季節は廻り、何時の間にか季節は秋から冬へと変わった。
冬になって幾らか過ぎれば雪が降り、雪を積もらせていく。
雪が積もったのならば当然、雪掻きをしなければならない。
そんな一般的な例に漏れず、霊児はスコップ片手に雪が積もった博麗神社の境内の雪掻きを行っていた。
基本的に博麗神社には参拝客は来ないし、博麗神社に遊びに来る輩は皆空を飛んでやって来るので雪掻きをする必要性は無い様に感じられる。
だが、そうやって積もった雪を放置していたら日常生活に支障を来し始めたのだ。
例えば、縁側に雪が侵入する直前になっていたとか。
例えば、玄関の扉を開いたら雪しか見えなかったとか。
例えば、屋根が雪の重みで潰れそうになっているとか。
そう言った事態が起こってしまったので、霊児は仕方なく雪掻きをしているのだ。

「毎年やっている事とは言え、雪掻きはやっぱ面倒だな……」

霊児は面倒臭そうな表情を浮かべながらスコップで掬った雪を投げ捨てる。
因みに、屋根に乗っかっていた雪は一番最初に除雪した。
それもかなり丁寧に。
流石に自分が住んで生活している神社が雪の重さで倒壊するのだけは霊児としても避けたかった様で、屋根の除雪だけは真面目に行った様だ。
境内の雪掻きを始めてから暫らく経った頃、

「ふー……こんなとこかな?」

霊児はスコップを雪に突き立てながら振り返る。
振り返った霊児の目には玄関、賽銭箱までの道のり及び縁側近くの雪は大体片付けられた様子が映った。
ここまでやれば十分だろうと感じた霊児は突き刺して置いたスコップを引き抜き、スコップを肩に乗せながら玄関へと向かう。
居間に戻って暖でも取り、蜜柑でも食べ様と思いながら。
玄関の近くにスコップを立て掛け、もう一度自分が雪掻きをした場所に目を向け様とした時、

「ん?」

遠くの方に無数の黒い点の様なものが霊児の目に映った。
妖精の大群かと霊児が考えている間に、その黒い点は少しずつ大きくなっていく。
何故大きくなっていっているのかと言うと、黒い点が霊児に近付いているからだ。
近付いて来た黒い点が確りと視認出来る距離まで来ると、

「……妖精じゃ、ない?」

霊児は見えていた黒い点が妖精ではない事に気付く。
霊児の目に映っているものは黒っぽい球形の体に蝙蝠の様な羽を生やしたした様な生き物。
少なくとも、妖精はその様な風貌をしてはいない。

「何だ……あれ……」

霊児がそう呟いた瞬間、その生物達の一部が霊児の方へと敵意剥き出しで突っ込んで来た。
普通の子供であればこんな状況に遭遇し様ものなら恐怖で足を竦めさせそうではあるが、霊児は非常に落ち着いた様子で立て掛けて置いたスコップを手に取る。
手に取ったスコップを軽く動かした後に霊児は数歩足を進めて構えを取り、突っ込んで来た生物が自身の間合いに入る直前で、

「ふん」

スコップを振るう。
すると、霊児に迫って来ていた生物はスコップを振るった事で生まれた風圧で一匹残らず吹っ飛んで行く。
吹っ飛んで行った生物の一部が木にぶつかると、木にぶつかった生物は煙の様に消滅した。
消滅していく様子を見て、

「……弱ッ」

霊児は思わず弱いと呟いてしまう。
只の一撃処か風圧で吹き飛ばしただけで倒せるとは思わなかったからだ。
あの生物は自分の想像以上に弱いのかと言う事を霊児が思っていると、今倒した生物と同じ生物の一団が霊児の方へと向って行った。

「そういや、まだまだ居たな……」

そう呟いた後、霊児は生物の一団の中へ躊躇いを欠片も見せずに突っ込む。
そして生物達の中心部に来ると、霊児はスコップで打ち払ったりスコップで斬り払ったり足で蹴り払ったりとしながら生物達を撃退していく。
この様子ならば直ぐに片が付く思われたが、そうはならなかった。
何故ならば、

「くそ……どんだけ居るんだ、こいつ等」

一向に数が減らないからだ。
倒しても倒しても、次から次へと増援がやって来る。
これでは強敵が一人現れる方が楽であると霊児は感じた。
強くは無いのに数だけは異様に多いと言う点から、霊児は主に台所などに出没する黒光りして素早くて飛ぶ虫である油虫の存在を思い出す。
余談ではあるが博麗神社の台所と食料庫にはかなり強力な結界が張られており、壁や床には強力な術式が刻み込まれている。
結界が張られ、術式が刻み込まれた原因は台所に現れた油虫を退治した時にかなり悲惨な事になったからだ。
その事実をかなり重く受け止めた霊児は早急に対策を練り、練った結果が結界と術式だ。
結界の役目は油虫の進入を防ぐ事。
術式の役目は万が一……いや、億が一の可能性で進入して来た油虫を浄化させる事。
博麗神社の台所と食料庫はこの二段構えで護られているのだ。
それは兎も角、一向に数が減らない生物に痺れを切らしたのか、

「ああー!! うっとおしい!!!!」

霊児は苛立たしいと言う表情を浮かべながら空中へと躍り出る。
空中に躍り出た霊児は更に上昇を続け、ある一定の高度に来ると上昇を止めて生物達が追って来るまで待つ。
生物達が霊児を取り囲んだタイミングで、

「夢想封印・乱!!」

霊児は両手を広げて己が技を放つ。
夢想封印・乱とは夢想封印を滅茶苦茶に撃ちまくると言う技だ。
要するに、下手な鉄砲数撃ちゃ当たると言う技なのである。
そう言った技なのだが、今回は敵の数があまりにも多い為か霊児の体中から放たれる七色に光る弾は面白い程に生物達へと命中していく。
夢想封印・乱を放ってから暫らくすると、

「はー……やっと終った」

生物達を一掃し終え、霊児は夢想封印・乱を放つの止めて一息吐く。
その後、霊児は降下して地に足を着け、

「しっかし、何だって急にこんな……」

今まで見た事も無い様な生物がこんな大量に現れた原因に付いて考える。
考えた結果、霊児の頭にある三つの可能性が思い浮かんだ。
一つ目は大量に幻想入りして来たと言う可能性。
二つ目は何らかの要因で何かが当然変異などを起こしてあの様な姿に変貌したと言う可能性。
三つ目は幻想郷に害を成そうと考えている存在が尖兵として送り込んで来たと言う可能性。
霊児が思い浮かんだ可能性はこの三つだ。
一つ目と二つ目は兎も角、もし三つ目の可能性が正しかったら非常に厄介である。
もし、あの生物が現れた事と幻想郷の危機が直結するのであれば霊児は解決の為に動かなければならない。
霊児は七十七代目博麗であり、今代の博麗であるのだから。

「……ったく、これからごろごろだらだらグータラして過ごす予定だったって言うのに」

自分の予定を崩された事に対する苛立ちを露にしながら霊児は玄関の近くにスコップを立て掛け、神社の中に入る。
そして自分の部屋へと向かい、部屋の中に入ると霊児は今着ている服を脱いで着替えていく。
まず、背中に陰陽のマークが描かれた白いシャツを着た後に黒いズボンを穿く。
次に左腰に短剣を一本装備し、背中に四本の短剣を括り付ける。
最後に白が基調で縁が赤くて背中に赤い文字で"七十七代目博麗"と書かれた羽織りを着て、夢美から貰ったグローブを手に着ける。
準備が完了した瞬間、

「……よし」

霊児は勢い良く外に出て飛び上がり、己が勘が指し示す場所を目指して飛んで行く。





















「……よし、当たりだ」

進行方向上に妖精だけではなく先程神社で倒した生物がチラホラと見えて来ている事から、霊児は今進んでいる道が当たりであると確信する。
確信を得たからか、霊児は飛行速度を上げて神社で倒した生物を倒しながら突き進んで行く。
それから暫らく経った頃、

「……ん?」

霊児は辺り一面が黒で覆われている場所に出た。
今までとは全く雰囲気が違う場所に来たから霊児は一旦止まって周囲を伺う。
その時、幻想郷で感じられていたものが感じられない事を感じたからか、

「別世界……って感じがするな」

そんな感想を抱き、気合を入れ直す。
そして、

「さて、鬼が出るか蛇が出るかは分からないが……何が出ても俺がやる事は変わらないな」

霊児は何が起きても自分のやる事を変わらないと呟いて再び先へと進んで行く。
最初の方はこれと言った襲撃も無く、楽に進めるかと思われたが、

「ま、それは幾ら何でも都合が良過ぎるか」

途中から霊児の行く手を阻むかの様に弾幕を放って来る者達が現れる。
現れた者の中には博麗神社で倒した生物以外の者も居たが、全て霊児に打ち倒される事となった。
襲い掛かって来る者は幻想郷では見た事も無い様な姿形をしているものばかりであったが、その誰もが霊児に掠り傷の一つも負わせる事が出来ない様だ。
別世界の様に感じたが、この分なら大した事は無いかと霊児が思い始めた時、

「一寸待ったー!!」

霊児の進行方向上に少し薄めの紫色の髪をし、白と赤を基調とした服を着た少女が大きな声と共に現れた。
行き成り現れた少女を霊児は少し警戒しながら一旦止まり、

「……誰だ、お前?」

何者なのかと尋ねる。
すると、

「私の名前はサラ。魔界の入り口の門番よ!!」

目の前の少女、サラは自分の名前処か役職まで名乗ってくれた。

「……魔界の……門番?」

霊児は確認するかの様な声色で魔界の門番なのかと問うと、

「ええ、そうよ」

サラは魔界の門番である事を肯定する。
サラの返答を聞いた霊児の頭にある考えが過ぎった。
自分の神社で倒した生物は魔界から来たのではと言う考えが。
なので、

「……なぁ、魔界の方から何かがこっちにやって来たりはしないのか?」

霊児は魔界から幻想郷側に何かがやって来たりはしないのかと尋ねる。

「んー……まぁ来たりはするでしょうね」

サラは魔界の方から何者かがやって来る事を肯定したタイミングで、

「そいつ等を止めたりはしないのか?」

霊児は魔界から出て来る者を止めないのかと返す。

「門番は侵入する者を防ぐのが基本的な役目よ」

サラが門番の役目に出て行く者を止める事は含まれていないと言う。
サラから返って来た返答を聞いた霊児は、

「さよけ」

何処か納得した表情になる。
どうやら、魔界からやって来る者を止める事は不可能な様だ。
仮にサラの役目に魔界からやって来る者を止める事が入っていても、魔界の門はかなり大きい様なので止める事はおそらく不可能であっただろう。
魔界に行かなければこの件を解決するのは無理かと思い、

「で、俺はこの先……魔界に行かなきゃならないんだが……」

魔界に向かう旨を伝え様とするも、

「それはダメ」

全部言う前にサラからダメだと言われてしまった。
やはりと言うべきか、サラに霊児を通す気はないらしい。
まぁ、サラに通す気がないのなら霊児がやるべき事は一つ。
それは、

「なら……力尽くで押し通るぜ」

力尽くで押し通る事。

「ええ!? どうしてそうなるの!?」

サラが驚いた表情を浮かべると、

「言っただろ、俺は魔界に行かなきゃならないってな」

霊児は魔界に行かなければならないと言って左腰の短剣を左手で抜き放って構えを取る。
まぁ、それも当然だろう。
あの生物の流出を止める為には、どうしても魔界に突入する必要があるからだ。
更に、状況次第では魔界のお偉いさんを倒す必要性が出て来る。
霊児から引く気は無く押し通ると言う雰囲気を感じ取ったからか、

「良いわ、久しぶりのお客様だもの。可愛がって上げる!!」

サラは少し好戦的な笑みを浮かべ、霊児に向けて大量の弾幕を放つ。
霊児は向かって来る弾幕を避けつつ、サラの方に視線を向ける。
が、

「……来ないのか?」

サラは弾幕を隠れ蓑にして接近して来る事はしなかった。
単純に様子見に徹しているのか、それとも接近戦が苦手なのか。
その答えは接近戦を仕掛ければ分かるかと思った霊児は弾幕の中を掻い潜りながらサラに肉迫し、

「しっ」

短剣を振るう。

「危な!!」

サラは後ろに下がりながら何とか振るわれた短剣を避ける。
振るった短剣を避けられた事に霊児は気にした様子は見せず、サラに追撃を掛けていく。

「わっ!! とっ!! とっ!!」

サラをかなり危な気な動きで霊児が放つ斬撃を回避しながら、滅茶苦茶に弾幕を放つ。
そんなサラの様子を見て、接近戦は不得意なのかと霊児が思い始めた時、

「おっと」

サラが滅茶苦茶に放った弾幕が当たりそうになったので、霊児は攻撃を中断をして距離を取りながら弾幕を回避していく。
距離を取って回避した霊児を見たサラは弾幕を放つのを止め、

「ふっふっふ、分かったわ。貴方の弱点が」

得意気な表情をしながら霊児の弱点が分かったと口にする。

「俺の弱点?」

自分の弱点が分かったと言うサラの物言いに、霊児は首を傾げる。
弱点なんてあったっけと思いながら。
霊児がその様な事を思っている間に、

「貴方の弱点……それは遠距離戦よ!!」

サラは霊児の弱点は遠距離戦だと言い、霊児に指を突き付けながら自信満々と言った表情を浮かべ、

「どう、合ってるでしょ?」

合っているだろうと口にする。

「あー……悪いんだが……」

サラの指摘に返す様に霊児は右手をサラの方に向け、右手から大量の弾幕を放つ。

「……え?」

霊児が大量の弾幕を放った光景を見てサラは唖然とした表情を浮かべるも、

「ッ!!」

直ぐに表情を戻し、霊児が放つ弾幕を必死な表情をしながら避けていく。
自身の放つ弾幕を避けていくサラを見ながら、

「俺は近距離戦の方が好きだし得意だから距離を詰める様な戦い方をしてるけど、別に遠距離戦が出来ないって訳じゃ無い、分かり易く言うのなら
近距離戦は大得意で遠距離戦は得意って感じだな」

霊児は近距離戦は大得意で遠距離戦は得意だと言う事を口にする。

「近距離も遠距離も隙が無いだなんて……」

サラが少し絶望した表情を浮かべると、

「生憎、弱かったら博麗なんざやってられないからな」

霊児は弱かったら博麗なんざやってられないと言い、弾幕の量を増やす。
更に増えた弾幕を見たサラは、

「あーもう!! どうにでもなれー!!」

自棄になったかの様に大量の弾幕を滅茶苦茶に放つ。
霊児とサラが放った弾幕が激突すると、連鎖的に爆発と爆煙が発生していく。
辺り一面が爆煙に包まれると、霊児は様子を見る為に一旦弾幕を放つのを止める。
爆煙が晴れるまでは静観に徹した方が良いかと考えると、光線が爆煙を突き破りながら霊児に迫って来た。

「おっと」

霊児は迫って来た光線を体を傾ける事で回避する。
その光線の先には、両手を突き出しているサラの姿が目に映った。
やはりと言うべきか、レーザーを放って来たのはサラであった様だ。
弾幕以外にも光線が出せるのかと霊児が思っていると、サラは光線を放っている両手を動かして霊児に光線を当て様とする。
が、霊児は迫って来る光線を容易く避けていく。
光線を容易く避けていく霊児を見て、霊児の後を追う様に手を動かしても当たらないと判断したサラは両手を滅茶苦茶に動かしてランダム性を高める。
しかし、それでも光線が霊児に当たる事はなかった。
自分が放つ光線が当たる処か掠りもしない事にサラが焦りの表情を浮かべてしまう。
そんなサラに対し、霊児は余裕の表情を浮かべながら光線を避けていき、

「……見切った」

見切ったと口にしながら短剣を鞘に収め、光線を避けながらサラへと肉迫して行く。
そしてサラに掴み掛かり、

「そら」

一本背負いの要領でサラを真下に向けて投げ飛ばす。
投げ飛ばされたサラは、

「きゃああああぁぁぁぁ!!!!」

悲鳴を上げながらどんどんと高度を下げ、見えなくなった。

「……………………」

直ぐに浮上して来るだろうと思った霊児は暫らく待つが、

「…………あれ?」

サラは浮上してこなかった。

「ここ……思っていた以上に深いのか?」

霊児は改めて真下へと視線を向けるが、目に映るのものは黒一色のみ。
とてもじゃないが、底の様子など見えない。
魔界の門番であるサラが魔界の門から離れても平気なのかと霊児は少し考えたが、

「……ま、大丈夫だろ」

直ぐに大丈夫だろうと思い、サラが背を向けていた方に目を向ける。
霊児が目を向けた先はここの周囲と同じ黒一色な光景は広がっていた。

「あれが魔界への入り口か……」

霊児はそう呟きながら魔界に着くまで結構時間が掛かりそうだなと思いながら移動を開始し様とすると、

「霊児ー!!」

後ろの方から自身の名を呼ぶ声が聞こえて来る。
聞こえて来た声に反応した霊児は後ろの方に顔を向けると、

「魔理沙と魅魔か……」

魔理沙と魅魔の二人が近付いて来る様子が目に映った。
魔理沙の傍らに霊児が上げた二つの陰陽玉が漂っているのを見るに、ここに遊びに来たと言う訳ではない様だ。
二人が直ぐ近くにやって来たタイミングで、

「こんな所まで何しに来たんだ?」

霊児は何しにやって来たのかと問うと、

「魔界に行く為さ」

魅魔が魔界に行く為だと答える。
魅魔の返答を聞いて目的地は一緒かと霊児が思っていると、

「魔界の方から低級以下の悪魔が大量に出て来ただろ。あれを止める為には魔界に入る必要があるからね」

魅魔は低級以下の悪魔の流出を止める為には魔界に突入する必要があると言う。
魅魔も自分と同じに結論に達したのかと思いながら、

「あれ、悪魔だったのか……」

霊児は少し驚いた表情を浮かべた。
驚いたと言っても、驚きの比重は悪魔を初めてと言う方に大きく傾いてはいるが。

「おや、悪魔を見るのは初めてかい?」
「ああ」

霊児が悪魔を見るのは初めである事を肯定すると、

「ま、幻想郷じゃ悪魔を見る事なんて殆ど無いからねぇ……」

魅魔は納得した表情になる。
その後、

「取り敢えず説明して置くと、悪魔が使う力は私達魔法使いと同じで魔力だ。同じ魔力と言っても魔法使いと悪魔じゃ魔力の質が違うけどね」

魅魔は霊児に悪魔も魔力を扱うが魔法使いが扱う魔力とは質が違うと言う。
魔法使いと悪魔では魔力の質が違うと言う事を聞いた霊児は先程戦ったサラは悪魔なのではと考える。
魔界の門番と言う役職を担っているのであればサラが悪魔である可能性は十分に有り得るだろう。
なので、霊児はまだ微かに残っているサラが放った弾幕とレーザーの残り香とも言えるもの探っていくと魔力が感じられた。
やはりと言うべきか、サラは悪魔であった様だ。
そのまま感じられた魔力を探っていくと、

「……確かに」

魔理沙や魅魔と言った魔法使いから感じる魔力とは質が違うと言う事が解った。
これが悪魔の魔力かと思いながら悪魔の魔力の質を霊児が記憶している最中に、

「話を戻すが、私等が魔界に行こうと理由は事が大事になる前に片付けて仕舞おうって言う理由からだね。それと……」

魅魔は改めて魔界に行く理由を口にして魔理沙の頭に手を乗せ、

「魔界に行くのはこの子にとっても良い経験になると思ってね」

魔界に行くのは魔理沙に取って良い経験になると言って頭を撫でていく。
頭を撫でられている魔理沙が嬉しそうな表情を浮かべていると、

「それはそうと、ここには門番が居たと思うんだけど……何所に行ったんだい?」

魅魔は霊児に門番であるサラが何所に行ったのかを尋ねると、霊児は無言で指を真下に向ける。
それだけで魅魔は何があったのかを大体察し、

「あー……ここはかなり深いからねぇ……」

ここはかなり深いと言う。
サラが全然浮上する気配が無いからやっぱりかと霊児が思っていると、

「ね、ね!! 早く魔界に行こうよ!!」

魔理沙は目をキラキラさせながら霊児の手を引っ張って早く魔界に行く様に促す。
どうやら、魔理沙は魔界と言う地にかなり興味津々な様だ。
これ以上ここで時間を喰う必要性は無いと判断した霊児は視線を魔界の入り口に向け、魔界に突入し様としたタイミングで、

「あら、お揃いの様ね」

また何者かが現れた。
今度は誰だと思いながら声が聞こえて来た方に顔を向ける。
顔を向けた先には、

「幽香」

風見幽香の姿が霊児の目に映った。

「こんにちは」

やって来た幽香が挨拶の言葉を掛けて進行を止めると、

「おや、幽香も魔界に用があるのかい?」

魅魔は幽香も魔界に用があるのかと言う。

「ええ、そうよ。私は花を観賞する為にある場所に向かっていたの。そしてその場所に着いたら魔界から来たら低級以下の悪魔が花を食い荒らしていると言う
信じ難い光景が目に映ったわ」

幽香は魔界に用がある事を肯定し、笑顔で悪魔に花が食い荒らされた事を話す。
殺気と殺意を撒き散らしながら。
幽香が撒き散らしている殺気と殺意を感じたからか、魔理沙は思わず霊児の背後に隠れてしまう。
こんな殺気と殺意を撒き散らしている相手と一緒に魔界に行くのは精神衛生上悪いし魔理沙も怯えてしまうと判断したからか、

「幽香幽香、殺気と殺意が出てるよ」

魅魔が幽香に殺気と殺意が出ている事を指摘する。

「あら、それは失礼」

幽香は魅魔の指摘を受け入れ、殺気と殺意を出すのを止めた。
殺気と殺意が感じられなくなったからか、魔理沙が霊児の背中から顔を出すと、

「つまり、幽香が魔界へ行く理由はそれに対する報復……って感じだね」

魅魔は幽香が魔界に行く理由を花を食い荒らされた事に対する報復かと言う。

「ええ、そんな感じよ。悪魔を放った者には一言文句を言ってやらないといけないしね」

幽香は見る者全てを魅了するかの様な笑顔で魅魔が言った事を肯定し、悪魔を放った者に文句を言うのだと口にする。
はたして、文句を言うだけで済むのであろうか。
いや、確実に済まないであろう。
霊児、魔理沙、魅魔の三人の頭に幽香が魔界に入って大暴れと言う事態が過ぎっていると、

「序に、魔界の花も見てみたいのよね」

幽香は魔界の花を見てみたいのだと口にする。
この分なら、魔界に入った瞬間に幽香が大暴れと言う事態にはならなさそうだ。
霊児達三人がそう思った瞬間、

「「「「ッ!!」」」」

霊児達が来た場所から何かが物凄いスピードで突っ込んで来た。
敵襲かと思われたが、突っ込んで来たそれは霊児達の前で急ブレーキを掛けて止まり、

「どうもー!! 清く正しい、射命丸文でーす!!」

自分の名を名乗りだす。
猛スピードでやって来たのは文であった様だ。
文の姿を確認すると、霊児は何となく予想は付いていたが、

「お前も魔界からやって来た悪魔関連か?」

一応ここに来た理由を尋ねる。
すると、

「魔界からやって来た悪魔と言う事は……やはりあの生物は幻想郷の生物ではなかったのですね!!」

文は物凄く嬉しそうな表情を浮かべ、

「それで、皆さんはこれからどちらへ?」

霊児達はこれから何所に行くのかと問う。
そんな事、分かり切っているだろうにと言う表情をしながら、

「魔界」

霊児が魔界だと言うと、

「魔界ですか!?」

文はまたまた嬉しそう表情を浮かべる。
何がそんなに嬉しのかと霊児は疑問を覚えだが、

「魔界の事を記事した天狗はおそらく今まで誰も居ない。と言う事は私が史上初!! これで今度の新聞大会は貰いましたね!!」

文が口にした発言を聞いて直ぐに覚えた疑問は氷解した。
霊児の覚えた疑問が氷解するのと同時に、

「と、言う訳で私も御同行させて貰いますね」

文は霊児達に付いて行く旨を伝える。
霊児達とは魔界に行く目的や理由が思いっ切り違うが、

「……ま、いっか」

霊児は別に良いかと思う事にした。
少なくとも、文の実力ならばどう言う理由で付いて来ても足手纏いにはならないと判断したからだ。
色々と崩された調子を取り戻す様に霊児は息を一つ吐き、改めて魔界の門に目を向ける。
それに続く様に魔理沙、魅魔、幽香、文の四人も魔界の門に目を向けた後、霊児達は魔界へと乗り込んで行った。






















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