息吐こうとした時、

「しっ!!」

龍也は一気に霊夢へと肉迫し、肘打ちを放つ。
丁度一息吐こうとしていた霊夢は不意を突かれる形となったが、

「くっ!!」

霊夢は反射的にお払い棒を盾の様に構え、お払い棒で龍也の肘打ちを受け止めた。
お払い棒に自身の肘打ちを受け止められた龍也は力を籠めて押し切ろうとするが、

「やっぱ、そう来るわよね……」

その事は霊夢も予想していた様で、龍也に押し切られない様に力を籠める。
霊夢が力を籠めた事で肘とお払い棒による鍔迫り合いが発生したが、少しすると龍也は鍔迫り合いを中断させる様に肘打ちを放っている腕を引き、

「しっ!!」

肘打ちと入れ替える形で拳を振るう。
振るわれた拳を、

「ふっ」

霊夢は体を傾けて回避し、カウンター気味に蹴りを放つ。
放たれた蹴りを龍也は腕で受け止め、

「……霊夢って結構力強いな」

霊夢って結構力が強いなと言う感想を漏らす。

「……それ、褒められている気がしないんだけど」

龍也の感想が耳に入った霊夢は、不満気な表情を浮かべながらお払い棒による刺突を龍也の顔面目掛けて放つ。
突き出されたお払い棒を、

「危なっ!!」

龍也は慌てた表情を浮かべながら上半身を後ろに倒し、突き出されたお払い棒を避ける。
何故龍也が驚いた表情を浮かべたのかと言うと、不意を突かれたと言うのもあるが今の刺突は先に放たれた刺突より威力もスピードも上であったからだ。
先の一撃よりも威力もスピードも上のものを放ったのを見るに、今の龍也の発言は霊夢の機嫌を損ねる結果になった様である。
それはそうと、この儘いけば突き出したお払い棒が振り下ろされる事は確実であるので、

「ッ!!」

龍也は霊夢の蹴りを受け止めている腕を強く動かし、霊夢の脚を弾いた。
蹴りを放っていた脚を弾かれた事で、

「わとと……」

霊夢は体勢を崩してしまう。
霊夢が体勢を崩した事で龍也の眼前からお払い棒が離れたので、龍也は上半身を起き上がらせ、

「らあ!!」

体を回転させながら裏拳を放つ。
放たれた裏拳は勢い良く霊夢へと向って行ったが、

「……何」

龍也の裏拳は霊夢ではなく青白い障壁に激突した。
自身の裏拳が障壁に阻まれた事に龍也が驚きの表情を浮かべながら霊夢に視線を移すと、何処か余裕を感じさせる笑みを浮かべている霊夢が龍也の目に映る。
霊夢の表情からこの障壁を展開したのは霊夢本人である事を龍也が察したのと同時に障壁が消え、

「はあ!!」

何時の間にか体勢を立て直していた霊夢が龍也の顎に向けてサマーソルトキックを放って来た。
裏拳を放った直後と言う事もあり、

「がっ!?」

龍也は成す術も無く霊夢のサマーソルトキックの直撃を受け、体を宙に浮かび上がらせてしまう。
体が宙に浮かび、隙だらけとなった龍也に霊夢は更に連続してサマーソルトキックを叩き込もうとしたが、

「させるか!!」

霊夢がサマーソルトキックを放つ前に龍也は霊夢に掌を向け、青白い色をした掌サイズ以下のレーザーを放った。
レーザーと言うよりは超簡易版の霊流波と言った方が正しいであろうか。
兎も角、龍也がレーザーを放った事で、

「……く」

霊夢はサマーソルトキックを放つのを中断し、龍也から距離を取る様に後ろに下がって行く。
霊夢が後ろに下がっている間に龍也はレーザーを放つのを止めながら地に足を着けて体勢を立て直し、一気に地を駆け始めた。
自分に向けて迫って来ている龍也を見て、霊夢は後ろに下がるのを止めながらお払い棒を構えて迎撃の体勢を取る。
そして、龍也が霊夢の間合いに入ろうとした瞬間、

「ッ!? 消えた!?」

龍也の姿が消えた。
龍也が姿を消した事に霊夢は驚きつつも、直ぐに龍也を探す為に顔を動かそうとした時、

「……ッ!?」

霊夢は何かに気付いたかの様に顔を上空の方に向ける。
顔を上空に向けた霊夢の目には、踵落しを放つ体勢で降下して来ている龍也の姿が映った。
距離的に龍也が踵落しを放つまでもう時間は無いと判断したからか、霊夢は龍也の踵落しが来るであろう場所にお払い棒を持っていく。
そのタイミングで、龍也の踵落しが放たれた。
放たれた踵落しが霊夢のお払い棒に叩き込まれると、

「くっ!!」

霊夢は歯を喰い縛って何かに耐える表情を浮かべ始める。
霊夢がその様な表情を浮かべているのは、龍也が放った一撃が予想以上に重かったからだろう。
そんな表情を浮かべている霊夢に対し、龍也は驚いた表情を浮かべていた。
龍也が驚いた表情を浮かべている理由は、霊夢のお払い棒に在る。
龍也は霊夢がお払い棒を盾にするかの様に動かしたのを見て、お払い棒を圧し折る積りで踵落しを放ったのだ。
だと言うのに、霊夢のお払い棒は圧し折れる処か罅すら入っていない。
故に、龍也は驚いた表情を浮かべたのだ。
とは言え、圧し折る積りで踵落しを放ったのにお払い棒を圧し折れなかったのは悔しいからか、

「く……ぐく……」

龍也は踵落し放っている脚に力を籠め、お払い棒を圧し折ろうとする。
龍也から加えられる力が増大した事を感じ取った霊夢は力で勝負するのは不利だと悟り、

「はあ!!」

お払い棒を強引に振るって龍也を弾き飛ばす。
弾き飛ばされた龍也は空中で体勢を立て直し、地に足を着けて構えを取り直して霊夢の方に視線を向ける。
視線を霊夢の方に向けた龍也の目には、

「針!?」

何本もの針を指と指の間に挟め、それを投擲し様としている霊夢の姿が映った。
霊力等で出来た弾幕や紙で出来たお札などと違い、針はその身で受けたら絶対に刺さるだろうと龍也が思っている間に、

「いけ!!」

霊夢は針を龍也に向けて投擲する。
無数に針が迫って来ている光景を見て、

「危ね!!」

龍也は慌てた動作で針の射線上から逃れ、

「危ねぇな!! 刺さったらどうすんだよ!!」

文句の言葉をぶつけた。
文句の言葉をぶつけられた霊夢は、

「大丈夫よ!! 針の全ては私の霊力で包んでいるから刺さらないわ!!」

投擲した針の全ては自分の霊力で包んでいるから刺さる事は無いと言い、龍也に肉迫しながら再び何枚かのお札を放つ。
自身に向けて迫り来るお札を避ける為、龍也は跳躍を行う。
跳躍を行った龍也を見た霊夢は足を止め、高度を上げている龍也を撃ち落すかの様に霊力で出来た弾幕を放つ。
迫り来る弾幕を見て、高度を上げている状態では満足に回避行動は出来ないと判断したからか、

「はあ!!」

龍也は霊夢が放った弾幕を相殺させる為に自身も弾幕を放った。
二人が放った弾幕は激突し合い、爆発と爆煙が発生する。
爆煙が発生した事で龍也と霊夢の姿が見えなくなったが、爆発音は絶え間無く響いていた。
絶え間無く爆発音が響いている事から、爆煙に包まれている中でも龍也と霊夢は弾幕を放ち合っている様だ。
それから少しすると、龍也と霊夢は爆煙の中を突っ切るように飛び出して来た。
飛び出した二人は地面を割る様な勢いで地に足を着け、地面を滑る様に減速して行く。
減速して行く中で、二人は相手と自分の服が少々痛んでいる事に気付く。
流石に爆煙に包まれている中で相殺し合わなかった弾幕を全て完全に避け切ると言うのは無理だった様だ。
そして、減速していた龍也と霊夢が完全に止まると二人は構えを取り直して相手の様子を探っていく。
暫しの間その状態を維持し続けると、二人は間合いを詰める様に同時に駆け、

「はあ!!」
「しっ!!」

今度は近接戦闘を行い始めた。
龍也は拳を、霊夢はお払い棒をそれぞれ勢い良く振るっていく。
二人の間を拳とお払い棒がかなりのスピードで飛び交っているが、それ等が二人に直撃する事は無かった。
何故ならば、二人とも自分に当たりそうな攻撃は的確に防御したり回避したりしているからだ。
拳とお払い棒による応酬が始まってから幾らかの時間が経った時、

「「ッ!!」」

龍也と霊夢は弾かれる様にして間合いと取った。
どうやら、二人は同じタイミングでこれ以上この応酬を無駄だと判断した様だ。
間合いが取れると、霊夢は状況を動かそうと考えながら懐に手を入れる。
懐に手を入れた霊夢を見て、何が起きるのかを察した龍也が警戒の表情を浮かべるのと同時に霊夢は懐からスペルカードを取り出し、

「霊符『夢想妙珠』」

両腕を広げながらスペルカードを発動させた。
すると霊夢から七色に光る弾が幾つも放たれ、放たれた弾は次々に龍也へと向かって行く。
自身に向けて迫って来る七色に光る弾を為、龍也は大地を駆ける事で避けて行くが、

「ッ!?」

何発かの七色に光る弾が龍也の目の前に迫って来ていた。
目の前の七色に光る弾を見て、

「俺の回避先を読んだのか!?」

龍也は自分の回避先を読まれたのかと思いつつ、足を止めて両腕を交差させて防御の体勢を取る。
その瞬間、七色に光る弾が次々と龍也に着弾していった。
着弾と一緒に自分の体に走って来る衝撃に龍也は歯を喰い縛って耐えていく。
意識を飛ばされない様に。
着弾が始まってから少しすると衝撃が感じられなくなったので、龍也は両腕を下ろして霊夢の方を見ると、

「またか!!」

龍也の目には霊夢が再び七色に光る弾を放っているのが目に映った。
また回避行動を取ろうとしても先の二の舞になる事を龍也は感じ、再び両腕を交差して衝撃に備える。
衝撃に備えてから少しすれば、

「ぐっ!!」

龍也の体に霊夢が放った七色に光る弾が次々と命中していく。
絶え間無く全身に走る衝撃を感じながら龍也は考える。
どうするべきかと。
はっきり言って、この儘耐えているだけではジリ貧だ。
幾らスペルカードによって発動した技には直接的なダメージは無いとは言え、衝撃に関してはそれ相応に在る。
なので、防ぐだけでは体力をどんどんと削がれていく事になってしまう。
無論、スペルカードの発動時間が終わるまで耐え切ったとしても龍也の体力が零に成る事は無い。
だが、龍也が今戦っている相手は霊夢なのだ。
霊夢相手に龍也だけが体力を消耗した状態では、龍也が圧倒的に不利だ。
少なくとも、行動に支障が出る程に体力が削られる前にこの状況を何とかする必要が在る。
しかし、だからと言ってそう都合良くこの状況を何とかする方法が思い付く訳でも無いと思われたその時、

「……ん?」

龍也は自分の体に七色に光る弾が着弾していない事を感じ取った。
それを不審に思った龍也は両腕を交差させた儘の状態で霊夢の方に視線を向けると、三度七色に光る弾を放とうとしている霊夢が龍也の目に映った。
霊夢が三度七色に光る弾を放とうとしているのを見て、龍也はある事に二つ気付く。
一つ目は霊夢が放つ七色に光る弾は永続的に放つ事は出来ないと言う事。
二つ目はある程度七色に光る弾を放った後にはインターバルを置かなければ、再度七色に光る弾を放てないのではと言う事。
龍也が気付いた事と言うのはこの二つだ。
龍也は気付いた事の二つから、

「……そうだ」

この状況を打破する方法を思い付く。
同時に、霊夢から七色の光る弾が放たれた。
放たれた弾を見て、これはチャンスだと判断した龍也は行動に移る。
左腕を下ろし、右腕を懐に入れながら龍也は下半身に力を入れ始めた。
龍也の目の前には七色に光る弾が迫って来ていると言うのに。
龍也が防御の体勢を解いてしまったので七色に光る弾は龍也の体に直撃してしまうと思われた直前、龍也は懐に入れていた右手を取り出す。
取り出された龍也の右手にはスペルカードが握られており、

「鉄壁『玄武の甲羅』」

七色に光る弾が龍也の体に当たる前にスペルカードが発動された。
スペルカードが発動すると龍也の瞳の色が黒から茶に変わり、龍也の目の前に玄武の甲羅が出現する。
出現した玄武の甲羅は霊夢が射出した七色に光る弾を完全に防いでいく。
龍也が発動したスペルカードと自身が放った七色に光る弾が完全に防がれている光景を見て、

「盾……いえ、亀の甲羅ね。私のスペルカードの発動が終わるまであれで耐える気?」

霊夢は亀の甲羅で自分の攻撃を耐える気なのではと考える。
が、そんな霊夢の考えを嘲笑うかの様に、

「なっ!? 突っ込んで来た!?」

龍也は玄武の甲羅を盾にしながら霊夢へと突っ込んで行った。
そう、龍也が思い付いた方法と言うのは玄武の甲羅で七色に光る弾を防ぎながら強引に突っ込んで霊夢に攻撃をすると言うものだったのだ。
中々に強引な方法ではあるが、攻撃が一方向からしか来ないのであれば有効な手ではある。
事実、玄武の甲羅を出してからの龍也はその身に七色に光る弾幕を受けてはいないのだから。
それはそうと、玄武の甲羅を盾に突っ込んで来た龍也に霊夢は少々呆気に取られていたが、

「……ッ!!」

直ぐに意識を取り戻したかの様にスペルカードの発動を止め、龍也の進行方向上から逃れる様にして真横へと跳ぶ。
正面に玄武の甲羅を展開している以上、自分の正確な姿が見る事が出来ない筈なので回避先が読まれる事は無い。
今の龍也を見てそんな判断をしたからか、霊夢の表情には何処か余裕が見られる。
しかし、龍也は霊夢の判断が間違っていると言わんばかりに、

「ッ!? 曲がって来た!? と言うか、読まれた!?」

霊夢が居る方に向けて急カーブをして来た。
自分の回避先を読まれた事に霊夢が驚きながら地に足を着けたタイミングで、

「ッ!!」

玄武の甲羅と霊夢が激突し、霊夢は弾き飛ばされてしまう。

「よし!!」

玄武の甲羅から伝わる感触で自分の目論見通り霊夢へ攻撃が成功した事を感じ取った龍也はスペルカードの発動を止めた。
スペルカードの発動を止めた事で玄武の甲羅が消え、龍也の瞳の色が茶から黒に戻る。
その後、龍也は弾き飛ばした霊夢の方に顔を向け、

「……よし!!」

龍也は目標を見定めながら霊夢が居る方に向けて地を駆けて行く。
一方、弾き飛ばされた霊夢は体勢を立て直しながら思う。
油断したと。
真横に跳んだ時、気を緩めたりしなければ玄武の甲羅による突撃を喰らう事はなかったであろう。
自分の失態を感じつつ、龍也を探す為に顔を動かすと、

「ッ!!」

地を駆け、自分の方に近付いて来ている龍也の姿が霊夢の目に映った。
近付いて来ている龍也を見た霊夢は直感的に不味いと感じ、袖口に手を入れてお札を数枚程取り出し、

「いけ!!」

取り出したお札を斜め下に向けて放つ。
放たれたお札は地面に激突して爆発を起こし、砂煙を巻き上げる。
砂煙が巻き上がった事で自分の姿を視認出来なくなれば、龍也も足を止めるだろうと予想しながら霊夢が地に足を着けた瞬間、

「なっ!?」

龍也が砂煙を突っ切る様にして霊夢の目の前に現れた。
どうやら、龍也は霊夢の予想に反して足を止めると言った事はしなかった様だ。
だが、霊夢は龍也が足を止めないと言う可能性を完全に頭から外していた訳では無い様で、

「しっ!!」

タイミングを見計らって払い棒による刺突を龍也に向けて放つ。
放たれた刺突は、

「ぐっ!?」

龍也の胸部に激突し、龍也をぐら付かせる。
ぐら付いている龍也を見た霊夢が間合いを取る為に後ろに跳ぼうとした時、霊夢の目にある物が映る。
映った物と言うのは、龍也に左手に握られているスペルカードだ。
スペルカードを取り出していると言う事は、スペルカードを発動する気だと言う事。

「ッ!!」

龍也が何をする気なのかを察した霊夢が両腕を交差したタイミングで、

「霊撃『霊流波』」

龍也は右腕を突き出し、スペルカードを発動させた。
スペルカードが発動すると龍也の右手から青白い閃光が迸り、

「ッ!?」

霊夢を呑み込んだ。
が、ぐら付いた体勢で威力の高いスペルカードを発動させたせいで、

「ぐ……」

龍也は尻餅を付いてしまった。
尻餅を付いてしまった事で青白い閃光の射線は上空へと向き、青白い閃光に呑み込まれていた霊夢が仰向けに倒れた状態で姿を現す。
仰向けに倒れている霊夢を見た龍也はスペルカードの発動を止め、右手から放たれている青白い閃光が消えるのと同時に立ち上がる。
そして、龍也は倒れている霊夢に歩いて近付き、

「どうする? 続けるか?」

右手の掌を向けながら続けるかと問う。
問われた霊夢は、

「あー……」

少し考える様な素振りを見せ、

「降参。私の負け」

自分の負けを宣言した。
勝敗が決し、これ以上戦いを続ける必要性が無くなった事で龍也は一息吐く。
龍也から戦意を感じなくなったからか、

「あーあ、負けちゃった」

霊夢は溜息を吐く様に負けちゃったと漏らした。
愚痴の様なものを漏らした霊夢に、

「無実の罪でボコられてやる訳にもいかないからな。負けてはやれねぇよ」

龍也は無実の罪でボコられてやる訳にもいかないと言って手を差し出す。
差し出された手を霊夢は掴んで立ち上がり、

「それにしても、龍也は魔理沙のマスタースパークの様な技を持っていたのね」

先程龍也が使ったスペルカードの話題を出しながら手を離した。

「霊流波の事か? あれは幽香にアドバイスを貰いながら作った技……つーかスペルカードか? 元々はスペルカード……弾幕ごっこ用に作ったやつだし。
まぁ、普通の技としても十二分に使えるから通常戦闘でも使ってるけど」
「幽香のアドバイスで?」
「ああ。因みに、俺のスペルカードは全て幽香にアドバイスを受けて作ったものだ」
「あの幽香がアドバイスをねぇ……あ、でも宴会の時にあんたと幽香は仲良くしてたわね。だったら、幽香があんたにアドバイスとかをしていても不思議は
無いか。それでも意外だけど」

幽香が龍也にアドバイスをしていたと言う事実に霊夢が意外だと言う表情を浮かべ、

「それはそうと、やっぱり近接戦込みの弾幕ごっこは普通の弾幕ごっこと大分違うわね。ま、今ので結構コツは掴めたけど」

今の龍也との近接戦込みの弾幕ごっこで結構コツは掴めたと呟く。
それを聞き、

「やっぱり、本気で戦ってなかったな」

龍也は霊夢が今の近接戦込みの弾幕ごっこを本気でやっていなかったと言う確信を得た。
そんな龍也に、

「そりゃね。取り敢えずあんたが怪しいから弾幕ごっこを吹っ掛けただけだし」

取り合えず龍也が怪しいから弾幕ごっこを吹っ掛けただけだと返す。

「お前な……」

霊夢の返した言葉でこの近接戦込みの弾幕ごっこをし始める事になった原因を思い出した龍也は何かを言おうとしたが、

「と言うか、龍也だって本気を出してい無かったんだからお互い様でしょ」

霊夢に龍也も本気を出していなかったのだからお互い様と言われ、押し黙ってしまった。
時間制限が在るとは言え、自身の基本能力を大きく上げる力の解放を行わなかった龍也に何かを言う資格は無いだろう。
結局のところ、弾幕ごっこと言う事で本気を出していなかったのは龍也も同じなのだ。
霊夢の言う通りお互い様と言う事で龍也は話題を変えるかの様に、

「処で、霊夢は誰が怪しいと思ってるんだ?」

霊夢に誰が怪しいと思っているのかを尋ねる。
尋ねられた霊夢は、

「そうね……騒がしいのが好きな魔理沙。過去に異変を起こしたレミリアに幽々子。後は存在自体が胡散臭い紫かしらね。パッと思い付くのは」

自分が怪しいと思っている面々を口にしていく。

「俺の名前が出ないって事は、俺の疑いは晴れたのか」
「取り敢えずはね。近接戦込みの弾幕ごっこをしてみて、龍也が犯人って感じはしなかったし」
「取り敢えずはか……」

犯人が見付からなかったら自分のせいにされそうだと言う事を感じつつ、

「さっきは適当に流したけど、周囲に感じる妖力が犯人を見付ける鍵なのかもな」

龍也は近接戦込みの弾幕ごっこをする前に話していた話題を出す。

「妖力ねぇ……だとしたら、犯人は妖怪? そうなると……一番怪しいの紫かしら? 胡散臭いし」
「だな。あいつが妖怪の中では一番胡散臭いし」

妖力が感じられる事から犯人は妖怪である紫かと推察した霊夢に、龍也は同意を示した。
掴み所が無く、怪しく、胡散臭い紫は犯人に上げられるのは自明の理だったのかもしれない。
唯、問題が在るとしたら、

「問題は、紫が何所に居るのか分からないって言う点よね」
「あ、俺も紫が何所に居るのか分からねぇや」

霊夢も龍也も紫が何所に居るのか分からないと言う事だ。

「来る時はこっちの事情なんて知りもしないって感じなのに、こっちが探そうとすると見付からないのよね。あいつ」

龍也は霊夢の紫に対する愚痴を聞きつつ、

「俺は俺で調べてみるけど、霊夢はどうする?」

自分は今回の異変を自分なりに調べるが、霊夢はどうするかと問う。
問われた霊夢は、

「そうね……私も私で調べてみるわ」

少し考える素振りを見せた後、自分なり調べてみる事を伝える。
それぞれがそれぞれの方法の今回の異変を調べる事を決めた後、龍也と霊夢は空中に躍り出て、

「大丈夫だとは思うが、気を付けてな」
「はいはい、龍也もね」

軽く言葉を掛け合い、別々の方向に進んで行った。
因みに、龍也が目指している場所は紅魔館。
何故紅魔館を目指しているのかと言うと、パチュリーなら博麗神社で感じた妖力に付いて何か知っているのではと思ったからだ。
仮に知らなかったとしても、本を調べさせて貰えれば何か分かるかもしれない。
故に、龍也は紅魔館を目指しているのだ。

「……次の宴会が始まるまでに犯人を見付けて、異変解決しないとな。今までの異変と比べてかなり平和だけど、宴会が立て続けに起こった事で俺の財布の
が寒くなって来たし」

愚痴る様にそんな事を呟いた後、龍也は移動スピードを上げ始めた。























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