「んあ……」

ふと、目が覚めた龍也は上半身を起して両腕を伸ばす。
それから少しすると龍也は軽く周囲を見渡していき、

「……ああ」

今居る場所が紅魔館の一室である事を理解した。
同時に、紅魔館に泊まった経緯を思い出す。
経緯と言っても大したものでは無く、レミリア達と雑談をしていたら完全に日が落ちたので泊まって行けと勧められただけである。
ともあれ、目を覚ました龍也は、

「にしても、紅魔館のベッドって高級品って感じだよな」

今まで自分が寝ていたベッドに対する感想を漏らしながらベッドを数回程叩き、ベッドから降りる。
ベッドから降りた龍也が椅子に掛けて置いたジャケットを着て部屋から出ると、

「あら、おはよう」

丁度龍也が泊まっていた部屋の近くを通り掛かった咲夜が、龍也に挨拶の言葉を掛けた。

「ああ、おはよう」

掛けられた挨拶の言葉に龍也も挨拶の言葉を返した時、

「朝ご飯、食べていく?」

朝食を食べていくかと言う問いが咲夜から発せられる。

「食べてく」
「和、洋、中と何でも作れるけど何が良い?」
「んー……昨日は昼も夜も洋食だったから……中華をお願い出来るか?」
「中華ね。じゃあ、中華の何が良い?」
「咲夜に任せるよ」
「分かったわ。それと、ここから食堂までの案内は必要かしら?」

問われた事から作って欲しい料理にまで龍也が答えた後、食堂までの案内は必要かと咲夜に言われたので、

「いや、大丈夫だ。この部屋って何時も俺が泊まる時に使っている部屋だろ?」

龍也は大丈夫であると口にしつつも、念の為に自分が泊まっていた部屋に付いての確認を取った。

「ええ、そうよ」
「なら平気だ。この部屋から食堂まではお前に何度も案内されたしな」

取られた確認に咲夜が肯定の返事をしたので龍也は案内無しでも食堂に行く事は出来ると断言した。

「そう。なら、貴方が食堂に着く頃には食べれる様にして置くわ」

案内不要と断言された事で咲夜はそう述べ、姿を消す。
姿を消した咲夜の様子から時間を止めて移動したのだろうと言う事を龍也は推察しつつ、食堂へと足を進めて行った。






















「ご馳走様」

食堂で食事を取り終えた龍也がそう口にすると、

「お粗末様でした」

お粗末様と言う言葉と共に咲夜は空になった食器を一つに纏め、洗い場へと持って行った。
因みに、咲夜が作った料理は麻婆豆腐、チャーシュー、ワンタンと言った物である。
そして、洗い場に行った咲夜が食器を全て洗い終わったタイミングで、

「それにしても、お前の作る料理って相変わらず美味いな」

咲夜の料理に対する感想を龍也は述べ、咲夜の方に顔を向けた。

「あら、ありがとう」

述べられた感想が耳に入った咲夜はありがとうと返し、洗っていた食器を食器棚の中に戻していく。
それを見て、

「もう洗い終わったのか?」

少し驚いた表情を浮かべながら龍也はそう漏らす。

「ええ。その辺は時間を操れば直ぐにね」
「相変わらず便利な能力だな」

漏らされた言葉に咲夜は自分の能力を使えば直ぐだと返しながら食器棚の扉を閉めると、咲夜の能力は便利だと龍也は称する。
その後、咲夜は龍也の傍に戻り、

「それはそうと、料理もメイドの必須技能だからね。数え切れない程作ったし」

料理もメイドの必須技能で数え切れない程に作ったと言う事を呟く。

「上手くなるのは当然……ってか?」
「そう言う事」

呟かれた事から龍也がそんな感じで相槌を打つと咲夜は可愛らしい声色で肯定し、

「それで、龍也はどうする? 私達と一緒に博麗神社に向う?」

龍也にこれからの予定に付いて聞いて来た。
今日は夜に博麗神社で宴会が開かれる。
紅魔館の面々は勿論、龍也もその宴会には参加する予定だ。
であるならば、折角なので一緒に行こうと言う誘いをするは極々自然な事と言えるだろう。
ともあれ、一緒に行こうかと誘われた龍也は、

「いや、流石に手ぶらで行くのもあれだしな。人里で酒でも買ってから行くよ。序に宴会場の準備の手伝いでもする予定」

誘いを断って自身の予定を咲夜に伝えて立ち上がった。
すると、

「そう。なら、外までお見送りをさせて貰うわ」

龍也の見送りをすると言う事を咲夜は口にする。

「良いのか?」
「気にしなくても良いわ。これもメイドの務めだから」

態々見送りをすると口にされた事で良いのかと言って来た龍也に、シレッとした表情で咲夜はそう返す。
そして、龍也と咲夜は一緒に食堂を出て、

「そういや、紅魔館からはワインを持って行くのか?」
「そうね。他にもお肉とか果物……後、チーズとかも持って行こうと思っているわ」
「肉に果物にチーズか……楽しみだな」
「龍也は男の子だから、お肉が一番楽しみ何じゃない?」
「まぁ、肉類も好きだけど他のも好きだぞ」
「でしょうね。貴方って、基本的に出された物は何でも美味しく食べてるし」
「そりゃ、出される料理は美味い物ばかりだからな。美味しく食べもするさ」
「口が上手い事。でもま、ありがとね」

雑談を交わしながら紅魔館の廊下を歩いて行く。
それから幾らかすると二人は紅魔館の外に出て、

「それじゃ、また後でね」
「ああ、また後で」

咲夜と軽い挨拶を交わした龍也は空中へと躍り出て、人里へと向かって行った。






















人里が眼下に見えて来た辺りで龍也は空中から飛び降り、

「到着……っと」

そう零しながら人里の入り口付近に降り立つ。
その後、軽く周囲を見渡して龍也は人里の中へと入って行き、

「酒屋、酒屋ーっと」

酒屋を探しながら足を動かし始めた。
それから少しすると、

「龍也君」

背後から自身の名を呼ぶ声が龍也の耳に入って来る。
耳に入って来た声に反応した龍也は足を止め、背後へと振り返った。
振り返った龍也の目には、

「慧音先生」

上白沢慧音の姿が映る。
どうやら、龍也に声を掛けて来た者は慧音であった様だ。
取り敢えず、お互い向かい合う形になったからか、

「龍也君は相変わらず幻想郷中を周っているのかい?」
「ええ、そうですね。慧音先生は……今の時間帯ですとこれから寺子屋で先生を?」
「うん、そうなるね」
「毎日……って訳では無いとは思いますが、寺子屋の教師って言うの大変そうですね」
「まぁ、大変と言えば大変だが……苦に思った事は無いかな」
「苦に思ってたら、とっくに寺子屋での教師を辞めてるでしょうしね」
「だね。あ、そうそう寺子屋と言えばだ」
「はい?」
「大きくなったら龍也君の様に幻想郷を旅してみたいと言う子供達が増えて来ていてね」
「それは……何と言うか……」
「皆が皆、龍也君の様に強くなってくれれば心配は無いんだけどねぇ……」
「野良妖怪から不意打ち気味の襲撃を受ける事がそれなりに在りますし。俺が言うのもあれですが、幻想郷を旅するなら強さは必須ですね」
「実際に幻想郷を旅をしている君の口からそう言われると、説得力が違うね」
「日帰りで人里に戻って来るって言うのであれば、求められる強さはもっと低くなるとは思いますけどね」
「あ、それは分かるよ。人里の外で作物等を採って来たり釣りをしに行ったりする人は、自警団の者達よりも戦闘能力が劣る人の方が多いからね」

慧音と龍也は雑談を交わしていく。
そして、雑談に一段落が着いた辺りで、

「あ、そうだ。慧音先生って今夜暇ですか?」

今思い出したと言う感じで龍也は慧音に今夜暇かと問う。

「今夜と言うと……博麗神社での宴会の件かい?」
「あ、知ってましたか」

問われた慧音は博麗神社での宴会の話を出した為、少し驚いた表情を龍也は浮かべてしまった。
そんな龍也の表情を見て、

「うん。昨日の夜中に魔理沙からそう連絡を受けたよ」

慧音は昨日の内に魔理沙から宴会の件は聞いたと言う事を龍也に教える。

「成程」
「まぁ、私は少し仕事が残っているから参加するのは少し遅くなると思うが」

教えられた事を受けて龍也が納得した表情になっとのと同時に慧音が軽い補足を行なった瞬間、

「おはようございます。龍也さん、慧音先生」

龍也と慧音の真横から挨拶の言葉が掛けられた。
掛けられた挨拶に反応した龍也と慧音の二人は、挨拶の声が発せられたであろう方に体を向ける。
体を向けた二人の目には、

「「阿求」」

阿求の姿が映った。

「どうも」

二人から存在を認識された阿求が軽く頭を上げた刹那、

「珍しいな。君がこんな時間に出歩くなんて」

今の時間帯に出歩いているのは珍しいと言う事を慧音は零す。

「ここ最近ずっと書の纏めをしてましてね。それだけでは健康に悪いので今日は朝から散歩をする事にしました」

零された事が耳に入った阿求は顔を上げ、今の時間帯に出歩いている理由を述べた。
述べられた理由を頭に入れた龍也は書を纏めると言うのも大変だなと言う感想を抱きつつ、

「そう言えば阿求、今夜暇か?」

今夜暇かと言う事を阿求に尋ねる。

「今夜ですか?」

行き成り今夜暇かと尋ねられた阿求は首を傾げてしまった為、

「ああ、今夜博麗神社で宴会が開かれるんだ」

博麗神社で今夜宴会する事を龍也は伝えた。
すると、少し考える様な素振りを見せた後、

「そうですね……多分大丈夫だとは思いますが、少し遅くなると思います」

宴会に参加する事は出来そうだが、宴会参加には遅れそうになると言う事を阿求は口にする。
阿求が口にした事を受けて慧音と一緒で何か仕事が在るのかと言う考えを龍也がしている間に、

「なら、私と一緒に博麗神社まで行くかい?」

自分と一緒に博麗神社まで行こうかと言う提案を慧音は行なう。

「良いんですか?」
「うん。私も夜まで仕事が在るからね」

行なわれた提案を耳に入れた阿求が良いのかと聞くと慧音がそう返したので、

「でしたら、お願いしますね」

博麗神社まで慧音と一緒に行く事を阿求は決めた。
慧音と一緒ならば博麗神社に来るのが夜晩くになったとしても大丈夫だろうと龍也が思った時、

「それはさて置き、宴会には何を持って行ったら良いでしょうか?」

宴会参加に当たって持って行く物は何にするかを阿求は悩み始める。
悩み始めた阿求に対し、

「俺は酒屋で酒を買って、それを持って行く積もりだ」
「私は……魚でも持って行こうかな。昨日、魚屋で買った良い魚がまだ残っているからね」

龍也と慧音は自分達が今夜の宴会で持って行く物を教えた。

「龍也さんはお酒で、慧音先生はお魚。でしたら……私はお野菜でも持って行こうかな」

教えられた内容を頭に入れた阿求は野菜を持って行く事を決める。

「野菜か。どんな物を持って来るんだ?」
「ふふ、それは宴会の時までのお楽しみです」

阿求が持って来る野菜に興味を示した龍也に、可愛らしい声色で阿求は宴会時までのお楽しみだと返す。
その後、

「それはそうと、私は余り人里から離れる事が無いので今夜の宴会は楽しみです」
「人里の外に出られたとしても、阿求の場合は大勢の護衛に囲まれてって言うのが多いかな」
「あー……前にもそんな事を聞いたけど、何かそう言うのって窮屈そうだな」
「そうなんですよね。護衛して貰っているのはありがたいんですが、もう少し護衛の数を減らしてくれても良いと思うんですが……」
「阿求は人里……と言うより幻想郷に取って重要な存在と言えるからね。護衛が大袈裟になるのも仕方が無いさ」
「そういや、凄腕の護衛が一人だけって言うのは出来ないのか?」
「龍也さんや慧音先生位の強さを持っている方なら護衛が一人でも文句は出ないと思いますが……残念ながら、お二人程の強さを持っている方は人里に
住んでは居ないんですよね。あ、勿論私が知る範囲ではですが」
「若しかしたら……新たに幻想入りして人里に住むと言う事を選択した外来人の中に龍也君位の強さを持った者が居るかも知れないけどね」
「やっぱり、人里で住む選択をした外来人で結構居るんですね」
「幻想入りと言う現象は何時如何なる時も起きますからね。人里に住む外来人の方が増えると言うのは当然と言えるでしょう」
「勿論、外の世界に帰る選択をした外来人も多く存在しているけどね」
「へぇー……」
「とは言え、人里に住む事を選択した外来人の方は居ても龍也さんの様に幻想郷を旅すると言う選択をした外来人の方は居ませんでしたが」
「確かに。まぁ、そんな外来人ばかりだったら驚きだけどね」
「ははは……」

阿求、慧音、龍也の三人は雑談を交わし始めていく。
そして、雑談が終わると三人は別れてそれぞれの向かうべき場所へと向かって行った。






















人里の酒屋で酒樽を買った龍也は、博麗神社に空中から向かっていた。
そして、博麗神社が眼下に見え始めた辺りで龍也は降下し、

「よっ……と」

博麗神社の境内に着地する。
その後、

「さて……と」

龍也は周囲を見渡していく。
すると、掃き掃除をしている霊夢の姿が龍也の目に映った。
だからか、龍也は霊夢に近付き、

「よっ」

そう声を掛ける。
掛けられた声に反応した霊夢は掃き掃除を一旦止め、声が発せられた方に顔を向け、

「いらっしゃい、龍也」

やって来た龍也にいらっしゃいと言う言葉を口にして、

「素敵な賽銭箱ならあそこよ」

そんな事を言いながら賽銭箱が在る方を指でさした。
相変わらずの霊夢に龍也は若干呆れつつも、

「そんな強請らなくても賽銭位入れるって」

持って来た酒樽を地面に置きながら賽銭箱に賽銭を入れる為、賽銭箱が在る方へと歩いて行く。
歩き始めて直ぐに賽銭箱の前に辿り着いた龍也は足を止めて財布を取り出し、財布の中の小銭を何枚か賽銭箱へと放り込んで数回手を合わせて拝む。
それが終わった後、回れ右をして龍也が霊夢の所へと戻った時、

「何時もありがとう、龍也」

可愛らしい笑顔で霊夢は礼の言葉を述べた。
述べられた礼を受けた龍也は霊夢が何時も通りで安心したと言う様な感想を抱きつつ、

「そういや、宴会の準備はまだしなくて良いのか?」

まだ宴会の準備をしなくても良いのかと尋ねる。

「もう少ししたらするわ」

尋ねられた霊夢はそう答えてから溜息を一つ吐き、

「どいつもこいつも、ここで宴会をやる時は準備も後片付けも殆どしてくれないのよね」

愚痴と言えるものを零して龍也をジーっと見詰め始めた。
ジーッと見詰めて来る霊夢が何を言いたいのかを察したからか、

「……分かってるよ。何時も通り手伝うって」

何時も通り手伝う事を龍也は確約する。

「あら、急かしたみないで悪いわね」

手伝う事を確約してくれた龍也に霊夢はそんな事を言って箒を手渡す。

「……え?」

行き成り手渡された箒を見て何処か唖然とした表情を龍也が浮かべている間に、

「龍也は料理を作れないでしょ。だったら出来る事は限られて来るわよね。掃き掃除が終わったら神社の雑巾掛けね。私は暫らくお茶でも飲んでるから」

霊夢は言いたい事を言うだけ言って神社の中へと入って行った。
霊夢の姿が見えなくなったのと同時に龍也は良い様に扱われている気がしたが、宴会会場として博麗神社を使わせて貰っているのは事実。
更に言えば、碌な料理を自身が作れないのも。
であるならば、これ位の事は快く引き受けるべきだろう。
そう思った龍也は気持ちを切り替える様にして掃き掃除を始めた。























余談ではあるが、お昼になると霊夢が龍也の分の昼食も用意してくれた。






















日が暮れ始めると、チラホラと宴会に参加する者が博麗神社に集まり始めた。
そして、夜になると博麗神社に集まった者は結構な数になる。
まだ全員が集まったと言う訳では無い、数は揃ったと言う事で宴会が開催された。
すると、皆が皆思い思いに騒ぎ始める。
そんな中、龍也は酒を片手に宴会会場内をブラブラと歩き回っていた。
歩き回りながら何処か適当な場所で食べ物を食べるとかと言う予定を立てている龍也の耳に、

「龍也」

自身の名を呼ぶ声が入って来る。
入って来た声に反応した龍也は足を止め、声が発せられたで方に体を向け、

「幽香」

体を向けた先に居た者の名を口にした。
どうやら、龍也の名を呼んだのは幽香であった様だ。
幽香もこの宴会に参加している事を知った龍也は、

「お前も来てたんだな」

その事に付いて尋ねてみた。

「ええ、魔理沙に誘われてね」

尋ねられた幽香は魔理沙に誘われて宴会に参加した事を話しながら酒を一口飲み、

「それはそうと、約束覚えてる?」

約束を覚えているかと言う言葉を龍也に掛ける。

「ああ、覚えてるよ。太陽の畑の向日葵が咲き始める頃になったら害虫駆除を手伝って欲しいってのだろ」

掛けられた言葉に龍也はそう返し、

「で、後どれ位で向日葵は咲くんだ?」

向日葵が咲くのは何時だと言う事を聞く。
すると、

「そうね……五日後には」

五日後と言う答えが幽香から発せられた。

「分かった。五日後に太陽の畑に向うよ」

発せられた答えを受けて龍也は五日後に太陽の畑に行く事を約束しつつ、

「それはそうと、太陽の畑に行くまでの五日間。何して様かな……」

太陽の畑に行くまでの五日間をどうするかを悩み始める。
悩み始めた龍也に向け、

「それなら、私の所で向日葵が咲くのを待っている?」

ならば自分の所で過ごすかと言う提案を幽香は行なう。

「それも良いんだけど……向日葵が咲くまで幽香の家で只待つって言うのもなぁ……」

行なわれた提案に龍也が少し悩みながら保留すると言う様な返事をした時、

「あ、龍也に幽香さん」

龍也と幽香の名を呼ぶ声が近くから聞こえて来た。
聞こえて来た声に反応した龍也は、体を幽香の方から声が聞こえて来た方に体を向ける。
体を向けた龍也の目に、

「ルナサ」

ルナサの姿が映り、

「楽しんでる?」
「やっほー!!」

更にメルランとリリカの二人がルナサの背後から姿を現した。
プリズムリバー三姉妹がやって来た事を龍也が認識した刹那、

「私達に何か用かしら?」

何か用かと言う事を幽香がプリズムリバー三姉妹へと問い掛ける。
問い掛けられた事に答えるかの様に三姉妹を代表する感じでルナサが一歩前に出て、

「はい。お二人への挨拶と、太陽の畑でやるコンサートの事で」

はいと言う言葉と共に二人へ声を掛けた理由を説明した。

「ああ、もうそんな時期か……」
「時期?」

された説明で幽香は何かを察した表情を浮かべたが、どう言う意味か分からなかった龍也は首を傾げてしまう。
そんな龍也を見て、

「あれ、龍也知らない? 私達、毎年太陽の畑でコンサートをしてるのよー」

太陽の畑で自分達は毎年コンサートを開いている事をメルランは話した。

「そうなのか?」
「そうだよ」

話された内容を頭に入れた龍也はついと言った感じで聞き返すとリリカが肯定の返事をする。
だからか、今まで太陽の畑に行ってプリズムリバー三姉妹に会う事が無かったのはタイミングが悪かったのかと龍也が思った瞬間、

「あ、そうだ。龍也に頼みたい事が在るんだけど……」

リリカから頼みが在ると言う事が口にされた。

「俺に頼みたい事?」
「ええ。前に貴方が色んな所でアルバイトをしてるって聞いたんだけど……」

自分に何の頼みがと言った感じで疑問気な表情を浮かべた龍也を見て、色々な所でアルバイトをしていたのだろうと言う確認をリリカが取って来た。

「ああ、そうだけど」
「なら、私達からのアルバイトを受けてくれないかしら?」

別段隠す様な事でも無いのでそうだと言う返答を龍也がすると、ルナサから自分達のアルバイトを受けてほしいと言う依頼がされる。

「別に良いけど、どんなバイトだ?」

アルバイトを引き受ける事に乗り気な発言をしつつ、アルバイトの内容を龍也が知りたがった為、

「会場設営とステージ作成を手伝って欲しいのよ。それ自体は一日程度で終わると思うから」
「報酬はチケットの売り上げの一部とコンサートの最前列でどう?」

ルナサがバイトの説明を、リリカが報酬の説明を行なう。
バイト内容も報酬も申し分は無かったので、

「分かった、そのバイトを引き受けるよ。で、コンサートってのは何時開かれるんだ?」

プリズムリバー三姉妹のアルバイトを龍也は引き受ける事を決め、コンサートが開かれる日に付いて聞く。

「一週間後よ」

聞かれた事に一週間と言う答えがルナサから発せられた。

「一週間後か……」

コンサート開催まで一週間と言う事を知った龍也は少し予定を付け加える。
太陽の畑での害虫駆除を終わらせた後、コンサートの会場設営とステージ作成と言う予定を。
高々予定が一つ増えたとしても大した事は無いだろう。
しかし、太陽の畑と言うのは意外と広い。
一日で太陽の畑の害虫駆除を完了させると言うのは中々に骨が折れる事だろう。
だが、太陽の畑での害虫駆除とコンサートの会場設営とステージ作成のアルバイトをすると言うのは既に約束してしまったのだ。
であるならば、両方ともやり遂げるしかない。
そう決意した龍也は幽香の方に体を向け、

「太陽の畑の害虫駆除をやったら、コンサートが始まるまで泊まってっても良いか?」

その様な頼みをする。

「ええ、構わないわ。それと、チケットの管理は私がする事になるからチケットはその時に渡して上げる」
「そっか、ありがとな」

頼まれた事を引き受け、チケットの受け渡しを受け持ってくれた幽香に龍也は礼を言う。
そして、五日後と六日後は大変そうだと言う事を龍也は思いつつ、

「……っと、美味しそうな焼肉見っけ」

目に入った焼肉を箸で摘まみ、食べる。
そんな龍也を見て、

「やっぱり男の子だから、肉類が好きなのかしら」

男の子なのだから肉類が好きなのかと幽香は推察し、

「男の子と言えば、男の子って激しい感じの音楽とか好きよね」
「あ、それならライブの時に一曲は激しい曲を演奏してみるー?」
「それ良いかも。龍也へのお礼代わりにもなるし」

ルナサ、メルラン、リリカの三人がライブで披露する曲に付いての軽い話し合いを始めた。
と言った感じで自分と言うより、男の子の食の好みや音楽の好みに付いて話されているのが耳に入って来た龍也は、

「肉類は確かに好きだし激しい音楽も好きだけど、男の子全員が俺と同じ好みって訳じゃ無いと思うぞ」

一寸した訂正の様なものを口にする。
口にされら事を受け、

「まぁ……女だって一人一人好みは違うから、貴方の言う事は尤もね」

納得した表情を幽香は浮かべ、

「だったら、龍也の好みの音楽を教えてくれない?」
「私達は大概のジャンルの曲は演奏出来るわよー」
「龍也へのお礼代わりに、龍也好みの曲を演奏するって決めたからね。勿論全曲龍也好み……って訳にはいかないけど、それでも何曲かは演奏出来るわ」

ルナサ、メルラン、リリカの三人は龍也に詰め寄って龍也の好みの曲の聞き出そうとしていく。

「あらあら、モテモテね。龍也」

プリズムリバー三姉妹に詰め寄られている龍也を幽香は面白そうに見ながら適当に料理を食べていった。






















プリズムリバー三姉妹に龍也が自分の好きな音楽に付いて話す事になった後、龍也は三姉妹と幽香の五人で雑談を交わしていった。
それが終わると龍也は四人と別れて宴会場内を探索し始める。
そんな時、

「お兄さん」

何者かに龍也は声を掛けられた。
掛けられた声に反応した龍也は足を止め、声が発せられたであろう方に体を向ける。
体を向けた龍也の目には、

「橙」

橙の姿が映った。
映った橙の姿から自分に声を掛けて来た者が橙である事を理解したのと同時に、

「橙も来てたんだな」

橙も来ていたのだと言う言葉を龍也は口にする。

「はい。紫様が宴会があるから行こうって仰られて」
「ああ……」

口にされた事に橙がそう答えると、龍也は以前霊夢が言っていた事を思い出す。
思い出した事と言うのは紫は宴会に誘っていなくても、勝手に宴会に参加して来ると言うもの。
まぁ、紫の能力を使えば宴会開催の情報を仕入れるのは朝飯前だろうが。
ともあれ、橙がここに居るなら紫と藍の二人が近くに居るのではと言う事を龍也が考え始めた時、

「あ、そうだ。お兄さん、このお刺身を食べますか?」

橙は刺身が乗っかっている小皿を龍也に見せ、食べるかと聞いて来た。

「良いのか?」
「はい」

聞かれた龍也が良いのかと言う確認を取ると橙が肯定の返事をしてくれたので、

「じゃあ、一つ貰うよ」

一つ貰うと言う断りを入れて龍也は手に持っていた箸で刺身を一つ摘まんで食べ、

「お、美味いな。この刺身」

美味いと言う感想を零す。

「紫様が持って来た外の世界のお魚らしいですよ」
「外の世界のねぇ……」

零された感想を耳に入れた橙が刺身の正体を話した為か、龍也は少し感慨深いと言う感情を抱いた。
が、直ぐに抱いた感情を頭の隅に追い遣って何の魚の刺身かに付いてか考え様とした瞬間、

「橙……と龍也も居たのか」

藍が龍也と橙の近くにやって来る。
やって来た藍に気付いた龍也が考え事を中断させたのと同時に、

「あ、藍様」

藍の存在に気付いた橙が軽く姿勢を正す。
姿勢を正した橙を見て、

「今は宴会何だからそう畏まった態度を取らなくても良いよ、橙」

楽な姿勢を取っても良いと言う様な言葉を藍は橙に掛け、

「元気そうだね、龍也」

元気そうだと言いながら龍也の方に体を向けた。

「ああ。元気にやってるよ」

言われた事に龍也がそう答えると、

「あ、そうだ。稲荷寿司を作ってきたんだが、食べるかい?」

作って来た稲荷寿司が在るので食べるかと問い掛けながら、幾つかの稲荷寿司が乗った小皿を藍は取り出す。

「良いのか?」

稲荷寿司は藍の好きな食べ物の一つであるのを聞き及んでいた龍也は一応と言った感じで確認を取る。

「ああ。自分で言うのも何だが、一寸作り過ぎてしまってね」

取られた確認に藍はそう答えながら、苦笑いを浮かべた。
作り過ぎた事を反省しているのだろうか。
兎も角、藍から許可が出たと言う事で、

「そう言う事なら」

小皿に乗っている稲荷寿司の一つを龍也は箸を使って取り、食べる。
そして、

「美味いな」
「そうか、それは良かった」

美味いと言う感想が龍也の口から発せられた為、藍は嬉しそうな表情になった。
稲荷寿司を作ったのが藍自身と言う理由の他に、自分の好物が褒められて嬉しいと言うのもあるのだろうか。
嬉しそうな表情を浮かべている藍を見ながらそんな推察を立てながら龍也が再び稲荷寿司に向けて箸を伸ばした刹那、狙いを付けていた稲荷寿司が真上から掠め取られてしまう。
しかし、一体誰がと言う疑問は龍也の中に生じる事はなかった。
何故ならば、

「うん、美味しい。また腕を上げたわね、藍」

掠め取られた稲荷寿司の真上に隙間が開かれていたのだから。
そう、稲荷寿司を掠め取った者は八雲紫であったのだ。
だからか、龍也は紫に稲荷寿司を掠め取られた事に対する突っ込みを入れ様としたが、

「元気そうね、龍也」

突っ込みを入れる前に紫が隙間を使って龍也の正面に顔を出し、軽い挨拶の言葉を掛けて来た。
出鼻を挫かれてしまった龍也は掛けられた言葉に返すかの様に、

「お前は相変わらず神出鬼没だな」

神出鬼没だなと零す。

「褒め言葉して受け取って置くわ」

零された事が耳に入った紫はその様に返答しながら隙間の中に引っ込み、龍也の背後から歩いてやって来た。
背後からやって来た紫に龍也が気付いたのと同時に、紫は龍也の目を覗き込む。

「……ん? どうかしたか?」

急に自身の目を覗き込まれた事で龍也は少々困惑した表情を浮かべながら紫にそう尋ねた。

「何でも無いわ」

尋ねられた紫は何でも無いと返しながら龍也の目を覗き込むのを止め、龍也から少し離れて何時の間にか取り出していた扇子を口元を隠し、

「それよりも、私の様な良い女に見詰められたんだからもっと嬉しそうな顔をしなさいな」

そんな事を言ってのける。
やりたい放題だなと言う感想を抱きながら龍也が何かを言おうとすると、

「あらあら、紫は若い燕に唾を付ける気かしら?」

沢山の料理が乗った大きな皿を両手で持った幽々子が現れた。

「あら、幽々子」

現れた幽々子に気付いた紫は、体を幽々子の方に向け、

「それにしても、相変わらずの量ね」

何処か感心した表情になりながらその様に呟く。

「あら、美味しい物を沢山食べるのが長生きの秘訣よ」
「長生き?」

呟かれた事にそう幽々子がそう返すと龍也はついと言った感じで首を傾げてしまう。
亡霊である幽々子が自分は長生きしていますと言う様な事を言ったのだ。
龍也が首を傾げてしまうのも仕方が無いだろう。

「なら、長死にかしら?」

首を傾げてしまった龍也を見て幽々子はそう言い直し、龍也へと近付いて行く。

「何だ?」
「一寸ジッとしてなさい」

急に近付かれて少し困惑した龍也に幽々子はジッとしている様にと言う言葉を掛け、紫と同じ様に龍也の目を覗き込む。
紫と同じ様に幽々子にも自身の目を覗き込まれた事で龍也は一寸した疑問を覚える。
だが、覚えた疑問に答えを出す前に、

「……成程」

何処か納得した表情を浮かべた幽々子が龍也の目を覗き込むのを止めてしまう。
自身の目を覗き込まれるのを止められてしまった事で龍也が一瞬覚えた疑問に対する答えを出し損ねたタイミングで、、

「あら、幽々子こそ若い燕に唾を付ける気かしら?」

先程、幽々子が現れた時に言った事を紫は言い出した。

「それはどうかしら?」

言い出された事に幽々子は曖昧な返事を返しながら大きな皿を片手で持ち直し、何時の間にか取り出していた扇子で口元を隠す。
紫と幽々子は親友同士であるからか似た様なところが在るなと言う事を、扇子で口元を隠した幽々子を見て龍也が思った時、

「幽々子様ー!! お酒とお摘みをお持ちしましたー!!」

酒と摘まみを持った妖夢が大急ぎと言った感じで現れた。

「ご苦労様。其処に置いといて」
「はい」

現れた妖夢に幽々子が労いの言葉を掛けながら指示を出すと、はいと言う言葉と共に妖夢は持って来た物を近くのテーブルの上に置き、

「紫様、龍也さん、藍さん、橙さん、こんばんは」

紫、龍也、藍、橙の四人に挨拶の言葉を掛ける。

「ええ、こんばんは。妖夢」
「おう。こんばんは、妖夢」
「こんばんは、妖夢」
「こんばんはです、妖夢さん」

掛けられた挨拶に応える形で紫、龍也、藍、橙の四人も挨拶をした後、

「何か、大変そうだな。幽々子に頼まれた物を探す為の宴会会場内を駆け回って」

大変そうだと言う印象を龍也は今の妖夢に抱く。

「あ、いえ。別にそこまで大変と言う訳では……」
「そうよ。剣士である妖夢の足腰を鍛える為に、私は妖夢に宴会場内を駆け回る様に指示を出したの」

龍也が抱いた印象に妖夢は否定の言葉を発し様としたものの、それに被せる形で幽々子はそんな事を言ってのけた。
だからか、

「物は言い様だな」

ついと言った感じで龍也はそう呟いてしまう。
呟かれた事が幽々子の耳に入ったからか、幽々子は大皿を近くのテーブルの上に置いて龍也に近付き、

「物は言い様だなんて酷いわね。私は本当の事しか言ってないわよ」

そう言いながら倒れ込む様な形で幽々子は龍也の正面から抱き付いて、

「ねぇ、私の言う事は信じられない?」

上目遣いで自分の言う事は信じられないかと尋ねる。

「あ……う……」

尋ねられた龍也が思いっ切り動揺しているのを余所に、

「戦闘能力は高いのに、相変わらず女の色香に弱いわねぇ」

素知らぬ顔で紫は龍也の事をその様に称しつつ、

「ま、その辺りは妖夢も似た様なものかしら」

妖夢も似た様なものかと口にして、視線を妖夢の方に移す。
すると、

「はわ、はわわわわわわわわわわわ……」

真っ赤な顔で龍也と幽々子から視線を逸らせないでいる妖夢の姿が紫の目に映った。
こっちもこっちで見ていて面白い言う感想を紫が内心で抱いた時、

「龍也もですが、妖夢もまだまだ若いと言える年頃です。ですので、二人があの様な反応をするのも仕方が無いかと」

龍也と妖夢をフォローする様な発言を藍が発する。

「若いと言うだけではなく、あの二人が純だって言うのもあるでしょうけどね」

発せられた発言に紫は一寸した補足を行ない、

「藍なら、幽々子と同じ様に龍也を色香で手玉に取るって事は楽勝じゃないかしら?」

からかう様な声色で藍にそんな事を尋ねてみた。

「まぁ、否定はしませんが」

尋ねられた事に藍が否定はしないと言う返答をした直後、

「……立派な妖獣になるには、色香で男の人を手玉に取れなきゃいけないんですね」

立派な妖獣になるには色香で男を手玉に取れなければならないと橙は考え始める。

「あ、いや。男を手玉に取れる様にならなくても立派な妖獣になれると思うぞ」
「あら、橙だって女よ。男を手玉に取る方法の一つや二つ、知って置いた方が良いと思うわ」

橙が考え始めた事に藍と紫はアドバイスの様な言葉を掛けたが、掛けたアドバイスは藍と紫で正反対と言えるものであった。
その為、

「紫様、橙にはまだそう言った事は早いと思いますが……」
「早いと言っても貴女が橙を式神にする様になってから、結構経つじゃない。そろそろ触りの部分だけでも教えて上げても良いと思うわ」
「……確かに色香が必要な場面、若しくはそう言った状況に遭遇する事が在るかも知れません」
「でしょう」
「ですが、橙には私が付いてます。例えそう言う事態になったとしても、問題ありません」
「過保護ねぇ。それじゃ、橙が成長しないわよ」
「分かっています。ですが、まだ橙一人で何か仕事をさせるのも……」
「やっぱり過保護じゃない。簡単な結界の調整や修復なら、橙一人でも出来るでしょうに」
「橙一人ではまだ早過ぎます。それに万一の事が在れば紫様の名に泥が付いてしまいます」
「別に私の名に泥が付いたとしてもどうって事はないわ。寧ろ、それを理由に私に引き摺り下ろそうする様な輩が釣れるじゃない」
「紫様ならそれだけに留まらず、それを利用して自分の存在をより知らしめさせる事位は容易くなさるでしょう」
「ふふ、それはどうかしら?」
「ご謙遜……いえ、貴女様なら私の想像の及ばない様な事をするのでしょう」
「それはさて置き、話を戻すけど貴女の場合は過保護なだけではなく橙と一緒に居たいだけじゃないのかしら?」
「うぐ……」
「やっぱり。何か、子離れ出来ないお母さんって感じよ。貴女」
「し……しかし、橙はまだ未熟です。紫様に取り入ろうと橙を利用し様する輩が現れないとも……」
「まぁ、そこは否定しないわよ」
「なら……」
「けど、それなら影からこっそり見守るって事でも良いんじゃない?」
「う……」
「全く。この八雲紫の式ならこの程度の事、瞬時に言い返して見せなさいな」
「申し訳ございません」
「精進しなさい」
「はい」
「さて、橙には男を掌の上で転がす方法を龍也辺りで練習させて……」
「ですから、そう言う事まだ橙には早いですって。と言うか、何か酷くなってません?」
「ふふ、気のせいよ。気のせい」

藍と紫の間で橙の教育に関する話し合いの様なものがされる。
と言った感じで、それぞれ思い思いに過ごしていった。






















龍也が幽々子に抱き付かれる様な形になってから暫らく。
幽々子は龍也から離れ、その周囲も幾らかの落ち着きを取り戻し始めた。
その後、適当に会話を交わして龍也は紫達と別れてまた宴会会場内を歩き始める。
そんな中、

「たく、幽々子の奴……」

若干顔を赤くした龍也は愚痴の様なものを零していた。
どうやら、先程の一件がまだ尾を引いている様だ。
とは言え、あれからそれなりに時間が経ったので今はもう動揺してはいない様ではあるが。
兎も角、食べ歩きと言う感じで宴会会場内を歩いていた龍也の耳に、

「龍也じゃない。こんばんは」

自分に対する挨拶の言葉が入って来た。
だからか、龍也は足を止めて挨拶の言葉が聞こえて来た方に体を向ける。
すると、

「鈴仙」

鈴仙の姿が龍也の目に映った。
目に映った鈴仙の姿から自分に挨拶の言葉を掛けて来たのが誰であるのかを龍也は理解し、

「こんばんは」

掛けられた挨拶に返す様に龍也も挨拶の言葉を鈴仙に掛ける。
そして、

「お前も飲んだり食ったりしてるか?」

自分と同じ様に飲み食いしているのかと言う事を龍也は鈴仙に尋ねてみた。

「ええ、そこそこね」

尋ねられた事に鈴仙はそう返し、

「そう言う貴方も飲んだり食べたりしてるみたいね。顔が少し赤いからお酒を飲む方に比重が傾いている感じだけど」

顔が少し赤いので龍也は酒を飲む事に比重が傾いているのだろうと言う推察をする。
顔の赤さに付いての指摘で龍也は先程の幽々子との一件を思い出したものの、酒を飲んでいたのも事実なので、

「……まぁ、そうだな」

取り敢えず鈴仙が推察した事を肯定しつつ、

「そういや、永遠亭は何を持って来たんだ?」

話を変えるかの様に永遠亭から持って来た物に付いて聞く。

「永遠亭からはお団子を持って来たわね」

聞かれた鈴仙はそう答えながら軽く周囲を見渡していき、

「えーと……あ、在った在った」

そう零しながら近くのテーブルの上から団子が幾つか乗った小皿を手に取り、

「これが永遠亭から持って来たお団子」

改めと言った感じでこれが永遠亭から持って来た団子だと口にする。

「これが……」

見せられた団子は色が白く綺麗な球形で大きさも普通と言うスタンダートと言える様な作り。
しかし、だからこそ普通に美味そうだと言う感想が龍也の中に出て来た時、

「あ、食べて見る?」

食べて見るかと鈴仙が尋ねて来た。

「あ、食う食う」

尋ねられた龍也は即座に食べると言う主張をしながら団子を一つ手で摘まんで食べ、

「うん、美味い」

美味いと言う感想を述べる。

「そう。それは良かったわ」

美味しいと言う感想が出て来た事で鈴仙は少し安心した様な表情を浮かべ、

「それにしても、他の面々が持って来ている物は豪華な物が多いわね。永遠亭が持って来る物、もう少し豪華にした方が良かったかしら?」

永遠亭から持って来る物をもう少し豪華にした方が良かったかとかと呟く。
呟かれた事が耳に入ったからか、

「こうやって片手間に摘まめる物があるってのは結構ありがたいぞ」

別に持って来た物が団子だけでも問題無いと言うフォローの様なものを龍也は行なう。

「……確かにお肉や綺麗に調理された料理って片手間に摘まめるって物じゃないわね。野菜スティックとかなら別だけど」

行なわれたフォローに鈴仙は同意を示し、

「そう言う意味なら、お団子って言う選択肢も悪く無かったのかな」

そう結論付けた。
その後、

「そう言えば、貴方は何を持って来たの?」

興味本位と言った感じで鈴仙は龍也に持って来た物を問う。

「俺は人里で買った酒樽を持って来たぞ」
「あの酒樽、貴方が買って来た物だったのね」

隠す様な事でも無いので龍也が宴会に持って来た物を教えると、鈴仙は少し驚いた表情を浮かべ、

「そのお陰でお酒が途切れる事は無さそうね」

そんな事を口にした時、

「あやややや、これはお二人さん。どうもです」

龍也と鈴仙の傍に文がやって来た。

「よう、文」
「貴女は……確か新聞を作ってる鴉天狗よね」

やって来た文に気付いた龍也と鈴仙の二人は、文の方に体を向け、

「お前も来てたんだな」

文も来ていたのだなと龍也は言う。

「ええ、ネタ探しに幻想郷を飛び回っている時に魔理沙さん会って宴会に誘われたんですよ」

言われた事に文は宴会に参加した理由を教えながら色々な料理が並べられているテーブルへと目を向け、

「いやー、それにしても宴会では色々な料理が食べれて良いですねぇ」

宴会だと色々な料理を食べれて良いと言う事を口にする。

「あ、それは分かるわ。特に紅魔館が持って来る料理って、初めて感じる味って言うのが多いのよね」

文が口にした事に鈴仙は同意を示すも、

「龍也は元々外の世界の人間だから、紅魔館の料理は慣れているって感じなのかしら?」

ふと龍也が外の世界の人間である事を思い出し、龍也に紅魔館の料理の味は慣れているのかと聞く。

「慣れてはいるけど味に関しては紅魔館……作ってる咲夜の方がずっと上だな。まぁ、俺が食ってたのはコンビニの……解り易く言えば同じ工程で大量に
作られた量産品物ばかりだったからなぁ。それでも美味いけど」
「ほう、その言い方では外の世界では様々な料理が大量生産されいると。それは羨ましいですね」

聞かれた事に対する答えを龍也が述べると文は外の世界の食に付いて少し羨む様な発言を零しつつ、

「……今度、食に付いての記事を"文々。新聞"に載せてみ様かしら」

"文々。新聞"の記事内容を考え始めた。
考えた内容は鈴仙と龍也の耳にも入った様で、

「食に付いてか。私……と言うか私達は幻想郷と本格的に係わり合いを持つ様になってからまだ日が浅いから、そう言うのには結構興味が在るわね」
「俺も幻想郷中を旅して回ってるけど、まだ知らない料理とかは沢山在るしな。特に入れない妖怪の山の料理とかは結構に気になる」

食を題材とした"文々。新聞"に二人が好意的な反応を示す。
だからか、

「二人だけとは言え、好意的な反応。やはり、この記事は作ってみるべきかしらね」

文は"文々。新聞"の記事に食を題材にしたものを入れる事にかなり前向きな検討をし始める。
次かは分からないが、食の記事が載った"文々。新聞"が発刊されるのを龍也が楽しみにしている間に、

「"文々。新聞"で思い出したけど、龍也が中心の記事の時って写真が多いわよね。何か理由でも在るの?」

龍也が中心の記事の"文々。新聞"は写真が多いが理由は在るのかと言う事を鈴仙は文に尋ねてみた。

「龍也さんの記事は人里の子供達に人気が有りますからね。その辺りを考慮しての事ですよ」
「成程。子供って長い文章が嫌いな子が多いからね」

尋ねられた文が龍也が中心の記事の場合に写真が多い理由を教えると鈴仙は納得した表情になり、

「子供と言えば。永遠亭に診察を受けに来る人の中に親に付き添われる形で子供が来る事が在るんだけど、注射を嫌がったりする子供が多いのよね。後、
苦い粉薬を嫌がったりとか」

永遠亭に診察を受けに来たのが子供だと注射や苦い粉薬を嫌がると言った事を話す。

「あー……確かに子供ってそう言うのは嫌いでしょうからねぇ。特に注射何て幻想郷じゃあ殆ど知られて無いですし」
「幻想郷って確か何所かの田舎の山奥に在るんだったっけ? だったら結界で完全に覆われる前に幻想郷に注射器が伝わっていなかったとしても仕方が無いか」

話された内容を受けた文が注射器が幻想郷にはまだ知られていないと言う事を漏らすと、龍也は注射器が幻想郷に広まっていないのは仕方が無いと言う。

「龍也は元々外の世界の人間だから注射……と言うか注射器の事を知っていも不思議は無いけど、元から幻想郷の住人である貴女がどうして注射器の事を知ってるの?」
「ああ、それは幻想入りして来た外の世界の本を読んだからですね」

龍也は兎も角何故文が注射器の事を知っているのかと言う疑問を抱いた鈴仙に、文は注射器を知っている理由を伝える。

「外の世界の本か……そう言えばてゐが迷いの竹林で拾った物を溜め込んでいるわね。若しかして、てゐは外の世界の本を持ってたりするのかしら?」

伝えられた内容からてゐが外の世界の本を持っているのではと言う推察を鈴仙がしている間に、

「それはさて置き、私の方からは山の山菜を持って来たのですがもう食べました?」

文から自分が持って来た物は食べたのかと言う問い掛けが龍也の耳に入って来たので、龍也は今まで食べて来た物を思い返していく。
その結果、

「……いや、まだ食べてないな」

まだ食べていないと言う答えが龍也の口から出て来たからか、

「あややや、それは勿体無いですよ」

勿体無いと零しながら文は周囲を軽く見渡していき、

「あ、見っけ」

テーブルの上に在る何かに目を向け、目を向けた先に在る物を手に取り、

「天ぷらになってますが、このお皿の乗ってるのが私が持って来た物です」

手に取った物、天ぷらが乗った皿を龍也に見せながらそう言う。
見るからに天ぷらは美味しそうであったので、

「じゃ、いただきます」

有無を言わずに龍也は箸で天ぷらを一つ摘まみ、自身の口へと運ぶ。
そして、

「どうですか?」
「うん、美味い」

若干の期待と不安を籠めた目でそう聞いて来た文に龍也は美味いと返した。
すると、

「それは良かったです。持って来た物が不味かったらどうし様かと思いましたよ」

安心した様な表情を浮かべた文がその様に語った為、

「………………………………」

自分が持って来た酒樽に付いて龍也は考え始める。
もう宴会が開催されてからそこそこの時間が経ってはいるが、酒が不味いと言う声は聞こえて来てない。
と言う事は、あの酒樽の酒は不満が出る様な味では無いと言う事になる。
そこまで考えが廻った辺りで龍也は内心で安堵の息を吐き、

「んじゃま、暫らくはここで飲み食いするか」

暫らくここで飲み食いする事を決め、鈴仙と文の二人と雑談を交わしながら飲み食いしていった。






















鈴仙と文の二人と雑談を交わしながら飲み食いしてから暫らく。
龍也は二人と別れてまた宴会会場内を彷徨っていた。
飲み食いをしながら。
と言った感じで歩いていれば誰かの目に止まるのは必然と言うもので、

「おんやぁ、龍也じゃないかい」

何者かが龍也に声を掛けて来た。
掛けられた声に反応した龍也は足を止め、声が発せられたであろう方に顔を向け、

「小町」

小町と言う名を口にする。
どうやら、龍也に声を掛けて来た者は小町であった様だ。
兎も角、声を掛けて来た者が誰であるかを知った龍也は、

「お前も来てたんだな」

その様な問いを小町へと投げ掛けた。

「魔理沙に誘われてね。美味いお酒が飲めて、美味しい料理を食べれるって言うんだ。参加しない訳にはいかないじゃないか」

投げ掛けられた問いに小町はそう答えながら手に持っていた酒瓶に口を付ける。
そして、

「そう言う龍也は誰に誘われて来たんだい?」

誰に誘われて来たのかと言う事を小町は龍也に聞く。

「俺も魔理沙に誘われてさ」

聞かれた龍也は自分も魔理沙に誘われて宴会に参加した事を話し、

「しかも宴会が開かれる日が決まるまで、俺に見付け易い場所に居ろって言って来てさ」

序と言わんばかりに軽い愚痴の様なものを零す。

「はは、確か龍也は幻想郷中を旅して回ってるんだろ。宴会に誘う為に見付け易い場所に居ろって言われるのも仕方が無いさね」
「そう言う小町は再思の道や無縁塚に居たりするのか?」

零された事が耳に入った小町がそう言うと、龍也がそんな事を尋ねて来たので、

「あたいが居る場所と言うか仕事場は三途の河だね。所謂三途の河の舟渡しってやつさ」

小町は普段自分が居る場所を龍也に教える。

「あー……死神の仕事に付いて前に幽香から聞いた事が在るな」

教えられた事から龍也は幽香から死神の仕事に付いて聞いていたのを思い出し、

「そういや、幻想郷中に色んな花が咲き誇ったあの現象。あれ、お前がサボらなければもっと早くに収まったんじゃないのか?」

幻想郷中に色んな花が咲き誇った現象の収束時間に関する指摘を行なった。

「い、いや。そ、そんな事は無いって。き、き、きっとあれが最速だったって」

指摘された事を受けた小町は思いっ切り慌てた様な表情を浮かべ、龍也から目を逸らしながら言い訳の様な言葉を紡いでいく。
思いっ切り怪しい態度を見せた小町を龍也は呆れた目で見つつも、

「……まぁ、良いか」

この話をここで打ち切り、

「それよか小町。お前が持っている酒、何所の酒だ?」

つい先程、小町が飲んでいた酒の出所に付いて問うてみた。

「ああ、これかい。これはあたいが溜め込んでいた秘蔵の一本ってやつさね」

問われた小町は何処か自慢気な表情を浮かべながら秘蔵の一本である事を語ると、

「へぇ、秘蔵の一本か。それは私も興味が在るねぇ」

龍也と小町の間に突如として萃香が現れる。

「「萃香」」

行き成り現れた萃香に龍也と小町が驚いている間に、萃香は小町に近付き、

「で、で。その秘蔵の酒って言うのを私に味合わせてみないかい?」

小町の持っている酒を味見したいと言い出す。

「お前さんの場合、味合わせるってだけでは済まない事になりそう何だがねぇ」

言い出された事を耳に入れた小町は酒を味合わせるだけでは済まなさそうだと言う事を漏らした瞬間、

「そんな事は無いって。一寸だけ、一寸だけだから」

若干甘える様な声色で萃香はそう言い、

「……俺も一寸興味が在るな。その酒」

龍也も小町が持っているお酒に興味を持ち始めた。
二人から自身の持っているお酒に興味を持たれ、更には期待を籠められた目で見られている事を感じ取った小町は、

「……はぁー、分かったよ。あんた達にもあたいのお酒を分けて上げるよ」

大きな溜息と共に諦めたと言った感じで小町は龍也と萃香の二人に自分のお酒を分ける事を約束する。
された約束を頭に入れた龍也と萃香の二人が目を輝かせた刹那、

「但し、この酒瓶をその儘渡したら全部飲まれそうな気がするからね。そこにある……えーっと……ワイングラス……だっけ? それに入れたのを飲んで貰うよ」

酒瓶をその儘渡したら全部飲まれてしまいそうだから酒をワイングラスに入れると小町は言い、近くのテーブルの上に在る二つのワイングラスにお酒を注いでいく。
二つのワイングラスにお酒が注ぎ終わると、そのワイングラスを小町は手に取って二人に手渡す。
手渡されたワイングラスを受け取った龍也と萃香の二人は、

「酒をワイングラスで飲むって言うのは新鮮と言うか、初めての経験だな」
「何、偶には器の違う物で飲むのも中々に乙なものだよ」

そんな感想を抱きながらお酒を飲み、

「お、美味いな」
「すっきりとした味わい。これは美味しいね」

美味しいと言う言葉を紡いだ。

「お、そいつは良かった」

美味しいと言う言葉が紡がれた事で小町が嬉しそうな表情を浮かべたのと同時に、

「ねぇ、小町……」

意味有り気な視線を萃香は小町に向ける。
萃香からの視線に気付いた小町は持っている酒瓶に護る様に抱え、

「駄目駄目。これ以上は上げれないよ」

これ以上酒は上げないと断言した。

「一寸だけ、一寸だけだから」
「それ、さっきも言ったじゃないかい」

断言した事を受けても萃香が再び一寸だけだと言って来た為、さっきも言ったと言う突っ込みを小町は反射的に入れる。
何やらお酒の取り合いになりそうな小町と萃香を龍也は軽い苦笑いを浮かべながら見守りつつ、テーブルの上に在るポテトを食べていった。























小町と萃香の二人と一緒に飲んだり食べたり騒いだりしてから暫らく。
龍也はまたまた一人で宴会会場内を彷徨っていた。
その中で色々な場所に顔を出しては飲み食いをすると言う行為を何度も繰り返して来た事を龍也が思い返している間に、

「あ、やっと見付けたわ。龍也」

やっと見付けたと言う言葉が龍也の耳に入って来る。
入って来た言葉に反応した龍也は一旦足を止め、言葉が聞こえて来た方に体を向ける。
体を向けた龍也の目には、

「アリス」

アリスの姿が映った。

「こんばんは、龍也」

映ったアリスの姿から自分に言葉を掛けて来た者が誰であるのかを龍也が認識したのと同時に、アリスから挨拶の言葉を掛けられたので、

「ああ、こんばんは。アリス」

龍也も挨拶の言葉をアリスに返す。
そして、

「楽しんでるか?」

楽しんでいるかと言う事を龍也はアリスに問うてみた。

「ええ、それなりにね」

問われたアリスはそれなりにと答え、

「それより、これを見てくれないかしら」

そう言いながら何体もの人形を展開し始める。
しかし、展開された人形は何時もと違う。
違うものと言うのは人形が着ている服。
アリスの人形が着ている服が何時ものデザインではなく、外の世界の服がモチーフとなっているのだ。
しかも、人形一体一体が着ている服のデザインが全て違っているのである。
多種多様な服を着ている人形達に龍也は目を奪われつつも、

「これ、全部お前が作ったのか?」

一応と言った感じでアリスに全て一人で作ったのかと言う確認を取った。

「ええ、そうよ」

取られた確認にアリスがどうって事無いと言う表情で肯定した為、

「……凄いな、お前」

つい反射的に凄いと言う言葉が龍也の口から紡がれる。
龍也がアリスに外に世界の服の事を教えてからそこまで時が経っていると言う訳では無い。
だと言うのに、アリスは幾つもの種類の数の服を作ったのだ。
驚きもするだろう。
ともあれ、

「そうかしら?」

紡がれた言葉が耳に入ったアリスは少し疑問気な表情を浮べつつ、

「それより、感想を聞かせてくれないかしら」

感想を聞かせて欲しいと言って来た。

「感想を?」
「ええ。外の世界の服の事を教えてくれたのは貴方だしね」

言われた事を受けた龍也が首を傾げると、感想を聞きたいと言った理由をアリスは話す。
話された理由を頭に入れた龍也は確かにと思いつつ、改めてと言った感じでアリスが展開させた人形達を観察していく。
そして、全ての人形を観察し終えた龍也は、

「どうもこうも、完璧だ」

完璧と言う言葉を零した。
そんな言葉が零れる程に、人形達が着ている服の完成度が高かったのである。
更に言えば人形達が着ている服は只単に外の世界の服を人形サイズにした訳では無い。
所々、服にアリスのアレンジが入っているのだ。
しかも、そのアレンジのセンスもかなり良い。
完璧と言う言葉が零れるのも当然と言えるだろう。
ともあれ、褒められたと言う事で、

「それなら良かったわ」

そう言ってアリスは展開していた人形達を仕舞った。
その後、

「それにしても、良くあれだけの量の服をあの完成度で作れるな」

感心したかの様な表情でそんな事を言った龍也に、

「人形を作っていると自然と裁縫技術が上達するからね」

人形作成で裁縫技術が上達したと答えながらアリスは空のワイングラスにワインを注いでいく。
ワイングラスにワインが満たされると、アリスはワインを一口に飲み、

「貴方だって、幻想郷を歩いている旅していると足腰を鍛えられるでしょ」
「ああ……確かに」
「ま、何かの技量を上げたらそれに付随する何かの技量が上がる事は良く在るでしょ」
「と言うと、アリスの人形を操る魔法も他の何かを上げてたりするのか?」
「そうね……魔力の綿密なコントロール、視野の広さ、多重思考等々。そう言った能力が鍛えられるわね」
「成程」
「そして更にそこから……って感じも在ったりするしね」
「廻り廻って……感じか」
「一寸意味合いが違う感じもするけど……まぁ、似た様なものかしら」

龍也と雑談を交わしていく。
雑談を交わし始めてから幾らか経った辺りで、

「お、居た居た」

魔理沙が龍也とアリスの二人の傍にやって来た。
やって来た魔理沙に気付いた龍也は、

「どうしたんだ?」

魔理沙の方に体を向けてどうかしたのかと聞く。

「これから酒飲み大会が始まるんだけど、お前等は参加するか?」

聞かれた魔理沙はこれから酒飲み大会が開かれる事と、その大会に参加するのかと言う問い掛けを口にした。
これまで色々とお酒の類を飲んで来た龍也ではあるが、別に酔っていると言う訳では無い。
だからか、

「良いぜ、俺は参加する」

酒飲み大会に参加する事を龍也は決める。

「龍也は参加な。アリスは?」
「私は止めとくわ」

龍也が参加を表明したのを受けた魔理沙は何処か期待する様な目でアリスに参加を尋ねたが、アリスからは参加不表明の返答をされてしまう。
すると、魔理沙は少々意地の悪い感じの笑みを浮かべ、

「何だ、逃げるのか?」

軽い挑発の言葉をアリスに掛けた刹那、

「前言撤回。参加するわ」

つい先程の参加不表明をアリスは撤回した。
こうも早くに先程の発言を撤回したのを見るに、やはりアリスも好戦的だなと言う感想を龍也が抱いている間に、

「そうこなくっちゃ」
「出るからには勝つわ」

アリスの参加が決まった事で嬉しそうな表情を浮かべている魔理沙に対し、出るからには勝つと言う事をアリスは断言する。
そして、龍也とアリスは酒飲み大会へと向かって行った。






































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