「そこにある野菜、十個ずつくれ」
「毎度!!」

霊児は何時もの様に人里でお守りとお札を売り、当たり前の様にやって来た魔理沙と雑談をした後、八百屋に来ていた。
八百屋にやって来た理由は単純に食料庫が空になったからだ。

「あ、袋は一纏めで」
「はいよ!!」

店主が全ての野菜を袋に入れ終わったタイミング霊児は代金を渡す。
それと交換する様に野菜の入った袋を受け取り、

「今後ともご贔屓に!!」

ある種のお約束的な言葉を受け、霊児は野菜の入った袋を左肩に担ぐ様に持って八百屋を出る。
八百屋を出た後、霊児は米屋へと向う。
米屋に入ると、

「いらっしゃい!!」

そんな元気の良い声で出迎えられる。
その声を受けつつ霊児は店内を見渡し、

「えーと……十俵くれ」

十俵買う事を決めた。

「毎度!!」

店員はそう言って十俵の米俵をロープを使って纏めていく。

「代金はここに置いておくぞ」

霊児はそう言ってカウンターに代金を置くと、

「はいよ!! にしても坊主、これを持てるのかい?」

店員は霊児を見ながら十俵の米俵を一人で持てるのかと問う。
霊児の様な子供に十俵もの米俵を持てるとは普通は思えないのでそんな問いをするのも仕方が無い。
持てる訳がないと思って見ている店員の前で、

「ああ」

霊児は軽々と纏められた米俵を手に持って右肩に担ぐ。
店員は霊児が軽々と米俵を持ち上げた様子を唖然とした表情で見る。
霊児はそんな事を気にした様子を見せずに米屋を出て、人里の中を歩いて行く。
人里の住民はそんな霊児の様子を見てあんな子供がよく持てるなとか、流石は今代の博麗だとかと言う事を口にしていた。
中には霊児の着ている羽織に書かれている"七十七代目博麗"と言う文字を見て、霊児が今代の博麗であると初めて知る人もいた様だ。
そんな周囲の声を聞きつつ、霊児は他に買う物は無いかと少し考え、

「……無いな」

直ぐに何も無いと言う結論を出す。
結論が出たのと同時に霊児はその場で飛び上がり、博麗神社に帰って行く。





















「ふぅ……」

買って来た野菜や米を食料庫に詰め込んだ後、霊児は一息吐き、

「しかし……帰りに買って帰ると言うのもめんどくさいな」

一々人里で買い物をするのは面倒だと呟く。
商売が終わったのなら、そのままダラダラと過ごしたり神社に帰ってさっさと修行したりのんびりしたいと言うのが霊児の本音だ。
おまけに時間帯によっては野菜などが手に入らないと言う何も買えずに無駄足を踏む事がそれなりにある。
と言っても、流石の霊児も何かを食べなければ餓死してしまう。
こうして考えてみると儘ならないものだなと霊児は思い、

「……はぁ」

溜息を一つ吐く。
その時、

「……そうだ」

霊児は何かを思い付く。
思い付いた事と言うのは、

「自分で作ればいいじゃん」

野菜などを自分で作れば良いと言う事だ。
土を耕して畑にして種を植える。
自分で野菜を育てれば、欲しい野菜が手に入らないと言う事は起きない。
流石に稲作は無理があるかもしれないが、野菜を作る位なら可能だ。
それに余った野菜を売れば金にもなる。
自分にとってプラスになる事が多いと感じた霊児は、

「よし、作ろう。畑」

畑を作る事を決める。
善は急げと言う言葉があるので霊児は早速必要な物を買いに行こうと外に視線を移すと、

「……暗いな」

日が落ちか掛かっている事が分かった。
こんな時間ではもう大半の店は営業時間を終了している事だろう。
これでは今から人里に向っても意味が無いと霊児は判断し、明日買いに行く事を決めて晩ご飯である鍋料理を作る為に台所へと向う。





















翌日。
人里に着いた霊児は、

「えーと……道具屋道具屋……」

道具屋を探し始める。
道具屋になら畑を耕す為の鍬と言った道具の類があると思ったからだ。
周囲を見渡しながら歩いて探していると、ある看板が目に付く。
その看板には、

「霧雨道具店……」

霧雨道具店と書かれていた。
霊児は看板に書かれている文字を呟き、魔理沙が自分の実家が道具屋であると言っていた事を思い出しながら店の外観を見ると、
霧雨道具店と言う店は他の店と比べるとかなり大きい事が分かる。
この大きさなら自分が欲する物はありそうだなと霊児は思い、扉を開けて店の中に入って行く。
すると、

「いらっしゃいませ!!」

そんな元気の良い声で出迎えられ、

「霊児!!」

霊児の名が呼ばれた。
自身の名を呼ばれた事に気付いた霊児はカウンターの方に目を向け、自分の名を呼んだ者が誰なのかを確認する。
霊児の名を呼んだ者は、

「魔理沙」

魔理沙であった。
霊児が魔理沙の存在に気付くと、魔理沙はカウンターから出て霊児の傍まで駆け寄る。
そして、

「いらっしゃい、霊児」

満面の笑顔で改めて霊児を出迎えた。

「ああ」

霊児はそう返して店内を見渡し、

「お前一人なのかか?」

魔理沙一人なのかと尋ねる。
すると、

「うん。お父さんとお母さんは出掛けているから私が店番してるんだ」

魔理沙は一人である肯定し、一人で店番をしている事を口にして胸を張る。
そんな魔理沙を見ながら霊児は一人で店番をしているのは何れこの店を切り盛りする為の練習かと思っている間に、

「で、今日は何しに来たの? 遊びに来てくれたの?」

魔理沙は霊児に何をしに来たのかを尋ねて来た。

「鍬と野菜の種と如雨露を買いに来たんだ」

霊児が霧雨道具店にやって来た理由を口にする。
霊児がやって来た理由を聞き、

「鍬と野菜の種と如雨露?」

魔理沙は首を傾げてしまう。
魔理沙が首を傾げたのを見て、

「ああ、実は……」

霊児が事情を説明すると、

「そっか。それで鍬と野菜の種と如雨露を買いに来たんだね」

魔理沙は納得した表情になる。

「それで、あるか?」

霊児にあるかと問う。
問われた事に、

「一寸待ってね」

魔理沙はそれだけ言って商品が陳列されている場所に向って行く。
それから少し時間が経った頃、

「こ、これで良いかな?」

魔理沙が何かを引き摺って持って来た。

「これは……」

霊児は魔理沙が引き摺って来た物を片手で持ち上げると先端部分に布が巻かれている事に気付く。
なので、霊児は手を伸ばして巻かれている布を解く。

「……鍬か」

布が完全に解かれると、魔理沙が持って来た物は鍬である事が分かった。
金属部分の輝きから良い金属を使っているなと霊児が思っていると、

「……ん?」

魔理沙がポカーンとした表情で自分を見ている事に気付く。
なので霊児は魔理沙の方を向き、

「どうした?」

どうしたのかと尋ねる。
尋ねられた魔理沙は、

「……霊児って力持ち何だね」

霊児は力持ちだと言う感想を漏らす。
どうやら、自分は両手で引き摺って来た鍬を片手で軽々と持ち上げた霊児に驚いている様だ。

「そうか?」

霊児はそんな大層な事でも無いと思いつつ鍬をもう一回見て、

「まぁ、魔理沙もその内これ位の物を片手で持てるって」

何れ魔理沙も出来る様になると言う。

「うーん……私も力持ちになれるのかな……?」

そんな魔理沙の呟きを聞きながら霊児は店内を見渡して、

「で、野菜の種と如雨露ある?」

野菜の種と如雨露があるかと聞く。

「あ、うん。付いて来て」

そう言って魔理沙が歩き出したので霊児は鍬を担ぎながら付いて行く。
それから少し歩くと、

「ここに野菜の種と如雨露が在るよ」

野菜の種や如雨露が置いてあるコーナーに辿り着く。

「おおー……」

霊児の目にはかなりの種類の野菜の種が映った。
一通り見た後、霊児は全ての野菜の種一セットずつと一番サイズの大きい如雨露を買う事にする。
買う物を近くにあった籠に入れ、それをカウンターまで持って行き、

「会計を頼む」

霊児はそう言って籠と鍬をカウンターの上に置く。

「うん、一寸待ってね」

魔理沙は商品を籠から出し、それらを数え、袋に詰めながら霊児が買った物の金額を計算する。
まだ慣れていないからか、少々時間が掛かっている様だ。
量も量だし仕方が無いなと霊児は思い、会計が終わるまでボケーッとして過ごす。
暫らくすると、

「終わったよ」

計算が終わったと言う言葉が発せられる。
その後、霊児は魔理沙から指定された金額をカウンターに置く。
置かれたお金を魔理沙は数え、

「うん、丁度だね」

丁度だと分かるとお金を仕舞う。
それを見届けた後、霊児は鍬を担いで袋を手に持つ。
そして、霊児が霧雨道具店を後にし様としたのを見て、

「またね、霊児」

魔理沙がそう言って来たので、

「ああ、またな」

霊児はその様に返して博麗神社へと帰って行った。





















神社に戻って来ると霊児は早速畑を作る為に、神社の裏側に向う。
神社の裏側に着くと同時に、

「よっと」

鍬を振り下ろして土を耕していく。
そのまま一直線に耕していくが、

「……っと、木が邪魔だな」

途中で木と言う障害物に進行を阻まれてしまう。
霊児は一旦鍬を地面に突き刺して固定し、周囲を見渡して、

「んー……ここまで範囲で畑を作ったら畑……小さくなるな」

この範囲では畑が小さくなってしまうと口にする。
これでは折角買ってきた野菜の種も大分余ってしまう。
何とかせねばと霊児は考えを廻らせ、

「…………あ、そうか。木を退かせばいいのか」

木を退かせば良いと言う結論に達する。
思い立ったら何とやら。
霊児は目の前の木を両手で掴み、

「よっ……と」

その儘引っこ抜く。
そして、木を引っこ抜いたのと同時に浮かび上がって適当な所に木を植え直す。
霊児はそれを何度も何度も何度も繰り返していくと、

「……よし、大分広くなったな」

耕させるスペースがかなり増えた。
これなら買って来た野菜の種を全て植えても余裕があるなと霊児は思い、土を耕す作業を再開する。





















「ふぅ……こう言うのも案外良いもんだな」

全ての土を耕し終えると、霊児はそんな事を言いながら一息吐く。
霊児は土を耕すと言う単純な作業をそれなりに楽しんでいた様だ。
そのうち畑をもっと広大にするのも良いかもしれないと霊児は思いつつ、

「さて、種植えでも始めるか」

買って来た野菜の種を植え始める。
種植えを始めてから数時間程経つと、

「あー……やっと終わった……」

霊児は腰を数回叩きながら立ち上がる。
種植えは自体は然程時間が掛からずに終わったが、

「耕すよりもこっちの方が時間が掛かったな……」

土を耕す作業よりも種植えの方が時間が掛かった様だ。
まぁ、変に植えて育たなかったら困るので丁寧に種を植えていったので時間が掛かったのは仕方が無い事であろう。

「さて、水遣りもして置くか」

腰を回して腰の疲れたある程度取れると霊児は井戸に向い、如雨露に水を汲む。
そして、畑に水を撒いていく。





















霊児が畑を作ってから数日経ったある日、

「やばい……飽きた……」

水遣りをやり終えた後、霊児はそんな事を漏らした。
どうやら、僅か数日で水遣りと言う単調な作業に飽きが来た様だ。
しかし、幾ら飽きが来たからと言って水遣りを止めてしまえば作物は全滅しまう。
水を遣らなければ作物は育たず枯れてしまうのだから。

「どーすっかなぁ……」

霊児は少し悩んで見たものの、取れる手段は二つだけ。
何とかモチベーションを維持するか、それとも他の手段を考えるか。
この二つだ。
どちらにするかを霊児は少し悩み、

「……香霖に相談してみるか」

森近霖之助に相談すると言う考えに達する。
霖之助なら何か都合の良い道具を持っているかもしれない。
そこまで考の下、霊児は空中に躍り出て香霖堂に向う事にした。





















「と、言う訳でそんな都合の良い道具無いか?」

香霖堂に着いた霊児は早速霖之助に何か良い道具が無いかと訪ねるが、

「無いよ」

関口一番で無いと断じれてしまう。
なので、

「じゃあ作れないか?」

今度は作れないかと問うが、

「作れないよ」

作れないと断じられてしまった。

「僕はマジックアイテムとかそう言った類の物が専門だからね。君の言う様な物は専門外だよ」
「そうか……」

そう言われて落胆してしまう霊児。
こうなっては何とかモチベーションを保つしかないかと霊児が考えていると、

「あ、でも……」

霖之助は何かを思い付いた表情をする。
何かを思い付いた表情を浮かべた霖之助見て、

「何か心当たりがあるのか?」

霊児は霖之助に心当たりがあるのかと問う。
問われた事に、

「うん、河童なら君の望む物も作れると思うよ」

霖之助は河童なら何とか出来るかもしれないと言う事を口にした。

「河童?」

霊児が首を傾げると、

「そう、河童だ。河童は妖怪の山に住んでいてかなり高い科学技術を持っている妖怪でね。更に言うなら人間にはかなり友好的だ」

霖之助は河童の事を少し説明し、眼鏡を中指で上げる。
そして、

「唯、妖怪の山は閉鎖社会だからね。余所者は直ぐに追い返されてしまう。幾ら君が今代の博麗と言えどそう易々とは……おや?」

続ける様に妖怪の山に付いて説明をするが、その時には既に霊児の姿は無かった。
どうやら、河童の事を聞いたと同時に出発してしまった様だ。

「……大丈夫かな? まぁ、魔理沙が言うにはかなり戦闘能力が高い様だから大丈夫か」





















「中々見付からないな……河童」

霊児は木の枝から木の枝へと跳び移って移動しながらそう漏らす。
妖怪の山に入って暫らく経つが、一向に河童は見付からなかった。

「おまけに水の在る場所も見付からない……」

最初の頃はただ闇雲に探していたが、あまりにも見付かる気配がなかったので途中から水の在る場所を探し始めたのだ。
河童なら水の在る場所に居るだろうと言う考えで。
そんな風に周囲を見渡しながら木の枝から木の枝へと順調に跳び移って行ったが、

「……っと」

突如、霊児は少し慌て気味に木々の間に身を隠す。
何故慌て気味に身を隠したかと言うと、近くに白狼天狗が居たからだ。
普通なら態々隠れたりはしないであろうが、隠れたのには理由がある。

妖怪の山に入った当初、霊児は木の枝から木の枝へと跳び移ったりせずに普通に妖怪の山を登っていた。
だが、その道中で天狗に見付かるのと同時にその天狗から攻撃を受けたので霊児は反射的に反撃を行ってしまう。
そしてその反撃で天狗を気絶させたところで霊児はある事を思い出す。
妖怪の山は閉鎖的で、余所者は追い返すと言う事を。
これは文が言っていた事だ。
そこまで思い出し、霊児はこの天狗を殺さなくて良かったと思ったのと同時に今の騒ぎを聞き付けてか他の天狗達が近付いて来てしまう。
その事に気付いた霊児は慌てて近くにあった茂みに入り、その場から離れる。
それからと言うもの、霊児は隠れる様にして妖怪の山を進んでいるのだ。
ほぼ確実に進入者在り思われてしまっている現状、さっさと妖怪の山から撤退するのが得策だ。
だが、霊児は帰らない。
ここまで来てしまった以上、手ぶらでは帰れないと言う心情があるからだ。

「……よし、行ったな」

白狼天狗は別の場所に行ったのを確認した後、霊児は再び移動を開始する。
自分の勘が何かを訴える方に。
暫らく進むと、

「川か……」

川が見えて来る。
水があるここなら河童が居るかもしれないと霊児は思い、周囲を探していく。
すると、

「お?」

青い髪をし、青い服を着て帽子を被った少女を発見した。
発見した少女を見て、霊児は若しかしたらと思いながら見付けた少女に近付き、

「一寸良いか?」

声を掛ける。
声を掛けられた少女は、

「はい?」

何だと言う表情を浮かべながら霊児の方に体を向ける。

「……あれ?」

体を霊児の方に向けて少女は霊児の姿をじっくりと見て、

「げげ、人間!?」

慌てる様にして姿を消した。

「何っ!?」

少女が消えた事に霊児は驚くも、直ぐに周囲を探る。
何かの術を発動した気配が無ければ一瞬で移動した様子も無いからだ。
霖之助が言っていた高度な科学力と言うの物を使ったのかと霊児は考えつつ、ある一点を見詰める。
そして、霊児は唐突に地を駆け、

「そこ!!」

手を伸ばし、何かを掴む。
掴んだ感触から肩だろうかと霊児が思っていると、

「な……なんで……」

何も見えない場所からそんな声が聞こえて来る。
何が言いたいのかを大体察した霊児は、

「強いて言うなら……勘だな」

そう返す。
同時に、

「……ん?」

霊児は後方から多数の気配を感じた。
また天狗だと厄介だと思い、霊児は少女を掴んだ状態のまま巻き込む様にして術を発動する。
二重結界式移動術を。
すると、

「……え?」

周囲の景色が一瞬で変わった。

「ここ……何所……?」

ここが何所か分からないと言った感じの少女に、

「俺の部屋だ」

霊児は自分の部屋である事を伝える。
その声に気付いた少女が霊児の方に体を向けた時、

「そんな格好してたんだな、お前」

霊児は少女の姿を見てそう呟く。
少女の格好は青を基調とした服に、アクセサリーとしてか胸元に鍵を付けている。
自分の姿をはっきり見えていると言った様子の霊児を見て、

「え……ああ!? 私の光学迷彩装置が解除されてる!!」

少女は何やら慌てて何かの装置を調べ始めた。
光学迷彩と言う単語を聞いて、霊児は高度な科学力だなと思っている間に、

「あー……エネルギー切れだ……」

少女は光学迷彩装置が解除された原因を突き止める。
その後、少女は改めて状況を確認し様と周囲を見渡すと壁に掛けてある羽織りに目がいった。
同時にその羽織りに書かれている文字にも目がいき、

「七十七代目博麗……」

思わず書かれている文字を呟いてしまう。
その瞬間、少女は自分が呟いた単語の意味を理解し、

「若しかして……」

慌て気味に霊児の方を見る。
少女の表情から何を言いたいのかを理解した霊児は、

「ああ、俺が今代の博麗だ」

自分が今代の博麗であると言う事を口にすると、少女は慌てて霊児から距離を取り、

「あ、あのですね!! 河童は人間の盟友でして、退治される様な悪い妖怪では……」

命乞いをする様な事を言う。
半ば分かっていた事だが目の前の少女が河童であると言う確信が得られるのと同時に何か誤解されているなと思った霊児は、

「あー、何か勘違いしてる様だが別に俺はお前を退治する気はない」

退治する気は無いと言う事を伝える。

「え、そうなんですか?」

それを聞いた少女はポカーンとした表情になった。
が、霊児はポカーンとした表情をしている少女を余所に、

「ああ、退治じゃなくて頼みがあるんだ」

頼みたい事があると話し始める。

「つまり、自動で畑に水を遣る様な機械……若しくは装置が欲しいと」
「ああ、出来るか?」
「うーん……」

霊児に出来るかと問われると、少女はその場で考え始めた。
難しいのだろうかと霊児が思っていると、

「……ん」

ふと、霊児の頭に河童の好物が過ぎる。
物は試しと言う事で、

「勿論、只と言う訳じゃない。今、畑で胡瓜も作っていてな。引き受けてくれるなら胡瓜が出来たら半分やるよ」

代価に胡瓜の存在をチラ付かせた。
チラ付かせた存在が少女の中で絶大な位置を示しているからか、

「やる!!」

あっさりと了承の返事が貰えた。
胡瓜を出したのが良かったのだろうか。
了承を得られて霊児はこれからは楽が出来る様になって良かったと思いつつ、

「そういや、まだ名乗って無かったな。俺は博麗霊児。お前は?」

思い出した様に自分の名を名乗る。
霊児が名乗ったからか、

「あ、そう言えばまだだったね。私は河城にとりだよ」

少女、河城にとりも自分の名を名乗ってくれた。
























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