「さーて……アリスの家はどの辺だったかな?」

今現在、龍也は魔法の森の中を散策していた。
何故魔法の森の中を散策しているのかと言うと、アリスに外の世界の服の事を教えると言う約束を果たす為だ。
アリスから出来るだけ早くに来て欲しいと言う頼みが在り、三日三晩続いた宴会も終わった。
タイミングとしては今回が丁度良い機会であったと言えるだろう。
以上が、魔法の森に龍也を散策している理由である。

「……それにしても魔法の森に来たのは少し久しぶりな感じだけど、ここも相変わらずだな」

そう呟きながら龍也は足を進めつつ、周囲を見渡していく。
周囲を見渡して目に映るものと言ったら珍妙な色や形をした無数の茸、独特な色や形をした無数草等々。
普通の森では見られない様なものばかりが無数に存在している。
更に言えば、魔法の森には普通の森と違って森全体に瘴気が存在しているのだ。
この瘴気は魔法使いの力量を上げてくれるものとの事だが、普通の人間に取っては毒の様なもの。
とは言え龍也の様に、力有る人間に取ってはその限りでは無い様ではあるが。
ともあれ、魔法の森に来る事が少し久し振りであるからか一寸した感慨に耽っていたものの、

「とと、感慨に耽ってる場合じゃないな。急ぎ目に行けば日が暮れる前に着くだろうし、少し急ぐか」

直ぐに意識を現実に集中させ、龍也は足を進める速さを上げていった。






















龍也が足を進める速さを上げてから数時間程経った頃、

「ここ……何処だ?」

切り株に腰を落ち着かせた龍也がそんな事を漏らした。
急ぎ目に行けば日が暮れる前に着くと言って置きながら、この始末。
情けないと言わざるを得ないだろう。
まぁ、魔法の森は迷いの竹林程では無いにしろ迷い易い場所なのだ。
迷ってしまうのも致し方ないのかも知れない。
もう少し言えば魔法の森には魔的なものが非常に多い為、アリスの魔力を目印にアリスの家を探す事は非常に難しいと言える。
尤も、龍也はそう言った探査能力が高いと言う訳ではないので魔的なものが無くてもアリスの家にすんなり行く事が出来たかには疑問が残るが。
兎も角、迷ってしまった龍也は、

「都合良く魔理沙でも通り掛かってくれれば、アリスの家に案内して貰えるんだけどな……」

何とも都合が良さそうな事を呟きながら、空を見上げる。
魔法の森の木々に邪魔されて空は余り見えないが、箒に腰を落ち着かせて空を飛ぶ白黒の魔法使いの姿は見られなかった。
分かり切っていた事ではあるが、魔理沙の姿が空には見えなかったので、

「ま、そう都合良くはいかないよな」

つい龍也は溜息を一つ吐いてしまう。
そして、そろそろ出発し様と思った龍也が立ち上がった瞬間、

「龍也さん!! 助けてくださーい!!!!」

龍也に助けを求める切羽詰った声が聞こえて来た。
聞こえて来た声に反応した龍也は何事だと思い、声が発せられたであろう方向に顔を向ける。
顔を向けた龍也の目に、

「スターサファイアにサニーミルクにルナチャイルドか」

スターサファイア、サニーミルク、ルナチャイルドの基本的に三人で行動している妖精トリオの姿が映った。
いや、目に映ったのは三妖精の姿だけでは無い。
映った三妖精の背後には、切り株の妖怪の姿が見て取れたのだ。
どうやら、三妖精はこの切り株の妖怪に追い掛けられている様である。
以上の事から自分に助けを求められた理由を龍也が理解した刹那、

「あっ」

最後尾を走っていたルナチャイルドが転んでしまった。
この儘では切り株の妖怪にルナチャイルドが踏み潰されかねないと考えた龍也は地を駆け、

「おおおおおおおおおりゃあ!!!!」

切り株の妖怪に向けて飛び蹴りを放つ。
放たれた飛び蹴りは見事切り株の妖怪に命中し、飛び蹴りが命中した切り株の妖怪は勢い良く吹っ飛んで行った。
吹っ飛んで行った切り株の妖怪を見届けた後、龍也は振り返り、

「大丈夫か?」

大丈夫かと言いながら少し屈み、ルナチャイルドに向けて手を差し出す。

「あ、ありがとうございます」

差し出された手をルナチャイルドは礼を言いながら掴み、立ち上がる。
すると、

「お陰で助かりました」
「ありがとうございます、龍也さん」

スターサファイアとサニーミルクが礼の言葉を口にしながら二人の傍まで駆け寄って来た。
取り敢えず、無事安全を確保出来たので、

「てか、どうして妖怪に追われてたんだ?」

切り株の妖怪に追われていた理由を龍也は三妖精に尋ねる。

「あ、それはですね……」

尋ねられた事に三妖精を代表するかの様にスターサファイアが事情を説明してくれた。

「……つまり、木の実を取ってたらルナチャイルドが落下した。そして、落下した先にさっきの切り株の妖怪が居てその儘追い掛けられたと」
「はい」

説明された事を自分なりに纏めた龍也に、スターサファイアが肯定の返事を行なうのと同時に、

「ほんと、ルナは鈍臭いわね」
「悪かったわねぇ……」
「全く、少しは私を見習って欲しいものだわ」
「何言ってるの。サニーを見習ったら考え無しの馬鹿になるじゃない」
「誰が考え無しの馬鹿よ!!」
「あら、サニー発案の悪戯は一体幾つ成功したかしら?」
「ルナが鈍臭く無ければもっと成功してたわよ!!」
「私のせいじゃなくて、サニーが馬鹿なせいでしょ!!」

サニーミルクとルナチャイルドが口喧嘩を始める。
それを横目で見ながら、

「……あ、そうだ」

何か思い付いたと言う様な表情を龍也は浮かべ、スターサファイアの方に視線を向けた。
龍也からの視線に気付いたスターサファイアは龍也の方に顔を動かし、

「どうかしましたか?」

どうかしたのかと聞く。
だからか、

「お前等ってさ、魔法の森に住んでるんだったよな」

サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの三妖精は魔法の森に住んでいるのだろうと言う確認を龍也はスターサファイアに取る。

「はい、そうですよ」
「ならさ、アリス・マーガトロイドって言う人形遣いは知ってるか?」

取った確認をスターサファイアが肯定したので龍也は続ける様にして、アリスの事を知っているかと問う。

「はい、知ってますよ」

問うた事に対してもスターサファイアが肯定してくれた為、

「それなら一寸頼みが在るんだが……良いか?」

少々申し訳無さそうな感じで龍也は頼みが在る事を口にする。

「頼みですか?」

頼みが在ると口にされたスターサファイアが首を傾げてしまったので、

「ああ、アリスの家まで案内してくれるか? 一寸迷っちゃってさ」

龍也は頼みたい事の中身を説明し始めた。
された説明を受けたスターサファイアは、

「良いですよ、それ位の事でしたら」

了承の返事と共にサニーミルクとルナチャイルドの喧嘩を仲裁する。
そして、仲裁が終わると龍也は三妖精に案内される形でアリスの家へと向っていた。






















三妖精に案内されてから幾らか経った辺りで、

「ここが、アリスさんの家ですよ」

アリスの家に着いた事をスターサファイアが龍也に伝えて来た。
伝えられた事を耳に入れた龍也は足を止め、前方を確りと見据える。
前方を見据えた龍也の目にはアリスの家が映った。
問題無くアリスの家に着く事が出来た為、

「案内、ありがとな」

龍也は三妖精に礼の言葉を掛ける。
すると、

「えへへ、これ位どうって事ないですよ」
「そうそう。お礼を言われる程の事じゃ無いですって」
「何でルナとサニーがそんな事を言ってるのよ。先頭を歩いてたの、私じゃない」

ルナチャイルド、サニーミルク、スターサファイアの三人は少し照れ臭そうな表情を浮かべた。
そんな三妖精を余所に龍也はアリスの家に近付き、ドアを数回ノックする。
それから少しするとドアが開かれ、

「あら、龍也」

アリスが顔を出し、龍也の存在に気付く。
その後、アリスはドアを完全に開いて龍也を家の中に居れ様としたが、

「それに……何時ぞやの三妖精じゃない」

家に居れる前にサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの三妖精が龍也と一緒に居る事にも気付いた。

「あははは、どうも」

アリスから声を掛けられたからか、三妖精を代表するかのサニーミルクは軽い挨拶の言葉を返す。
アリスと三妖精のやり取りを見た龍也は、

「一寸迷ってな。こいつ等にここまで案内して貰ったんだ」

アリスに三妖精に案内されてここまで来た事を教える。

「成程」

教えられた事を受けてアリスは納得した表情になり、

「それじゃ、早速中に上がって外の世界の服の事を……教えてくれる?」

本題に入ると言った感じで龍也に外に世界の服に付いて教えてくれるかと聞く。
元々その積もりでやって来た事もあってか、

「ああ、勿論だ。それと、時間が掛かって悪かったな」

勿論だと言う言葉と共に龍也は来るのが遅くなった事に対する謝罪を行なう。
行なわれた謝罪に対し、

「別に良いわよ。時間を指定していた訳でもないし、ちゃんと約束通り来てくれたしね。それに私もあの宴会に参加していたから、遅れるのは承知していたわよ」

謝罪する必要は無い言う様な事を述べ、

「貴方達も入って来なさい。紅茶やお茶菓子位、ご馳走して上げるわ」

三妖精達も家の中に入って来る様に促す。

「え、良いんですか?」
「結構歩いてたから、お腹が空いてたのよね」
「私も、喉が渇いちゃってて」

促されたサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの三人は喜びの表情を浮かべた。
そして、アリスを先頭にして龍也達は家の中に入って行く。
中に入った龍也達が居間に着いたのと同時に、

「遠慮せずに座って」

軽く指を動かしながらアリスが座る様に促して来た。
そう促されたと言う事で龍也は椅子に、三妖精はソファーにそれぞれ腰を落ち着かせる。
それから少しするとアリスの人形達がクッキー、ケーキ、紅茶を運んで来た。
運んで来たそれ等がテーブルの上に置かれるとアリスは龍也の近くに椅子を持って行き、

「それじゃ、早速外の世界の服に付いて教えてね」

懐から手帳を取り出しながら持って来た椅子に腰を落ち着かせ、改めて外の世界の服に付いて教えてくれと言う頼みをする。

「分かった」

頼まれた事を了承する様に龍也は分かったと口してアリスの方に体を向け、外の世界の服に付いて話し始めた。






















深夜。
日が完全に落ち、日付けが変わった頃、

「……こ、これで全部だ」
「ありがとう、龍也」

やっと終わったと言う雰囲気を醸し出している龍也に、アリスは礼の言葉を掛けた。
そう、日付けが変わる頃になるまで外の世界に服に付いての話しが終わらなかったのだ。
途中途中で休憩を挟みながらではあったものの、ここまで時間が掛かるとは龍也も思ってはいなかった。
まぁ、話しを始めた時点ではまだ太陽が幾らか傾いている程度。
ここまで時間が掛かる事を予想しろと言うのは流石に無理であろう。
それに関してはアリスも同じ様に思っていたからか、

「ごめんなさいね、こんな晩くにまで付き合わせて」

晩くまで付き合わせた事に対する謝罪を龍也に行なった。

「別に良いって。そもそも、教えるって言ったのは俺だしさ」

された謝罪に龍也はその様に返しながら上半身を伸ばし、

「やっぱり、女物の服より男物の服の話の方が圧倒的に多かったよなぁ……」

軽い愚痴の様なものを零す。
外の世界の服の話と言っても、龍也が知っている外の世界の服の割合は男物の服が殆どを占めている。
話している最中に幾つか女物の服に付いて思い出したが、それでも話した内容は男物の服の方が圧倒的に上。
アリスが作る人形は基本的に女の子タイプなので、内心で余り役に立たなかったのではと龍也が思っていると、

「別に構わないわよ。前に言った通り、男物の服でも私がアレンジをすれば良いしね。私としては、服の種類を色々と知れて良かったわ」

龍也の内心を知ったかの様に、服の話しが男物ばかりでも構わなかったと言う事をアリスは口にする。
そして、アリスも上半身も伸ばしつつ、

「さて、私はこれから貴方の情報を元に早速服を作ってみるわ」

これから服を作ろうと言う予定を立て始めた。
既に時間が時間であるからか、

「余り根は詰めるなよ」

一寸した注意の言葉を龍也はアリスにする。

「あら、私は魔法使いよ。食事と睡眠を取った方が色々と効率が良いから私は取ってるけど、本来魔法使いと言う種族は食事も睡眠も必要としないもの。
まぁ……魔理沙は人間の魔法使いだから話は別だけど、パチュリーだって飲まず食わずで何日も研究してたりするしね」

された注意にアリスはシレッとした表情で自分は魔法使いなのだから平気だと返す。
確かに、龍也の心配など魔法使いのアリスには不要なものであろう。
だからと言って、自分を大切にしなくても良いと言う理由にはならないので、

「それでもだ。要するに、自分の体を大切にしろって言ってるんだよ。俺は」

その事に付いて龍也は言ってのけた。
言われた事を耳に入れたアリスは一瞬言葉に詰まるも、

「貴方がそれを言う? 天狗の新聞に色々書かれてるわよ。結構な無茶をしてるって」

直ぐに呆れた表情になりながら、龍也が言っても説得力が無いと言う様な発言をした。

「あー……確かに俺が言っても説得力は無いな」

発言の内容から言った事に対する説得力の無さを龍也は自覚するも、

「でも、ま……貴方の言う通り、余り根を詰めない様にするわ」

少し照れ臭そうな表情になりながら、霊児からの注意を受け入れる様な事を呟く。
その後、

「あ、そうそう。部屋は貴方が泊まる時に使っている部屋を使ってね」

アリスは龍也の方に体を向け、何時も使っている部屋で寝る様にと言う指示を出す。

「ああ、分かった。処で……」

出された指示を了承しながら龍也はソファーの方に顔を向ける。
顔を向けた龍也の目には幸せそうな顔をしながら寝ている三妖精の姿が映った。
龍也とアリスの話が長かった事で飽きて寝てしまったのだろう。
ともあれ、この儘で良いのかは疑問が残る為、

「こいつ等はどうする?」

三妖精はどうするかと言う事を龍也がアリスに問うと、

「起すのは可哀想だし、この儘にして置きましょう」

この儘ソファーで寝かせて置くと言う答えをアリス発し、指を軽く動かす。
すると、アリスの人形が二体現れて三妖精に毛布を掛けた。
布団が掛けられた三妖精を見ると何だか眠くなって来たからか、

「俺もそろそろ眠くなったし、寝るな。おやすみ、アリス」

もう寝る事を龍也はアリスに伝える。

「ええ。おやすみ、龍也」

伝えられた事にアリスもおやすみと返答すると、龍也はアリスの家に泊まる際に使わせて貰っている部屋へと向かう。
そして、部屋に着くとジャケットを近くの椅子に掛けてベッドに入り込み、

「あー……何か直ぐに寝れそう」

ベッドに入った龍也は直ぐに目を閉じ、夢の世界に旅立って行った。






















朝、目が覚めた龍也は上半身を起こして周囲の見渡す。
暫らく見渡すとアリスの家に泊まった事を思い出し、ベッドから降りる。
そして、椅子に掛けてあるジャケットを着込んで部屋を後にした。
部屋を出た龍也は居間へと向かい、居間に着くと、

「あら、おはよう」

アリスが挨拶の言葉を掛けて来た。

「ああ、おはよう」

掛けられた挨拶に龍也も挨拶を返しつつ、少し足を進める。
すると、アリスの人形達がテーブルの上に朝食の準備をしている光景が龍也の目に映った。
準備されている朝食の量から自分の分も用意されているのかと龍也が思っている間に、

「あ、そうそう。何着かの服を作ってみたのだけど、どうかしら?」

作った服の感想を聞かせて欲しいと言う様な事を口にし、何体かの人形を龍也の前に移動させる。
移動された人形の服は今まで着ていた物と違い、デザインが外の世界の物となっていた。
いや、正確に言うと外の世界の男物の服をアリスが外の世界の女物の服にデザインし直した物だ。
そう言った事前情報が無くとも、最初っから女物の服でデザインされた物であると思える程で出来あったので、

「どうって……完璧だ」

驚いたと言う表情を浮かべながら完璧だと龍也は呟く。
呟かれた事を耳に入れたアリスは少し嬉しそうな表情になり、

「貴方の説明も良かったからね。足りない部分は私の想像と言うかセンスで補ったんだけど……貴方の反応を見る限り、アレンジの方向性は
間違っていなかったみたいね」

足りない部分を補った自分の感覚は間違っていなかったと言う様な事を零し、龍也の前から人形を退かし、

「朝ご飯の準備も終わったから食べましょう」

朝食の準備が終わったので、アリスは一緒に朝食を食べる様に言う。
やはりと言うべきか、テーブルに並べられている朝食は龍也の分も含まれていた様だ。
だからか、

「ありがとな」

アリスに礼を言いながら椅子に腰を落ち着かせる。
それを見たアリスは、

「別に良いわよ、一人分作るのも二人分作るのも大した手間じゃ無いしね」

気にしていないと言う様な返答をしながら椅子に腰を落ち着かせ、

「「いただきます」」

二人は朝食を食べ始めた。
軽い雑談を交えながら。
只食べるのではなく雑談を交えながらであったからか、

「「ご馳走様」」

大した時間を掛ける事無く、二人は朝食を食べ終えた。
同時に台所の方からアリスの人形達がやって来て、食器を持って再び台所へと戻って行く。
戻って行った人形達を見てやはり便利だなと言う感想を龍也は抱きながら上半身を軽く伸ばす。
ある程度上半身を伸ばし終えた後、龍也は立ち上がり、

「それじゃ、俺はそろそろ行くな」

もう出発すると言う事をアリスに伝える。

「あ、一寸待って」

伝えられた事を受けたアリスは一寸待つ様に言ってテーブルの下に置いておいたバスケットをテーブルの上に移動させ、

「はい」

バスケットの中から少し大き目の紙の包みを取り出して、取り出したそれを龍也に手渡す。

「これは?」
「サンドイッチよ。良かったらお腹が空く頃になったら食べて」

手渡された紙包みを受け取った龍也が疑問気な表情を浮かべると、紙包みの中身をアリスは説明する。
どうやら、お昼ご飯の用意もアリスはしてくれた様だ。

「ありがとな。後で頂かせて貰うよ」

お昼ご飯まで用意してくれたアリスに龍也は礼を言って、サンドイッチが包まれた紙包みを懐に仕舞う。

「別に良いわよ、これ位。昨日は大分お世話になったしね」

された礼にアリスはどうって事ないと言った感じでそう返し、

「……そう言えば」

何か思い出したと言う表情になりながらアリスはソファーの方に顔を向けた。
ソファーの方に顔を向けたアリスに釣られる形で龍也もソファーの方に顔を向ける。
二人が顔を向けた先には幸せそうな表情で寝ている三妖精の姿が在った。
どうやら、三妖精達はまだ寝ている様だ。
だからか、

「妖精ってお気楽ねぇ」

未だ寝ている三妖精をアリスはお気楽だと称し、

「ま、起きるまで放って置きましょう」

起きるまで放置する事を決める。
その後、

「それじゃ、またね」
「ああ、またな」

アリスと龍也は軽い挨拶を交わし、アリスに見送られる形で龍也は旅を再開した。























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