「……んあ?」

ふと、目が覚めた龍也は体を起こす事なくボケーっとした表情で目に入った天井を見詰める。
それから少し時間が経つと、龍也の意識がはっきりとし始めていく。
そのタイミングで、

「お、やっと起きたか」

やっと起きたかと言う言葉が耳に龍也の耳に入って来た。

「……ん?」

入って来た声に龍也は反応し、声が発せられたであろう方向に顔を向ける。
顔を向けた龍也の目には、

「……魔理沙?」

フライパンを持った魔理沙の姿が映った。
兎も角、龍也が魔理沙の名を口にしたからか、

「おう、魔理沙さんだぜ」

魔理沙は自分が魔理沙である事を肯定する。
同時に魔理沙が手に持っているフライパンから良い匂いがして来た為、料理でも作っていたのかと言う推察を龍也は行ないつつ、

「ここは?」

ここは何所だと言う問いを魔理沙に投げ掛けた。

「私の家だぜ」

投げ掛けられた問いに魔理沙は自分の家だと言う答えを返したのだが、当の龍也は今一つ分かっていないと言う表情を浮かべてしまっていたので、

「おいおい、寝惚けているのか? 昨日は私の家に泊まっただろ」

寝惚けているのかと言う言葉と共に、魔理沙は自分の家に泊まっただろうと言う事を改めてと言った感じで龍也に教える。
教えられた内容を受け、

「…………あー」

漸く、龍也は魔理沙の家に泊まった事を思い出した。
そして、上半身を起こして両腕を伸ばし、

「おはよう」

伸ばした両腕を降ろしつつ、魔理沙に挨拶の言葉を掛ける。

「おう、おはよう」

挨拶の言葉を掛けられたと言う事で魔理沙も挨拶の言葉を返し、

「もう朝ご飯が出来てるから、座って待っててくれ」

笑顔でもう朝食が出来ている事を伝えた。

「分かった」

伝えられた内容を理解した龍也が分かったと言う返事をすると、魔理沙は台所へと向かって行く。
それを見届けた後、龍也はベット代わりとして使っていたソファーから降りてテーブルの前に在る椅子へと足を進める。
因みに、龍也がソファーをベット代わりに使っていた理由は魔理沙の家にはベットが一つしか無かった為。
家主である魔理沙を差し置いて一つしか無いベットを使おうと言う考えは、龍也も流石に持てなかった様だ。
兎も角、ソファーから降りた龍也が椅子に腰を落ち着かせた時、

「ほら」

魔理沙がテーブルの上に出来た料理を並べていく。
並べられていく料理は茸ご飯、茸の味噌汁、茸のソテーの三品。
見事なまでに茸オンリーであったからか、

「茸ばっかりだな」

つい、茸ばかりだなと言う感想を龍也は口にする。
口にされた感想を聞いた魔理沙は、

「食用の茸が結構余ってたからな」

食用の茸が余っていると言う事を言いながら椅子に腰を落ち着かせ、

「私一人じゃ食べ切る前に駄目になっただろうけど、龍也は男なんだしこれ位楽に食べれるだろ」

自分一人では茸を食べ切る前に駄目にしてしまう事と、龍也は男なのだから沢山の茸を食べれるだろうと言う事を語った。
語られた内容に一寸した引っ掛かりを覚えた龍也は、自分側と魔理沙側に並べられた料理を見比べる。
見比べた結果、自分の方に並べられている料理の量が魔理沙の方に並べられている料理と比べて倍以上在る事が分かった。
その後、龍也は視線を魔理沙に移し、

「……つまり、駄目になる前に食ってくれと?」

ストレートに駄目になる前に自分に食べて欲しいのかと尋ねる。

「そう言う事だぜ」

尋ねられた事に魔理沙は肯定の返事をしながら何処か得意気な表情で胸を張った為、龍也の魔理沙を見ている目がジト目へと変わった。
見ている目が変わったとは言え、龍也が魔理沙を見詰めている事に変わりは無いからか、

「おいおい、そんなに見詰められたら照れるぜ」

魔理沙は見詰められて照れると言った様な発言を零し、若干頬を赤く染めて少し照れ臭そうな表情になる。
が、直ぐに何時も通りの表情になり、

「まぁ冗談はさて置き、さっさと食べようぜ。味は保障するからさ」

早く食べる様に龍也を促し始めた。
そう促された龍也は、改めて自分の前に並べられている料理を見ていく。
確かに量は多いものの、食べ切れないと言った程の量では無い。
魔理沙の作る料理を龍也は今まで何度も食べた事が在るし、その全てが普通に美味しかった。
ならば、ここで魔理沙が作った料理を沢山食べても何の問題も無いので、

「そうだな。さっさと食べるか」

魔理沙が作ってくれた料理を食べる事に決める。
そして、

「「いただきます」」

二人揃って朝食を食べ始めた。
只、龍也としても魔理沙としても黙々と食べ続けると言うのもあれであった為、

「お、美味いな」
「そりゃ美味しい茸を使ってるからな。更に言えば、茸料理は得意だし」
「茸料理が得意ってのは知ってたけどな。魔理沙、茸料理ばかり作るし」
「おいおい、まさか龍也は私が茸料理しか作れないと思ってないだろうな?」
「いや、流石にそれは……」
「って、おい。その顔は何だよ、その顔は」
「あー……何とか言うか、茸料理以外の料理を作ってる魔理沙の姿が今一つ思い浮かばなくてな」
「失礼な。私だって茸料理以外の物だって普通に作れるぜ。例えば、和食とか。て言うか、茸料理以外の物を龍也に作ってやった事があった筈なんだがな……」
「……んー、宴会の時に魔理沙が作った料理は茸以外のも多かったって気はするな」
「宴会用に作った物以外でも、茸料理以外の物も使った筈なんだがなぁ……」
「まぁ、魔理沙は茸ってイメージが強いからな。そのせいかも知れん」
「確かに私は魔法の触媒、魔法薬の材料、魔法の実験などに茸を多用してるけどさ。私としては星型の弾幕とかパワーの方にも注目して欲しいぜ」
「あ、パワーってイメージは魔理沙には在るな」
「そりゃ何よりだぜ」
「マスタースパークをぶっ放してる姿とか、普通に思い浮かぶしな」
「マスタースパークと言えば、龍也は私のマスタースパークと似た技を使えるよな」
「似た様な技……霊流波の事か。あの技は、幽香のアドバイスを受けて作った技だからなぁ」
「そういや、何時だったか幽香から一寸したアドバイスをした奴が居たとかどうとかって話を聞いた事が在ったな。あれ、本当だったのか」
「ああ、本当だ。技のアドバイス以外にも、幽香にはかなり世話になったぞ」
「私としては幽香が人間の龍也にアドバイスをしたる世話を焼いたって言うのがかなり意外何だけどなぁ。でもま、龍也は幽香と仲良くしてから事実何だろうけど」

雑談を交えながらであるが。






















「んー……やっと魔法の森から出れた」

魔法の森から出た龍也は、やっと出れたと言う言葉と共に上半身を少し後ろに反らす。
魔理沙の家で朝食を取った後、龍也は魔理沙と軽く会話を交わしてから魔理沙の家を後にした。
しかし、魔理沙の家を後にしたと言っても直ぐに魔法の森から出る事が出来ると言う訳では無い。
何と、龍也が魔法の森から出るまでに数日の日数が掛かったのだ。
おまけに、魔法の森の中で彷徨っている最中に再び魔理沙やアリスの家に辿り着く事が出来なかった始末。
そんなこんなで龍也は数日間による魔法の森での野宿の末、こうして魔法の森から出る事が出来たのである。
尤も、空から魔法の森を出ると言う選択肢を取れば直ぐに魔法の森から出る事が出来たであろう。
だが、その選択肢を龍也は取らなかった。
何故ならば、それをしたら龍也としては何か負けた気分になるからだ。
兎も角、こうして魔法の森から出る事が出来た龍也は反らしていた上半身を元の位置に戻し、

「時間は掛かったけど、結構な収穫は在ったな」

収穫は在ったと言いながら自身の手に持っている物に視線を移す。
龍也が手に持っている物と言うのは、大量の木の実や茸と言った物。
これ等は龍也が魔法の森を彷徨っている最中に発見し、採って来た物だ。
余談ではあるが、茸に関しては以前魔理沙と一緒に茸狩りをした時にはっきりと食べれる茸と覚えている物のみを採っている。
もし曖昧な記憶で採った茸が毒茸でそれを食べてしまったら、目も当てられないからだ。
ともあれ、取り敢えずの食料は確保出来たと言う事で、

「腹が減ったら茸を焼いて食べよっと」

腹が減ったら茸を焼いて食べ様と言う予定を立てつつ、龍也は足を進めて行く。
周りの景色を楽しみながら足を進めて始めてから幾らか経った頃、

「お……」

強めの風が吹いた。
思っていたよりも吹いて来た風が冷たかった為、

「……もう少ししたら、秋も終わりかな?」

もう少ししたら秋も終わりかと龍也は呟き、一旦足を止めて今まで歩いて来た道を振り返る。
振り返ると、もう魔法の森を視認出来ない場所にまで来ている事が分かった。
思っていた以上に歩いていた事に龍也は少し驚くも、そろそろ頃合かと言う事を思ったので、

「……よし、ここで飯にするかな」

ここでご飯にする事を決めて座り込み、抱えていた物を地面に置いていく。
そして、自身の力を変える。
朱雀の力へと。
力の変換に伴い、龍也の瞳の色が黒から紅に変わった瞬間、

「さてと……っと」

龍也は地面に置いた茸を拾って自身の掌の上に乗せ、茸を乗せた掌から炎を生み出す。
それから少しすると龍也は生み出していた炎を消し、焼かれていた茸がどうなっているかを確認する。
確認した結果、普通の焼き茸に仕上がっている事が見て取れた。
だからか、龍也は焼き上がった茸をその儘口に放り込んだ。
が、

「あちゃあ!?」

余りの熱さに茸を噴き出しそうなってしまった。
と言っても噴出しそうになってしまっただけど、龍也は何とか噴出すのを堪えて口の中で焼き茸を冷ましていく。
焼き茸が熱くないと感じられるまで冷えると、龍也は今度こそと言う意気込みで焼き茸を食べ始め、

「……うん、美味いな」

美味いと言う感想を零した。
熱過ぎて口の中を火傷しそうになったものの、茸自体は上手く焼けた様だ。
火傷しそうになったのはあれだが、焼き加減は今ので良いと言う判断を下しながら龍也は新たな茸を手に取って焼いていく。
つい先程の時と同じ位まで焼いた辺りで龍也は茸を焼くのを止め、同じ轍を踏むものかと言った感じで口に放り込む前に焼いた茸を冷まし始めた。
十分に冷えたと思え始めた辺りで、龍也は再び焼き茸を口の中に放り込む。
すると、今度は熱さの余り噴き出しそうになると言う事態は避けられた。
取り敢えず、今の様な感じで茸を焼いて食べる事を決め、

「さーて、次はっと」

次々と茸を手に取って茸を焼き、焼いた茸を冷ましてから食べていく。
そこそこの量の茸を食べた辺りで、龍也は一旦茸を食べるのを止めて木の実を一つ手に取って食べ始めた。
新たに食べ始めた木の実を味わい、飲み込んだ時、

「……うん、これも美味いな。てか、果物みたいな味がするな」

美味しいと言う感想と果物の様な味がすると言う感想を漏らし、もう一個食べる為に他の木の実に向けて手を伸ばす。
その刹那、

「……ん?」

龍也はあるものを発見する。
龍也が発見したものと言うのは、ふよふよと浮かんでいる黒い球体。
まだ空には青空が広がっていると言う事もあり、その黒い球体は否が応でも目を引いてしまう。
そんな黒い球体は、どんどんと龍也へと近付いて行った。
自分に向けて近付いて来ていると言う事もあり、

「………………………………………………………………」

一旦食べる事を止めて龍也が黒い球体に一定の警戒を払っていると、黒い球体は茸や木の実が置かれている近くで止まった。
すると、黒い球体は消えていき、

「ルーミア」

ルーミアが姿を現す。
姿を現したルーミアを見て、前にもこんな感じでルーミアと会ったと言う事を龍也が思い出している間に、

「あ、お兄さん」

ルーミアは龍也の存在に気付く。
お互いがお互いの存在を認識した後、

「何してたんだ?」

何してたんだと言う問いを、龍也はルーミアに投げ掛ける。
問いを投げ掛けられたルーミアは、

「私? 私は美味しそうな匂いがする方へ来たんだ」

美味しそうな匂いに釣られてここまで来たと言う事を答えた。
おそらく、美味しそうな匂いと言うのは龍也が焼いていた茸の事であろう。
風の流れで焼き茸の匂いが伝わったのかと考えた瞬間、龍也は気付く。
ルーミアが茸や木の実を食べたそうに見ている事に。
別に独り占めする気も無かったし、ここまで食べたそうにしているのを見て放って置くのもあれであったからか、

「……食うか?」

つい、食うかと言う言葉を龍也はルーミアに掛けてしまった。
掛けられた言葉に反応したルーミアは目を輝かせながら龍也の方に顔を向け、

「良いの!?」

大きな声で良いのかと尋ねる。
尋ねて来たルーミアの勢いに龍也は若干押されつつも、

「あ、ああ」

肯定の返事をルーミアに返す。
食べても良いと返されたルーミアは、もう遠慮はしないと言った勢いで茸や木の実を手に取って食べ始めた。
次から次へと無くなっていく茸や木の実を見て、

「……って、おい!! まだ俺そんなに食ってないんだぞ!!」

龍也は慌てた声色でまだそんなに食べていない事を主張し、ルーミアに全て食べられない様に龍也も茸と木の実を手に取って食べ始める。
但し、茸を食べる際は焼くと言う行為を挟んでいる龍也は食べるペースではルーミアに大きな遅れを取ってしまっていたが。






















あれから幾らかの時間が流れ、現在は夕方と言える様な時間帯になっている。
そんな時間帯になっても、龍也は相も変わらずと言った感じで幻想郷の何所かを歩いていた。
だが、何時ものと違う点が一つだけ存在している。
存在している違う点と言うのは、

「何時までそうしている積りだ?」

龍也の両肩にルーミアが乗っかっているいると言う点。
要するに、龍也はルーミアを肩車をしているのだ。
兎も角、龍也がルーミアに何時まで自分の両肩の上に居るのかと言う疑問を投げ掛けると、

「分かんない」

お気楽な声色で分からないと言う答えをルーミアは返した。
返された答えを聞き、龍也はルーミアと一緒に茸や木の実を食べた後の事を思い出していく。
食事を終え、再び出発し様とした龍也に何故かルーミアが付いて来る事になった。
そして、これまた何故か龍也はルーミア肩車をする事になってしまって現在に至ると言う訳だ。
尤も、何でかの部分を詳しく思い出せなかった様で、

「……どうしてこうなった」

全ての想いを籠めた様な呟きを龍也はポツリと漏らす。
ともあれ、色々と疑問が在ったり納得がいかない部分があるもののルーミアを肩車した儘の状態で龍也が足を進め始めてから幾らか経った頃、

「でも、お兄さんも不思議だよね」

ルーミアが龍也に不思議だと言う声を掛けて来た。

「ん? 何が?」
「妖怪の私といても全然平気だなんて。妖怪は人間を襲うものだよ。普通、そんな存在が近くに居たら逃げるとか言った事をすると思うけど?」

何が不思議か分からなかった龍也がそう聞き返すと、ルーミアは何が不思議なのかを簡単に説明する。
確かに、何時自分に襲い掛かって来るか分からない存在と一緒に居ようとは普通は考えないであろう。
それはさて置き、ルーミアからの説明を受けて龍也は何処か納得しつつ、

「平気な奴だって居るだろ?」

平気な奴だって居るだろうと言う意見を口にした。

「そんなの極一部だと思うよ」

口にされた意見に返すかの様に極一部だと言う事をルーミアが述べた為か、龍也はその極一部に該当する自分以外の人間を頭に思い浮かべようとする。
すると、霊夢、魔理沙、咲夜の三人の姿がパッと頭に浮かんだ。
直ぐ思い浮かんだ人数が三人だけだった事で、本当に極一部なのかもしれないと言う事を龍也は少し考えながら、

「それは兎も角、俺を襲う気か?」

ルーミアに自分を襲う気かと尋ねる。

「んーん。お兄さん襲うとその後が怖そうだもん」

尋ねられたルーミアは龍也は襲った後が怖いから襲わないと言いつつ、

「それに今はそんなにお腹空いてないし」

今はそんなにお腹が空いていないと言う言葉を零した。
つまり、言い方を変えたらお腹が空いていたらリスクを無視してでも襲い掛かって来る可能性があると言う事だろう。
ある意味ルーミアらしいと言う感想を龍也は抱きながら、

「まぁ、俺は人間を襲う事に関してはどうこう言う気はねぇよ」

人間を襲う事に関して自分は何かを言う積りは無いと言う意思をルーミアに伝える。
伝えられた内容を受けたルーミアは、

「そうなの? お兄さんも人間なのに?」

驚いたと言う表情を浮かべてしまった。
人間であるならば、人間が襲われる事を許すなど言語道断と言う様な主張をするだろうとルーミアは想像していたからだ。
人間に限らず自分の同属を襲うと言う様な発言を受ければ敵意や警戒心と言ったものを抱く者が多い筈なので、ルーミアが驚くのも無理はないだろう。
何となくではあるがルーミアの驚きを感じ取った龍也は、顔をルーミアの方に向け、

「人間だって牛やら鳥やら豚やらを……つまり他の生き物の命を食らって生きているんだ。だと言うのに、妖怪が人間を食べて生きるのは駄目だって言うのは
傲慢だと俺は思う。これは俺の持論何だが、生きるって事は命を食らう事。物理的な意味でも、抽象的な意味でも、比喩的な意味でも……な。だけど……いや、
だからこそ生きると言う行為を否定しちゃ駄目なんだ。生きる為に生き、命を繋いでいく為に生きているんだと思うから」

自分なりを考えを述べる。

「じゃあ、お兄さんは目の前で人間が襲われてたら見捨てるの?」
「んー……人間に限らず誰かが襲われているのを見たら助けるかな。見ちまった以上、見捨てるってのも気分が悪いし。でも、襲われてるのが下種な悪党や
外道って言う様な奴なら助ける事は無いだろうな」

述べられた考えから人間が襲われている場面を見ても見捨てるのかと考えたルーミアに、龍也は悪党と言った様な存在以外ならば人間以外でも助けるだろうなと返す。
返って来た内容を頭に入れたルーミアは少し何かを考える様な素振りを見せ、

「……やっぱり不思議って言うか変わっているって言うか変と言うか、良く分からない人間だね。お兄さんは」

良く分からない人間だと言う評価を龍也に下した。
その様な評価を下された龍也は、反論する事無く納得した表情を浮かべてしまう。
何故ならば、自覚しているからだ。
変わっていると言われても仕方が無い程に自分の価値観や考えは普通の人間、一般的な人間とは違うと言う事を。
更に言うのであれば、龍也がその事を自覚したのは外の世界に居た頃から。
外の世界に居た頃から今に至るまでこれなのであれば、今更その考えが早々に変わる事は無いであろう。
ずっと、自分の考えを変えなかったのだから。
ともあれ、ルーミアにそう言った評価を下された事で龍也は折角なので思い出そうとする。
思い出そうとした事と言うのは、自分がこう言った考えをするに至った要因を。
しかし、思い出そうとした行為は、

「あ!! ねぇねぇ!!」
「あだ!?」

ルーミアに髪の毛を引っ張られた為、中断する事になってしまう。
髪を引っ張られた事で龍也は若干痛がりつつも、

「何すんだよ!!」

肩車をしているルーミアに文句の言葉を叩き付けたが、

「あっち!! あっちの方から良い匂いがする!!」

叩き付けた文句の言葉をルーミアは無視し、ある方向を指でさしながら良い匂いがすると言う事を訴える。
自分の文句の言葉を無視したルーミアに龍也は若干腹立てるも、取り敢えずルーミアが指を向けた方に顔を動かした。
ルーミアが指を向けた先には、何やら人影らしきものが見える。
おそらく、見えた人影の近くにルーミアの言う良い匂いの元が在るのだろう。
顔を向けた先に何が在るのかを龍也が察している間に、

「行こ行こ!!」

龍也の髪を引っ張りながらルーミアが良い匂いがする方に行こうと言う主張をする。
この儘髪の毛を引っ張られ、髪を抜かれて禿げにでもなったら龍也としても洒落にならないので、

「分かった分かった!! 連れて行ってやるから俺の髪を引っ張るな!!」

匂いが感じられた方に行くから髪を引っ張るのを止めろと言う事を主張し、龍也は足を匂いが感じられた方に向けて足を動かして行く。
半ば無理矢理にではあるが進路変更をし、普通に目標地点に在るものが視認出来る距離まで来ると、

「静葉に穣子か」

匂いの元に静葉と穣子の二柱が居る事が分かった。
序に言えば、沢山の美味しそうな食べ物も。
静葉と穣子の二柱の存在を龍也が認識したのと同時に、静葉と穣子は龍也とルーミアの存在に気付き、

「龍也さんと……妖怪?」

人間である龍也が妖怪であるルーミアが一緒に居る事に少し驚いたと言った様な表情を静葉は浮かべてしまう。
同じ様に、穣子も少し驚いた様な表情を浮かべてしまっていた。
そんな二柱の反応と静葉の言葉から、龍也はルーミアの事を二柱が知らないのだろうと判断し、

「ああ、こいつはルーミアって言うんだ」

親指でルーミアを指でさし、ルーミアの名前を二柱に教える。
取り敢えずルーミアの名前が知れたからか、穣子は表情を戻し、

「それにしても人間と妖怪が平然と一緒に……まぁ、龍也は幻想郷中を旅して回ってるみたいだしね。仲が良い妖怪が居ても不思議じゃないか」

直ぐに納得した様な表情になったが、

「でも、良く妖怪と一緒に居ても平然としていられますね。妖怪は人間を襲って食らう者が多いと言うのに」

静葉は少々疑問気な表情を浮かべ、妖怪と一緒で良く平気でだなと言う声を龍也に掛ける。
やはりと言うべきか、神である静葉と穣子から見ても人間と妖怪が二人っ切りで居ても平然としているのは珍しい光景である様だ。
兎も角、二柱からその様な感想を抱かれているのを知ったからか、

「俺はこいつが俺を襲って食らうって言う可能性を考慮した上で一緒に居るんだけどな」
「私はお兄さんを襲う気は無いけどね。そんなにお腹が空いていないし、お兄さんを襲った後が怖いし」

龍也とルーミアの二人はそれぞれ自分のスタンスを二柱に伝える。
伝えられた内容を受け、

「殺伐としていると言うかドライと言うか全てを理解して受け入れていると言うか何と言うか。昔から人間と妖怪が一緒に居るって言うのをチラホラ聞いたり
した事があったけど、皆この二人の様な感じだったのかしら?」
「龍也は天狗の新聞で滅法強い外来人って言う記事が書かれる程の力が有るんだから、そう言う関係も良いんじゃないかしら。ま、人間と妖怪が一緒に居る者達
全員が全員この二人の様な感じ……って事は無いでしょうけど」

静葉と穣子はそう言う関係もありなのでは思い始めた。
ともあれ、色々と話が二転三転している様に感じられたからか、

「てか、どうしたんだ? こんな所で」

話を変える様に、龍也は秋姉妹の二柱にこんな所でどうしたんだと言う事を尋ねる。

「もうそろそろ秋も終わり」
「秋が終り切る前に秋の珍味でパーッと騒ごうと思って」

尋ねられた静葉と穣子はもう秋が終わりなのでパーッと騒ごうとしていた事を話す。
しかし、そう話した二柱の声に元気さは感じられなかった。
これから騒ごうと言うのに、元気が無いと言うのは些か疑問が残る。
秋が終りそうであるからであろうか。
何となくではあるが、二柱に元気が無い理由に龍也が当たりを付けている間に、

「秋の珍味……」

ルーミアは秋の珍味を食べたそう見詰めていた。
ルーミアが何に視線を奪われているかに気付いた龍也は、

「おい、そこで涎を垂らそうものならマジで許さねぇぞ」

絶対に涎を垂らすなと言う忠告の言葉をルーミアに掛ける。
位置的に考えてルーミアが涎を垂らせば、その涎は龍也の頭に掛かってしまう。
龍也としては、それだけは避けたい様だ。
一寸したピンチに曝されている龍也を余所に、

「あ、じゃあ一緒に食べますか?」

静葉は自分達と一緒に食べ物を食べていくかと言う提案をする。

「良いの!?」

そう提案されたからか、ルーミアは目を輝かせながら龍也の両肩から飛び降りて静葉に詰め寄った。
ご飯を一緒に食べるかと言う様な事を言われただけで、この反応。
食い意地を張っているなと言う事を龍也、静葉、穣子が思っていると、

「早く食べよ!!」

早く食べ様と言う主張をルーミアはし始めた。
この儘放って置いたら勝手に食べ始めると言う未来が見えたからか、

「そうね、そうしましょうか」
「じゃ、食べ始めるとしますか」

静葉と穣子はその儘でも食べる物を手で掴む。
もう食べ始めると言う雰囲気が感じられた為、龍也は腰を落ち着かせて食べ物を手に取る。
そして、二人と二柱に雑談を交えながら食べ物を食べ始めた。
と言っても、直ぐに人間一人、妖怪一人、神二柱によるプチ宴会状態に突入して朝が来るまで騒ぎ続ける事になったが。
まぁ、ある意味何時も通りと言えば何時も通りであろう。























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