霊児達がアリスが指をさした場所を目指して進み始めてから暫らくすると、
「お、先程と大地の色が変わったな……」
青い大地が見えて来た。
最初の方で飛んで来た青い岩はこの大地のものだったのではと言う事を霊児が思っている間に、
「いやー、魔界では幻想郷では見られない物が沢山見れますねー。魔界に来て良かったですよ」
文は嬉しそうな表情を浮かべながらカメラのシャッターを切っていく。
さっきから何かある度に写真を撮っているが、文はどれだけフィルムを持って来たのかと言う事を霊児は考える。
霊児がそんな事を考えている間に、
「……ん?」
前方の方からエネルギー体が現れ、現れたエネルギー体は弾幕を放って来た。
放たれた弾幕を一同は避け、霊児、魔理沙、魅魔の三人は弾幕を放ってエネルギー体を各個撃破していく。
その中で、霊児はある事に気付く。
霊児は何に気付いたのかと言うのか。
それは、
「……ん、幽香はどうした?」
幽香が応戦していない事だ。
文は兎も角、幽香ならば迎撃には参加する筈である。
幽香が迎撃に参加していない事に霊児が疑問が覚えていると、
「ああ、幽香さんでした先程『あっちの方に幻想郷では見ない花を見付けたから見てくるわ』と言ってどっか行っちゃいましたよ」
文が霊児の疑問を氷解させる発言を行う。
「おい……」
文の発言を聞いた霊児は少し呆れた声を漏らす。
まぁ、魔界へ来た目的は全員全く同じと言う訳ではなかったので集団行動を期待すると言うのは少々無理があったのだが。
呆れた表情を浮かべている霊児に、
「どうする?」
魅魔が霊児にどうするかと尋ねる。
尋ねられた霊児は少し考え、
「んー……まぁ、幽香の実力ならどうこうなるって事はないだろ。それに幽香自身の目的の中に神綺って奴に文句を言うってのが入ってる。だから、
そのうち追い付いて来ると思うから放置で」
幽香を放置する事を決めた。
そう決めた理由として霊児が幽香の実力を信頼していると言うのもあるが、ここまでの道中で幽香が興味を示す程の力を持った者が現れなかった為、
幽香を放置しても余計な騒ぎにはならないと判断したからだ。
尤も、幽香の目の前で花を踏み潰すと言った様なマネをする者が現れたらどうなるかは想像するに容易い。
確実に死よりも恐ろしい目に遭う事になるであろう。
その時はご愁傷様である。
霊児が幽香をどうするかと言う事を魅魔に伝えたのと同時に、エネルギー体を一掃し終えた様だ。
だが、
「……っと、今度は妖精か」
直ぐに代わりと言わんばかりに大量の妖精が現れる。
一同は妖精と言うには本当に何所にでも居るんだと思いながら妖精に向けて弾幕を放つ。
無論、文以外。
霊児達が妖精達を順調に撃ち落としながら先へと進んで行くと、
「なんだ、あれ?」
青い色をした大地が終わり、代わりに深い青い色をしたものが見え始めた。
妖精の出現が止み、見えたものが気になった霊児達は弾幕を放つのを止めて一旦止まる。
そして、見えているものを眺めていく。
眺めた事で深い青色をしているものが波を打っていると分かったからか、
「若しかして……あれが海か……?」
霊児は思わずそう呟いてしまう。
それを聞いた文は、
「確かに!! あれは間違いなく海ですね!!」
嬉しそうな表情を浮かべながら見えているものが海であると言い、物凄い勢いでカメラのシャッターを切っていく。
まぁ、それも無理もない。
幻想郷には海がないのだから。
だからか、
「へぇー、あれが海……」
「中々絶景だね」
魔理沙と魅魔の視線も海に釘付けになっていた。
暫らく間、全員で海を鑑賞していると、
「……っとお!!」
突如、霊児達に弾幕が襲い掛かって来た。
襲い掛かって来た弾幕を霊児は体を傾け、文は大きく移動、魅魔は魔理沙を引っ張る様に移動と言った様にそれぞれの方法で弾幕を回避していく。
弾幕を回避し切った後に弾幕が放たれて来た方に視線を移すと、先程と同じエネルギー体の姿が目に映った。
あれが弾幕を放って来たのだろう。
弾幕を放って来たものの正体が分かったからか、
「無粋ですね……」
文は露骨に不機嫌な表情を浮かべる。
幻想郷では撮れない海の写真を撮っていたのを邪魔されたので不機嫌になるのはある意味当然であろう。
不機嫌になっている文と同じ様な表情を魔理沙と魅魔も浮かべていた。
そして、霊児が迎撃する前に文、魔理沙、魅魔の三人がそれぞれ弾幕を放ってエネルギー体を破壊していく。
文も攻撃参加していた事から、余程腹が立っていたんだなと霊児が推察していると、
「ん? 誰だ?」
前方の方に何者かが現れた。
現れた者は黒い髪に帽子を被った少女だ。
魔界の住人かと思った霊児は話を聞いてみ様と思って話し掛け様とすると、
「っと!!」
現れた少女は行き成り弾幕を放って来た。
放たれた弾幕を霊児は高度を上げ、魔理沙、魅魔、文の三人は散開する事で避けていく。
弾幕を避けながら反撃する為に少女の方に顔を向けると、
「分身?」
霊児は少女が分身をする様な動きをしている事に気付く。
一旦動きを止めて少女の動きを観察していると、霊児の方に放たれる弾幕が急増した。
どうやら、この少女は一番近くに居る霊児を先に倒す積りの様だ。
迫って来る弾幕を避けながら、
「うーむ……」
霊児は少女の放つ弾幕を観察していく。
少女が放っている弾幕は中々に密度が高い。
迎え撃つ様に弾幕を放っても少女が放つ弾幕と相殺し合い、少女の体に弾幕は届かないであろう。
弾幕ではなく接近戦を仕掛けたりしても先程見せた分身をする様な動きで容易く避けられてしまうかもしれない。
かと言って、少女が放つ弾幕を遥かに上回る弾幕を放ったり弾幕を纏めて蹴散らす弾を放ったりしても同じ結果になりそうだ。
どうするべきか少し考えた結果、
「一寸……掻き乱してやるか」
霊児はそう呟き、体中から霊力を漏らす。
体中から濃い青白い光が漏れている事を確認すると、霊児は移動を開始する。
それを見た少女は、
「ッ!?」
驚きの表情を浮かべた。
何故ならば、少女の目には霊児の後を追従している霊児の残像が幾つも映っていたからだ。
霊児の動きから自分に近付いて来ている事が分かった少女は弾幕を放つが、霊児に弾幕が当たる気配は全く見られない。
少女の目にはどれが本物の霊児か分からなくなって来ているからだ。
それでも下手な鉄砲数撃ちゃ当たると言う精神で少女は弾幕を放つが、当たらない。
一向に弾幕が当たらないからか、少女の放つ弾幕の狙いが次第に荒くなっていく。
弾幕の狙いが荒くなった事に気付いた霊児は、
「今だ……」
少女に右手を向け、五本の指から霊力で出来た弾を一発ずつ放つ。
放たれた弾は少女の放った弾幕の中を掻い潜り、少女に命中して爆発と爆煙を発生させた。
発生した爆煙が晴れると、少女が姿を現す。
多少ボロボロになってはいるが、まだまだ健在の様だ。
再び弾幕を放って来るかと霊児が思った時、少女は逃走した。
「……あれ?」
てっきりまだ続けるものだと考えていた霊児は拍子抜けした気分になる。
まぁ、居なくなったのなら居なくなったで良いかと言う表情で霊児が体中から霊力を漏らすのを止めると、
「いやー、中々良い写真が撮れましたよ」
そう言いながら文が近づいて来た。
そして、
「いやはや、見事なものだね」
「ねぇねぇ、今のどうやったの!?」
魅魔と魔理沙も霊児の方に近付いて来る。
魔理沙が先程見せた残像の事を聞いて来たからか、
「ああ、今のは軽く霊力を体中から漏らして残像を見え易く……」
霊児がやり方を簡単に説明していると、
「うお!?」
霊児達の間を何かが通り抜けた。
通り抜けたものが燃えている様にも見えたからか、
「何だ、人魂か?」
霊児は人魂ではと言う推察を立てる。
「いや、只の火の玉と言う線も考えられるね」
魅魔は反論するかの様に火の玉では無いかと言う。
確かにそれもあるなと霊児が思っていると、霊児達の進行方向上に幾つもの人魂だか火の玉だがが見え始めた。
被弾してもあれなので、霊児達は弾幕を放って迎撃しながら進む事にする。
暫らくすると人魂だか火の玉だかよく分からないものは出なくなったが、今度は代わりと言わんばかりにエネルギー体がまた現れた。
出て来る相手が変わったと言ってもやる事は変わらない。
弾幕で撃墜する。
これだけだ。
そんな風に進んで行くと再び青い大地が見え始めた。
「お、また見え来たな」
「別の大地に着いたって言う感じですね」
霊児と文がその様な会話を繰り広げていると、
「おや、エネルギー体に代わってまた妖精が出て来たみたいだよ」
魅魔が妖精が現れた事を口にする。
何か一周したなと言う感じを受けながら霊児達は今までと同じ容量で弾幕で妖精達を撃墜しながら進んで行くと、
「ん……妖精が出なくなったな」
妖精が現れなくなった。
それ処か、エネルギー体や人魂だか火の玉だかよく分からないものも出て来ない様である。
これで暫らくはのんびり行けそうだなと思いながら霊児達は弾幕を放つのを止めて先へ進んで行くと、
「待ってたわ、異世界から来たお客さん」
「………………………………………………」
二人の少女が現れた。
一人は金色の髪に黒っぽい服を着た少女。
もう一人は薄い青色の髪をし、白い服に白い翼を生やした少女。
金色の髪をした少女は何処となく魔理沙に似てるなと言う事を霊児は思いながら、
「誰だ、お前等?」
誰なのかと問う。
すると、
「私はユキ。こっちが……」
「……マイ」
二人の少女は自分の名を名乗ってくれた。
金色の髪をした少女がユキ、薄い青色の髪をした少女がマイと言うそうだ。
「で、俺達に何か用か?」
霊児が何の用かと尋ねると、
「私達が貴方達の相手をして上げるわ」
ユキが霊児達の相手を自分達がすると答える。
行き成りの宣戦布告に、
「おいおい、行き成りかよ」
霊児が何処か呆れた表情を浮かべていると、
「若しかして、この先に進まれては困るのでは?」
文は先に進まれては困るのではと言う。
確かにその可能性もあるなと霊児が考えていると、
「と、兎に角!! ここは通さないわよ!!」
ユキが少し慌て気味にここは通さないと言い放つ。
ユキの慌て具合から、霊児は文の推察も強ち間違ってはいなさそうだと思いつつ、
「お前達が俺達を通したくないのは分かった。だが、こっちとしても引けない理由があるんでな。悪いが、力尽くで通させて貰うぜ」
自分達に引く気は無い事をユキとマイに伝える。
すると、
「私達二人に勝てると思ってるの?」
ユキは自分達に勝てると思っているのかと言いながらかなり自信有り気な表情を浮かべた。
どうやら、自分達の実力に相当自信がある様だ。
「勝てるさ」
霊児が不敵な笑みを浮かべながら勝てると返すと、
「相手は二人だし、今回も霊児一人に任せるのはどうかと思うね……」
相手が二人と言う事で魅魔は霊児一人に任せるのはどうかと言う事を口にし、何かを考える素振りを見せる。
「てか、また俺に押し付ける気だったのか」
魅魔の発言を聞いた霊児はそう言いながら魅魔の方に顔を動かす。
「何、立ち塞がる魔界の者達を博麗の名を持つあんたが中心になって全て倒したって方が良いアピールになるだろ。少なくとも、幻想郷には物凄く強い奴が
居るって事を魔界に知らしめられる。そうなれば、今回みたいに魔界から低級以下の悪魔がやって来て暴れまわるって事は起きない筈さ。下手に手を出せば
自分達に大きな被害が出る事になるからね」
「確かに、俺が中心になって動いた方が色々と都合は良いだろうが……」
霊児と魅魔がそんな会話を交わしていると、
「それでは、霊児さんと一緒に魅魔さんも戦うので?」
文が期待を籠めた目で魅魔に視線を移した。
その目から、魅魔が戦っている様子を写真に収めてやるぞと言う強い意思が感じられる。
しかし、そんな文の期待とは裏腹に魅魔は魔理沙の方に顔を向け、
「いや、私じゃない魔理沙さ」
魔理沙に参戦する様に言う。
「え!? わ、私ですか!? 魅魔様!?」
魅魔に参戦する様に言われた魔理沙は驚きの表情を浮かべながら魅魔の方に顔を向ける。
自分が指名されるとは思わなかった様だ。
驚いている魔理沙を無視するかの様に、
「大丈夫だから行ってきな、魔理沙」
魅魔は魔理沙の背中を押して前へと押し出す。
押し出された魔理沙が霊児の隣に並ぶと、
「準備は整った様ね。お子様コンビだからって手加減はしないわよ」
「……ここは、通さない」
そう言って、ユキとマイが弾幕を放って来た。
放たれた弾幕を霊児と魔理沙は左右に分かれる様に移動して回避し、霊児と魔理沙も応戦するかの様に弾幕を放っていく。
霊児が放った弾幕はユキの放った弾幕を相殺し、数を減らしながらもユキに向って行っている。
が、魔理沙の方は違った。
霊児とは違い、魔理沙の放った弾幕のマイの弾幕と相殺し合いながらも大半がマイに向って行っているのだ。
それもその筈。
魔理沙の弾幕は霊児と違い、魔理沙本人が放つ弾幕に加えて魔理沙の傍らに佇んでいる二つの陰陽玉からも弾幕を放っているからだ。
おまけに、陰陽玉から放たれる弾幕にはある程度のホーミング性能がある。
手数と言う点では、四人の中で魔理沙が一番優れているであろう。
故に、魔理沙はマイを相手に優位に立っていられる。
魔理沙がこのままマイを押し切ると思われたが、そうはならなかった。
何故ならば、
「…………成程、手数と言う点では貴女が上」
マイは冷静に魔理沙の弾幕を分析し、
「だけど、貴女の弾幕にはパワーが足りない」
魔理沙の弾幕にはパワーが足りないと断じ、マイは弾幕の他にもレーザーを放って来たからだ。
マイが放ったレーザーは、魔理沙が放った弾幕を破壊しながら突き進んで行く。
自身に向けて迫って来るレーザーを見た魔理沙は、
「わわっ!!」
弾幕を放つの止めて、回避行動に移行した。
「……パワーが足りないが故にこうも簡単に打ち消せる。パワーがある弾幕なら私のレーザーを押し返したり爆発の衝撃等で掻き消せる筈」
そう言いながらマイは放つ弾幕とレーザーの量を増やしていく。
大量の弾幕及びレーザーの中を魔理沙は何とか被弾せずに掻い潜っていくが、次第に追い詰められていってしまう。
霊児の方にまで弾幕とレーザーが飛んで来たからか、霊児はユキと相対する事を止めて左腰に装備してる短剣を抜きながら魔理沙の方に向かい、
「そら!!」
魔理沙へと向かっている弾幕とレーザーを全て斬り払っていく。
斬り払われていく弾幕とレーザーを見て、これ以上は無駄弾になると判断したマイは攻撃を止める。
攻撃が止むと、
「れ、霊児ー!!」
霊児に助けられた事で魔理沙は嬉しそうな表情を浮かべた。
しかし、
「男の子の方は相当強いみたいだけど、女の子の方は大した事はなさそうね」
「……そうみたいね」
マイの隣にやって来たユキとマイの二人の顔を聞き、魔理沙は悔しそうな表情を浮かべてしまう。
霊児の足手纏いにしかなっていない現状が相当悔しい様だ。
ユキとマイの二人の会話から二人が魔理沙の事を侮っている事を感じた霊児は、
「……そうだ」
ある作戦を思い付く。
そして、霊児は魔理沙の肩に手を置き、
「なぁ、魔理沙。作戦があるんだが……」
魔理沙に思い付いた作戦を耳打ちをする。
霊児の思い付いた作戦を聞いた魔理沙は、
「え? 大丈夫なの?」
霊児を心配する様な表情を浮かべた。
どうやら、霊児が思い付いた作戦と言うのは魔理沙を心配させるものの様だ。
心配そうな表情を浮かべている魔理沙に、
「大丈夫だ。俺を信じろ」
霊児が自分を信じる様に言うと、
「作戦会議は終った様ね」
「……なら、待つ必要はもう無い」
ユキとマイがそう言って再び弾幕を放って来た。
態々自分達の作戦会議が終わるまで待ってくれるとは律儀だなと霊児は思いながら、
「作戦通りにな」
魔理沙に作戦通りになと言う。
「う、うん」
魔理沙が了承の返事を返すと、そのタイミングでユキとマイが放った弾幕がかなり近づいて来ている事が分かった。
迫って来た弾幕を、霊児と魔理沙はその場で細かく動く事で回避していく。
自分達が放つ弾幕が容易く回避されていく様子を見て、
「……ッ!! 当たりそうで当たらないわね!!」
「……多分、細かく動いているせい。だから当たりそうで当たらないと言う様に見える」
ユキとマイはそんな会話を交わし、
「だったら……」
「……弾幕の密度を上げれば良い。そうすればあんな風に細かい動きは出来ない筈」
弾幕の密度を上げれば良いと言う結論を出し、二人は放つ弾幕の量を増やす。
増えた弾幕を見た霊児は予想通りと言う笑みを浮かべる。
ユキとマイが放つ弾幕の量を増やす事は霊児に取って予定通りであった様だ。
放たれる弾幕が増えた事で弾幕を完全に避けられなくなり、霊児と魔理沙は弾幕を掠らせ始める。
霊児は態と掠らせているのだが、魔理沙は表情から察するに必死に避けているのに掠ってしまっている様だ。
このままでは魔理沙が被弾してしまうと思った霊児は、
「どうしたどうした、全然当たらないぞ、何所を狙ってるんだ、下手糞」
挑発を行う。
すると、ユキとマイの弾幕は霊児に集中し始めた。
霊児に弾幕が集中し始めたのを見るに、二人とも旨い具合に挑発に乗ってくれた様だ。
自身に向けて迫って来る大量の弾幕を避けていきながら、霊児は少し驚いた表情を浮かべる。
ユキは兎も角、マイまでも挑発に乗って来るとは思わなかったからだ。
大人しそうな顔して案外熱く成り易い性格なのかなと言う事を考えていたら、
「……お」
霊児は大量の弾幕でユキとマイの姿が殆ど見えなくなっている事に気付く。
霊児からユキとマイの姿が殆ど見えないと言う事は、ユキとマイからも霊児の姿は殆ど見えないと言う事。
「……今だ」
霊児はそう呟いて短剣を投擲する。
投擲された短剣は弾幕を中を掻い潜る様に突き進み、ユキとマイの間を通り抜けた。
その瞬間、霊児は二重結界式移動術を使って投擲した短剣に跳び、
「捕まえた」
左手で短剣を掴み、右手の指をユキとマイの襟首に引っ掛けながら二人に捕まえたと声を掛ける。
「「ッ!?」」
拘束され、背後から声を掛けられたユキとマイは思わず弾幕を放つのを止めて顔を後ろに向け、
「「ど、どうやって……」」
どうやって背後に回ったのかと言う様な事を問う。
だが、
「秘密。それより良いのか? 魔理沙の方を見なくて」
霊児は問われた事に対する答えを言わずに短剣を鞘に収め、魔理沙の方を見なくても良いのかと口にする。
霊児にそう言われたユキとマイが魔理沙の方に視線を移すと、両手を突き出しながらミニ八卦炉を持っている魔理沙の姿が目に映った。
しかも、両手にかなりの魔力を集中させながら。
魔理沙から感じられる魔力を感じ取ったユキとマイは冷や汗を流していると、
「お前等が途中で俺の挑発に乗って俺に弾幕を集中させてくれたから、魔理沙は魔力を急速に集中させる余裕があったのさ。お陰で予定よりも早くに
ぶっ放せそうだぜ。強力な一撃を……さ」
霊児は魔理沙が強力な一撃を放つ準備が整っている事を伝える。
「ちょ、一寸!! それじゃあんたも巻き込まれ……」
霊児の発言を聞き、それでは霊児も巻き込まれると言った様な事をユキが言おうとした時、
「マスタースパーク!!!!」
魔理沙から極太レーザーが放たれた。
魔理沙が放った極太レーザーが勢い良く迫って来るのを見ながら、
「お前等の敗因は、俺だけを脅威に見て魔理沙を甘く見過ぎた事だ」
霊児はユキとマイの敗因を自分だけを脅威に見て魔理沙を甘く見過ぎた事だと言う。
そして、極太レーザーが当たる直前、
「じゃあな」
霊児は消え、
「こ、こんなお子様コンビに……」
「ユキと言う足手纏いが居なければ……」
ユキとマイは何かを言い切る前に極太レーザーに呑み込まれてしまった。
二人が呑み込まれてから少しすると極太レーザーは消え、ユキとマイは地面に向けて墜落して行く。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
マスタースパークを放ち終え、息を切らしている魔理沙に、
「お疲れさん」
何時の間にか魔理沙の隣に現れていた霊児が労いの言葉を掛ける。
これでユキとマイのコンビとの戦いは、霊児と魔理沙のコンビの勝利で幕を閉じた。
「いやー、お見事でしたね」
戦いが終った後、文がそう言いながら近付いて来た。
満面の笑顔を浮かべている辺り、十分に写真を撮れた様だ。
本当にこいつはブレないなと霊児が思っていると、
「魔理沙のマスタースパークが当たる直前に消えたのは、二重結界式移動術を使ったからだろう?」
文と一緒に近付いて来た魅魔は、確認を取る様にマスタースパークに当たる直前に消えたのは二重結界式移動術を使ったからだろうと問う。
「ああ、そうだ」
その事を霊児が肯定すると、
「一体何時、あれの術式を魔理沙に付けたんだい?」
魅魔は何時、二重結界式移動術の術式を魔理沙に付けたのかを尋ねて来た。
「作戦を伝える時に魔理沙の肩に手を置いた時にな」
霊児は魅魔の疑問に対する答えを言いながら、まだ魔理沙の肩に残っていた二重結界式移動術の術式を消すと、
「ま、それは兎に角良く頑張ったね。魔理沙」
魅魔は称賛の言葉を掛けながら魔理沙の頭に手を乗せ、撫でる。
「えへへへへ……」
撫でられている魔理沙が嬉しそうな表情を浮かべていると、
「さて、先に進もうとし様ぜ」
霊児は先に進む様に言う。
その言葉で霊児以外の面々は進行方向の方へと顔を向ける。
そして、霊児を先頭にして一同は先へと進んで行った。
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