「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

気合を高め、龍也は両手を前方に突き出す。
すると、突き出された両手の掌から超小型の竜巻が放たれた。
因みに、今の龍也は翠に輝く瞳と翠色の髪をした状態。
つまり、龍也は白虎の力を解放した状態でいるのだ。
それはさて置き、放たれた竜巻は龍也の前方に居た猿に近い姿をした妖怪達を呑み込んで吹き飛ばしていった。
現状を見るに、襲い掛かって来た妖怪と龍也は戦っている様だ。
今放った竜巻で前方に居る様界は一掃出来た様だが、龍也と敵対している妖怪は前方に居るのだけが全てでは無かった様で、

「……ッ」

龍也の背後から前方に居た妖怪と同種の妖怪が襲い掛かって来た。
そして、龍也の頭を吹き飛ばそうと背後から迫って来た妖怪が腕を振るう。
振るわれた腕は勢い良く龍也の頭に迫って行ったが、妖怪の腕は龍也の頭に当たる事は無かった。
何故ならば、妖怪が振るった腕が頭に当たる前に龍也は背中から突風を放ったからだ。
放たれた突風のせいで龍也の背後から攻撃を仕掛け様としていた妖怪は吹き飛ばされ、龍也から少し離れた先に在る地面に墜落してしまう。
が、墜落した妖怪は然程間を置かずに立ち上がった。
やはりと言うべきか、只突風で飛ばしただけでは大きなダメージを与える事は出来なかった様だ。
ともあれ、この儘では突風で吹き飛ばされた妖怪は再び襲い掛かって来る未来を容易に予想する事が出来る。
だからか、竜巻と突風を放つのを龍也は止め、

「ッ!!」

一瞬で移動出来る移動術を使って背後の方に吹き飛ばした妖怪の懐に入り込む。
瞬く間に自分の懐に入り込まれた事に妖怪は驚きの表情を浮べるも、直ぐに龍也を叩き潰そうと両腕を振り上げる。
しかし、妖怪が振り上げた両腕を龍也に叩き付けられる前に龍也の拳が妖怪の腹部に叩き込まれ、

「零距離突風!!」

叩き込んだ拳から突風が放たれ、拳を叩き込まれていた妖怪は何所か遠くへと吹き飛ばされてしまった。
取り敢えず、周囲の外敵を一掃出来たと考えた龍也は顔を動かして辺りの様子を見渡していく。
見渡した結果、辺りに外敵が居ない事が分かったので、

「……ふぅ」

疲れを吐き出すかの様に龍也は息を一つ吐き、自分の掌をジッと見詰め、

「……やっぱりだ。疲労感を全然感じない」

疲労感を全然感じないと呟いた。
通常、力を解放した状態でいたら何もしていなくてもどんどんと疲労感が増していってしまう。
そして、疲労感が限界まで達すると力を解放した状態が勝手に解かれてしまうのだ。
故に、龍也は力を解放した状態の維持時間を延ばそうとして来た。
出来るだけ力を解放した状態で戦うと言う比較的単純な方法で。
尤も、ここ最近は萃香との戦いで溜まった負担を考慮してか力を解放した状態で戦うと言う事はしなかったが。
兎も角、それが幸を成したからか力を解放した状態で居られる時間は確実に伸びていった。
そう、確実に伸びていっただけ。
断じて、疲労感を感じない程に維持時間が伸びた訳では無い。
だと言うのに、今現在の龍也は殆ど疲労感を感じていないのだ。
その事に付いて考え様とした時、

「……若しかして」

龍也の頭に殆ど疲労感が無いと言う部分に思い当たる事が一つだけあった。
思い当たる部分と言うのは、

「萃香と戦ったせいか……」

萃香との戦い。
少し前に萃香が起こした異変を解決する際に、龍也は萃香と激闘を繰り広げた。
力を解放した状態を限界を超えても無理矢理維持し、死に掛ける様な戦いを。
そんな戦いを繰り広げた事で、龍也は大幅に強くなって力を解放した状態の維持時間が大幅に延びたと言う可能性が考えられる。
確かに、強者と戦った後は龍也は自分でも分かる程に強くなったと言う実感を得ていた。
だからと言って、こうも都合良く自分の実力が上がったのと同時に力を解放した状態の維持時間が大幅に延びるのであろうか。
力を解放した状態の維持時間が大幅に延びた事に付いて龍也は考え様としたが、

「……考えても仕方無いか」

直ぐに考えても仕方が無い判断し、考えていた事を頭の隅に追いやって自身の力を力を消す。
自身の力を消した事で髪と瞳の元の黒色に戻った後、

「自分の強さに疑問を覚えなくて良い。自分の強さを、そしてこいつ等を信じれば良い」

龍也は自分に言い聞かせるかの様にそう呟く。
こいつ等と言うのは龍也の中に居る朱雀、白虎、玄武、青龍の四神の事。
自分と四神を信じると言うのは妖夢との戦いに敗北し、リベンジの為に修行していた際に得た答え。
答えを出した時の事を思い出した龍也は、心が楽になった様な気がした。
一人では無いと言うのは、心強い事なのかもしれない。
心強さを感じながら龍也は自分の両頬を両手で叩いて気合を入れ直し、

「……よし!!」

前方へと足を進め様とした瞬間、

「そう言えば……今なら考えてた技、使えるかもな」

考えていた技が今なら出来そうだと思い、進め様とした足を止める。
龍也が考えた技。
それは、只四神の力を使った状態では出力が足りない。
かと言って、力を解放した状態でも消耗や負担が有り過ぎて技の発動前に力を解放した解除されてしまうだろう。
だが、今の龍也ならどうだ。
力の解放状態の維持時間が大幅に延びた今なら、考えていた技を発動出来るかもしれない。
だからか、

「……折角だし、色々と煮詰めてみるか」

考えていた技を頭の中で色々と煮詰める事を決め、足を進め始めた。























今日も今日とで幻想郷の何所かを歩いていた龍也は、

「……ん?」

何時の間にか向日葵が見える場所にまで来ていた。
しかも見えている向日葵の数は一本や二本では無い。
陳腐ではあるが、沢山と言う言葉が似合う程の数の向日葵が龍也の目に映っている。
見えている大量の向日葵から、

「ここは……太陽の畑か?」

今居る場所が太陽の畑かと龍也が推察した刹那、

「正解」

何者かが正解と言う声を掛けて来た。
掛けられた声に反応した龍也は、声が聞こえて来た方に顔を向ける。
顔を向けた龍也の目に、

「幽香」

幽香の姿が映った。
やはりと言うべきか、龍也に声を掛けて来た者は幽香であった様だ。
兎も角、龍也が幽香の存在を認識した事で

「元気そうね、龍也」

元気そうだと言う言葉を幽香が掛けて来たので、

「ああ。それなりにな」

取り敢えず、それなりに元気だと言う返事を龍也は返す。
その後、

「そういや、ここにお前の家が在るんだったっけか?」

龍也は思い出したかの様に太陽の畑に幽香の家が在る事を口にする。
すると、

「正確に言えば夏場だけの家なんだけどね」

太陽の畑にある家は夏場だけの家だと言う発言が幽香から発せられた。

「ん? どう言う事だ?」
「つまり、夏以外は貴方と同じ様に私も幻想郷中を回っているのよ」

夏場だけと言う部分に疑問を覚えた龍也に、幽香が笑顔で自分も夏以外は龍也と同じ様に幻想郷中を回っている事を教える。
幽香から教えられた事を聞き、

「ああ、成程」

納得した表情を龍也は浮べた。
幻想郷中を回っていると言うのに、寝る為だけに自分の家に戻るのははっきり言って効率が悪い。
龍也とて、自分の家である無名の丘の洞窟には滅多に帰らないのだ。
故に、龍也は幽香の言い分に納得した表情を浮べたのである。
まぁ、夏場はちゃんと家に居る辺り龍也よりはずっとマシであろうが。
兎も角、一寸した会話を龍也と幽香が交わした後、

「そうそう、お昼食べてく?」

良い事を思い付いた言った表情で幽香はお昼を食べていくかと言う提案をする。
そう提案された龍也は、どうするかを考えていく。
空腹感を感じてはいるが、どうにもならないと言った程では無い。
だが、そう時間を置かない内に空腹感が我慢なら無い程になるであろう。
序に言えば、幽香の作るご飯は美味しい。
以上の事を考え、纏めた結果、

「じゃ、御馳走になるな」

お昼を御馳走になる事を龍也が決めると、

「分かったわ、それじゃ付いてきて」

幽香は自分に付いて来る様に言い、歩き出した。
歩き出した幽香を追う様にして、龍也も足を進め始める。

「そういや、幽香って何か目的が有って幻想郷中を回っているのか?」
「私の場合は花を見る為に回っているのよ」
「ああ、成程」
「そう言う貴方は?」
「俺か? 俺は適当に、気の向く儘に幻想郷中をブラブラと回っているって感じだな」
「勿体無いわねぇ。幻想郷中を回っていれば珍しい花の一本や二本、見付けられるでしょうに」
「まぁ……確かにな。幻想郷なら外の世界で見た事が無い様な花の一本や二本、見付かるだろうな」
「そうよ。珍しい花だけじゃなく、何所にでも咲いている様な花を見るのも良いものよ」
「分かっていた事だけど、本当に花が好きだな。幽香は」
「当然よ」

龍也と幽香が雑談を交わしながら足を進めている間に幽香の家に着いたので、二人は雑談を切り上げて家の中に入って行く。
家の中に入った二人は居間へと進み、

「じゃ、椅子に座って待っていて。今、ご飯を持って来るから」

居間に着くと幽香は椅子に座って待つ様にと龍也に言い、台所へと向かって行った。
待っている様に言われたからか、龍也は大人しく椅子に座って待つ事にする。
大人しく椅子に座ってから幾らかすると、幽香が料理を手に持って台所から戻って来た。
オムライスとサラダを乗せたお皿を二つずつ、両腕と掌に乗せて。
料理を運んで来ている幽香を見た龍也が器用に運べるなと言う感想を抱いている間に、幽香はテーブルの上に料理を並べていき、

「さ、早く食べましょ」

早く食べる様に促して椅子に腰を落ち着かせる。
そして、

「「いただきます」」

龍也と幽香は食事を取り始めた。
二人が食事を取り始めてから少し経った頃、

「あ、そうだ。一寸良いか?」

何かを思い出したかの様な表情を龍也は浮かべ、幽香に一寸良いかと声を掛ける。

「あら、何かしら?」

声を掛けられた幽香は続きを話す様に促されたので、

「実は新しいスペルカードを作ろうと思ってるんだ。と言う訳で、少し助言が欲しいと思ってな」

龍也は新しいスペルカードを作ろうと思っているので助言が欲しいのだと話す。

「助言を?」

初めてスペルカードを作成する時なら未だしも、今更助言は必要かと幽香が考え始めた時、

「ああ。弾幕ごっこのルール違反になるかならないかを判断して欲しいんだ」

作るスペルカードが弾幕ごっこのルールに違反していないかどうかを聞きたいのだと口にする。
力を解放した状態の維持時間が大幅に延びた事で使えるだろうと考えていた技。
これをスペルカードにし様としているのだ。
何故、その技をスペルカードにし様としているのか。
答えは簡単。
技の完成系を思い描いた瞬間、気付いたからだ。
技を発動させる為には余りにも溜めの時間が長いと言う事を。
はっきり言って、溜めの時間が長過ぎて実際の戦闘で使う事は滅多に出来ないであろう。
味方が居れば話は別であろうが、幻想郷中を旅して回っている龍也に取って戦いの場に毎回都合良く味方が居る事を想定するのはナンセンスだ。
だが、折角考えていた技を廃案するのは何か勿体無い。
そう思った龍也の頭にある事が思い浮かんだ。
思い浮かんだ事と言うのは、考えていた技をスペルカードにし様と言うもの。
普通に技を使おうとすれば技の発動までに時間が掛かるが、スペルカードなら瞬時に放つ事が出来る。
尤も、スペルカードで放った技は衝撃はそれ相応に有っても殺傷力が殆ど無いので弾幕ごっこ以外では使えないであろうが。
兎も角、こう言った理由で龍也は幽香に作成するスペルカードがルール違反になるかどうかを判断して欲しいと頼んだのだ。
ともあれ、龍也がスペルカードの作成に付いての助言を欲している理由を知った幽香は、

「成程ねぇ」

納得した表情を浮かべ、

「それにしても律儀ねぇ。スペルカードを作ってる奴等何て、そこまで神妙に考えてる訳でも無いでしょうに」

律儀だと言う感想を抱くも、

「まぁ、良いわ。折角だから手伝って上げる」

折角だから龍也のスペルカード作成を手伝うと言う旨を龍也に伝える。

「ありがとう、幽香」
「じゃ、早く食べてスペルカードの作成に取り掛かりましょうか」

スペルカード作成の手伝ってくれると言ってくれた幽香に龍也が礼を述べると、幽香は早く食べてさっさとスペルカードを作ろうと言う。
早く食べる様に言われたからか、龍也は食べるペースを早くする。
そして、料理を食べ終えて食器を片付け終えた後、

「それじゃ、早速作りましょうか」
「ああ」

幽香と龍也はスペルカードの作成に取り掛かった。























今回、龍也が新たに作ったスペルカードの数は四枚。
一枚目は、憤怒『朱雀の怒り』
通常戦闘では相手に向けて広範囲、高密度の火炎放射を放った後に朱雀を模した炎の塊を相手に飛ばして炸裂させると言う技だ。
これを弾幕ごっこ、つまりスペルカードで発動させる場合では少々仕様が異なっていっている。
と言っても、変わっているのは火炎放射の部分が高密度で広範囲の炎の弾幕に変わっただけ。
端的に言うと無数の弾幕を放った後、強力な一撃を放つと言うスペルカードなのである。











二枚目は、憤怒『白虎の怒り』
通常戦闘では先ず巨大な竜巻を発生させて相手を呑み込み、風圧などで相手にダメージを与える。
その後、白虎を模した風の塊を相手に叩き付けて炸裂させると言う技だ。
これを弾幕ごっこ、つまりスペルカードで発動させる場合では少々仕様が異なっている。
と言っても、竜巻の部分が相手を包囲する様に放たれる無数の風の刃に変わっているだけ。
端的に言うと、無数の風の刃で相手の動きを制限した後に強力な一撃を叩き込むと言うスペルカードである。











三枚目は、憤怒『玄武の怒り』
通常戦闘では地割れを起こし、地面を隆起させて地割れを閉じて相手を挟み込む。
その後、玄武を模した土の塊を上空から叩き落して炸裂させると言う技だ。
これを弾幕ごっこ、つまりスペルカードで発動させる場合では少々仕様が異なっている。
と言っても地割れや地面の隆起を起こさず、代わりに無数の土の塊を相手を挟み込む様に放つだけ。
端的に言うと、両サイドから無数の土の塊で攻めた後に頭上から強力な一撃を叩き込むと言うスペルカードである。















四枚目は、憤怒『青龍の怒り』
通常戦闘では圧倒的な水量で相手を叩き潰し、その後に青龍を模した水の塊を斜め上空から相手にぶつけて炸裂させると言う技だ。
これを弾幕ごっこ、つまりスペルカードで発動させる場合では少々仕様が異なっている。
と言っても、水量の部分が上空から降り注ぐ無数の水の弾幕に変わっただけ。
端的に言うと、上空から降り注ぐ弾幕で相手の攻め立てた後に強力な一撃を叩き込むと言うスペルカードである。























「ふぃー……終わった」
「お疲れ様」

スペルカードの作成が終わり、一息吐いている龍也に幽香が労いの言葉を掛ける。
掛けられた労いの言葉に龍也が何か返そうと顔を上げた時、窓から見える外の景色が龍也の目に映り、

「……っと、もう夜か」

龍也はもう夜になっている事に気付く。
だからか、

「悪いな、こんな晩くにまで付き合わせて」

こんな時間帯にまで付き合わせた事に対する謝罪の言葉を幽香に述べる。
謝罪の言葉を述べられた幽香は、

「別に構わないわ」

別に構わないと笑顔で返し、

「それにしても、随分と思い切った技……と言うかスペルカードを作ったものね」

龍也が作ったスペルカードに感心したと言った様な感想を漏らす。
漏らされた感想を聞き、

「ん、ああ。俺の技の中には広域広範囲殲滅型の技が無かったからなぁ……」

広域広範囲殲滅型の技を自分が持っていないと言う事を龍也は口にし、改めて思う。
考え、スペルカードにした技を通常の戦闘で使うのはかなり厳しいと言う事を。
技を発動させるまでの溜めの時間さえ何とかすれば通常の戦闘でも十二分に使えるであろうが、それは無いもの強請りと言うもの。
スペルカードにした技と比べたら範囲などが結構劣るが、範囲攻撃には豪炎火球や豪水球が使えるだろうと龍也は考える。
それはそれとして、今回作成したスペルカード。
龍也に取って、弾幕ごっこでは切り札的な意味合いを持つ物。
言うなれば、ラストスペルと言ったところか。
今回作ったスペルカードの愛称の様なものを龍也が頭に思い浮かべていると、

「そうそう、魔理沙から聞いたわよ。異変を解決したんだって? 魔理沙が自分で解決したかったって言う愚痴を零してたわよ」

ふと思い出したかの様に、少し前に起こった異変に付いての事が幽香の口から発せられた。
発せられた内容を聞き、萃香が起こした異変の解決を祝した宴会での出来事を龍也は思い返しつつ、

「つっても、あれは萃香が自分の負けだって言っただけだからなぁ。俺としては今一異変を解決したって言う実感が無いんだよな」

自分では今一異変を解決したと言う実感が無い事を漏らした時、

「萃香って、伊吹萃香の事?」

少し驚いたと言った表情を幽香は浮べた。
幽香の反応から、幽香は萃香の事を知っているではと龍也は推察し、

「そうだけど……萃香の事を知ってるのか?」

幽香に萃香の事を知っているのかと問う。

「ええ、知っているわ。と言っても、随分久しく会ってはいなかったけどね」

問われた事を幽香は肯定しつつ、

「それはそうと、萃香が自分の負けだって言ってたってどう言う事かしら?」

萃香が自分の負けだと言ったのはどう言う事なのかと言う疑問を龍也に投げ掛ける。
別段隠して置く様な事でも無いので、

「ああ、それはだな……」

投げ掛けられた疑問に付いて龍也は説明していく。
そして、龍也の説明から萃香が自分の負けだと言った経緯が知れた後、

「……成程、それで自分の負けか。萃香らしいわね」

萃香らしいと言う感想と共に幽香は納得した表情を浮べた。
そんな幽香を見ながら、

「だから、俺は萃香にリベンジ宣言をした。もっと強くなって、また戦いを挑んで勝つってな」

これで説明は終わりだと言わんばかりに萃香にリベンジ宣言をした事を龍也は話す。
すると、

「ええ、貴方なら強くなれるわ。萃香は勿論、他の誰よりも」

ポツリと、幽香はその様な事を呟いた。

「……ん? 何か言ったか?」

呟かれた内容が聞き取れ無かったからか、龍也は幽香に何か言ったのかと聞く。

「ううん、何でも無いわ。それはそうと、今日は泊まっていきなさい」

聞かれた事に幽香は何でも無い返し、話しを変えるかの様に今日は泊まっていく様に言う。

「え、良いのか?」
「ええ、構わないわ」

泊まって良いのかと尋ねた龍也に、幽香が構わないと返してくれたので、

「それじゃ、お言葉に甘えさせて貰うな」

龍也は幽香の家に泊まる事にした。























深夜。
龍也が寝入った後、幽香は風呂に入っていた。
そして、湯船に浸かりながら思う。
自分の想像以上の早さで龍也は強くなっていると。
はっきり言って、幽香は現段階で萃香に自分の負けと言わせる程に龍也が強くなるとは思っていなかったのだ。

「……ま、龍也が私の想像以上の早さで強くなる事位は十分に解っていた事だけど」

そんな事を口走りしながら、ある確信が幽香の頭の中にあった。
確信と言うのは、自分が思っているよりも早くに龍也が自分と対等以上の強さ身に付けると言う事。
その時こそ、龍也と全力で戦える日。
と言っても、幽香が龍也と全力で戦える日が来るのはまだまだ先の事である。
だが、今からその日が待ち遠しいと言わんばかりに幽香は恋焦がれる様な笑みを浮かべ、

「それにしても……私を……女を待たせている事に気付かないなんて、中々罪作りな男ね……龍也は」

ポツリと龍也は罪作りな男とだと呟いた。























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