秋静葉、秋穣子と言う秋の神様と会ってから暫らく。
龍也、霊夢、魔理沙の三人は順調に妖怪の山を進んでいた。
妖怪の山なのだから、奥に進めば妖精ではなく妖怪が大量に襲い掛かって来るのだろう。
と言う予想を三人は立てていたのだが、その予想は外れる事となる。
何故ならば、奥に進んでも襲い掛かって来るのは妖精ばかりであるからだ。
妖精以外に現れた存在と言えば、先程色々と情報をくれた秋姉妹の二柱のみ。
まぁ、基本的に妖精よりも妖怪の方が強いので出て来ない方が時間を喰う事が無いので好都合ではあるが。
ともあれ、そんな感じで妖精を撃退しながら進んでいると、

「……お?」

突如として妖精の襲撃が止んだ。
それに気付いた魔理沙は、

「そう言えばさ、龍也と霊夢は山の上に現れた神はどんな存在だと思う?」

一息入れると言った感じで龍也と霊夢にそんな事を尋ねる。

「んー……静葉は戦いの神って言ってたから、筋骨隆々な大男じゃないか?」

尋ねられた龍也が現れた神に対するイメージを口にした時、

「そうかしら? 私は邪悪で禍々しい存在だと思うわ」

霊夢からはその様なイメージが口にされた。

「お前、それさっき言ってた邪神のイメージをその儘形にしただけだろ」
「あ、バレた?」

霊夢が口にした事に龍也が突っ込みを入れると、霊夢は茶目っ気が感じられる様な笑みを浮かべる。
その後、龍也は魔理沙の方に顔を向け、

「魔理沙はどう思うんだ?」

魔理沙の持つ現れた神に対するイメージを聞く。

「私か? 私は鎧とか武器とかを沢山付けたのを想像したぜ」

聞かれた魔理沙はそう答えた。
分かっていた事ではあるが、山の上に現れた神の姿のイメージは三人共バラバラであった様だ。
しかし、全員が抱いたイメージがバラバラと点に魔理沙は目を付け、

「そうだ、勝負をしないか?」

勝負し様と言い出した。

「「勝負?」」

行き成り勝負と言われた龍也と霊夢が同時に首を傾げてしまった為、

「ああ、勝負だ。ルールは簡単。山の上に現れた神様がさっき言った姿形と合ってるかどうか。負けた奴は勝った奴の宴会の費用を肩代わりで、全員外れたら
ドローゲーム」

何処か得意気な表情を浮かべた魔理沙が勝負の内容を語る。
別にこの勝負を拒否する理由も無いので、

「俺は良いぜ」
「私も乗るわ」

龍也と霊夢の二人は勝負に乗る事を決めた。

「決まりだな」

二人共勝負に乗る意思を示した事で魔理沙は嬉しそうな表情を浮かべながら指を鳴らす。
そんな魔理沙を見て、

「そう言えば、宴会って何時やるんだ?」

宴会開催日時に付いて龍也は魔理沙に問う。

「そりゃ、今回のこれが終わった後にだろ」
「要するに、何時も通りか」

問われた魔理沙が宴会開催日を述べると龍也は何時も通りかと言う反応を示す。

「また私の神社でかしら?」
「ま、それも何時も通りだな」

宴会開催日時を知った霊夢は何処か諦めた様な表情でそう零した直後、魔理沙からも何時も通りと言う反応が示された。
そして、

「て言うか、何で毎回毎回私の神社で宴会を開くのよ?」
「そりゃ、博麗神社が私達の溜まり場みたない感じだからな」
「ああ、確かにそんな感じだな。博麗神社」
「一寸、何時から私の神社はあんた等の溜まり場になったのよ」
「そりゃあ……最初から?」
「……気付いた頃には、集まるとしたら博麗神社って感じだったな」

霊夢、魔理沙、龍也の三人は雑談を交わしていく。
雑談しながら先へと進み始めてから少し経った頃、三人は今まで通って来た場所よりも木々が深い場所に出た。
おまけに木々が深い事もあって余り光が射さず、暗くて先が見え難い。
だから、一端立ち止まって三人は周囲の様子を伺っていく。
ある程度、周囲の確認出来た後、

「どの辺まで来たのかな?」

その様な事を龍也は呟いた。

「まだまだね」

呟かれた言葉に反応した霊夢はまだまだだと返し、

「妖怪の山はかなり大きいからね。まだ中腹にも来てないんじゃないかしら?」

自分達が何所に居るかを大まかではあるが語る。

「外観通り、相当大きいって事か」

語られた内容を頭に入れた龍也は何処か納得した表情になり、

「直接歩いて登るとなれば、相当な時間が掛かるだろうな」

飛行と言う方法ではなく徒歩で妖怪の山を登った時の事を想像した魔理沙は少しゲンナリとした表情を浮かべた。
霊夢も魔理沙と同じで徒歩で妖怪の山を登るのは避けたいからか、

「ま、そんな面倒なのはごめんだけどね」

魔理沙に同意する様な台詞を零す。
と言う様な感じで場の空気が和やかなものになった瞬間、三人の近くを弾幕が通過して行った。
通過した弾幕に反応した三人は、弾幕が飛んで来た方に体を向ける。
体を向けた三人の目には妖精達の一団が映った。
やはりと言うべきか、弾幕を放って来たのは妖精であった様だ。
少なくない数の妖精を視界に入れつつ、

「ほんと、妖精って何所にでも出て来るのね」

溜息と共に霊夢は愚痴の様なものを口にした。

「ま、異変解決の道中に大量の妖精に襲われるって言うのはある種のお約束だからな」

霊夢の口にした事に反応した魔理沙がそう言いながら弾幕を放つと、

「まぁ、それ以外だと妖怪に襲われる事が多いんだけどな」

迫り来る弾幕を避けながら魔理沙と同じ様に弾幕を放っている龍也が異変以外の道中に付いて軽く述べる。

「そりゃ幻想郷中を歩いて旅してれば、妖怪に襲われる事も多いでしょうよ」

二人に続く形で霊夢も弾幕を放ち、龍也が述べた事に対する突っ込みの様なものを入れたタイミングで、

「そう言えばさ、ここって妖怪の山なのに襲い掛かって来るのは今のところ妖精だけだよな? 全然妖怪が出て来ないのはどうして何だ?」

妖怪の山に入ってから今までの道中で抱いた疑問を魔理沙は二人に聞いてみた。
すると、

「それはあれじゃない? 妖怪の山の頂上に神が現れ、その神を警戒して妖怪の山全体がピリピリしてるってさっき会った穣子が言ってたでしょ。
それを感じ取って大人しくしてるんじゃない?」

自分なりの考えを霊夢は魔理沙に伝える。

「成程。知能の欠片も無い様なタイプの妖怪でもそれを感じ取って大人しくしてるのか」

伝えられた内容を耳に入れた魔理沙は納得した表情を浮かべた。
その後、

「まぁ、出て来ない方が楽だからね。そこんじょそこ等の妖怪でも妖精よりはずっと強いから、倒して進むとなると余計な時間を喰う事になるし」
「だな。基本的に妖精は弾幕の一発や二発をぶつけてやれば倒せるけど、流石に妖怪はそうはいかないし」
「先はまだ長いだろうし、どんな強敵が居るかも分からないからな。力を温存出来るのなら願ったり叶ったりだ」

霊夢、魔理沙、龍也の三人は妖精達を撃ち落していきながら妖怪が襲って来なくて楽で良いと言う様な会話を交わしていく。
戦闘中だと言う何を呑気な事をと思われるかもしれないが、妖精達が幾ら襲い掛かって来てもこの三人に取って大した敵では無い。
会話しながらでも妖精達を相手取れる程に余裕が在るのだ。
ともあれ、会話しながら妖精達を撃ち落し始めてから少し経てば、

「終わったみたいだな」

襲い掛かって来た妖精達を全て一掃し終え、龍也は弾幕を放つのを止める。
そんな龍也に続く様にして霊夢と魔理沙の二人も弾幕を放つのを止め、

「さて、先に進みましょうか」

先陣を切る様にして霊夢が進行を再開した。
再び移動し始めた霊夢を龍也と魔理沙は追って行く。
三人が再び移動を開始してから大した時間を置かずに妖精達は当然の様に現れ、弾幕を放って来た。
しかし、妖精達が放った弾幕は龍也達に当たらず、

「はっ」
「せい」
「そら」

反撃と言わんばかりに霊夢、龍也、魔理沙が放った弾幕によって次から次へと撃ち落とされていく。
と言った感じで順調に進んでいる中、龍也達の進行方向上に一人の女性が現れる。
現れた女性は頭頂部に赤いリボンを着けて緑色の髪を胸元辺りで纏め、赤と赤を暗くした色合いで構成された服とスカートを着た女性。
それと、何かは分からないが黒っぽい靄の様な何かが彼女の周囲に漂っている。
兎も角、こんな所に現れたのだから彼女は妖怪の山の住人なのだろう。
そう考えた龍也が現れた女性に話しを聞こうとした瞬間、現れた女性は行き成り体を回転させ始めた。
同時に、回転する謎の物体が次から次へと女性の周囲に現れる。
そして、現れた回転する謎の物体が龍也達に向って弾幕を放って来たではないか。
放たれた弾幕を龍也達は反射的に避け、

「おい!! 行き成り……」

行き成り攻撃して来た事に対する文句の言葉を龍也は女性にぶつけ様としたが、

「……居ない?」

何時の間にか現れた女性は消えてしまっていた。
まるで白昼夢を見ていた様だと思いながら龍也はつい動きを止めてしまい、女性が居た場所を眺めてしまっていると、

「おい、龍也!! ボケッとしてないで手伝ってくれ!!」

魔理沙から急かす様な声が掛けられた。
掛けられた声で意識を戻した龍也は、声が掛けられた方に体を向ける。
体を向けた龍也の目には大量の弾幕を放っている魔理沙の姿が映った。
だからか、

「ああ、悪い悪い」

悪いと謝りながら龍也も弾幕を放ち始めた。
魔理沙と龍也が放っている弾幕で回転する謎の飛行物体を撃ち落とされていく中、

「……たく、厄介な置き土産をしてくれたわね。あの女!!」

同じ様に大量の弾幕を放っている霊夢から愚痴の言葉が発せられる。
発せられた愚痴からは苛立ちと言う感情が感じられたが、それも無理はない。
霊夢としてはさっさと妖怪の山の頂上に居るであろう神をぶっ飛ばしたいのだ。
だと言うのに、この足止め。
苛立っても仕方が無いであろう。
と言った感じで三人で回転する謎の飛行物体を撃ち落し始めてから少し経つと、

「こいつで……ラスト!!」

ラストと言う言葉と共に魔理沙が最後の一体の撃墜した。
回転する謎の飛行物体を一掃したのを確認した三人は弾幕を放つのを止め、

「それにしても、何だったんださっきの奴」

溜息混じりに魔理沙は先程現れた女性に対する疑問を呟く。

「何だって良いわよ。どの道、後でぶっ飛ばすんだから」

呟かれた内容が耳に入った霊夢は好戦的な返答を行なう。
どうやら、妖怪の山の頂上に現れた神をぶっ飛ばす序に先程の女性も霊夢はぶっ飛ばす積もりの様だ。
まぁ、ここで先程の女性を無視して背後から邪魔されたら溜まったものでは無い。
故に龍也と魔理沙は異論の言葉を発したりはせず、

「でもよ、さっきの奴が何所に向ったのか分かるのか?」

代わりと言った感じで龍也はそんな疑問を霊夢に投げ掛ける。

「分からないけど、あっちの方に行けば居ると私の勘が言ってるわ」

投げ掛けられた疑問に霊夢はそう答えながらある方向に向けて指をさす。

「勘って……」
「あら、忘れたの? 私の勘は良く当たるのよ」

勘で先程の女性の居場所を決めた霊夢に龍也は呆れるも、霊夢から自分の勘の良さに付いて語られた為、

「ああ……」

霊夢の勘の良さを龍也は思い出した。
それを見た霊夢は、

「それじゃ、さっさと行きましょうか」

自身が指をさした方向へと進んで行き、龍也と魔理沙も霊夢の後を追って行く。
進行方向が変わったとは言え、先へと進めば当然の様に妖精達が現れては襲い掛かって来た。
そして、これまた当然の様に龍也達の足を止める事は出来ずに現れた妖精達は次々と撃ち落されてしまう。
が、次々と撃ち落される妖精の中で一体だけ他の妖精とは一線を画す妖精が現れた。
どの辺りが一戦を画すのかと言うと放つ弾幕の量、密度、弾速等が圧倒的に上なのだ。
これには龍也達も若干苦戦を強いられたものの、その妖精の耐久度自体は大した事はなかったので直ぐに撃墜する事が出来たが。
そんなこんなで進んで行くと、更に光が届かない場所に辿り着き、

「ん?」
「お?」
「あら?」

辿り着いたのと同時に龍也、魔理沙、霊夢の三人は何かを感じ取り、立ち止まって周囲を警戒し始める。
警戒している中、

「……感じた?」

小さな声で霊夢は二人に感じたかと言う確認を取った。

「ああ」
「急に空気が重くなったな」

取られた確認に龍也と魔理沙はそう答え、ある確信を得る。
必ず何かが来ると言う確信を。
同じ確信を霊夢も得ていたからか、三人は周囲の警戒を続けていく。
すると、

「あら、先程のあれで追い返したと思ったのに」

先程攻撃して来た女性が再び現れた。
女性が現れる事は予測していたからか、

「漸く会えたわ……」

驚く事無く霊夢は現れた女性に敵意を籠めた視線を向ける。

「……あ、あら? 何でそんなに敵意を籠めた目で見られてるのかしら?」

霊夢から敵意を籠めた目で見られた女性が気圧されたかの様に少し後ろに下がった時、

「そりゃ、あんな置き土産をされたこうもなるだろ」

若干呆れが感じられる声色で霊夢から敵意を向けられている理由を魔理沙は口にした。

「置き土産って……私は只これ以上進むなって言う警告をしただけなのに」

魔理沙が口にした事に女性はその様な反論をするも、

「警告にしても、もっと他にやり様が在っただろ」

した反論に対して間髪入れずに龍也が突っ込みを入れた為か女性は押し黙ってしまう。
入れられた突っ込みに思い当たる事が在ったのだろうか。
兎も角、女性の正体と警告して来た理由に付いては知りたいからか、

「と言うかあんたは誰で、何であんな事をしたんだ?」

その事に付いて龍也は女性に尋ねる。

「ああ、自己紹介がまだだったわね。私の名前は鍵山雛。厄神よ」

尋ねられた女性は今気付いたと言う様な表情を浮かべながら自分の名、役職に付いて話した。

「「「厄神?」」」

話された部分に在った厄神と言う部分に聞き覚えが無かった三人は揃って首を傾げてしまう。
そんな三人を見て、

「解り易く言うのであれば、厄って言うものを集めてそれを遠い所に流すと言う役割を持った神ね」

厄神と言う神がどう言った存在であるかを雛は簡単に説明する。

「あんた……神様だったのか」

された説明を耳に入れた龍也が驚くと、

「言われて見れば確かに」
「そう言われて見れば、確かに神力を感じるわね」

魔理沙と霊夢が何処か納得したと言った表情を浮かべた。
二人の反応を見て龍也は改めと言った感じで雛を見詰める。
見詰めていくと静葉と穣子の二柱と似た様な感じを受け、更には神力も感じたので雛も神である言う事を龍也は認識し、

「あんたがどう言った存在なのかは分かった。それで、俺達を追い返そうとした理由は何だ?」

これ以上進むなと言う警告、つまり追い返そうとした理由を問う。

「追い返そうとした理由も何も……貴方達、ここが何所か分かっているの? 妖怪の山よ。頭の固い天狗や知能の欠片も無い様な妖怪に見付かったら
生きて帰れないかもしれないのよ」

問われた雛は心配気な表情をしながら妖怪の山がどう言った場所であるかを軽く解説する。
解説された内容を普通の人間が聞けば、直ぐにでも妖怪の山から逃げ出す事であろう。
しかし、三人の中に普通の人間は居ないので、

「生憎、私達はそこ等辺の奴等に負ける程弱くは無いぜ」

三人を代表するかの様に魔理沙がそう言って胸を張る。

「まぁ、空を飛べてこんな所まで来るからには弱くは無いのだろうけど……」

自分達は弱くは無いと言う主張に雛は納得しながら三人を確りと目に入れていき、

「それはそうと、貴方達は何の為にこの妖怪の山にやって来たの?」

本題に入ると言った感じで三人に妖怪の山にやって来た理由を尋ねた瞬間、

「妖怪の山の現れた神をぶっ飛ばしに来たのよ!!」

一歩前に出ながら霊夢は怒りが感じられる声色でその様に宣言した。

「妖怪の山に現れた神を……」

された宣言を受けた雛は心底驚いたと言う表情を浮かべるも、直ぐに表情を戻して、

「なら、貴方達を何が何でもここから先に通す訳には行かないわね」

先へ進ませる訳にはいかないと言い放ちながら構える。

「……どうしてだ?」

雛から発せられるピリピリした空気を感じ取りつつ、自分達を先へと進ませないとする理由を龍也は雛に聞く。

「山の上に現れた神がとても危険な存在だからよ」

聞かれた雛はそう断言し、

「私は遠くから少し見ただけだけど、あれは戦神とかそう言った類の神。更に言うのであれば、天狗達が手を出さずに警戒だけに留めている。それはつまり、
天狗側が下手に手を出す事が出来ないと言うも同じ。その様な存在の居る場所に向かい、且つ戦いを挑もうとしている貴方達三人を止めるのは当然でしょう」

その様に続けた。
どうやら、雛は純粋に龍也達の事を心配して居る様だ。
だが、

「心配してくれてるのはありがたいが、それでも俺達は行くぜ」
「そう言う事。それに異変解決は私の仕事だしね」
「大体、ここまで来て何もせずにノコノコ帰る何て事は有り得ないぜ」

龍也、霊夢、魔理沙の三人に引く気は無かった。
三人の雰囲気から決心が固い事を理解した雛は、

「……なら、私を倒してから先に進みなさい」

先に進みたいのであれば自分を倒せと言い放ち、

「少なくとも、私を倒せない様では山の上の神に勝つ事は出来ないわよ」

改めてと言う様に妖怪の山に現れた神の力の強大さを語る。
語られた内容から要するに自分達の力を見せろと言う事かと三人は思いつつ、

「なら、私がやるわ」

三人を代表するかの様に霊夢は自分が戦うと言いながら前に出た。
元々雛をぶっ飛ばすと言う気持ちを抱いていた事を知っていた龍也と魔理沙の二人は異論を出さず、霊夢に任せる事を決め、

「私達はどうする?」
「二人の戦いを見て様ぜ。雛は神で妖怪の山の頂上に現れたのも神だ。山の上に現れた神と戦う時に、雛の戦い方が何かの参考になるかもしれないしな」
「そうだな、そうするか」
「それと、霊夢の戦いの邪魔にならない様に少し離れるとするか」
「だな」

魔理沙と龍也は霊夢が戦っている際にどうするかと言う会話を交わし、少し後ろの方に下がっていく。
後ろへ下がって行く二人を霊夢は感じ取りつつ、

「ルールはどうするの? それもルール無しでやる?」

戦闘方法に付いて雛に尋ねる。

「弾幕ごっこで良いわ」
「あら、弾幕ごっこで良いの?」

尋ねられた雛が戦闘方法に弾幕ごっこを指定すると、ついと言った感じで霊夢はそう聞き返す。

「ええ、良いわ。弾幕ごっこでも貴女の動きなどを見ればどの位強いのかは分かるし。それに、余り人間を傷付ける様な事はしたくないしね」

聞き返された雛は戦闘方法を弾幕ごっこに指定した理由を霊夢に教え、少し霊夢から距離を取る。
そして、先手必勝と言わんばかりに雛は動く。
雛は自身の周囲に赤と青の球体を生み出して、生み出した球体から赤と青のお札型の弾幕を霊夢に向けて放ち始めた。
それを見ながら、

「使い魔タイプの弾幕か」

ポツリと弾幕の種類に付いて魔理沙は呟く。

「使い魔タイプって言うと……前に俺のスペルカードのテストに付き合って貰った時にお前が見せたあれか?」
「ああ、そうだぜ」

呟かれた内容が耳に入った龍也が使い魔タイプの弾幕に付いて思い出すと、思い出した事は正しいと言う発言を魔理沙は行なう。
その後、

「しっかし、ああ言うタイプの弾幕って使い易いのかね? 俺は直接放つ方が使い易いと思うけどな」
「慣れれば使い易いと思うけどな。練習するって言うなら付き合ってやろうか? 対価は私の茸狩りの手伝いで良いぜ」
「機会が在ればな」
「分かったぜ。ああ、そうそう。使い魔タイプで思い出したんだが霊夢もそんな感じのを持ってるんだよな」
「そうなのか?」
「ああ、陰陽玉って言うのをな」
「ああ……そう言えば前にそんなの見た事が在ったな。何時だったか忘れたけど。ならさ、何で霊夢はそれを使わないんだ?」
「霊夢曰く、制御が面倒臭いからだそうだ。追い詰められたりする様な事にでもならない限り、使わないんじゃないか?」

龍也と魔理沙は使い魔タイプの弾幕に付いての会話を交わしていく。

「お気楽ねぇ、あんた達」

二人の会話が聞こえて来た霊夢は、呆れた声色で二人をお気楽だと称し、

「そろそろ、私も反撃開始といきましょうか」

反撃開始の弾幕を放つ。
霊夢から放たれた弾幕は雛の弾幕を掻い潜るようにして、雛に迫って行く。
迫って来る弾幕を雛は余裕が感じられる動きで避け、

「思っていたよりも強いわね……」

霊夢に対する評価を上げ、

「なら、もっと強くしましょうか」

放つ弾幕の量、密度を強くする。
だが、弾量や密度を幾ら強くしても霊夢に弾幕が当たる事は無かった。
自分の放つ弾幕が一向に当たる気配を見せない事に雛が焦りの表情を見せる中、

「大分体が温まって来たわね」

霊夢も放つ弾幕の量、密度を強くする。
お陰で雛に迫って行く弾幕の数が大きく増加した。
迫り来る弾量が増加した当初は余裕を持って避けれた雛であったが、段々とその余裕が無くなっていく。
この儘では防戦に徹する事になりそうだと思った雛は赤と青の球体を消しながら懐に手を入れ、

「悪霊『ミスフォーチュンズホイール』」

懐からスペルカードを取り出し、取り出したスペルカードを発動させる。
スペルカードが発動するのと同時に、雛は体を回転させ始めた。
体を回転させると言う行為に一体何の意味がと言う疑問を霊夢が抱いたタイミングで、雛は弾幕をばら撒いていく。
ばら撒かれている弾幕を視界に入れ、

「体を回転させながら弾幕をばら撒く事で、弾幕のランダム性を高めているのかしら? でもその程度……ッ!?」

発動されたスペルカードに付いて考察していた刹那、何かを感じ取った霊夢は弾幕を放つのを止めながら慌てて体を動かす。
すると、つい先程まで霊夢の居た場所に弾幕が通過した。
どうやら、何もない所から弾幕が放たれた様だ。
ばら撒かれている弾幕、見えない所から放たれた弾幕の二つを結び付けた霊夢は、

「……そっか」

理解した。
雛のスペルカードの特性を。
ランダム性の高い方に注意を向ければ見えない場所から迫る弾幕が脅威になる。
逆に見えない場所から迫る弾幕に注意を向ければランダム性の高い弾幕が脅威になってしまう。
注意を片方の弾幕に向けさせてもう片方の弾幕で仕留めると言うのが、今発動されている雛のスペルカードの特性なのだ。
が、その特性がこのスペルカードの真骨頂ではない。
真骨頂は注意力の分散にある。
二つのタイプの弾幕が迫ってくれば当然、その両方に注意が向く事になる。
それ即ち、一つに弾幕に完全に注意が向かないと言う事。
注意が完全でなければ、注意不足で被弾する事も在り得る。
縦しんば避ける事が出来たとしても、注意の外から迫った弾幕だ。
回避先を考えたりせず、避けれれば良いと言う感じで大幅な動きで回避する事になり兼ねない。
そうなったら、余計に弾幕が濃い場所に突っ込んでしまう可能性が出て来てしまう。
そこから脱し様と慌てて回避行動を取って、また弾幕の濃い場所にと言う風に悪循環に陥る可能性も否定出来ない。
勿論、雛が発動しているスペルカードの真骨頂も霊夢は理解している。
しかし、理解していても霊夢は少しずつ雛の弾幕に追い詰められていった。
迫り来る弾幕に満遍無く注意を向けていたが故に。
ともあれ、追い詰められていってる霊夢を見て雛は自分の勝利を確信してある予定を立てる。
弾幕ごっこに決着が着いた後、この三人を妖怪の山から追い返すと言う予定を。
そして、妖怪の山の妖怪達にこの人間達が害される心配が無くなって安堵したのと同時に霊夢の死角から迫る弾幕を雛は発見した。
更に言えば、死角から迫り来る弾幕に霊夢は気付いている様子はない。
あの弾幕に当たれば霊夢は体勢を崩し、体勢を崩した後に大量の弾幕をその身に受ける事になるであろう。
これで決まったと雛が思った瞬間、

「……え?」

霊夢は自然な動きで死角から迫って来ていた弾幕を避けた。
避けられるとは思っていなかった雛が唖然としている間に、

「私らしくなかったわね。一寸熱くなり過ぎてたかしら?」

溜息混じりにらしくなかったと言う事を霊夢は零し、

「こう言うタイプの弾幕は自分の勘に従って避けるのが一番ね」

そんな事を行ってのける。

「勘って……」

勘で避けると言った霊夢に雛は呆れた表情を向けるも、先程までとは違って今の霊夢からは弾幕に当たる気配が見られない。
だからか、雛は何も言う事が出来なかった。
何も言えない雛とは対照的に霊夢の表情は調子が戻って来たと言うものに成っていき、

「これ以上時間を取られるのもあれだし、決着を着けさせて貰うわよ」

決着を着けると言いながら霊夢は懐に手を入れ、懐からスペルカード取り出しながら雛に向けて突っ込んで行く。
突っ込んで行くと言う事は、弾幕の雨の中に突っ込んで行くのと同じ。
普通なら無数の弾幕の直撃を受けてしまうものだが、突っ込んでいる霊夢に弾幕が当たる事は無かった。
まるで弾幕をすり抜ける様にして迫って来ている霊夢を見て、スペルカードの発動を止めて回避行動に移るべきかと言う事を雛が考えている間に、

「神霊『夢想封印』」

霊夢はスペルカードを発動させる。

「しまっ!?」

霊夢のスペルカードが発動したのを雛が気付いた時には既に遅く、七色に光る弾が霊夢の体から次々と放たれていく。
放たれた七色に光る弾を回避し様としたが、回避する事は出来ずに雛の体に七色に光る弾が次々と着弾して爆発を起こしていった。
そして、爆発が晴れると、

「ケホッケホ……無茶をする子ねぇ」

多少服をボロボロにした雛が姿を現す。
ボロボロになった雛を見て、

「どう、これでも文句在る?」

何処か得意気な表情になった霊夢が雛に文句在るかと問う。

「無いわ」

問われた雛はスペルカード発動を止めながら無いと答える。
こうして、霊夢と雛の弾幕ごっこは霊夢の勝利で幕を閉じた。





































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