龍也が永遠亭でアルバイトを始めてから幾日か経った日の朝。
龍也は永琳に呼ばれ、永琳の部屋にやって来ていた。
そこで、
「はい、今までのお給金」
アルバイト代が永琳から支払われる。
「サンキュ」
支払われたアルバイト代を龍也はサンキュと言う言葉と共に受け取り、サイフにアルバイド代を仕舞う。
それを見届けた永琳は、
「これからはどうするの?」
これからどうするのかと言う事を龍也に尋ねる。
尋ねられた龍也は少し考え、
「そうだな……今度は人里辺りでバイト先を探すよ」
人里でバイト先を探すと言う事を話した。
すると、
「やっぱりね」
やっぱりと言う言葉が永琳の口から零れる。
「やっぱりねって……分かってた?」
「そりゃね。怪我が完治している状態で何時までも一箇所に留まっていられる様な性格はしていないでしょ、貴方は」
零れた言葉が耳に入った龍也はついと言った感じでそう聞くと、永琳はその様に返す。
自分の性格を見抜いている様な事を返されたからか、
「ははは……」
苦笑いを浮かべながら龍也は永琳から顔を逸らす。
そんな龍也を永琳を微笑ましいと言った感じで見ながら、
「ま、気を付けて行きなさい」
気を付けろと言う言葉を掛けた。
「ああ」
掛けられた言葉に龍也はああと応え、
「色々と世話になったな、ありがとう」
色々と世話になったと言う事で礼の言葉を永琳に伝えた。
「此方としても鈴仙以外に色々と動いてくれている者が居てくれて助かったわ。それに、輝夜の遊び相手をしてくれた事もね」
伝えられた礼に返すと言った感じで永琳はそう述べ、
「今度は大怪我をしない様に気を付けなさい」
大怪我を負わない様にと言う注意を行なう。
その後、
「……出来るだけ努力するよ」
「ま、男の子はやんちゃな方が良いかも知れないけどね」
「怪我は男の勲章って言うからな」
「だからと言って、怪我を負っても良いと言う訳じゃ無いわよ」
「はい……」
「分かっているのなら宜しい」
龍也と永琳は他愛無い会話を交わし、それが終わると龍也は永琳の部屋から出る。
永琳の部屋から出た龍也は永遠亭の出口を目指して足を動かしていく。
すると、
「あら、もう行くのかしら?」
誰かが龍也の背後から声を掛けて来た。
掛けられた声に反応した龍也は足を止め、振り返る。
振り返った龍也の目には、
「輝夜」
永遠亭の主である輝夜の姿が映った。
映った輝夜の姿から、声を掛けて来た者は輝夜かと龍也が判断したのと同時に、
「それで、もう行くのかしら?」
もう行くのかと言う問いが輝夜から投げ掛けられる。
「ああ」
「それは残念。遊び相手が居なくなってしまったわ」
投げ掛けられた問いを龍也が肯定すると、あからさまと言った態度で輝夜は残念がった。
しかし、龍也はそんな輝夜を無視し、
「そのお陰で俺は真夜中に叩き起こされて将棋やら囲碁やらオセロやらに付き合わされる事になったがな」
遊び相手にされた事で真夜中に叩き起こされたと言う愚痴を零す。
だが、
「あら、私みたいな良い女の遊び相手が出来たんだから光栄に思いなさいな。それに二人でババ抜きをしていた時、貴方もかなり熱中してたじゃない」
零された愚痴を無視しながら輝夜はそう言い、二人で遊んでいる時の勝負に熱中していただろうと言う指摘を行なう。
「まぁ……な……」
された指摘を少し言い淀む様な感じで龍也は肯定して、頬を人差し指で掻く。
実際、龍也は輝夜と二人っ切りで行なったババ抜きをかなり熱中してやっていた。
おまけに、無駄に高度な駆け引きもをしたりしていたのだ。
熱中していたと言う指摘は否定出来ないだろう。
今更ながらあの時の自分を思い返した龍也が若干恥かしがっている間に、
「ま、良いわ。また貴方が来るのを楽しみに待ちましょうか」
話を終わらせるかの様に輝夜は次に龍也が永遠亭に来るのを楽しみに待つと言う言葉で締め括った。
締め括りの言葉が耳に入った事で龍也は恥かしがるのを止め、
「そして、また俺を遊び相手にする気か」
何処か呆れた様な声色で輝夜の魂胆を察する。
察した事は正しかった様で、
「あら、私の相手は不服かしら?」
輝夜は無駄に色っぽい表情を浮かべながら自分の相手は不服かと言う事を龍也に問う。
「へいへい、輝夜姫様のお相手を出来て光栄でございます」
「むっ……普通の反応。少しは赤面すると思ったのに」
問われた龍也に動揺した様子が見られなかった為、不満気な表情に輝夜はなった。
そんな輝夜に、
「流石にもう耐性が付いた」
もう耐性が付いたと言う事を龍也が教えると、
「ふむ……なら……」
何か考え付いたと言った感じの表情になりながら輝夜は着ている着物を行き成り着崩し始める。
それを見た龍也は顔を赤面させ、
「おま!? 何を!?」
思いっ切り取り乱してしまった。
取り乱している龍也を見て輝夜はニヤリと言った笑みを浮かべる。
「……ハッ!!」
輝夜が浮かべた笑みを見て龍也は何かに気付いたが、時既に遅く、
「ふむふむ、やっぱりこっちの方が効果が有るわね。こっちは耐性が付くのは遅い感じかしら」
着崩した着物を直しながらこれからの龍也への対応を考えていく。
輝夜の考えを察したからか、
「……俺をからって楽しいか?」
幾らか小さな声量で龍也は輝夜に自分をからかって楽しいかと尋ねる。
尋ねられた輝夜は、
「うん」
誰もが見惚れる様な笑顔で肯定した。
「はぁ……」
「ま、道中気を付けなさいな」
肯定して来た輝夜の笑顔を見て溜息を吐いた龍也に、道中気を付けろ言う言葉を輝夜は掛ける。
一応心配してくれてはいる様なので、
「はいはいどうも」
流す様な感じで礼の言葉を述べて龍也は再び出口に向けて足を動かし始めた。
輝夜と別れてから幾らか経つと、永遠亭の玄関が龍也の目に映る。
目に映った玄関から、ここまで来るのに変に時間が掛かったなと言う感想を龍也が抱いた時、
「あ、龍也」
また、何者かが龍也の名を呼んで来た。
呼ばれた自身の名に反応した龍也は足を止め、自身の名を呼んだ者が居る方へと体を向ける。
「鈴仙」
体を向けた龍也の目には鈴仙の姿が映った事から、龍也は自身の名を呼んだ者が鈴仙である事を理解した。
すると、
「もう行くのかしら?」
もう行くのかと言う問いが鈴仙から投げ掛けられる。
投げ掛けられた問いから、良くこの話題が出されるなと言う事を思いつつ、
「ああ」
ああと言う肯定の言葉を龍也は発した。
「そ。取り敢えず、気を付けてね」
「ああ、ありがとな」
肯定された事を受けて鈴仙が気を付けろと言う言葉を掛けて来たので、龍也は礼の言葉を口にすると、
「それと、また大怪我して入院しない様に。あんたは無茶ばっかりするんだから」
若干呆れが混じった表情で鈴仙は大怪我を負わない様にと言う注意を行なう。
された注意から、永琳にも同じ注意をされた事を龍也は思い返し、
「あー……善処はするよ」
善処すると答える。
「善処する……ねぇ。今一つ信用出来ないわね」
龍也が答えた内容が今一つ信用出来ないと鈴仙が零した瞬間、
「お兄さーん!!」
「うお!?」
龍也の背中に何かが飛び付いて来た。
急に背中から抱き付かれた事で龍也は前のめりになって倒れそうになるも、何とか堪えて背中の方に視線を移す。
視線を移した龍也の目には、てゐの姿が映った。
映ったてゐの姿から、龍也は自身の背中に飛び付いて来たのがてゐである事を理解しつつ、
「何か用か?」
何か用かと言う事を聞く。
聞かれたてゐは龍也の背中から離れ、
「お兄さんがここを出て行くって聞いて……」
上目遣いで龍也を見詰めながら小さな賽銭箱を取り出して、
「ここにお金を入れるとお兄さんに幸運が……」
そんな事を言ってのけた。
「また貴女は……」
何時も通りと言えるてゐの対応を目の当たりにした鈴仙は呆れた表情になりながら片手で頭を押さえる。
頭痛くなって来たと言う様な雰囲気を出している鈴仙を余所に、
「まぁ……一応は効果が有るみたいだからな……」
効果自体は龍也も実感していると言う事も有ってか一寸したフォローをしながら龍也は財布の中から小銭を取り出し、てゐの賽銭箱の中に小銭を放り込む。
「えへへ……」
放り込まれた小銭を見て嬉しそうにしているてゐを視界に入れながら龍也は財布を仕舞い、
「それじゃ、俺は行くな」
もう行くと言う言葉と共に玄関の方に体を向けた。
発せられた言葉と龍也の行動から、龍也が永遠亭を後にする事を察した鈴仙とてゐの二人は、
「うん、気を付けてね」
「またね、お兄さーん」
龍也に軽い別れの挨拶の言葉を掛ける。
「おう」
掛けられた挨拶の言葉に龍也はそう応えて永遠亭を後にした。
永遠亭を後にした龍也は人里に辿り着き、
「やっぱりてゐのお陰が……すんなり人里まで来れたな」
そう零す。
零した通り、龍也は人里まですんなり来る事が出来た。
迷いの竹林で迷う事も道中で妖怪等に襲われる事も無くだ。
こんな感じで来れたのはてゐの賽銭箱に小銭を入れたお陰かと思いつつ、
「ま、てゐの言葉には嘘は無いって事か」
その様な結論を下しながら龍也は人里の中を歩き始めた。
さて、永遠亭から人里にまでやって来た龍也の目的は次のアルバイト先を見付ける事。
しかし、今更ながらではあるが何処でバイトをするかを龍也は全く考えていなかったのだ。
なので、先ずは人里のどんな場所でバイトをするか決め様とした時、
「おや、龍也君かい?」
誰かが龍也の名を呼んで来た。
自身の名を呼ばれた事で龍也は足を止め、声が発せられたであろう方に体を向ける。
体を向けた龍也の目には、
「慧音先生」
上白沢慧音の姿が映った。
目に映った慧音の姿から自分の名を呼んだのが誰であるかを龍也は理解している間に、慧音は龍也の姿を観察する様に見ていく。
それに気付いた龍也は疑問気な表情を浮かべ、
「えっと……どうかしましたか?」
どうかしたかと言う事を慧音に尋ねる。
「いや、随分な無茶をしたと聞いていたから……元気そうで良かったよ」
「無茶ですか?」
尋ねられた慧音が龍也を観察する様に見ていた理由を話すと、ついと言った感じで龍也は首を傾げてしまった。
すると、呆れた表情になりながら慧音は溜息を一つ吐き、
「新聞で読んだぞ。閻魔様相手に戦いを挑んだそうじゃないか」
閻魔である映姫に戦いを挑んだ事を言及する。
「ああ……」
言及された事を受けて"文々。新聞"でその事が書かれていた事を龍也は思い出した。
同時に、
「弾幕ごっこで挑むなら兎も角、ガチンコ勝負で挑むとは。君も無茶をする」
呆れと言う感情が入り混じった声色で慧音は改めてと言った感じで慧音は無茶をすると零す。
「ははは……」
零された事が耳に入った龍也は苦笑いを浮かべながら後頭部を掻く。
そんな龍也に向け、
「裁かれた者が判決内容に不服として閻魔に襲い掛かる。地獄に堕とされた者が何らかの方法で閻魔が居る場所に辿り着き、地獄に堕とされら恨みを晴らす為に
閻魔に襲い掛かる。と言った事が起こる可能性を考慮してか閻魔と言う役職に着く者は全員、強大な戦闘能力を有しているんだ。もし閻魔と言う役職……と言う
か有している権限などが奪われでもしたらあの世とこの世両方の世界が滅茶苦茶になる可能性が十分に存在するからね」
閻魔と言う存在がどう言った存在であるかを慧音は簡単に説明する。
「通りで強い訳だ」
された説明を耳に入れて納得したと言う様な表情になった次の瞬間、何かを思い付いたと言う様な表情に龍也はなり、
「あ、そうだ。慧音先生に聞きたい事が在るんですが」
後頭部を掻くのを止めて慧音に聞きたい事が在ると口にする。
「私にかい?」
口にされた事を耳に入れた慧音は首を傾げてしまった。
首を傾げてしまった慧音を見て、
「はい。何所か良いバイト先を知りませんかね?」
本題に入ると言った感じで龍也は慧音に良いバイト先を知っているかと問う。
「バイト先を?」
「はい。一寸金欠でして……」
問われた内容を受けて少し疑問気な表情を慧音が浮かべてしまったので、バイト先を探している理由を龍也は慧音に伝える。
「ふむ、成程な……」
伝えられた事から龍也がバイト先を探している理由を知った慧音は納得した表情になりながら、
「そうだ、それなら寺子屋で少しの間働いてみないかい?」
寺子屋で働いてみないかと言う提案を出した。
「寺子屋で……ですか?」
「うん。あ、勿論龍也君さえ良ければだが……」
まさか慧音が働いている場所を紹介されるとは思っていなかった龍也が驚いていると、龍也は良ければと言う前提条件を慧音は付け加える。
慧音が自分に気を使ってくれているのを感じつつ、
「願ったり叶ったりですよ。よろしくお願いします」
慧音の提案を受け入れると言った感じで龍也はよろしくお願いしますと言う言葉と共に頭を下げた。
「うん、こちらこそよろしくお願いするよ。それじゃ、今から行こうか」
それを見た慧音はそう言って寺子屋の方に体を向け、歩き出す。
歩き出した慧音に気付いた龍也は頭を上げ、慧音の後を追って行く。
慧音を追う形で人里の中を歩いている龍也は、
「これから授業ですか?」
これから寺子屋で授業なのかと言う事を慧音に尋ねる。
「いや、今日は寺子屋は休みだ」
「それじゃあ、寺子屋に行って何をするんですか?」
尋ねた事は慧音に否定されてしまった為、これから寺子屋に行って何をするのかと言う疑問を龍也が抱いた時、
「昨日やったテストの採点だ」
休日の寺子屋に行ってするべき事を慧音は話す。
「ああ、成程。俺はそれを手伝えば良いんですね」
「うん、よろしく頼むよ」
話された内容から寺子屋でこれからするべき事を龍也は察すると、察した内容は正しいと言った感じで慧音はよろしく頼むと口にすると、
「分かりました」
分かったと言う返事を返す。
そして、
「ふふ、龍也君が居てくれて助かったよ」
「あー……やっぱりテストの採点とかって大変なんですかね?」
「大変と言えば大変だが、そこまでじゃないよ。唯、私は寺子屋で子供達に勉学などだけを教えている訳じゃ無いからね。時間が足りなくなると言う事は
在るかな」
「ああ、確かに色々な仕事を兼業されたら大変ですよね。寺子屋以外にはどんな仕事をしているんですか?」
「寺子屋以外には主に人里の会議参加、阿求の手伝い、自警団の会議参加や手伝いと言った感じだね」
「四足草鞋って感じですか」
「人里の会議と阿求の手伝いはそう頻繁に起こらないから実質、自警団の方との二足草鞋って事になるかな」
「それでも大変そうですね」
「確かに大変だが、別に苦に思った事は無いな。私が好きでやっている事だしね」
慧音と龍也の二人は雑談を交わしていく。
と言った感じで足を進めている間に二人は寺子屋に着いたので、雑談を止めて寺子屋の中に入る。
寺子屋の中に入った二人は職員室と思わしき部屋に入り、慧音は棚の上から紙の束を降ろして近くの机の上に置く。
置かれた紙束は採点するテストのなのだろうと思いながら机の方に龍也は近付き、
「俺はその半分をやれば良いんですね?」
慧音に自分がするべき事の確認を取りに掛かる。
「うん。答えが書かれた用紙はここにおいて置くからそれを見ながら採点をしてくれ。一問五点の計二十問だ。部分点などは私に聞いてくれ」
取られた確認に慧音はうんと一言返し、簡単な注意を行なう。
「分かりました」
行なわれた注意を龍也が受け取ったのを見た慧音は座布団の上に腰を落ち着かせ、テスト用紙の半分を自分の前に移動させる。
その後、赤い色をした墨汁を筆に染み込ませて慧音はテストの採点を始めた。
もう採点を始めた慧音を見て龍也は、慧音に続く様にして座布団の上に腰を落ち着かせ、
「さて……」
残り半分となったテスト用紙を自分の方に移動させ、筆に赤い色をした墨汁を染み込ませてテストの採点に取り掛かる。
テストの採点をしながら赤い墨汁を使っているいると本当の先生になった気分だと言う龍也は感想を抱く。
因みに、こうやって筆を使って何かを書くのは龍也に取って書道の授業以来。
とは言え、それでもテストの採点程度ならそんな龍也でも綺麗に出来る。
取り敢えず、テストの採点を綺麗に出来そうで安心している中、
「そう言えば、このテストに書かれてる問題文って全て慧音先生が書かれてるんですか?」
ふと気になった事を龍也は慧音に尋ねてみた。
「うん、そうだよ」
尋ねられた慧音が肯定の返事をしたので、
「これだけの量を一人で書かれるのって、大変じゃないですか?」
一人でこの量のテストを作るのは大変なのではと言う疑問を龍也は零す。
少なくとも人里にコピー機やワープロ、パソコンやプリンタと言った類の物は置かれてはいない。
タイプライター位なら在りそうだが、テストに書かれている問題文は全て手書き。
となると、少なくなくとも慧音はタイプライターと言った類の道具などは使っていないと言う事になる。
それならば、大変なのではと言う疑問を龍也が零すのも無理はない。
そんな龍也に、
「大変と言えば大変だが……これも好きでやっている事だからね。苦に思った事はないよ」
慧音そう返す。
これを本心で言っていると感じた龍也は良い先生だなと思いつつ、
「そう言えば、慧音先生って普段の授業で何を教えているんですか?」
序と言わんばかりに普段の授業で教えている内容に付いて慧音に聞いてみる事にした。
「そうだね……文字の読み書き、数の計算の仕方、幻想郷の歴史、生きて行く上で必要な知識、日常生活に役立つ知識などかな」
別段隠して置く様な情報でも無い為、寺子屋で教えている事を慧音は話し始める。
「へぇー……体育は教えてないんですか」
「体育?」
話された事を受けて体育は教えていないのか言う話題を龍也が出すと、ついと言った感じで慧音は首を傾げてしまった。
だからか、
「そうですね……体育は体の動かし方を教える授業と思って貰えれば良いですよ」
体育がどう言った授業であるのかの説明する。
「体の動かし方……」
「まぁ、幻想郷の子供達には必要無いかも知れないですね。皆、外で遊ぶ事が非常に多いですし」
された説明を耳に入れて興味深そうな表情を浮べた慧音に、幻想郷の子供達には必要無いかも知れない言う言葉を掛けた。
「外の世界では子供達は外で遊ばないのかい?」
「そうですね……かなり少なくなったと思いますよ」
掛けられた言葉からその様な疑問を抱いた慧音に龍也はかなり少なくなったと言う事を伝える。
外の世界では家の中で遊べる様な道具が増えているが、それ以上に子供が外で遊べる場所などが減って来ているのだ。
であるならば、外の世界の子供達が外で遊ばなくなるのも自明の理と言うもの。
ともあれ、体育と言う授業を知った慧音は、
「体育と言うのも取り入れてみ様かな……」
寺子屋の授業内容に体育を取り入れるべきかと言う事を考え始める。
体育と言う授業を寺子屋で扱うと自体は別に問題が無い為、
「まぁ、試験的に取り入れてみて好評だったら続けてみる……と言った感じで良いんじゃないでしょうか?」
取り敢えず生徒達に好評だったら続ければ良いと言うアドバイスを龍也は行なう。
「導入するにあたって、先ずどんな事から始めたら良いだろうか?」
されたアドバイスを耳に入れながら体育の授業をする為の助言を慧音は龍也に求める。
「そうですね……跳び箱やマット運動などは器材の入手が少々難しいでしょうから……ボール遊びから始めるのがベターだと思いますよ」
「ボール遊び……サッカーの様なものかい?」
求められた助言に対して龍也がそう返すと、ボール遊びとはサッカーの様なものかと聞いて来た。
幻想郷と言うより、殆どが和で構成されている人里でサッカーと言うスポーツが知られているとは予想していなかった為、
「サッカーってこっちにも在るんですか?」
驚いた表情を浮かべながら龍也はそう聞き返してしまう。
すると、
「うん。何時だったか人里に住み始めた外来人が広めてね」
サッカーと言うスポーツが人里に知られている理由を慧音は軽く説明した。
確かに、外来人が広めたのならば人里にサッカーと言うスポーツが知れ渡っていても不思議ではない。
サッカーは外の世界でメジャーと言えるスポーツなのだから。
兎も角、された説明で色々と納得した龍也はサッカー以外にも野球やバスケットボールも広まっているかも知れないと思いつつ、
「成程……でもまぁ、サッカーよりはドッチボールの方が子供達に合うと思いますけどね」
サッカーよりもドッチボールの方が子供達に合うだろうと言う意見を出す。
「ドッチボール?」
ドッチボールと言う単語は初めて耳にしたからか、慧音は疑問気な表情を浮かべてしまう。
慧音が浮かべた表情からドッチボールは広まっていないのかと龍也は判断し、
「ドッチボールと言うのは……」
ドッチボールのルールを簡単に説明する。
そして、説明が終わると、
「ふむ、ルールは解ったが……少し危なくないかい?」
危なくないかと言う不安が慧音の口から零れた。
ドッチボールはボールをぶつけ合うスポーツだ。
危ないと言う不安が出て来るのも当然と言うもの。
だからか、
「その辺はボールを柔らかいゴムボール辺りにすれば問題無いと思いますよ」
ボールを柔らかい材質の物にすれば良いと龍也は口にした。
「そうか……次はボールを何処で手に入れるかだが……」
「それでしたら、採点が終った後に俺が香霖堂に行って探して来ますよ」
口にされた事を受けてドッチボールをする事に前向きになるもボールの調達に付いて慧音が悩み始めると、自分が探して来ると龍也は宣言する。
その後、
「良いのかい?」
「ええ、これ位なら構いませんよ。そもそも、ドッチボールを提案したのは俺ですし」
「分かった。よろしく頼むよ。それじゃ、気持ちを切り替えて採点を進め様か」
「はい」
慧音と龍也はそんな会話を交わしながら、二人はテストの採点を進めていった。
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