龍也が阿求の頼みで冥界に赴いてから何日か経ったある日。
今日も今日とで幻想郷の何所かを歩いていた龍也は、

「あれ……?」

突如、今まで歩いていた場所とは風変わりな場所に出ていた。
だからか、若干警戒した様子で周囲を見渡しながら足を進めて行くと、

「……思い出した。確か、ここはマヨヒガだったか?」

現在居る場所がマヨヒガである事を龍也は思い出す。
以前、冬が異様に長いと言う異変を解決する為に動き回っていた時に通った場所。
その様な場所に再び足を踏み入れたからか、

「あの時は妖夢にリベンジを果たす事を優先したんだっけか。西行妖の中から春度を抜き出すのは手伝ったけど、異変の首謀者である幽々子を倒したのは
霊夢、魔理沙、咲夜の三人だからな。あの異変はあいつ等が解決した様なものだろ」

龍也は幽々子が起こした異変の時の事を思い返していた。
そんな時、

「あれ、お兄さん?」

お兄さんと言う言葉が龍也の耳に入り込んだ。
耳に入った言葉が気に掛かった龍也は一旦足を止め、体を声が聞こえて来た方に向ける。
体を向けた龍也の目には、茶色い髪に猫耳を生やした女の子の姿が映った。
この特徴から、目の前に居る存在が橙である事を龍也は認識し、

「よ、橙」

片手を上げ、挨拶の言葉を掛ける。
掛けられた挨拶の言葉に、

「こんにちは、お兄さん」

橙も挨拶の言葉を返し、

「またマヨヒガに来れる何て、お兄さん運が良いんですね」

またマヨヒガに来る事が出来た龍也を運が良いと評した。

「そうか?」
「そうですよ。普通は何度も来れないんですよ、ここ」

運が良いと評された龍也が疑問気な表情を浮べると、橙はマヨヒガは何度も来れる様な場所では無いと口にする。
何度も来れる様な場所にまた来れたのであれば、確かに運が良いと評しても良いだろう。
だとするならば、今日は良い事が起こりそうだと言う事を龍也が考えていると橙は龍也の腕を掴み、

「お兄さん、少し手伝ってくれませんか?」

手伝ってくれないかと聞く。
一体何を手伝って欲しいのかは分からなかったが、

「ああ、別に良いぞ」

特にこれからしなければならない予定も無いので、龍也は安請け合いする形で手伝うを事を約束する。
すると、橙は龍也の腕を引っ張りながら移動を開始した。
橙に引っ張られる形で移動を開始してから少しすると、猫の溜まり場が見えて来た。
あそこが橙の目的地である事を何となく察した龍也は、

「で、俺は何を手伝えば良いんだ?」

何を手伝えば良いのかを問う。
問われた橙は足を止め、龍也の腕から手を離し、

「それはですね……」

手伝って欲しい事を説明し始めた。
説明の内容を要約すると、橙はここに居る猫達を自分の式にしたいのだが今一猫達と仲良くなれないとの事。
なので、龍也には猫達と仲良くなる為の手助けをして欲しいらしい。
橙は猫の妖獣に分類されると言うのに猫と仲良く出来ない事には少々疑問を感じてしまうが、別に断る理由も無いので、

「ああ、別に良いぞ」

猫達と仲良くなろうと言う橙の手伝いをする事を決めた瞬間、

「ありがとうございます!!」

礼の言葉を橙は述べ、

「よーし、待ってろよー!!」

気合を入れながら猫達の群れの中に突撃して行った。
























猫達の群れの中に橙が突撃してから幾らか経った頃、

「うー……」

橙は龍也に羨ましがる様な視線を向けていた。
そんな視線を向けられている龍也は、

「ははは……」

乾いた笑みを浮かべ、橙から視線を逸らす。
何故、橙は龍也にその様な視線を向けているのか。
答えは簡単。
橙がどれだけ奮闘しても猫達が橙が懐く事は無かったが、龍也には懐いたからである。
自分には懐き、橙には懐かない猫達を龍也が少し不思議に思っている間に、

「むー……何でお兄さんにはそんなに懐くんですか?」

どうして龍也にはそんなに猫達が懐くのかと橙が聞いて来た。

「いや、俺に聞かれても……」

聞かれても分からないと返しながら、龍也は考えていく。
どうして、自分はこう猫に懐かれているんだろうと。
一番最初に懐かれる要因として思い付いたのは自分の中に居る四神、白虎が関係しているのではと言う可能性。
白虎も一応は虎に分類される。
そして、虎は猫科。
当然、猫も猫科だ。
つまり、猫科と言える存在を宿しているが故に龍也が猫に懐かれると言う説。
しかし、この説にはある疑問が出て来る。
疑問と言うのは、猫が虎に懐くのかと言う事。
猫が虎を前にして威嚇をしたり尻尾を巻いて逃げるのであれば兎も角、懐くと言うのであれば首を傾げてしまう。
龍也が猫に懐かれている要因に付いて考えている最中に猫の一匹が足に擦り寄って来た事で、龍也は意識を現実に戻すと、

「……あ」

橙からの視線がより強くなったのを感じ取った。
どうやったら猫に懐かれるのかを知りたいのだろう。
とは言え、龍也もどうやったら猫に懐かれるかは龍也にも分からないので、

「まぁ……根気良く猫と接していくしかないんじゃないか?」

取り敢えず、当たり障りの無い助言をする事にした。
助言を受けた橙は、

「根気良くですか……」

何か決意を固めたかの様な表情を浮べる。
必ずここの猫を自分の式神にすると改めて誓ったのだろうか。
ともあれ、橙の機嫌が何とか直った時、

「ちぇーん、居るかーい?」

何処からか、橙の名を声が聞こえて来た。
呼ばれた声に反応した橙は声が聞こえて来た方に顔を向け、

「あ、藍様だ」

声の主の名を口にする。
橙が口に名が耳に入ったからか、

「藍?」

龍也も橙と同じ方に顔を向けた。
そのタイミングで藍が物陰から現れ、

「ああ、そこに居たのか」

龍也と橙が居る方へと向かって行き、

「おや、龍也じゃないか。こんにちは」

途中で龍也の存在に気付いたからか、龍也に挨拶の言葉を掛ける。
掛けられた挨拶の言葉に、

「よっ」

龍也は片手を上げる事で返す。
それを見届けた後、

「それにしても、運が良いね。普通のやり方じゃマヨヒガに来る事何て滅多に出来ないんだがね」

龍也の事を運が良いと評した。

「それ、橙にも言われたよ」

運が良いとは橙にも評された事だと言いながら、龍也は擦り寄って来ている猫の頭を撫で始めたタイミングで、

「それで、二人は何してたんだい?」
「ああ、実はな……」

何をしていたんだと言う問いが藍から投げ掛けられたので、ここで何をしていたのかを龍也は簡単に説明していく。
一通り龍也の説明が終わると、藍は納得した表情を浮かべ、

「ははぁ、成程。大丈夫だよ、橙。橙ももう少しすれば一人前になれるよ」

橙の頭を撫でながらもう少しすれば一人前になれると言う言葉を掛ける。
一応とは言え、何れは一人前になれると言うお墨付きを貰えたからか、

「……はい!!」

持ち直したと言った感じで橙は笑顔を浮かべ、

「そうだ、藍様。私に何か御用ですか?」

自分に何か用が在るのかと尋ねた。
そう尋ねられた事で、藍は橙を探していた事を思い出し、

「ああ、そうだった。これから結界の見回りに行くから橙を連れて行こうと思ってね」

橙を結界の見回りに連れて行こうと思っていた事を話す。

「結界の見回り?」
「うん、橙にも何れは結界の管理の一部を任せる積りだからね。その勉強さ」

結界の見回りと言う部分に疑問を覚えた龍也に、橙にも何れ結界の管理の一部を任せる積りなのでその勉強の為だと言う事を藍は伝える。

「結界の管理か。何だか、大変そうだな」
「んー……結界に何の異常も無ければ楽何だけど、結界に異常が発生していたら大変だね。異常部分の修復は元より、結界に異常が発生した事で何が
起きたのかを調べなければならないんだ。紫様が手伝ってくれればかなり楽になるんだが……余程の事態にならない限り紫様は殆ど動かないからね」
「だろうな。紫が動いてるとこ何て俺には全然想像出来ないし」
「い、いや。そ、そんな……そんな事は無いぞ。うん。紫様とて、動くべき時は動く……筈」
「何か、最後の方で声の元気が無くなったな」

龍也と藍が結界と紫に付いての会話を交わし、痛い所を突かれて藍が言葉を詰まらせ始めた辺りで、

「さ、さて。それじゃ、そろそろ行こうか。橙」

藍は話題を強引に変えるかの様にそろそろ行こうと橙に言う。
すると、

「はい、藍様」

藍の元へ橙は駆け寄って行った。
取り敢えず、これでお開きと言った感じになったからか、

「またな、二人とも」

藍と橙の二人に別れの言葉を掛ける。

「うん、また」
「また会いましょう、お兄さん」

掛けられた挨拶の言葉に藍と橙はまたと返し、去って行く。
去って行った二人を見届けた後、龍也もマヨヒガを去ろうかとしたが、

「あー……」

足元に猫が擦り寄って来た為、龍也は一旦マヨヒガを去るのを止めて猫の相手をする事にした。























深夜。
月が天を支配している時間帯。
幻想郷の何所かプラプラと歩いた龍也は、

「お……」

ミスティアがやっている屋台を発見した。
今の今まで夜食を取っていなかったので、龍也はミスティアの屋台でご飯を食べる事を決める。
そう決めたの同時に龍也はミスティアの屋台に近付き、暖簾を潜ると、

「いらっしゃい!!」

元気な声で迎えられた。
だからか、

「よっ、ミスティア」

龍也は軽い挨拶の言葉を述べ、椅子に腰を落ち着かせる。
龍也が腰を落ち着かせたタイミングで、

「あら、龍也じゃない」

やって来た者が龍也である事をミスティアは認識し、

「少し……久しぶり?」

少し久し振りかと口にし、首を傾げた。
確かに、ミスティアと会うのは少し久し振りである為、

「そう……だな。色々あったからな」

久し振りと部分を龍也は肯定し、色々の部分を思い返していく。
と言っても、思い返されたものは主に異変関係の事ではあるが。
それはそれとして、何時までも過去の記憶を思い出していても仕方が無いと言う事もあり、

「……で、どうだ? 景気の方は?」

話題を変えるかの様に景気のどうだとミスティアに問う。
問われたミスティアは笑顔を浮かべ、

「そうね、順調よ順調」

順調である事を龍也に伝え、

「常連客も増えたし……そうそう、この前なんか紅魔館の主がやって来たのよ」

常連客が増えた事と、紅魔館の主がやって来た事を話す。
レミリアがミスティアの屋台にやって来た事を知った龍也は、何時だったかレミリアがミスティアの屋台に行こうと考えていた事を思い出す。
どうやら、レミリアは考えていた事を実行した様だ。
ミスティアの話している声色から、レミリアから中々の評価を得る事が出来たんだろうなと言う事を龍也が察している間に、

「焼き鳥撲滅の日も近いわね」

焼き鳥撲滅の日も近いと言いながら拳を作る。
屋台の利用者が増えても焼き鳥を食べる者が減るとは限らないが、ミスティアのやる気を消失させる必要も無いので龍也は特に何かを言う事はしなかった。
拳を握り、決意を新たにと言った感じの表情をミスティアは浮べていたが、

「あ、そうそう。注文は何?」

龍也から注文を受けていない事に気付き、ミスティアは表情を戻して注文は何かと聞く。

「んー……焼酎と焼き八目鰻とご飯。要するに、何時ものだな」

注文を受けた龍也は何時も屋台で食べたり飲んだりしている物を頼む事にした。
すると、

「はいよ!!」

ミスティアは元気な声で了承の返事をし、調理を始めていった。
目の前で調理が始められているだけあってか、良い匂いが辺りに漂い始める。
漂っている匂いが龍也の胃袋を刺激し始めた時、

「あ、良い匂いー」

真っ黒い球体が龍也の隣に現れたではないか。
急に真っ黒い球体が現れた事で、若干警戒した視線を龍也が真っ黒い球体に向けた瞬間、

「ん……」

球体が消え、

「……ルーミア?」

ルーミアが姿が現した。
どうやら、真っ黒い球体の正体はルーミアであった様だ。
ルーミアの存在を龍也が認識したのと同時に、

「あ、お兄さん」

ルーミアも龍也の存在に気付いた。
取り敢えず、互いが互いの存在を認識出来た後、

「ルーミアもここに食べに来たのか?」

龍也はルーミアもミスティアの屋台でご飯を食べに来たのかと尋ねる。

「んー……どっちかと言うと、良い匂いがしたから釣られて来たのかな?」

尋ねられたルーミアは屋台から良い匂いがしたので釣られて来たのかもしれないと口にし、

「それよりもお兄さん。お兄さんは食べても良い人類?」

急に雰囲気を少し獰猛なものに変え、龍也は食べても良い人類かと聞いて来た。
食べても良い人類かと聞かれた龍也は軽く拳を握り、

「襲い掛かって来たら、力尽くで撃退するって前に言わなかったか?」

襲い掛かって来るのなら力尽く撃退すると言う意志を示す。
これからここで一戦交えそうな雰囲気を感じ取ったミスティアは、

「一寸一寸、ここでは乱闘厳禁だよ!!」

慌てた動作で仲裁に入り、調理し終えた物を龍也の目の前に置く。
まぁ、ミスティアが仲裁に入るのも無理はない。
下手に争われたりしたら、屋台が巻き添えを喰らって壊れる可能性があるのだから。
仲裁が入った事で龍也とルーミアの二人から幾らかの戦意が失われた刹那、

「それに、龍也は私の屋台の常連さんなんだから食べちゃ駄目。ルーミアにも何か作って上げるから我慢しなさい」

自分の屋台の常連である龍也を食べては駄目だと言う事をミスティアはルーミアに言い聞かせ、ルーミアにも何か作るからそれで我慢しろと言い聞かせる。
だからか、ルーミアの戦意が完全に消失した。
それに伴い、龍也の戦意を消失する。
二人から戦意が消失した事で安心したミスティアは、ルーミアの分のご飯を作っていく。
何やら只でご飯を作る事になってしまったミスティアに龍也は若干同情しつつ、出された料理を口に運び、

「……美味い」

美味いと言う感想を漏らす。
そんな龍也の感想が耳に入ったからか、ルーミアは物欲しそうな目で龍也を見詰める。
ルーミアから視線に気付いた龍也は溜息を一つ吐き、

「……分かった分かった。俺の分、少し分けてやるよ」

少しだけ分けてやると言う。
すると、ルーミアは嬉しそうさ表情を浮べて皿の上に乗かっている料理を持って行こうとする。
素手で。
だからか、

「おいおい、箸を使え箸を」

近くに置いてあった割り箸を龍也は手に取り、ルーミアに箸を使う様に言って割り箸を手渡す。
割り箸を手渡されたルーミアは、割り箸を使って皿の上に在る料理を食べていく。
一心不乱に食べているルーミアを見て、

「良く食べるな……」

良く食べるなと龍也が漏らすと、

「ま、ルーミアは雑食だからねー」

雑食だからと言う返答が、ルーミアのご飯を作っているミスティアから返って来た。
雑食と称された事が気に喰わなかったからか、ルーミアは一旦食べるのを止め、

「失礼ね。私はグルメよ。グルメ」

自分はグルメだと言う主張を行なう。

「グルメって言うのなら、最初から箸を使えよ」

自身をグルメと称したルーミアに龍也は最初から箸を使えと言う突っ込みを入れ、焼き八目鰻を食べ様としたが、

「……あれ?」

皿の上に在った焼き八目鰻が殆ど無くなっていたので、龍也は間の抜けた表情を浮べてしまう。
まだそんなに食べてはいないのにと言う疑問が頭に浮かんだ瞬間、焼き八目鰻が殆ど無くなった原因が龍也の頭に思い浮かぶ。
思い浮かんだ原因と言うのは、ルーミアだ。
先程、ルーミアに自分のご飯を食べても良いと龍也は言ったので遠慮無しに食べたのだろう。
そう考えた龍也がルーミアの方に顔を向けると、ルーミアは龍也から思いっ切り顔を逸らした。
ここまであからさまに自分が犯人であると言う様な態度を取られると、怒る気も失せた様で、

「……はぁ、ミスティア。焼き八目鰻、追加ね」

ルーミアに対して何かを言う事はせず、ミスティアに焼き八目鰻の追加を頼み、

「焼き八目鰻と一緒に飲む積りだったんだけど……ま、いっか」

焼酎を飲んでいく。
早く、追加の焼き八目鰻が出来ないかと思いながら。
























「……ん、少し冷えて来たか?」

何時の様に幻想郷の何所かを歩いていた龍也は、一寸した肌寒さを感じた。
若しかしたら、もう夏は終わってしまったのかもしれない。
となると、一度無名の丘の洞窟に戻ってアリスに作って貰った防寒具を取りに戻る事を考えた方が良いだろう。
と言っても、まだまだ防寒具が必要に成る程の寒さでは無いが。
取り敢えず、吐いた息が白く成ったら無名の丘の洞窟に戻ると言う予定を龍也は頭に入れて置く事にした。
それはそれとして、

「……何だ?」

進行方向上に何かが在るのを龍也は発見し、目を凝らしていく。
目を凝らした結果、二つの人影が踊りの様な動作をしている事が分かった。
が、人影の人相までは分からなかったので、

「近付いてみるか……」

龍也は見えた人影に近付く事にする。
ある程度近付くと、

「あいつ等は……確か、静葉と穣子……だったか?」

見えた人影が静葉と穣子の二柱である事が分かった。
二柱を見付けた時に静葉と穣子の名を呟いた事で、

「貴方は確か……龍也だっけ?」
「お久しぶりです」

穣子と静葉が龍也の存在に気付く。
二柱の反応から察するに、龍也の事を覚えたいた様だ。
兎も角、互いが互いの存在を認識した後、

「どうしたんだ、ご機嫌じゃないか」

ご機嫌だなと言う言葉を掛ける。
すると、

「それはそうよ!!」
「やっと秋が来ましたからね!!」

感極まったと言った声色で、穣子と静葉は秋がやって来た事を口にし、

「今年の冬は異様に長く、憂鬱な時期が長かったけど……」
「それももう終わり!! 秋は私達の季節です!!」

元気良く自分達の季節が来たと言う宣言をした。
静葉と穣子の二柱は秋の神様なので、この二柱が秋と言うのであれば季節は秋なのだろう。
今の季節が秋だと言う確信を得た龍也は、

「……そうか、もう秋か」

もう秋かと漏らし、ある事を思った。
思った事と言うのは、今まで起きた異変の事。
レミリアが起こした異変を除けば、春と夏に幽々子と萃香が起こした異変が発生した。
ならば、今現在の季節である秋にも異変が起こる可能性は十分にある。
そう考えた龍也であったが、

「……考え過ぎか」

直ぐに考えた事を否定した。
そして、考えた事を振り払うかの様に龍也が頭を振るい始めた時、

「龍也さん」

静葉が龍也の手を掴む。
そのタイミングで、

「折角だから、龍也に秋の珍味をご馳走して上げる」

穣子も龍也の手を掴んで秋の珍味をご馳走すると言い、二柱は足を進め始めた。
突然とも言える二柱の行動に、

「お、おい……」

龍也は少し驚き、何か声を掛け様としたが、

「気にしなくて良いですよ」
「そうそう。神から贈り物される人間なんて殆ど居ないんだから、誇って良いわよ」

静葉と穣子は何処吹く風と言った感じで足を動かし続ける。
秋に成ったばかりと言う事で、気分が高揚しているのだろうか。
ともあれ、折角美味しい物を食べさせてくれると言うのだ。
だからか、

「……じゃ、御馳走になるかな」

秋の珍味を食べる事を龍也は決め、秋姉妹に付いて行く事にした。























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