「ふあ……んん……」

ふと目が覚めた龍也は上半身を起し、両腕を伸ばして体を覚醒させていく。
それから少しするとある程度体が覚醒したので、龍也は両腕を伸ばすのを止めて周囲の様子を確認しに掛かる。
確認した結果、辺り一帯が暗い事が分かり、

「ああ……」

同時に思い出す。
自分が住居として使っている洞窟に戻って来ていると言う事を。
ならば周囲が暗いのも納得だと思いつつ、龍也は立ち上がって自身の力を変える。
朱雀の力へと。
力の変換に伴って瞳の色が黒から紅に変わると、

「さてと……っと」

龍也は掌から炎を生み出す。
炎が生み出された事で辺り一帯が明るくなると、龍也は改めてと言った感じで周囲を見渡し、

「……ランプ見っけ」

ランプを見付ける。
そして、見付けたランプに近付き、

「よっと」

掌の炎を移す様な感じでランプに火を灯し、生み出していた炎を消す。
自分で炎を生み出し続けて灯りを確保しなくても良くなった後、龍也は近くに置いてあるダンボールの中を覗き込み、

「えー……これとこれとこれを……」

朝食にする為の保存食を取り出していく。

「結構少なくなって来たな。今度帰る時は香霖堂に寄って、保存食を買い込むか」

ダンボールの中から保存食を取り出した龍也は今度帰って来る時は香霖堂で保存食を買い込む事を決め、取り出した保存食を持ってテーブルが在る方に向かい、

「いっただっきまーす」

保存食をテーブルの上に置き、椅子に座って保存食を食べ始めた。
朝食である保存食を食べ始めてから幾らかすると、保存食を食べ終えたので龍也は立ち上がり、

「さて……」

ランプの火を消し、代わりと言わんばかりに自身の掌から炎を生み出して外に出る。

「んー……良い天気」

外に出た龍也は生み出していた炎を消しながら上半身を伸ばして良い天気だと漏らし、自身の力を消す。
力を消した事で龍也の瞳の色が紅から元の黒に戻る。
ある意味準備も整ったと言う事で龍也は早速出発し様としたが、

「……ん?」

その直前に龍也の目にある物が映った。
何が映ったのかと言うと、赤い色をしたポスト。
自身の目に映った物が何であるかを理解した瞬間、

「……あ」

龍也は思い出した。
ポストの中に入っているであろう"文々。新聞"の確認をしていない事に。

「何か忘れていると思ったら"文々。新聞"の事だったのか」

忘れていた事を思い出した龍也はポストに近付き、ポストを蓋を開ける。
すると、ポストの中からドサドサと言う音が聞こえて来そうな勢いで"文々。新聞"が地面に落ちていった。

「あー……結構溜まってるな」

予想以上に"文々。新聞"が溜まって事に龍也は驚きながら地面に散らばってしまった新聞を拾い集め、

「この分だと、また帰って来る時にも"文々。新聞"が溜まってそうだな」

次に帰って来る時にも"文々。新聞"が溜まっていそうだと考える。
もし拾い集めた"文々。新聞"をポストの中に戻したりしたら、近い内に"文々。新聞"が地面に散乱すると言う事態になるだろう。
そんな事態になるのは龍也としても避けたいので、

「……仕方無い、これを読んでから出発するか」

回れ右をし、龍也は大量の"文々。新聞"を抱えた状態で洞窟の中へと戻って行った。
溜まりに溜まった"文々。新聞"を全て読む為に。





















結局、"文々。新聞"を全て読み終えたら日が暮れ始める時間帯になってしまっていた。
だからか、龍也は出発の日を次の日にする事を決める。
そして、今日がその次の日。
一日待たされたと言う事もあり、少々気が急いている龍也であったが、

「うわあお……」

外に出ると何とも言えない表情を浮かべてしまった。
何故かと言うと、

「ここまで雨が降らなくても良いだろうに……」

大雨が降っていたからだ。
これでもかと言う位に。
はっきり言って、龍也の中に在った急いていた気持ちは一瞬で無くなってしまった。
まぁ、出かけ様と外に出たら大雨が降っているのを目撃したのだ。
そうなるのも無理はない。
それはさて置き、大雨のせいで出発すると言う気持ちを削がれてしまった為か、

「……仕方無い、明日にするか」

出発するのは明日にする事を龍也は決め、回れ右をして洞窟の中へと戻って行った。
明日は晴れろよと言う想いを抱きながら。





















大雨が降った為に出発を延期してから一日経った日の朝。
天に龍也の願いが届いたからか、本日の天気は見事な快晴になった。
快晴と言う事で、龍也は気分を良くしながら無名の丘を後にする。
無名の丘を後にしたのだから当初の予定通り龍也は迷いの竹林に赴いていると思われた、実はそうではなかった。
では、龍也は何所に赴いたのかと言うと、

「何時も通りって感じだな、人里は。まぁ、ついこの前の異変は人間には全く影響が無いってものだったからな。当然と言えば当然ななんだろうな、変わらないのは」

人里だ。
何故、迷いの竹林ではなく人里に赴いたのか。
答えは簡単。
昨日一昨日と保存食ばかりを食べていたので、ちゃんと調理などをされた物を食べたいと思ったからだ。
と言っても、早く迷いの竹林に行きたいと言う想いが有るので、

「……よし、おにぎりを道中で食う事にするか」

おにぎりを買い、買ったおにぎりを道中で食べる事を龍也は決める。
そして、おにぎりを売っている店を探す為に人里の中を歩いていた時、

「あー、どっすかなー」

何やら困っていると言う様な声が龍也の耳に入って来た。
入って来た声が気に掛かった龍也は、声が発せられたであろう場所に足を進め、

「どうかしたんですか?」

どうかしたのかと尋ねる。
尋ねられた事で声を発した者は龍也の接近に気付き、

「ん、ああ。いらっしゃい」

顔を龍也の方に向けていらっしゃいと言う言葉を掛けた。
いらっしゃいと言う言葉から龍也はここが何かの店である事を察し、周囲を見渡していく。
見渡した結果、様々な種類の布地が置かれている事が分かった。
となると、ここは布などを扱っている店なのであろうか。
更に言えば、店の者は目の前に居る人物以外に見れない。
と言う事は、この人物は店長であり店員でもあるのだろう。
それはそれとして、

「それで、どうかしたんですか?」
「ああ、客が買った物を忘れて行ってしまったみたいでな」

改めてと言った感じで龍也がもう一度どうかしたのかと尋ねると、客が買った物を忘れて行ったと言う答えが返って来た。

「買った物をですか?」
「ああ、昨日店閉める少し前……大雨が止んで少し経った辺りに客が来てな。その客は結構な量の布を買ってくれたんだが、買った物の一部を
忘れて行ってしまった様なんだよ」

買った物を忘れて行ってしまった客に龍也が意外と言った感想を抱くと、補足するかの様に店長はその客が来た時間帯と忘れた物は買った物の一部である事を話す。
店長から話を聞いて大量に買ったのなら買った物の一部を忘れるのも仕方無いかと龍也が考えたタイミングで、店長の視線がある方向に向かう。
店長が視線を向けた先が少し気に掛かった龍也は、自身の視線を店長が視線を向けた先に向ける。
視線を向けた先には、大き目の包みが置かれていた。
おそらく、あの包みが忘れて行ってしまった物なのだろう。
置かれている大きめな包みに対してその様な結論を龍也が下した時、

「あの時は店を閉める準備もしててな。客が買った物の一部を忘れて行った事に気付けなかったんだよ」

客が買った物を忘れて行ってしまった事に気付けなかった理由を店長は溜息混じりに零す。
零された愚痴の様なものを頭に入れながら、龍也は頭を回転させていく。
布地と言った類の物を大量に買って行く者が、自分の知っている者かどうかの答えを出す為に。
そんな風に頭を回転させた結果、

「…………ん?」

ある人物の姿が龍也の頭に過ぎった。
過ぎった人物が買った物の一部を忘れて行った者かどうかの確認を取る為、

「あのー……その買っていった人物って、金色の髪で髪の長さは肩位。そして、白と青を基調とした服を着た女の子ですか?」

龍也は店長に自身の頭に過ぎった人物の特徴を伝えていく。

「そうだが……知り合いか?」

伝えられた内容は合っていた様で、店長から知り合いかと問われたので、

「ええ、多分」

取り敢えず肯定の返事を龍也は返した。
十中八九、忘れ物をした者はアリスであろうと思いながら。
ともあれ、付き合いの在る者が忘れ物をしてしまった事を知ってしまったからか、

「でしたら、俺が届けましょうか?」

忘れ物を自分が届けて来ようかと言う提案をする。
された提案は店主としてもありがたいものであったからか、

「そりゃこちらとして助かるが……良いのかい?」

確認を取るかの様に店長は龍也に本当に良いのかと問う。

「ええ、構いませんよ」
「ありがとな、坊主」

問われた事に龍也が肯定の返事をすると、店長の口から礼の言葉が発せられた。
発せられた礼の言葉に、

「別に構いませんよ、これ位」

別に構わないと龍也は返し、布地が入った包みを手に持って店を後にする。
その後、龍也は大きく跳躍を行なって空中に躍り出て足元に霊力で出来た見えない足場を作り、

「よ……っと」

作った足場に足を着けて、体を回転させて魔法の森が在る方向を探していく。
体を回転させてから少しすると魔法の森が在る場所を見付けたので、龍也は空中を駆ける様にして魔法の森へと向かって行った。





















人里を後にし、魔法の森上空に来た龍也は、

「えーと……アリスの家は何所かなー……」

アリスの家を探す為に魔法の森を見渡していく。
因みに、空中からアリスの家を探しているの地上からではアリスの家を見付けるのに何日掛かるか分かったものではないからである。
まぁ、魔法の森は結構入り組んでいる場所だ。
慣れた者でなければ迷わずに目的の場所に辿り付く事は不可能であろう。
兎も角、空中からアリスの家を探している龍也であったが、

「んー……見付からねぇな……」

成果は今一つと言うより、何の成果も上げる事が出来ないでいた。
だからか、

「……場所を変えてみるか」

探す場所を変え様と言う判断を龍也は下し、移動を開始する。
次の場所でも見付からなかったらもっと高度を上げて探して見るかと言う事を考えていると、

「……ん? あそこ……少し開けてるな」

少し開けた場所が目に映ったので、龍也は一旦足を止めた。
アリスの家にしろ魔理沙の家にしろ、二人の家が建っている付近には木々が見られない。
となれば、その開けた場所にアリスか魔理沙の家が在る可能性は極めて高いだろう。
そう思った龍也は早速と言わんばかりに開けた場所に向かい、その場所に着くと足を止めて開けた場所に何が在るかを確認しに掛かる。
確認した龍也の目には、西洋風の館が建っているのが映った。

「魔法の森で西洋風の館と言ったらアリスの家だよな」

魔法の森に経っている西洋風の館と言ったらアリスの家しか考えられないからか、龍也は霊力で出来ている見えない足場を消して降下する。
降下した龍也はその儘着地し、アリスの家のドアの前まで足を進め、

「さてと……っと」

ドアの前に着くと足を止めてドアをノックすると、家の中から足音が聞こえて来た。
そして、

「誰?」

誰と言う言葉と共にドアが開かれ、アリスがドアの隙間から顔を覗かせる。
顔を覗かせ、来訪者が龍也である事を認識したアリスはドアを完全に開き、

「あら、龍也じゃない。いらっしゃい」

いらっしゃいと言う言葉を龍也に掛けた。

「よっ」

掛けられたいらっしゃいと言う言葉に龍也は片手を上げる事で応え、持って来ていた包みをアリス見せる。
挨拶もそこそこに包みを見せられた事で、

「何これ?」

アリスは疑問気な表情を浮かべてしまった。
返って来た反応から、忘れ物をした事にアリスは気付いていないのではと言う事を龍也は思い、

「昨日、買い物した時の忘れ物だって聞いてるぞ」

ストレートに忘れ物である事を伝える。

「……え?」

見せられた包みは自分の忘れ物であると言われたアリスは驚きの表情を浮かべ、

「中、確認しても良い?」

龍也に包みの中を確認しても良いかと聞く。
持って来た包みは元々アリスの物であるからか、

「ああ、勿論だ」

龍也は二つ返事で聞かれた事を了承し、見せている包みをアリスに手渡す。
手渡された包みを受け取ったアリスを中身を確認していき、

「…………確かに、これは私が買った物だわ」

ポツリと龍也が持って来た包みは自分の物であると呟く。
その後、

「はぁ、どうしてこんなミスをしたかな。浮かれていたとは言え……」

愚痴を零すかの様に自分の失態を嘆きながらアリスは溜息を一つ吐く。
それで気持ちを入れ替えられたからか、アリスは表情を戻しながら顔を上げ、

「とは言えありがとう。お礼と言っては何だけど、お茶でも出すから上がって行って」

礼の言葉と共にお茶でも出すから上がって行ってくれと口にする。
別段断る理由も無いので、

「ああ、それなら上がらせて貰うな」

アリスの申し出を龍也は受け入れ、アリスの家に上がってアリスと一緒に居間へと向かって行く。
居間に着くとアリスは持っていた包みを隅っこの方に置き、

「そこの椅子に座ってて。直ぐにお茶とお茶菓子持って来るから」

椅子が置いて在る場所を人差し指でさして龍也に座って待っている様に言って台所に足を運んで行った。
アリスが台所に行くのを見届けた龍也は言われた通り椅子に腰を落ち着かせ、

「ふぅ……」

一息吐き、ボケーッとした表情を浮かべながら天井に視線を向ける。
特にする事も無くて暇だと言う雰囲気を龍也が醸し出してから幾ら経った頃、

「お待たせ」

お待たせと言う言葉と共にアリスが台所から戻って来た。
紅茶とクッキーが乗ったトレイを手に持ちながら。
先程言っていた通りお茶とお茶菓子を持って来たアリスは龍也と対面の位置に在る椅子の方に向かい、テーブルの上にトレイを置いて椅子に腰を降ろし、

「改めて、ありがとう。龍也」

再び礼の言葉を口にした。

「別に良いって」

二度目の礼の言葉に龍也は別に良いと返しながら出された紅茶を一口飲み、

「にしても、珍しいな。アリスが忘れ物するなんて」

忘れ物に関する話題を出す。

「あの時は浮かれてたからね」

出された話題は恥ずかしいものであったからかアリスは頬を少し赤く染め、あの時は浮かれていたと呟く。

「浮かれてたって……何か良い事でもあったのか?」
「ええ、例の巨大人形がもう少しで完成しそうなのよ」

呟かれた内容から何か良い事でもあったのかと推察した龍也に、アリスは巨大人形がもう少しで完成しそうである事を教える。

「巨大人形って言うと……前に言ってたあれか?」

教えられた内容から以前アリスから人形を巨大化させる事に付いて相談を受けた事を龍也が思い出していると、

「ええ、そうよ。人形を巨大化させると言うのはまだ無理だけど、巨大な人形を作ると言う点に関しては後は組み立てるだけと言った感じね」

人形を巨大化させると言うのまだ無理ではあるが、巨大な人形を作ると言うのであれば後は組み立てるだけある事をアリスは語った。

「そいつはおめでとう」

取り敢えず、作ろうとしているものが完成間近と言う事で龍也はアリスにおめでとうと言う言葉を掛ける。

「ありがとう」

掛けられた言葉にアリスは少し嬉しそうな表情を浮かべてありがとうと返すも、

「で、忘れ物を届けて貰って悪いんだけど……」

直ぐに申し訳無いと言った表情になってしまった。

「ああ、作るのに邪魔になるから出てった方が良いか?」

アリスの浮かべた表情から、龍也は巨大な人形を作るのに自分の存在は邪魔になるではと考えた。
何か作業をするのであれば、一人の方が集中し易いであろう。
しかし、

「違うわよ。また貴方にアドバイスが欲しいのよ」

龍也の考えは違うと言う様にアリスはアドバイスが欲しいと口にする。

「アドバイス?」
「ええ、そうよ」

アドバイスが欲しいと言われて疑問気な表情を浮かべてしまった龍也に、アリスの椅子の後ろから何か取り出し、

「これを見て」

取り出したものをテーブルの端の方に置く。
それを視界に入れた龍也は、

「これは……巨大人形の設計図か?」

テーブルの上に置かれたものが巨大人形の設計図である事を理解した。
同時に、

「ええ、そうよ。貴方から見て修正点とか在るかしら?」

設計図を見て何か修正点は在るかとアリスは龍也に問う。

「そうだな……」

問われた龍也はジックリと設計図を見ていく。
幾らか専門的な事が書かれていて分からない部分もあったが、一通り設計図に目を通した龍也は、

「肩、肘、膝の強度をもう少し上げた方が良いと思うぞ」

肩、肘、膝の強度をもう少し上げた方が良いと言うアドバイスを行なう。
そして、

「負担が掛かりそうな箇所には強化を施した積り何だけど……まだ足りないのかしら?」
「これでの戦闘行動も想定してるって聞いてたからな。戦いとなると、アリスが思っている以上に負担が掛かると思うぞ。今言った部位には」
「成程……」
「後はバランスを崩されて転倒しそうになった時、転倒を防ぐ仕掛けが欲しいな」
「転倒しそうになったら私が操って体勢を立て直させ様と思っているのだけど、それじゃ駄目なの?」
「アリスがそれで良いんなら良いんだけど、アリスが何時も操っている人形の様に巨大人形を操る事って出来るのか?」
「あー……確かに、巨大人形を何時も扱っている人形と同じ様に操れるとは限らないわね。第一、巨大人形を操った事は無いし」
「若しくは、体勢が崩れたら直ぐに体勢を立て直せる仕掛けを施すとかでも良いかもな」
「ふむ……万全を期すのならその両方を組み込むのが得策ね」
「後はそうだな……」
「ふむふむ……」

アリスと龍也は巨大人形に付いての話し合いを始めた。





















二人が話し合いを始めてから結構な時間が過ぎた後、

「色々ありがとう、龍也。随分参考になったわ」

満足気な表情をアリスは浮かべ、龍也に礼の言葉を掛ける。
掛けられた礼の言葉に、

「どういたしまして」

龍也はどういたしましてと返しながら上半身を思いっ切り伸ばす。
どうやら、ずっと椅子に座って話し合っていた事で体が少し固まってしまっていた様だ。
兎も角、上半身を伸ばしながら首を軽く回していると、

「……ん? もう夜になってるのか」

窓の外の光景が目に映り、今の時間帯が夜である事に気付いた。
同時に、

「あ、ごめんなさい。また晩くまで付き合わせて」

アリスから謝罪の言葉が発せられる。
こんな時間にまで付き合わせた事を申し訳なく思っている様だ。
しかし、

「別に良いって。俺もアリスには色々と世話になってるんだしさ」

夜になるまで付き合わされた事になった龍也は特に気にした様子を見せず、自分もアリスの世話になっていると言った様な事を返す。
実際、龍也はアリスに防寒具を作って貰ったりご飯を作って貰ったり泊めて貰ったりとかなり世話になっているのだ。
夜晩くまで話し合いに付き合った程度で文句を言ったら罰が当たると言うもの。
それはさて置き、夜も晩いと言う事で、

「泊まっていっても良いか?」

泊まっても良いかと言う事を龍也はアリスに聞く。

「ええ、構わないわ」

宿泊の許可を求められたアリスは二つ返事で龍也に宿泊の許可を出し、

「さて、これから晩ご飯を何かリクエスはあるかしら?」

立ち上がりながらこれから晩ご飯を作るが、何かリクエストはあるかと問う。
問われた龍也は少し考える素振りを見せ、

「そうだな……卵を使った物が食いたいかな」

卵を使った物が料理が食べたいと口にする。

「卵を使った料理……オムライスで良いかしら?」
「ああ、それで良いぞ」

龍也からのリクエストを受けたアリスが作る物はオムライスで良いかと尋ねると、龍也はオムライスで良いと言う。
作る物がオムライスに決まったからか、アリスは何体かの人形を操って空になっているカップ、クッキーが入っていた小皿、トレイを人形達に持たせ、

「分かったわ。直ぐに作るから、一寸待っててね」

人形達と共に台所へと向かって行った。
アリスが台所に行ったのを見届けた龍也はオムライスが出来るのを楽しみにしている中で、

「……あ」

ある事を思い出す。
思い出した事と言うのは、迷いの竹林を探索すると言う事。
が、

「ま、今更だな」

直ぐに思い出した事を龍也は頭の隅に追いやった。
今更何を思った処で仕方が無いからだ。
まぁ、急ぐ旅路と言う訳では無いで迷いの竹林の探索は明日の楽しみにする事にし、

「オムライスまだかなー」

今はアリスが作っているオムライスを楽しみに待つ事にした。























前話へ                                          戻る                                              次話へ