幻想郷の何所かを龍也が歩いていると、突如として風が吹いて来た。
吹いて来てた風を肌で感じ取った龍也は足を止め、

「んー……もう夏も完全に過ぎたなぁ……」

そんな事をポツリと呟く。
ふと空を見上げれば雲は殆ど無く、太陽が元気に仕事をしている事が分かる。
だが、太陽が元気に仕事をしていると言うのにダレる様な暑さを龍也は感じていない。
と言う事は、夏はとっくに過ぎていると言えるだろう。
つまり、今の季節はもう秋と言う事になる。
はっきりと今が秋である事を認識した後、

「そう言えば、秋になったら慧音先生の所の寺子屋に顔を出すって言う約束をしてたな」

少し前に人里で慧音と交わした約束を龍也は思い出す。
慧音曰く、龍也に会いたがっている子供達が多いとの事。
であるならば、出来るだけ早くに寺子屋に向かった方が良いだろう。
そう考えた龍也は善は急げと言わんばかりに体を人里の位置を確認する為に、空中へと躍り出様とする。
そのタイミングで、

「おーい、龍也ー!!」

上空から自分の名を呼ぶ声が龍也の耳に入って来た。
入って来た声に反応した龍也は上空に躍り出るのを止め、声が聞こえて来た方へと顔を向ける。
顔を上空へと向けた龍也の目には霊夢と箒に腰を落ち着かせている魔理沙の姿が映った。
霊夢と魔理沙の存在を認識した後、龍也は跳躍して二人と同じ高度にまで上がる。
そして、足元に霊力で出来た見えない足場を作り、

「よう、何か用か?」

作った足場に足を着けながら龍也は二人に何か用かと尋ねた。
龍也が尋ねた事に返すかの様に、

「龍也、私達と一緒に妖怪の山に行かないか?」

自分達と一緒に妖怪の山に行かないかと言う誘いを魔理沙は行なう。

「妖怪の山? 何でまた?」

誘われた龍也は疑問気な表情になりながら首を傾げてしまう。
妖怪の山と言う場所は閉鎖的と言える様な所で、人間の立ち入りを禁止しているのだ。
もし人間が妖怪の山に無断で入ろうものなら天狗達に直ぐに追い返される、或いは天狗と敵対する事になる。
と言う事を秋姉妹や椛、文と言った面々から聞いていたのを龍也が思い出していると、

「実はな、霊夢の所の博麗神社に営業停止命令が出されたそう何だ」

突如として魔理沙がその様な事を口にした。

「営業停止命令?」

博麗神社の営業停止命令と言う部分を受けた龍也はまたまた首を傾げてしまい、反射的に霊夢の方へと顔を向ける。

「……何よ?」

龍也からの視線に気付いた霊夢がそう言った瞬間、

「いやさ、お前の所の神社って営業してたんだなと思って少し驚いた」

ついと言った感じで博麗神社が営業していたと言う事実に驚いた事を龍也は零し、零された事に同意すると言った様に魔理沙はウンウンと頷いた。

「あ、あんた達ねぇ……」

龍也と魔理沙の思っていた事を知った霊夢は何かを言おうとしたが、

「俺は神社で掃き掃除位しかお前が働いてる姿を見た事をないぞ。それに、掃除している頻度が多い訳じゃなさそうだし」

掃き掃除以外で霊夢が働いている姿を見た事が無いと言う発言を龍也がした為、霊夢は言葉を詰まらせてしまう。
言葉を詰まらせてしまった霊夢に気付いていないのか、

「後、祭事とか神事とかそう言った事をやってるのを見た事ないし」

続ける様にして龍也は博麗神社で祭事や神事をしているのを見た事が無いと呟く。
呟かれた事が耳に入ったからか、

「いや、それは確か前にやってたぜ」

魔理沙からの突っ込みが入る。

「そうなのか?」
「ああ。尤も、直ぐに飽きて止めちまった様だがな」

入って来た突っ込みに反応した龍也が魔理沙の方に顔を向けると、もう飽きて止めてしまったと言う事を魔理沙が教えてくれた。

「それなら意味無いじゃねぇか」

教えられた事を受けた龍也は呆れた様な表情を浮かべながら一息吐き、

「後、神社と言えばお守りとかお札とかも売ってたりするものだけど……」

神社での商売と言えるものを幾つか上げる。
しかし、

「私の記憶が確かなら、霊夢がそんな物を作って商売をした事は無いな」

霊夢との付き合いの長い魔理沙がそう断言した為、

「あれ? それなら営業停止命令が出される以前に博麗神社って営業してないんじゃないか?」

そもそも博麗神社は営業していないと言う結論が龍也の中から出て来た。

「あ、龍也もそう思ったか。実は私もそう思ってたぜ」

龍也の中から出て来た結論には魔理沙も同意を示した後、龍也と魔理沙は二人揃ってあっはっはっと笑い始める。
が、

「「あ…………」」

笑っている途中で口端を引くつかせ、プルプルと震えながら懐からお札を取り出そうとしている霊夢の姿が二人の目に入った。
目に入った霊夢の様子から不味いと言うのを直感的に感じ取った龍也と魔理沙は、

「お、落ち着け!! 今度神社に行く時は賽銭を奮発するから!!」
「そ、そうだ!! 今度美味しい茸を沢山持って行ってやるから!!」

何とか霊夢の機嫌を取ろうとする。
賽銭に釣られたのか茸に釣られたのか、はたまた両方に釣られたのか。
答えは分からないが霊夢の機嫌は何とか直った様だ。
取り敢えず霊夢の怒りが爆発する様な事態にならなかった事で二人は安心し、

「そ、そういや、営業停止命令とか言われた様だけど何を言われたんだ?」

話を変えるかの様に龍也は霊夢に営業停止命令の中身に付いて聞く。

「言われた事? えーと……確か神社を潰すか山の神に譲渡しろと言われたわね」

聞かれた霊夢は人差し指を下唇に当てながら営業停止命令の中身を答える。

「要するに、神社を乗っ取らせろと言われているのか」

答えられた内容から龍也がそう推察すると、

「そう言う事ね。で、そう言って来たのが私と同じ人間の巫女でそいつが妖怪の山の頂上付近に向かって飛んで行ったのよ。まるで家に帰る感じで」

推察した内容は正しいと言って営業停止命令を出して来た者の正体に付いて霊夢は簡単に語った。

「成程、それで魔理沙は妖怪の山に行こうって言って来たのか」

霊夢が語った事を頭に入れた龍也は妖怪の山に行こうと誘って来た魔理沙に理解を示しつつ、

「でも、妖怪の山って人間禁制だったよな?」

妖怪の山は人間禁制の筈だろうと言う確認を二人に取る。

「それは私も引っ掛かっていたのよねぇ……」

取られた確認には自分も引っ掛かっていたと言う事を霊夢は返す。
まぁ、人間禁制の妖怪に山に人間の巫女が家に帰る感じで向かって行ったら引っ掛かりもするだろう。
ともあれ、

「何時もだったら無視しても良かったんだけど、人間が妖怪の山に行ったって言うのは普通なら考えられないからね。これが異変の前兆だとしたら……」

今回起こった件に対する自分の考えを霊夢が述べ様とした時、

「異変が本格的になる前に叩き潰す……ってか?」

述べ様とした事を予測したかの様に龍也はそう口にする。

「そう言う事。異変解決の為なら、妖怪の山に乗り込んでも大した問題には成らないわ」

口にされた事を肯定しながら霊夢は可愛らしい顔でその様に言い、

「それに異変を解決するって言う事はあの巫女が祀っているであろう偽神か邪神を叩き潰す事も出来るしね」

異変解決ならば妖怪の山に向かった巫女が祀っている神を倒せると言う発言をした。

「偽神か邪神って……そんな事が分かるのか?」

された発言から、何故妖怪の山に行った巫女が祀っている神が偽神や邪神だと断定したのかと言う疑問を龍也は抱く。
そんな龍也の疑問に対して、

「何言ってるのよ。人の神社の神様を追い出して乗っ取ろうとしてる輩が祀っている神様と言ったら、偽神か邪神に決まっているわ!!」

霊夢はシレッとした表情で偽神や邪神と断言した理由を言ってのけた。
神社を乗っ取ると言う事は、その神社の神を追い出すと言う事になる様だ。
神社事情の一端を知った龍也は何処か感心した感情を抱くも、

「そう言えば、俺は博麗神社の神様を見た事がないんだけど……」

ふと、博麗神社の神を見た記憶が無いと言う事を呟く。
すると、

「……そう言えば、私も見た事が無いな」
「私も……」

呟かれた内容に魔理沙処か霊夢も博麗神社の神を見た事が無いと言う主張を行なった。
自分の神社の神に付いて知らない霊夢に、龍也と魔理沙は何とも言えない視線を向ける。
二人から向けられた視線に気付いた霊夢も何とも言えない表情を浮かべてしまう。
そして、三人の間に何とも言えない空気が流れ始めてしまった。
もし、ここで下手な事を言ったら霊夢の怒りを買う事になるかも知れない。
と言う事を考えた魔理沙は、

「そ、それはそうとだ!! 龍也は私達と一緒に行くか?」

少々露骨な感じで話題を変えた。

「そうだな……」

変えた話題である一緒に行くかと言う誘いに付いて龍也は少し考えてみる事にする。
秋になったら人里の寺子屋に顔を出すと言う約束をしたが、今日行かなければならないと言う訳では無い。
今回の件が異変だったとしても、異変解決するまでに秋が終わると言う事はないだろう。
そこまで考えた龍也は息を一つ吐き、

「一緒に行くぜ」

霊夢と魔理沙の二人と一緒に妖怪の山に行く事を決めた。

「良し、決まりだな」

龍也が二人と一緒に妖怪の山に行く事を決めたの同時に、魔理沙がそう言いながら指を鳴らす。
その直後、

「なら、さっさと行きましょ」

鳴らされた指を合図にしたかの様に霊夢は妖怪の山へ向けて飛んで行く。
だからか、

「あ、霊夢。待てよ」
「一緒に行くんだから、一人で先に行くなよ」

魔理沙と龍也は少し慌て気味に霊夢の後を追い始める。






















龍也、霊夢、魔理沙の三人が一緒に妖怪の山に向かってから暫らく。

「お、見えて来たな」

妖怪の山が見えて来たと言う事を龍也は口にする。
となれば、後は妖怪の山に入るだけ。
だが、妖怪の山は人間禁制の場所。
馬鹿正直な方法で妖怪の山に入れば、天狗達に見付かって先に進むのにかなり苦労する事になるだろう。
なので、どう進入するべきかと言う事を一同が考え始めた時、

「あれは……」
「ん? 何か見付けたのか?」

何かを見付けた様な声を上げた龍也に、魔理沙がそう尋ねる。

「ああ、看板をな」
「「看板?」」

尋ねられた龍也が見付けたものを述べると、霊夢と魔理沙は疑問気な表情を浮かべてしまう。
が、そんな二人を無視するかの様に、

「一寸、見てみ様ぜ」

看板の前に降り立つかの様の龍也は降下して行った。
降下して行った龍也を見て、仕方が無いと言った感じで霊夢と魔理沙の二人も降下して行く。
そして、看板の前に三人が降り立つと、

「えーと、何々……『この先妖怪の山、人間立ち入り禁止。いいか、入るなよ。絶対入るなよ。絶対だからな』と書かれているわね」

看板に書かれている文字を霊夢は読み上げた。
読み上げられた内容を耳に入れた龍也は、

「ああ……そう言えば在ったな。こんな看板」

初めて妖怪の山近くに来た時の事を思い出しつつ、

「しっかし、何時見ても進入してくれと言わんばかりの文章だな……」

その様な感想を零す。

「そう? 私は進入を頑なに拒んでいる文章に見えるけど?」
「私もそう見えるぜ。何所が進入してくれって言う文章なんだ?」

零された感想を聞いた霊夢と魔理沙は進入を拒んでいる文章だと言って来た為、

「いや、まぁ……そう何だけど……」

龍也は言葉を詰まらせてしまった。
どう考えても良い説明が浮かばなかったからだ。
だからか、

「それはそれとしてだ」

この話題を龍也は何所かに置いておく事にして、

「何所から入って行く?」

どうやって妖怪の山に入るかと言う相談をし始める。
今、重要なのは看板ではなく妖怪の山への進入方法。
態々看板の話しを続ける理由も無いので、

「うーん……私としては妖怪の山の頂上まで一直線で行った方が手っ取り早いと思うぜ」

された相談に乗っかる様に魔理沙は自分の意見を出す。

「外側から直接行くって事か? その方法で行ったら妖怪の山に居る天狗に見付からないか?」
「それで天狗全員から襲撃を受けたら面倒臭い処の騒ぎじゃないわね。天狗は妖精と違って弱くは無いだろうし」

出された意見に龍也は懸念事項を、霊夢がその懸念事項が現実になったのを想像して面倒臭そうな表情を浮かべてしまう。
二人から自分の出した意見に難色を示された事もあり、

「なら、これは却下にするか」

出した意見を魔理沙は却下する事にし、

「じゃあ、逆に妖怪の山に普通に入山して下から頂上を目指すって言うのはどうだ?」

今度は真逆と言える様な意見を出した。
そして、

「妖怪の山は見た感じ、木々が多いからな。中に入れば外側からと違ってそう簡単には見付からないだろ」

続ける様にして真逆の意見を出した理由を魔理沙は説明する。

「妖精には見付かりそうだけど……まぁ、天狗を相手にするよりは遥かにマシね」

された説明を受けて入山して向かった方がマシと言う結論を霊夢は出した。
魔理沙が出した新たな意見に霊夢が好意的な反応を示したからか、

「直接向かうよりは、入山して向かった方が安全だな。俺は賛成」

魔理沙の意見に龍也は賛成する。

「……うん、私も賛成」

それに続く様にして霊夢も賛成した為、

「よし、決まりだな」

先陣を切るかの様に魔理沙は妖怪の山へと突入して行った。
妖怪の山へと突入した魔理沙を追う様にして、龍也と霊夢も妖怪の山へと突入して行く。






















妖怪の山に突入してから少し経った頃、

「ここが妖怪の山か……」

龍也はそう呟き、

「外観通り、木々って言うか自然が多い所だな」

興味深そうな感じでキョロキョロと周囲を見渡していく。
まぁ、龍也に取って今回が妖怪の山への初めての入山。
キョロキョロと周囲を見渡すのも無理はないだろう。
そんな龍也と同じ様に、

「妖怪の山には魔法の森には無い茸が在ったりするかな?」

魔理沙もキョロキョロと周囲を見渡していった。
龍也と魔理沙の二人が当初の目的を忘れたかの様な振る舞いを見せているからか、

「あんた達ねぇ……」

何処か呆れた視線を霊夢は二人に向ける。
その直後、何体かの妖精が龍也達の進行方向上に現れて弾幕を放って来た。

「……っと」

放たれた弾幕に気付いた霊夢は視線を龍也と魔理沙の方に向けた儘、迫って来ていた弾幕を避け、

「ほら、さっさと撃退するわよ」

そう言い放つ。
霊夢が言い放った事を耳に入れた龍也は、

「何か今日の霊夢、結構気合入ってないか?」

小さな声で魔理沙にそんな事を尋ねる。

「まぁ、流石の霊夢も自分の所の神社が乗っ取られるかどうか何だ。そりゃ気合も入るだろ」

尋ねられた魔理沙も小さな声でそう返す。
すると、

「一応巫女としての自覚は有るって事なのか?」
「多分な。まぁ、巫女らしい事をしてる所は殆ど見た事ないけど」
「ああ、俺もそんな所を見た事がないな」
「ま、何時もはグータラ巫女だがこう言う時にはやる気が出るって事だな」
「だな。何時もはグータラ巫女だけど」

返された内容をネタにした雑談を龍也と魔理沙はし始めた。

「何か言ったかしら、あんた達」

雑談の内容が聞こえたからか、少し怒気が感じられる声色で霊夢は二人に声を掛ける。

「「いえ、何にも!!」」

掛けられた声に反応した龍也と魔理沙は雑談を中断して慌て気味に否定の言葉を発した。
と言った様なやり取りを三人がしている間に妖精達はどんどんと数を増やしていく。
妖精達の数が増えているのに気付いた霊夢は、

「ほら、あんた達が馬鹿やっている間に妖精が増えたじゃない」

少し怒りが感じられる声色で龍也と魔理沙に文句の言葉をぶつけた。

「これ以上、霊夢に怒られる前にさっさと撃退するか」
「だな」

ぶつけられた言葉を受けた龍也と魔理沙はそう言い合い、妖精達に向けて弾幕を放つ。
それを見た霊夢も弾幕を放ち始めた。
三人が放った弾幕は次々と妖精達に命中し、妖精達を撃ち落していく。
何体もの妖精達が撃ち落されて行く中、被弾しなかった何体かの妖精達が反撃と言わんばかりに密度の濃い弾幕を放って来た。
が、妖精達が放った弾幕は龍也達に容易く避けられてしまう。
そして、直ぐに放ち返された三人の弾幕によって妖精達は撃ち落されてしまった。
さて、周囲から妖精達の姿が見えなくなった後、

「決まりね。これは異変だわ」

霊夢は異変であると断言した。
少なからずの例外はあれど、異変が起きている時の妖精は現れるのと同時に攻撃を仕掛けて来るのが殆ど。
今回現れた妖精達も、現れたのと同時に攻撃を仕掛けて来た。
今までの例から考えるに今回の件は異変と考えても良いだろう。
だからか、

「これで、妖怪の山へ乗り込む為の大義名分が成り立ったわね」

何処か得意気な表情で霊夢はそんな発言をする。
発言された事を聞いた龍也と魔理沙は、大義名分が成り立っても立たなくてもお前は妖怪の山に乗り込むだろうと思った。
まぁ、思った事を口にしたら霊夢から余計な怒りを買うのは確実なので二人は口を噤んでいたが。
ともあれ、進行方向上に居た妖精達を一掃出来たので、

「何ボーッとしてるのよ。早く行くわよ」

龍也と魔理沙の二人に霊夢は早く行く様に言って、先へと進んで行く。
言われた言葉で意識を現実に戻した龍也と魔理沙は霊夢の後を追い始める。
先へと進んでいる最中にも妖精達は当然の様に現れ、龍也達に攻撃を仕掛けて来た。
勿論、そんな妖精達を龍也達は難なく撃退しながらどんどんと先へと進む。
多少の妨害は在れど、順調な感じで先へと進んでいる中、

「……紅葉?」

紅葉が風に流されているのを見た龍也はつい足を止めてしまう。

「あら、本当」
「あれ? もう紅葉が舞う時期だったか?」

足を止めた龍也に続く形で霊夢と魔理沙の二人も足を止め、飛んで来た紅葉を手で取ってその様に呟く。
紅葉に少し驚いた霊夢と違って魔理沙は紅葉が飛んで来た事に疑問を覚える。
何せ、今は秋になったばかり。
紅葉が見られるのはまだ早い。
だと言うのに紅葉が飛んで来たのだ。
そんな疑問を抱くのも当然と言えるだろう。
兎も角、何時までも紅葉に気を取られている訳にはいかないと言う事を三人が同時に思った時、

「あら? 龍也さんに……知らない人間が二人?」

龍也達の近くに何者かが疑問気な声と共に現れた。
何者かが現れた事に気付いた三人は、声が発せられた方に体を向ける。
現れた者は、

「静葉……」

秋静葉であった。
現れた者の正体を知ったの同時に龍也は紅葉が飛んで来た理由を理解する。
静葉の能力は"紅葉を司る程度の能力"だ。
おそらく、静葉自身の能力で紅葉を生み出したのではと言う推察を立てている間に、

「知り合い?」

現れた静葉の名を龍也が零した為か、霊夢は龍也に知り合いかと尋ねる。

「ああ。二人居る姉妹の秋の神様で、姉の紅葉の神の秋静葉って言うんだ」

尋ねられた龍也は知り合いである事を肯定しつつ、静葉がどう言った存在であるかを簡単に話す。

「神は一人二人ではなく一柱二柱なのですが……まぁ、意味合い自体は通じているのでどうでも良いですね」

話された内容が耳に入った静葉は軽い補足をして、

「それはそうと、妖怪の山に何の御用で? この山は人間の立ち入りが禁止されていると言う事を知っているでしょう?」

改めてと言った感じで三人に妖怪の山にやって来た理由を問う。
すると、

「異変解決よ」

三人を代表するかの様に霊夢が問われた事に対する答えを述べる。

「異変解決……と言う事は、山の上に現れた神を何とかしてくれるのですね!?」

述べられた答えを受けた静葉は希望を得たと言う表情を浮かべながらその様な事を言って来た為、

「その口振りから察するに、何か知っているんだろ? だったら何があったのか教えてくれよ」

今起こっている事を教えて欲しいと言う頼みを魔理沙は行なう。

「分かりました。お教えします」

魔理沙からの頼みを静葉は受け入れ、

「端的に言いますと、妖怪の山の頂上に神社とその神社の敷地、巫女、神が現れたのです。それも突然、何の前触れも無く」

妖怪の山に起こった事を簡単に話す。

「神社と神社の敷地と巫女と神が突然現れたって……引越しでもして来たのかしら?」
「引越しかどうかは分かりませんが……」

話された内容から引越しして来たのかと考えた霊夢に静葉は少し困った様な表情を向けつつ、

「兎も角、突如として妖怪の山の……しかも頂上に神社が現れたものです。当然、妖怪の山の代表格である天狗は警戒態勢に入りました。中には力尽くで
追い出そうとする天狗達も……」

妖怪の山のトップとも言える天狗達の動向に付いて三人に教える。

「そりゃそうだな」

教えられた事を頭に入れた龍也はつい納得した表情を浮かべてしまった。
言うなれば、自分の敷地内に許可無しで行き成り家込みで現れて住み始めたのだ。
天狗達が現れた者達に対して警戒を払ったり、良くない感情を抱くのは当然と言えるだろう。
ともあれ、この分なら天狗達が既に何かしらの行動を起こしているのだろう言う事を龍也が思っ刹那、

「ですが、天狗達はこれまで何の行動を起こしていません」

まるで龍也の心中を読んだかの様に静葉は天狗が何の行動も起こしていない事を三人に伝える。

「どうしてだ?」
「現れた神社に居る神の存在のせいです」

伝えられた事に疑問を抱いた龍也が反射的に聞き返すと静葉は少し重い空気を出しながら天狗達が動いていない原因を口にした。

「「「神の?」」」

何故神のせいで天狗達が動けないのか分からなかった龍也、霊夢、魔理沙の三人は声を揃えて首を傾げてしまう。
だからか、

「はい。その神社の神は相当な力を有している様でして、天狗側は下手な手を打てない様なのです。下手に接触して変な怒りを買えば天狗に限らず妖怪の山に
存在する多くの命が失われる可能性が在ります。仮に戦いになった場合、ほぼ確実に天魔とその直属の配下である十数人の大天狗達が前線に出る事でしょう。
そうなれば確実に天狗側が勝利を収めると言えます。が、戦闘の余波で妖怪の山が焼け野原になってこれまた多くの命が失われる事でしょう。更に言うので
あれば、天魔と大天狗が居ない隙に謀反を企てる天狗も居るでしょうね。天狗側も一枚岩ではないですから」

龍也達三人の疑問を解消させる様に、静葉は天狗達が動けない理由を説明する。

「組織にありがちな問題ってやつか」

された説明からそんな事を龍也は呟いた瞬間、

「でもよ、お前さんも神なんだろ? だったら静葉が何とかすれば良いんじゃないか?」

同じ神である静葉が何とかすれば良いのではと言う疑問を魔理沙は発した。
神に神をぶつけると言うのは単純ではあるが、悪い手と言う訳でも無い。
しかし、

「無茶を言わないでください!! あの神社に居る神は私もチラリと見ましたが、あれは戦いの神とかそう言った類の神ですよ!! 紅葉の神である私では
どうにもなりませんよ!!」

発せられた魔理沙の疑問に静葉は慌てた口調で自分が現れた神と戦うのは無理だと断言した。
断言された静葉の様子から嘘が無い事を感じ取った霊夢は、

「つまり、そう言った事情が在るから私達に何とかして欲しいって事?」

確認すると言った感じで静葉にそう尋ねる。

「そう言う事です。知っているとは思いますが、我々神にとって信仰は必要不可欠。それは山の上に現れた神も同じ。自分達を信仰してくれる存在ならどんな
存在からでも信仰を得られますが、やはり人間から得られる信仰が一番強い。貴方達三人は人間ですから、殺されると言う自体は早々に起きないと思います。
それに……」

問われた静葉は落ち着きを取り戻した声色で肯定の返事をして、一端言葉を切った。

「それに?」
「前に"文々。新聞"で読みましたが、龍也さんは閻魔である映姫さん相手にガチンコ勝負を挑まれたと書かれていました。そんな事が出来るのであれば
山の上の神が相手でも問題無いでしょう。それにこんな所に来るって事はその御二人もお強いのでしょ?」

早く話せと言った感じで霊夢が続きを促して来たので静葉は今回の件を龍也達に頼んだ理由を教え、一応と言った感じで霊夢と魔理沙の二人に強いのだろうと問う。

「ああ。霊夢も魔理沙も強いぞ」
「なら、安心ですね」

問われた事に龍也が二人共強いと言う断言した為、安心した様な表情を静葉は浮かべ、

「なら、この件は貴方達に任せますね」

今回の件は龍也達に任せると言う事を決める。

「ええ、任せなさい。異変解決は私の仕事だからね」

そんな静葉を見て霊夢が胸を張りながら異変解決は自分の仕事だと宣言した時、

「異変解決が仕事……………………………………………………若しかして、貴女が博麗の巫女?」

少し驚いたと言う表情に静葉は成って霊夢が博麗の巫女なのかと言う確認を取って来た。
取られた確認に霊夢は顔を引く付かせて何かを言おうとしたが、

「何か、霊夢が博麗の巫女だって認識するのに豪く時間が掛かったな」
「そりゃ、霊夢は基本的に神社でダラダラするだけだからな。知名度が低くても仕方がないんじゃないか?」
「それなら仕方がないな」
「だろ」

何かを言う前に龍也と魔理沙が霊夢と博麗の巫女がイコールで結ばれるのに時間が掛かった理由に付いての会話を交わす。
交わされた会話内容が耳に入った霊夢はギロリと言った感じの視線を龍也と魔理沙の二人に視線を向ける。
霊夢からの視線に気付いた龍也と魔理沙の二人が、慌てて霊夢から視線を逸らしたタイミングで、

「あはは、御武運をお祈りしています」

苦笑いを浮かべながら静葉は武運を祈ると言う言葉を掛けて去って行った。
去って行った静葉が見えなくなった頃、

「……そんなに私って知名度が無いのかしら?」

溜息混じりに霊夢は自身の知名度の有無に付いて呟く。

「そう思うんだったら、霊夢も私や龍也みたいに色々と動き回ってみたらどうだ?」

呟かれた事に魔理沙がアドバイスの様なものを返したが、

「嫌よ、面倒臭い」

悩む間も無くされたアドバイスをバッサリと叩き切り、

「はぁ、神社でダラダラしててもお賽銭が貯まって参拝客が沢山来る良い方法って無いのかしら?」

自分が理想としている生活に付いて霊夢は語る。

「ある訳ねぇだろ、そんな方法」

語られた内容が内容だけに龍也は呆れた表情で突っ込みを入れ、

「ほら、さっさと行くぞ」

行くぞと言う言葉と共に龍也は移動を再開した。
移動を再開した龍也の後を霊夢と魔理沙の二人は追い始め、三人は再び先へと進んで行く。
再び進んでいる最中にも当たり前の様に妖精達は現れ、現れたのと同時に攻撃を仕掛けて来た。
とは言え、妖精達の攻撃では龍也達の足を止める事は出来なかったが。
今まで通りと言った感じ進み始めてから少しすると、

「こんな所に人間が来る何て命知らずな……って龍也?」

秋穣子が龍也達の進行方向上に現れた。
現れた穣子に反応した龍也達は一端進行を止め、

「こいつもお前の知り合いか?」

龍也に向けて魔理沙が知り合いかと尋ねる。

「ああ。さっき会った静葉の妹で豊穣の神の秋穣子だ」
「あれ、姉さんに会ったの?」

尋ねられた龍也が穣子の事を魔理沙と霊夢に教えると、穣子は驚いた表情を浮かべてしまう。

「ああ。それと、静葉に妖怪の山で何が起こっているのかは聞いたぜ」
「と言う事は、山の上の神を何とかしてくれるのね!!」

驚いている穣子に龍也が静葉に会って色々聞いた事を話したのと同時に、希望に満ちた表情になりながら穣子はそう言って来た。

「ああ、そうだぜ」
「んー……龍也の口振りから察するに姉さんが事情を話して通したみたいだし、龍也以外の二人も強そうだし大丈夫ね」

山の上の神を何とかすると言うのを肯定する様に魔理沙が胸を張ると穣子はそんな事を呟き、

「只、天狗には見付からない様に気を付けてね」

天狗には気を付けろと言う忠告をする。

「「「天狗に?」」」
「そう。今の妖怪の山は山全体がピリピリした状態になってるの。天狗連中は特にね。そんな状態の天狗に見付かったら確実に一戦交える事になるわよ。
話が分かる天狗なら、適度に加減して先に進める様に促してその後のフォローもしてくれるだろうけどそうでない天狗なら確実に貴方達の邪魔をする様な
行動を起こして来る筈よ」

三人が忠告された疑問を抱いたっと言った感じの表情を浮かべたので、忠告の意味を穣子は三人に教えた。
つまり、下手したら妖精達だけではなく天狗達とも戦わなければならないと言う事。
妖精達ならば消耗も微々たるものであるものの、天狗達が相手ともなれば消耗もそれ相応のものになるだろう。
現れた神と戦う事になるかはまだ分からないが、消耗しないに越した事は無いので、

「分かった。気を付けるよ」

三人を代表するかの様に龍也が気を付けると口にした。
その後、

「龍也の力は知ってるし、その龍也と一緒に居るって事は二人も強いんでしょ。なら、そんなに心配しなくても良いかな」

何処か楽観的とも言える様な台詞を零して穣子は何処かへと去って行く。
去って行った穣子を見送った魔理沙と霊夢は、

「流石、幻想郷中を旅して回ってるだけはあるな。色んな所に知り合いが居るじゃないか」
「これなら頂上までは楽に行けそうね」

それぞれそんな事を言ったのけた。
だが、言われた事を否定する様に、

「いや、妖怪の山に居る俺の知り合いって秋姉妹以外には椛と文しかいないぞ」

妖怪の山での知り合いは秋姉妹以外は文と椛しか居ないと言う事を龍也は二人に伝える。

「文は私と霊夢も知ってるが、椛って言うのは?」
「フルネームは犬走椛って言って白狼天狗だ。主な任務は妖怪の山に入って来た侵入者の追い返しや追撃、後は哨戒なども含まれてるって椛は言ってたな」

伝えられた内容の中に知らない者の名が在ったので魔理沙がその事に付いて聞くと、椛に付いて龍也は簡単に説明した。

「天狗か。会ったら面倒な事になりそうだな」
「その椛って言う天狗に会ったら龍也に任せれば良いじゃないかしら? どうせ、その天狗とも仲が良いんでしょ?」

椛の正体を知った魔理沙が思案気な表情を浮かべると、霊夢から椛は龍也に任せれば良いと言う提案を行なう。

「まぁ、確かに仲は良いが……」

行なわれた提案の中に在った椛と仲が良いと言う部分を龍也が肯定したからか、

「なら、椛ってのは龍也に任せるか。会ったらだけど」

椛と会う事になったら龍也に任せると言う霊夢の提案を魔理沙は支持した。
どうやら、霊夢と魔理沙の中で椛と会ったら龍也に任せると言う事に決まった様だ。
何を言っても二人の意思は覆りそうに無いと思ったからか、

「ああ、分かったよ。椛と出会ったら俺が相手をする」

軽く息を吐いて椛と出会ったら自分が相手にする事を龍也は決める。
こうして、今後の予定が決まった一同は再び妖怪の山の頂上を目指して移動を再開した。




































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