ミスティアを弾幕ごっこで倒し、龍也と幽香が移動を再開してから幾らか経った頃。
龍也と幽香は少し開けた場所に出た。
少し開けた場所に出たのだから、今までよりも進み易くなったのだが、

「……あれ?」

龍也は突如として進行を止め、疑問気な表情を浮べて周囲を見渡す。
突如とした進行を止めた龍也に合わせるかの様に幽香も進行を止め、

「どうかしたの? 龍也」

どうかしたのかと龍也に声を掛ける。
声を掛けられた龍也は幽香の方に顔を向け、

「いや、人里が見えないんだよ。これだけ高度がある場所に来ていて、開けた場所で月明かりが在るなら人里が見えると思ったんだけどな……」

ここからなら人里が見える筈なのにと言い、人里が在るであろう方向に指をさす。
龍也が指をさした方に幽香は顔を向け、

「確かに、龍也が指をさした方向には人里が在る筈……」

指がさされた方向には人里が在る筈だと幽香は口にし、

「人里が見えないのは、人里の半獣の仕業ね」

人里を視認する事が出来ないのは人里の半獣の仕業だと断言した。

「半獣……慧音先生の事か」

人里の半獣と言う事で上白沢慧音の存在を龍也が思い浮かべると、

「正解。上白沢慧音の人間の時の能力は"歴史を食べる程度の能力"。それを使って人里を隠しているんでしょう」

正解と言う言葉と共に幽香は慧音が人間の時の能力を述べ、その能力で人里を隠しているのだろうと言う推察をする。

「異変だからか?」
「それもあるでしょうけど、彼女は満月の日に獣人化するタイプ。なのに今日は獣人化しなかった。それを怪しんだ彼女は何かあると思い、人里に
危険が迫る前に自身の能力を使って人里を隠した……と言った感じかしら」

異変だから人里を隠したのかと考えた龍也に、幽香は慧音が人里を自身の能力で隠したであろう理由を説明し、

「とは言え……これは少し不味いわね」

少し不味いと呟く。
呟かれた内容が耳に入った龍也は、

「何が不味いんだ?」

何が不味いのかを問う。

「異変が起きていると言う状況下で人里に人間と妖怪が近付いてみなさい。確実に襲撃者と思われて一戦交える事になるわ」

問われた事に対する答えとして、異変が起きている状況下で人間と妖怪が人里に近付けば確実に一戦交える事になるだろうと幽香は零す。
幾ら異変時だからとは言え、近くを通り掛かっただけで一戦交えると言うのは大袈裟であると龍也は感じた為、

「それは……幾ら何でも考え過ぎじゃないか?」

考え過ぎじゃないかと言う言葉を龍也は幽香に掛ける。
が、

「あの半獣、上白沢慧音は少し思い込みが激しいところがあるからね。龍也だけなら兎も角、妖怪である私が居る時点で何を言っても異変を利用して
人里に襲撃を掛けて来た無法者としか思って貰えないでしょうね」

有無を言わずに考え過ぎでは無いと言う発言が幽香から述べられた。
慧音とはそれなりの付き合いがあるが、龍也は慧音の事を深く知っていると言う訳で無い。
はっきり言って、幽香の方が龍也よりも慧音の事を知っているだろう。
ならば、幽香が述べた考え過ぎでは無いと言う発言は信憑性が増すと言うもの。
なので、龍也は幽香の発言を信じる事にし、

「なら、どうするんだ? 進路的に人里を通る事になるだろ」

ではどうするのだと言う疑問を投げ掛ける。
龍也の疑問を受け、

「戦っても負ける事は先ず無いけど、上白沢慧音は人里の守護者と言われる程の者。普通に戦うにしろ弾幕ごっこで戦うにしろ、一戦交えれば確実に余計な
時間を喰うわね。リグル、ミスティアを弾幕ごっこで倒すまでに掛かった以上の時間がね。今回の異変の特性上、余り時間を掛けると言うのは宜しくない」

余り時間を掛けるのは今回の異変の特性を考えると宜しくないと幽香は判断し、

「……少々癪だけど、回り道をしましょうか」

回り道をし様と言う案を出す。
出された案に異論は無いからか、

「分かった」

特に何かを言う事はせず、龍也は幽香が出した案を受け入れた。
取り敢えず、回り道をすると言う案で進むと言う決定した事で、

「それじゃ、行きましょうか」
「ああ、そうだな」

幽香と龍也は再び移動を再開する。





















龍也と幽香が移動を再開してから幾らか経つと、二人は無数の竹が生い茂っている場所に入っていた。
無数の竹が生い茂っている場所に入るの初めてあるからか、

「へぇー……」

興味深そうな表情を浮べ、龍也は顔を動かして周囲の様子を伺っていく。
そんな龍也に、

「ここは迷いの竹林と言われている場所よ」

幽香は今現在居る場所は何所なのかを教える。

「迷いの竹林?」
「ええ、ここに来るのは初めて?」

疑問気な表情を浮べてしまった龍也に、迷いの竹林に来るのは初めてかと幽香は聞く。

「ああ……」

聞かれた事に肯定の返事を返した瞬間、龍也は一寸した疑問を抱いた。
抱いた疑問と言うのは、何故自分は迷いの竹林に来た事が無いのかと言うもの。
幻想郷中を歩いて回ると言う事をしているのだから、一度位は迷いの竹林に足を運んでいても良いものである。
今まで迷いの竹林に行った事が無いと言う事実を知り、その事に付いて頭を悩ませている龍也に、

「……旅をしている時に、無意識の内に足が自分が知っている者が居る場所に向かってたんじゃない?」

龍也の悩みは解っていると言った感じで、龍也が今まで迷いの竹林に足を運ばなかったであろう推察を幽香は述べた。
確かに、そう考えたら龍也が今まで迷いの竹林に足を運ばなかった理由の説明にはなる。
とは言え、それが正しかったら龍也は意外と寂しがり屋と言う事になってしまう。
自分が寂しがり屋と思いたくない龍也は何とか反論の言葉を発し様としたが、

「若しかして、龍也って意外と寂しがり屋なのかもしれないわね」

まるで龍也の心中を察したかの様に、幽香の口から龍也は意外と寂しがり屋かもしれないと言う発言が飛び出した。

「な……お、お前な……」

言われたくない事を言われて言葉を詰まらせてしまった龍也に、

「ふふ……」

幽香は軽い笑みを向け、

「処で……気付いてる?」

話を変えるかの様に気付いているかと問う。
気付いているかと問われても、何に気付いているかと言われているのか分からなかった為、

「ん? 気付いてるって……何にだ?」

疑問気な表情を龍也は浮べてしまった。
龍也が浮べた表情から、何も気付いていない事を幽香は察し、

「夜よ。今、夜が止まっているの」

夜が止まっている事を龍也に教える。

「夜が?」

教えられた内容が予想外のものであった事で少し驚いた表情を龍也が浮べると、

「天に浮かぶ偽りの月、そして星の位置を見てみなさい。私達が異変解決に出発してから、全く変わっていないから」

天に浮かぶ偽りと星の位置を見てみろと幽香は龍也に言う。
そう言われた事で、龍也は顔を上空の方へと動かし、

「言われて見れば……月や星の位置が変わってない気もするな」

何とも曖昧な感じで月や星の位置が変わっていない様な気もすると漏らす。
まぁ、月や星の位置など龍也は大して記憶していなかったのだ。
曖昧な感じになってしまっても無理はないだろう。
ともあれ、何となくではあるが夜が止まっている事を龍也が認識したのを知った幽香は、

「夜を止められている理由として、考えられる理由は二つ。一つは私達以外の者が異変解決に赴いており、夜を止めていると言う可能性。偽りの月を浮かべ
上がらせた儘、夜を明けさせると言うのは宜しくないからね。異変解決をする為にどれだけ時間が掛かるか分からない。だから、夜を明けさせない為に夜を
止めた……言った感じかしら? 理由の一つ目は。二つ目は更なる混乱を起こす為に異変を起こした者が夜を止めたと言う可能性。偽りの月が天を支配し、
夜が明けなければ妖怪だけではなく人間も狂……いはしなくとも混乱する事は間違い無いでしょうね。異変の首謀者が思い描いている計画の中に幻想郷中を
狂気と混乱の渦に叩き込むと言うのが入っている為に夜を止めた……と言うのが理由の二つ目かしら」

夜を止めている者と理由に付いて考えられる可能性を話す。
話された可能性は中々説得力が高いと感じられたからか、龍也は感心したと言った表情を浮かべつつ、

「前者なら味方が居るって事になるけど、後者なら人里に住んでる人達が起きてくる前に異変を解決する必要があるな」

前者なら良いが、後者だと人里に住んでいる人間が起きる前に異変を解決する必要があると呟く。
が、どちらにしても異変を解決すると言う事に変わりは無いので、

「……ま、色々考えても仕方が無いか」

呟いた内容を龍也は頭の隅に追いやった。
そして、意識を再び前方に向け直した時、

「……また妖精か」

何体かの妖精の姿が龍也の目に映る。
ここからはまた妖精を撃ち倒しながらの道中になるなと言った様な事を龍也が思っている間に、

「さて……」

幽香は前方に手を伸ばし、弾幕を放つ。
放たれた弾幕は現れた妖精達に命中し、現れた妖精達を全て撃ち落す。
取り敢えず現れた妖精を幽香が一掃し終えた後、

「お、追加だな」
「みたいね」

また新たに何体かの妖精が現れたのが龍也と幽香の目に映った。
つい先程出て来た妖精は幽香が倒したからか、

「今度は貴方が倒してみなさい」

今度は龍也が倒してみなさいと口にし、幽香は弾幕を放つのを止める。
幽香ばかりに仕事をさせると言うのもあれなので、

「あいよ」

特に異を唱える事無く龍也は了承の返事をし、弾幕を放つ為に右腕を伸ばした瞬間、

「何……」

驚きの表情を浮べる事になった。
何故かと言うと、新たに現れた妖精が白い塊を自分の周囲に展開して来たからだ。
勿論、白い塊が展開されたから驚いたと言う訳ではない。
では、何に対して驚いたのかと言うと、

「二重だと……」

展開された白い塊にある。
そう、新たに現れた妖精が展開した白い塊が二重になっているのだ。
今まで現れた妖精が展開する白い塊が一重であった事を考えると、見ただけで分かるパワーアップである。
だからか、龍也は異変の首謀者が居る場所に近付いている事を感じながら表情を戻し、

「出て来て早々で悪いが……手早く片付けさて貰うぜ」

弾幕を妖精達に向けて放つ。
放たれた弾幕は白い塊を破壊し、妖精を撃ち落したが、

「……二重になってるっての、思っていたよりも厄介だな」

白い塊が二重になっているせいか妖精を一体倒すのに今までよりも少々時間が掛かってしまったので、龍也は愚痴の様なものを零しながら解決法を頭に思い浮かべる。
解決法と言っても、展開されている白い塊が二重になって防御力が上がっているのなら放つ弾幕の量を倍にすれば良いと言う極めて単純なもの。
大して頭を捻る事無く出した解決法を早速実行に移そうとした瞬間、

「……っと」

まだ倒していない妖精から弾幕から放たれた為、龍也は一旦弾幕を放つのを止めて回避行動を取る。
回避行動を取り、攻撃するチャンスを伺っていると龍也はある事を思い付く。
思い付いた事と言うのは、至る所に見える竹を利用し様と言うもの。
余りそう言ったものを戦いで利用した事が無いからか、一寸した高揚感を抱きながら龍也は竹の側面に足を着ける。
足を着けた事で竹が大きく撓り、撓った竹が元に戻り切る直前、

「らあ!!」

龍也は竹を思いっ切り蹴って跳躍を行い、妖精達の頭上から弾幕を放つ。
同じ様な高度で戦っていた先程までとは違い、急に高度を変えて来た龍也の動きに妖精達は付いて来れなかった様で、

「……あっさり片付いたな」

思っていた以上にあっさり倒す事が出来たので、龍也は肩透かしを喰らった気分になった。
とは言え、邪魔者を倒せた事に変わりは無いので、

「ただいま」

高度を幽香が居る位置にまで戻し、幽香に妖精達を一掃したと言う様な事を伝える。

「おかえり」

伝えられた内容を理解したと言う様な返事を幽香は行ない、

「処で……気付いてる?」

迷いの竹林に入った時の様に気付いているかと言う問いを投げ掛けた。
月と星の位置が変わっていないと言うのには気付けなかったが、今回幽香が投げ掛けて来た問いには気付けた様で、

「ああ、妖精の襲撃が少ない……って事だろ」

自信満々と言った表情で龍也は妖精の襲撃が少ない事だろうと言う。

「正解」

龍也が言った要請の襲撃が少ないと言うのは正しかった様で、幽香は一言正解と口にし、

「妖精の襲撃が少ないと言う事は……私達より先にここを通って行った者が居ると言う事」

続ける様に妖精の襲撃が少ないのは自分達より先に何者かがここを通って行ったからだと話す。
確かに、予めここ等一帯の妖精を倒して行った者が居たとしたら妖精の襲撃が少ない事の説明は付く。
だが、その説明が正しかったら新たな問題が出て来てしまう。
新たな問題と言うのは、ここを先に通った者が敵か味方かが分からないと言う事。
味方なら良いが、敵だとしたら確実に一戦交える事になるだろう。
しかし、だからと言って尻込みしていても仕方が無いので、

「鬼が出るか蛇が出るかは分からないが……兎に角、この儘進もうぜ」

この儘進もうと言う提案を龍也は幽香にする。
された提案に異論は無いからか、

「そうね、この儘行きましょうか」

幽香は賛成の意を示し、前方を見据えた。
そして、龍也と幽香は進路を変える事なく先へと進んで行く。





















妖精達の襲撃が少ないと事もあり、比較的楽な道中を龍也と幽香が満喫し始めてから幾らか経った頃。

「うわぁ……」

何とも言えない声が龍也の口から漏れた。
どうしてその様な声が漏れたのかと言うと、鬼や蛇が出た処の騒ぎでは無い出来事が龍也の目に映ったからだ。
映った出来事と言うのは、

「おいおい……」

決戦中の光景。
具体的に言うと、霊夢、魔理沙、咲夜、妖夢、紫、藍、アリス、レミリア、幽々子の九人が激闘を繰り広げているのである。
戦っている九人の様子を良く見てみると、霊夢と紫と藍、魔理沙とアリス、咲夜とレミリア、妖夢と幽々子でそれぞれチームを組んでいる様だ。
端的に纏めると、三人で一つのチームと二人で一つのチーム×3によるバトルロイヤルと言ったところか。
ともあれ、どうしてあの九人が戦う事になった理由に付いて龍也が考え様とした時、

「……っとお!!」

流れ弾が目の前まで迫って来ていた為、龍也は慌てて体を逸らして流れ弾を避ける。
流れ弾を避けた龍也は体を位置を戻しながら進行を止め、

「……たく、どして戦う事になったんだか」

軽い愚痴の様なものを零すと、

「んー……異変解決の為にここまで来たら、怪しい輩を見付けたから取り敢えず倒して置こうと考えたのかしら?」

同じ様に進行を止めていた幽香が人差し指を下唇に当て、あの九人を戦う事になったであろう理由を推察していく。
幽香の推察を聞いた龍也は、

「ああ……」

思わず納得した表情を浮べてしまった。
霊夢、魔理沙、咲夜、妖夢、紫、藍、アリス、レミリア、幽々子の九人は程度の差あれど、割りと好戦的な性格をしているからだ。
好戦的とは関係ないが、レミリアと咲夜、幽々子と妖夢は嘗て異変を起こした者とそれに加担した者。
この二つの異変に解決する側として係わっていた霊夢と魔理沙からしてみたら、紅魔館と白玉楼の主従コンビが怪しく見えても不思議では無い。
霊夢と魔理沙から怪しく見られている咲夜にしても、嘗て異変を起こした白玉楼の主従コンビが怪しく見えているだろう。
更に言えば全員が全員、萃香が起こした異変では異変の犯人扱いしたりされたりで戦ったり何なりしたらしい。
まぁ、萃香が起こした異変で一番犯人扱いされたのは龍也であったが。
兎も角、過去の出来事やら無実の罪を押し付けられたりした事が相俟って啀み合いからその儘目の前で起こっている様な争い事に発展したのだろう。
何となくではあるが、あの九人が戦い始めた経緯に付いて龍也が察し始めた辺りで、

「それで、どうする? 下手に近付き過ぎればこちらに飛び火するわよ」

幽香からこれからどうするのかと言う問いが投げ掛けられる。
確かに、幽香の言う通り下手に近付けばこちらに飛び火してしまうだろう。
しかし、異変の首謀者が居る場所に向かう為にはあの九人が戦っている場所を通る必要がある。
一応回り道をすると言う方法もあるが、それだと余計な時間を喰ってしまう。
かと言ってあの九人を倒して先に進むにしても、相手はあの九人だ。
二体九と言う数の不利に加え、九人全員が相当な実力者。
時間の浪費を避ける戦い方を避けて仮にこの九人に勝つ事が出来たとしても、体力などをかなり消耗する事になるのは火を見るよりも明らか。
そんな状態で異変の首謀者に戦いを挑んだとしても、勝ちを拾えるから正直微妙なところ。
時間と体力。
どちらの浪費を取るべきか龍也が考え様とした時、

「……ん?」

戦闘音が突如として聞こえなくなった。
若しかして戦いの決着が着いたのかと思った龍也が顔を上げた瞬間、

「神霊『夢想封印』」
「恋符『マスタースパーク』」
「空虚『インフレーションスクウェア』」
「六道剣『一念無量劫』」
「紫奥義『弾幕結界』」
「式神『アルティメットブラスト』」
「闇符『霧の倫敦人形』」
「紅符『スカーレットマイスタ』」
「幽雅『死出の誘蛾灯』」

霊夢、魔理沙、咲夜、妖夢、紫、藍、アリス、レミリア、幽々子の九人が同時にスペルカードに発動させている光景が目に映る。
スペルカードが発動された事であの九人は弾幕ごっこで戦っている事を龍也が今更ながら理解したのと同時に、大量の流れ弾が龍也と幽香の方に向かって行った為、

「うおおう!?」
「……っと」

龍也は慌てた動作で、幽香は余裕が感じられるそれぞれ流れ弾を避けていく。
次から次へと飛んで来る流れ弾を避けつつ、

「どうしたものかしら、これ」

少し困ったと言う表情を浮べながら幽香はどうしたものかと呟く。
つい先程までならそれなりの頻度で流れ弾が飛んで来る程度であったが、今は常時大量の流れ弾が飛んで来ている状況。
正面突破をするしろ回り道をするしろ、先に進む為の難易度が大幅に上昇した事には間違い無いだろう。
とは言え、危険を避けてあの九人の戦いの決着が待つと言うのは龍也としては気乗りしない方法だ。
だからか、

「……はぁ、こう言うやり方は好きじゃないんだがな」

こうやり方は好きじゃないと零しながら龍也は懐に入れ、一枚のスペルカードを取り出す。
龍也が取り出したスペルカードを見た幽香が、

「あら、それこの前作った……」

以前、自分の家で作った四枚のスペルカードの内の一枚である事に気付くと、

「そ、あの時作ったやつ。時間と体力の浪費は避けたいから、漁夫の利を狙う事にする」

龍也は肯定の返事をし、漁夫の利を狙うと言う事を口にする。
以前龍也が作ったスペルカードの特性と漁夫の利と言う言葉の意味を照らし合わせた結果、幽香は龍也が何を狙っているのかを理解し、

「やってやりなさい」

後押しするかの様にやってやれと言う。
大した間も無くやってやれと言う言葉が出た辺り、この大量の流れ弾に幽香は何か思うところがあった様だ。
ともあれ、幽香の後押しの言葉を合図にしたかの様に龍也は高度を下げながら九人が弾幕ごっこを行なっている場所へと向かって行く。
弾幕ごっこが行なわれている地点に近付けば近付く程に流れ弾が濃くなっていったが、

「く……」

何とかと言った感じであるものの、龍也は流れ弾の直撃を避けていた。
そして、流れ弾の直撃を何とか避けながら弾幕ごっこが行なわれている地点の真下付近に来た辺りで龍也は進行を止め、

「憤怒『青龍の怒り』」

スペルカードを発動させる。
スペルカードが発動した事で龍也の髪の色が蒼に変わり、瞳の色が蒼に変わって輝きを発し始めた。
その刹那、大量の水の弾幕が上空から降り注いだ。
自分チーム以外の者から放たれる弾幕以外は全く警戒していなかったせいか、

「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」

降り注ぐ水の弾幕の直撃を九人は受け、思いっ切り体勢を崩してしまう。
体勢を思いっ切り崩してしまった九人であったが、強引に体勢を立て直しながら降り注ぐ水の弾幕の射線上から逃れようとする。
しかし、射線上から逃れ切る前に斜め上空から突っ込んで来た青龍を模した水の塊の突撃を受けて九人は竹林の中に叩き落されてしまった。
叩き落されて行く九人の様子を見て、

「あらー……思っていたよりも強力だな、このスペルカード」

思っていたよりも強力なスペルカードだと龍也は呟く。
まぁ、今回使ったスペルカードを含めて幽香の家で作ったスペルカードは龍也に取って切り札的な意味合いを持つ物。
強力であって然るべきであるのだが。
それはそれとして、弾幕ごっこをしていた九人を倒せたと言う事で龍也はスペルカードの発動を止める。
スペルカードの発動を止めた事で髪と瞳の色が元の黒色に戻ると、竹林に叩き付けられた九人の様子を確認する為に降下して行った。





















「痛ってー……幾ら何もあの不意打ちは酷いんじゃないのか?」

龍也が地に足を着けたの同時に自身の頭を擦っている魔理沙から文句の言葉が発せられた為、

「こっちにまで流れ弾が来たんだ。それも大量に。だから、正当防衛だよ。正当防衛」

流れ弾が飛んで来たのだから正当防衛だと龍也は返す。
返された内容を聞き、

「随分物騒な正当防衛もあった物だぜ」

愚痴の様な零しながら帽子を被る。
その後、龍也は周囲のを見渡して竹林に落ちた魔理沙以外の面々を探す為に顔を動かす。
顔を動かした結果、霊夢、紫、藍、アリス、レミリア、咲夜、幽々子、妖夢の八人が直ぐ近くに居る事が分かった。
これだけの面々が揃っていれば何かしらの情報が手に入る事が出来ると考えた龍也は、

「バトルロイヤル形式での変則的な弾幕ごっこだったけどよ、俺の勝ちで良いよな」

取り敢えず、先の弾幕ごっこの勝者は自分であると言う事を主張する。
弾幕ごっこをしている中に入って行ったのではなく、スペルカードを不意打ちで使って九人を纏めて倒したのだ。
正直言って、龍也の勝ちを認めてくれるかはかなり微妙であったが、

「……ま、良いじゃない。龍也の勝ちで」

どうでも良いと言った感じの声色で、霊夢は龍也の勝ちで良いだろうと呟く。
霊夢の呟きに呼応するかの様に、他の面々も口々に龍也の勝ちで良いかと言って来た。
誰も異を唱えずに自分の勝ちを認めた事に龍也は少し驚くも、

「それよか、お前等も異変解決に来てるのか?」

確認として九人に異変を解決する為に来ているのかと問う。
問われた事に、

「私は紫に月に異常が在るって言う様な事を言われたからよ。私は良く分からなかったけど……報酬を出すって言われたから異変解決に赴いたって感じね」
「私はアリスにそう言われたから来た……って感じだな。私も霊夢と同じで良く分からなかったんだが……アリスが魔導書を何冊かくれるって言うから
こうして異変解決に来たって訳だ」
「私はお嬢様が月に異常が出ているから調べに行くと仰られたからその御付ね」
「月の異常に関しては私も幽々子様も気付いてましたが、幽々子様ご自身が出向かれたので。ですので、私は幽々子様の護衛と御付ですね」

霊夢、魔理沙、咲夜、妖夢の四人からここまでやって来た理由を話す。
やはりと言うべきか、全員異変を解決する為にここまで来ていた様だ。
それを知れた龍也は次の質問として、

「今、夜が止まってるんだけど……何か知ってるか?」

夜が止まっている事に付いて何か知っているかと聞く。
こちらに関しては、

「ああ、それなら私がやってるわよ。夜と朝の境界を弄ってね」
「あら、貴女も? それは私もやってるわ。尤も、専門外の魔法だから苦労したけどね」
「私はパチェに頼んで夜を止めて貰っているわ。咲夜に頼む事も考えたんだけど、一緒に来てる咲夜の負担を考えて咲夜に頼む案は却下したわ」
「私は一寸した術よー」

紫、アリス、レミリア、幽々子の四人がどの様な方法で時間を止めているを教えてくれた。
教えてくれた内容を考えるに、異変の首謀者が更なる混乱を起こす為に夜を止めたと言う可能性は消えたと判断して良いだろう。
一通り知りたい情報を知れた後、

「……と、そうだ。お前等、何だって戦ってたんだ? ここに来た目的は同じだったってのによ」

一応の確認として、ここに来た目的は同じだと言うのにどうして戦っていたんだと尋ねる。
大方、先程察した通りの内容だろうなと言う様な事を龍也が想像している間に、

「そう言えば……何で戦う事に成ったんだっけ?」
「何でって……お前が因縁付けて来たからだろ。取り敢えず怪しいから倒す……って言って喧嘩を売って来たのはお前だろ」
「そう言う貴女も、私の邪魔をする撃ち倒すだけだぜ……とか言って弾幕を放って来たじゃない」
「いや、貴女もナイフを投擲して来ましたよね。お嬢様の邪魔をするなら……とか言いながら」
「妖夢、貴女もやる気満々だったわよ。怪しいから斬ってみるとか言って斬り掛かっていたじゃない」
「あの……私には紫様と幽々子様が煽って戦う様に仕向けたと感じられたのですが……」
「私は落ち着く様に言ったんだけど……どうしてこうなったんだか」
「私の眼前に立ち塞がり、進行の邪魔になるなら打ち倒す。当然でしょ」
「あらあら、皆困ったものねー」

霊夢、魔理沙、咲夜、妖夢、紫、藍、アリス、レミリア、幽々子の九人は会話を交わしていく。
喧嘩を売った者、煽った者、何とか場を宥め様とした者、我が道を走ろうとする者。
こう言った面々が異変解決をしていると言う状況で出会い、何か妙な反応を起こして戦う事になったと言った感じか。
九人が戦っていた理由などを理解した龍也が、自分の推察も当てに成らないなと言う事を思っていると、

「こいつ等にチームプレーを期待するのがそもそも間違っていたんじゃないかしら?」

この九人にチームプレーを期待するのが間違っていると言う様な発言を口にしながら地に足を着けた。
幽香の登場で場の空気が驚いたものに変わったが、

「あら貴女は龍也と組んで来たのね」

変わった空気を無視するかの様に紫は幽香に声を掛け、

「でも意外。貴女が誰と組むなんてね」

幽香が誰かと組むなんて珍しいと称する。

「月の異常に気付いた時、そんな事を仕出かした輩を叩き潰そうと思って異変解決に乗り出そうとしたら龍也を見付けたの。折角見付けたのだから、誘ったのよ」

称された事に幽香が龍也と組む事になった経緯を話した時、

「でもま、負けは負けだしな。異変解決はお前等に任せる事にするぜ」

話を変えるかの様に、自分達は負けたので異変解決は龍也達に任せると魔理沙は言い出した。

「……へ?」

唐突に異変解決は自分達に任せると言われた事で、龍也が思わず固まってしまったタイミングで、

「そうそう、終わったら神社に集合な。異変解決の祝勝会を兼ねた宴会をやるから」
「宴会って……また私の神社でやるの?」
「あら、良いじゃない。お酒や食べ物、食器と言った物はこっちで用意して上げるから」
「お酒や食器は兎も角、食べ物はその儘用意するのですよね? ……ええ、分かってますよ紫様。私が全て調理致します」
「そう言う訳だから頑張りなさい、龍也。それはそうと、宴会をするのなら紅魔館からも何か持って来る必要が在るわ。咲夜、後で紅魔館からワインと肉を
持って来て頂戴」
「畏まりました、お嬢様」
「紫、取りに戻るのが面倒だから白玉楼の食料庫に隙間を繋いでくれないかしら?」
「白玉楼から宴会をする為の食料を持って来たら食料庫の中身が……はぁ、また買出しに行かなきゃ」

魔理沙、霊夢、紫、藍、レミリア、咲夜、幽々子、妖夢の八人が異変が解決された後に開く宴会に付いて話していく。
行き成りの展開に何処か取り残されている龍也に、

「あ、ここは迷い易いから私の人形を渡して置くわね。この子には異変の首謀者が居る場所を教えているから、この子に付いて行けば迷わず目的の場所に
着く事が出来るわ」

異変の首謀者が居る場所を教えていると言う人形をアリスは手渡し、

「それじゃ、頑張ってねお二人さん」

龍也と幽香に頑張ってと言う言葉を掛け、宴会に付いての話しをしている八人の所に向かって行った。
それから少しすると話が纏まったからか、九人は空中に躍り出る。
そこ意識を現実に戻した龍也は何か声を発し様としたが、声を発する前に九人は空中に躍り出て去って行ってしまう。
そして、去って行った九人が完全に見えなくなった後、

「……なぁ、あいつ等は潔いのか? 俺達を信頼してくれてるのか? それとも、只単に面倒臭くなったから押し付けて来たのか?」

ポツリと、龍也はそんな事を呟く。
龍也から呟かれた内容を耳に入れた幽香は、

「全部ね」

全部だと返した。
そう返された龍也が思わず溜息を一つ吐くと、龍也が手に持っているアリスの人形が龍也の手を離れて浮かび上がる。
浮かび上がったアリスの人形を見て、

「あら、目的地まで案内してくれるみたいね。正確な位置まで把握出来ていた訳じゃないから助かるわ」

幽香はアリスの人形が案内してくれるみたいだと口にする。
幽香が口にした言葉でここまで来た本来の目的を思い出した龍也は気持ちを切り替えるかの様に顔を上げ、

「……行くか」

行くかと漏らす。
漏らした言葉を合図にしたかの様にアリスの人形が移動を開始したので、龍也と幽香の二人はアリスの人形を追う様に移動を開始した。























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