右手の人差し指の先から霊力で出来た超巨大な弾を発射した霊児は、

「ぐ……があ!!」

弾を放った反動に耐え切れずに後ろへと吹っ飛んで行ってしまう。
地面を削り、転がりながら。
まぁ、それも無理は無い。
限界を遥かに超える量の霊力を集中させ、霊力で出来た弾を放ったのだから。
吹き飛び、転がっている霊児はブレーキを掛ける様にして左手を地面に付けて転がりを止めるのと同時に減速していく。
そして完全に止まると、霊児はうつ伏せの様な体勢になっていた。
弾を放った反動と吹き飛び、転がった衝撃で霊児は意識を失ってしまったのではと思われたが、

「う……うう……」

そんな事は無かった。
意識を失っていなかった霊児は顔を上げ、立ち上がろうとした瞬間、

「痛ッ!?」

想像を絶する様な激痛を感じ、立ち上がるのを止めて顔を歪めてしまう。

「があ……あ……あ……」

余りの激痛で意識を失ってしまいそうになるのを必死に耐え、霊児は痛みを感じている部位に目を向ける。
霊児が目を向けた先に在るのは自身の右腕。
痛みを発している部位が右腕である事を理解するのと同時に右腕全体の骨と言う骨が折れている事を理解した。
何故自身の右腕の状態を理解出来たのかと言うと、指、手首、肘、その他諸々の部位が滅茶苦茶な方向に曲がっているからだ。
曲がらない方向に曲がっている事は元より、曲がらない部位なのに曲がっていると言う部分も多々ある。
幸い、骨が皮膚などを破って突き出て来ていると言う事は無い様ではあるが。
自身の限界を遥かに超えた一撃を放った代償が右腕全体が骨と言う骨が折れただけで済んだのは運が良かったと思った時、

「……ん?」

霊児はある事に気付く。
気付いた事と言うのが自身の右手に着けているグローブだ。
莫大過ぎる量の霊力を集中させた時の余波で右腕部分の羽織りやシャツが吹き飛び、限界を遥かに超えた一撃を放った反動で右腕全体の骨と言う骨が折れた。
だと言うのに、このグローブには少しの傷も付いていないのだ。
このグローブを貰った時、夢美は収縮自在で耐久性抜群の代物だから文字通り一生使う事が出来ると言う様な事を口にしていたが、

「……あの言葉に偽りは無かったって事か」

夢美の発言に偽りは何一つ無かった様である。
改めて良い物を貰ったと霊児が思っていると、

「ッ!!」

霊児の耳にエネルギーとエネルギーが激しく激突し合ってる轟音が耳に入った。
その轟音を聞いて霊児は現状を思い出し、慌てて神綺が居る方に顔を向けると、

「あれは……」

霊児が放った霊力で出来た超巨大な弾と神綺が放っているビームが激しく鬩ぎ合い、辺りにエネルギーを撒き散らしている光景が目に映る。
もし、霊児が放った弾が神綺の放っているビームに負けてしまったらその時点で霊児の敗北が決定してしまう。
何故ならば、霊児は霊力で出来た超巨大な弾に全て霊力の籠めたからだ。
だから、霊力で出来た弾が破られてしまえば霊児にはもう打つ手が何も無い。
なので、霊児は押し勝ってくれと言う願いを籠めながら勝負の行方を見守っていく。
霊児が勝負の行方を見守り始めてから、どれだけの時間が経ったであろうか。
一秒か、十秒か、一分か、十分か。
霊児に取って短くも長く感じられる様な時間が過ぎると、

「ッ!!」

状況が動いた。
霊児の放った霊力で出来た弾が神綺が放っているビームを少しずつ押し上げていき始めたのだ。
本当に少しずつ、少しずつではあるが。
ある程度押していったところで神綺は押され始めている事に気付き、慌ててビームの出力を上げ様としたがもう遅かった。
神綺がビームの出力を上げ様とした時、スイッチが入ったかの様に霊児が放った弾が神綺の放ったビームを一気に押し上げたからだ。
そして、霊児の放った弾はビームを斬り裂くかの様にして神綺に迫り、

「ッ!?」

神綺に当たって神綺を遥か上空へと押し上げて行く。
それから少しすると、上空で大爆発が発生した。
どうやら、霊児の放った弾が大爆発を起した様だ。
これで終わったかどうかを確認する為に霊児は爆発が起こった場所を少しの間見続けるが、

「……来ないな」

攻撃が来る事が無ければ神綺が姿を現す事も無かった。
この事から完全に決着が着いたと判断した霊児は、

「終ったー……」

気が抜けた表情を浮かべながら体を回転させて仰向けの体勢を取り、

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

仰向けの体勢のまま息を整えていると、

「お疲れ様でした」

文がお疲れ様と言いながら霊児に近付き、しゃがんで霊児の顔を覗き込む。
文の存在に気付いた霊児は声が聞こえて来た方に顔を向け、

「おー……」

適当に返事を返す。
返された返事に元気が感じられなかったからか、

「大丈夫ですか? 声から元気を感じられませんが?」

文が少し心配気な表情を浮かべながら大丈夫かと尋ねる。

「ああ……体力と霊力が殆ど零で体中痛くて右腕が使い物にならない事以外はな」

尋ねられた霊児は自身の容態を口にし、左手を上げてプラプラさせる事で取り敢えず大丈夫であると言うアピールを行う。
その後、霊児は左手を下ろし、

「そっちの方はどうだ?」

文の方がどうだと問い掛ける。

「そうですね……相当な威力を持っている流れ弾が異様なまでに飛んで来ましたが、何とか直撃はせず済みましたよ。まぁ、掠りまくりましたが」

問われた事に文は流れ弾が酷かったが直撃はせずに掠るだけで済んだと返す。
確かに、掠ったと言うだけあって文の服はそれなりにボロボロの状態になっていた。
だが、流れ弾と言っても大量に飛んで来た攻撃の直撃を一度も受けなかったのは流石と言ったところであろう。

「それはそうと凄かったですねー、あのぶつかり合い」

突如、文は話を変える様に霊児の放った弾と神綺の放ったビームのぶつかり合いの事を言い、

「二つとも物凄い量のエネルギーでしたが、よく勝てましたね」

よく勝てたなと口にする。
それを聞き、

「正直なところ、勝てるかどうかは微妙だったが……神綺の奴が強いのと同時に頭が良くて計算高いと言うのがあったから勝てた様なものだけどな」

霊児は神綺が強いのと同時に頭が良く計算高かったから勝てたものだと返す。

「どう言う事ですか?」

文がよく分からないと言った表情を浮かべながら首を傾げると、

「最後の一撃を放つ時、神綺は俺の状態と感じる霊力から俺がどの程度の一撃を放つのかを見抜いてたんだ。だから、俺を倒せて自分に余力が残る様な
一撃を放ったんだ。まぁ、余力を残そうとしていたのは俺との戦いが終わった後にお前と戦う事を考えていたからかもしれないが」

霊児は神綺が強く、頭が良くて計算高い存在なのに勝てた理由を説明をする。

「……それだと霊児さんが負けませんか? 彼女、霊児さんの力を見抜いた上で攻撃を放ったんですよね?」

霊児の説明を聞いた文はそれでは負けてしまうのではと問う。
文の言う通り、神綺が霊児の力を見抜いた上で必ず勝てる攻撃を放ったのであれば霊児に勝ち目は無い。
そんな文の疑問に答える様に、

「ああ、普通に放った一撃ならな。だが、俺は霊力を限界以上に集中させて圧縮した弾を放つと言う方法を取った。だから、俺が放った弾は神綺の放った
ビームに押し負けずに押し勝つ事が出来たんだ」

霊児は霊力を限界以上に集中させて圧縮した一撃を放ったから押し負けずに押し勝てたのだと言う。

「成程……つまり、彼女が霊児さん限界を見誤ったから勝ちを拾えたと?」
「そうだな。まぁ、俺自身が想定していた威力を遥かに上回る一撃を放てたから神綺が俺の限界を見誤っても仕方が無いとは思うけどな」

霊児は自分が想定していた威力を遥かに上回る一撃を放てたのだから神綺が自分の限界を見誤っても仕方が無いと言い、

「それ以外の勝因としては俺が劣勢だったから、神綺がもう勝てると思って油断したのかもしれないな。正直、神綺がビームを放っている最中に更に力を
籠めたり神綺の奴も自分の余力なんて考えないで自分の全てを籠めた一撃を放ってたらやられていたのは確実に俺の方だっただろうな」

霊児は先程言った事以外の勝因と、神綺が途中でビームに更に力を籠めたり余力を残さない様な攻撃を放っていたら逆にやられていたと口にする。

「霊児さんにそこまで言わせるとは……流石は魔界の創造神と言ったところですか……と言うか、そんな相手に勝ちを拾える霊児さんも霊児さんですね……」

文が改めて神綺と霊児の凄さを認識していると、

「あ、そうだ。俺の短剣何所に飛んで行ったか知らないか?」

霊児は文に飛んで行った短剣が何所にあるか知っているかと尋ねて来た。
すると、

「あ、短剣でしたら先程私の方に飛んで来たので取って置きました」

文は思い出したかの様に霊児の短剣が自分の所に飛んで来た事を口にし、短剣を霊児に手渡す。
手渡された短剣を霊児は左手で受け取り、

「やっぱり、刀身が完全に砕けてるな……」

上半身を起こしながら短剣の刀身が完全に砕けてしまっている事を口にした。
短剣の刀身の砕け様を少しの間観察した後、

「ま、この短剣は近日中に香霖の所にでも行って直して貰うか。序にボロボロになった衣服と羽織りの修繕も」

霊児は近いうちに霖之助の所に行って短剣の修復と衣服と羽織の修繕をして貰うと言う予定を立てる。
霊児の立てた予定を聞いた文は、

「確か、霊児さんの短剣って緋々色金で出来ていましたよね? 後、香霖と言うのは香霖堂の店主の森近霖之助さんの事ですよね?」

確認を取る様に霊児の短剣が緋々色金で出来ている事と香霖と言うのが香霖堂の店主である森近霖之助の事なのかと問う。

「ああ、それで合ってる。香霖は自分のコレクション用に緋々色金を溜め込んでいるからな。俺の短剣の直す位の量は十分にあるだろ」

霊児は文に問われた事は全て合ってると言い、殆ど柄だけになっている短剣を鞘に収めながら霖之助は緋々色金を幾らかストックしている事を口にする。
それを聞き、緋々色金と言う希少価値が極めて高い金属を手放す事になるであろう霖之助に文は内心で同情の念を抱いていると、

「……ん?」
「……あや?」

霊児と文の近くに何かが落下し、大きな激突音が辺り一帯に響く。
何が落ちて来たのか気になった霊児と文は激突音が響いた地点に顔を向けると、

「神綺……みたいだな」
「ですね」

二人の目に随分とボロボロの姿になった神綺の姿が映った。
動かないところ見るに、気絶している様だ。

「あの一撃を受けてよく生きてますね、この人」

霊児が自分の全てを籠めて放った一撃を受けても生きている神綺に文が驚いていると、

「そりゃそうだろ。あれで死んでくれたのならここまで苦戦する事は無かったさ」

あれで死んでくれたのならここまで苦戦する事は無かったと言いながら霊児は疲れを体から出すかの様に息を一つ吐く。
すると、

「あら、若しかしてもう終ってしまったのかしら?」

何者かが霊児と文の近くに現れた。
声が聞こえて来た方に霊児が顔を向けると、

「何だ、幽香か」

幽香の姿が目に映る。

「何だとは失礼ね」

霊児の物言いに幽香は若干腹を立てた表情を浮かべながら二人に近付き、

「そこで気絶してるのが魔界の創造神の神綺かしら?」

気絶しているのが神綺なのかと問う。

「ああ、そうだ」

霊児が肯定の返事を返すと、幽香は霊児を少しの間観察し、

「貴方がそこまでボロボロになるって事は……相当強かったみたいね、神綺ってのは」

霊児がかなりボロボロになっている事から、神綺が相当な実力を有しているのだろうと推察する。

「ああ、相当強かった」

幽香の推察に霊児が正しいと言う言葉を返すと、

「でしょうね。貴方がそんなになる位だもの。これで弱かったら拍子抜けよ。これなら私が先行すれば良かったわ」

幽香は自分の推察が正しいと分かっていたと言う様な事を口にし、先行すれば良かったと言う。
どうやら、霊児をここまで追い詰めた神綺と戦えなっかた事を不満に思っている様だ。
そんな幽香の心中を何となくではあるが霊児は察し、何処か呆れた表情を浮かべた時、

「そう言えば、幽香さんは魔界の花を見に行ってたんですよね?」

文は幽香に確認を取る様な声色で自分達と別れた後に魔界の花を見に行ったのだろうと尋ねる。

「ええ、そうよ」

幽香が魔界の花を見に行った事を肯定した瞬間、

「でしたら、幽香さんが驚く程の何か珍しい花とか在りましたか?」

文はワクワクした表情で幽香が驚く程の花は在ったかと聞く。
それを聞き、霊児は文が私用と任務を同時に行っていた事を思い出し始めたタイミングで、

「そうね……珍しい花は多々在ったけど……特に驚いた花が一本在ったわね」

幽香は魔界で見て来た花の中で特に驚いた花が一本在ったと言う。

「ほほう!! その、驚いた一本の花とは!?」

文は少々興奮気味に驚いた花は何なのかと幽香に詰め寄ると、

「魔界のオジギソウは凶暴だったって事かしらね」

幽香は魔界のオジギソウが凶暴だったと言う。

「魔界のオゾキソウが?」
「ええ」
「凶暴?」
「ええ」

幽香に魔界のオジギソウは凶暴だと言われ、文は頭を捻らせる。
魔界のオジギソウとは一体どの様な姿をしているのだろうかと。
文が魔界のオジギソウの事に付いて考えている間に、

「それで、これからどうするの?」

幽香は霊児に今後の予定を尋ねる。
尋ねられた霊児は、

「帰ろうぜ。どうせ、先に帰った魔理沙と魅魔が宴会の準備をしてるだろうし」

間髪入れずに先に返った魔理沙と魅魔が宴会の準備をしているだろうから帰ろうと返す。

「そうですね……結構な大事に決着が着いた事ですし、宴会で英気を養うのも良いかもしれないですね。その他諸々の事は明日に回せば良いですし」

霊児が返した言葉を聞いた文、宴会をする事に賛成の意を示しながら乗り気な表情を浮かべる。
宴会をすると分かれば長居は無用と言わんばかりに文と幽香が空中に躍り出様とした時、

「一寸待て」

霊児が二人に待つ様に言う。

「どうかしましたか?」
「何よ?」

待つ様に言われた文と幽香が霊児の方に顔を向けたのと同時に、

「運んでくれ」

霊児は運んでくれと言い出した。

「え? 霊児さん普通に飛べますよね?」

普通に飛ぶ事が出来るのに運んでくれと言った霊児に文が疑問気な表情を浮かべていると、

「飛べる程の力も残って無い」

霊児は飛べる程の力も残っていないと言う。

「霊児がそれ程までに消耗する相手だ何て……やっぱり私が先行すれば良かったわ」

霊児の消耗度合いを聞き、幽香が残念そうな表情を浮かべながら改めて自分が先行すれば良かったと口にした刹那、

「まぁ、そう言う事でしたら私が運んでいきますよ」

文は自分が運ぶと言いながら霊児の左腕を掴んで飛び上がろうとした時、

「あ、神綺も回収しといてくれ。こいつにも宴会に参加して貰わないと今回の件がちゃんと終わったって言うのが伝わり難いと思うからな」

霊児は文に神綺も連れて行く様に言う。

「はいはい、了解しました」

文が了承の返事をしながら空いている手で神綺を掴む。
そして、文と幽香は空中に躍り出て博麗神社へと向って行く。
因みに、その道中で瓦礫の中で気絶していた夢子を発見したので序に回収した。





















霊児達が博麗神社に帰って来たタイミングで、

「お帰り、霊児!!」
「お、帰って来た様だね」

魔理沙と魅魔が出迎えてくれた。

「ああ、ただいま」
「ただいま戻りましたー」
「戻ったわ」

霊児、文、幽香の三人は出迎えの言葉にそう返しながら地に足を着ける。
そして霊児が地に足を着けたタイミングで文が霊児の左手を離すと、魔理沙は嬉しそうな表情を浮かべながら霊児の方に駆け寄って行く。
どうやら、霊児が戻って来て嬉しい様だ。
しかし、霊児の風貌を見て霊児大怪我を負っている事に気付いた魔理沙の表情は嬉しそうなものから心配気なものに変わり、

「れ、霊児凄い怪我!! 大丈夫、霊児!? 痛くない!?」

大丈夫なのかと声を掛けながら魔理沙は駆け寄るスピードを大きく上げる。
心配気な表情を浮かべている魔理沙を見て、

「ああ、大丈夫だ」

霊児が大丈夫だと返すと、

「大丈夫って言う様な怪我じゃないだろ」

魅魔が呆れた様な表情を浮かべながら霊児の方に近付いて来た。

「特にその右腕。一体何をしたらそんなになるんだい?」
「限界を遥かに超える一撃を放ったからだな」

霊児が魅魔の疑問に答える様に右腕がこうなった原因を話すと、

「やれやれ、無茶をするねぇ」

魅魔は納得したと言う表情になり、

「それは兎も角、早いとこその右腕を治療しないと使い物にならなくなりそうだね」

早く霊児の右腕を治療しないと使い物にならなくなりそうだと言い、霊児に掌を向ける。
すると、

「お……」

霊児は淡い光に包まれた。
淡い光に包まれた霊児を見て魔理沙、文、幽香の三人の視線が魅魔に向いていったので、

「簡潔に言うと、回復魔法を霊児に掛けているのさ」

魅魔は今、霊児にしている事の説明を行う。
その説明が耳に入ったからか、

「あー……確かに、痛みが和らいでいっているな」

霊児は痛みが和らいでいっている事を口にする。

「あ、良かったぁ……」

霊児の傷が治っていっている事が知れたからか、魔理沙は安心した表情になった。
魅魔が霊児に回復魔法を掛けてから少し経った時、

「あ、そうだ。幽香と文が気絶したのを連れてるけど、そのどっちかが神綺なのかい?」

魅魔は幽香と文が連れている二人の内、そのどちらかが神綺なのかと問う。
問われた事に、

「はい、私が連れている方が魔界の創造神である神綺で」
「私が連れている金髪の方は神綺のメイドの夢子って奴らしいわ」

文と幽香がそれぞれそう答えた。

「やっぱり勝って来たかい、流石だね。ま、宴会の準備が無駄にならなくて良かったよ」
「あ、やっぱり宴会の準備をしてたか」

魅魔の台詞を聞き、霊児がやっぱり宴会の準備をしていたかと言うと、

「皆で沢山の料理を作ってるんだよ」

魔理沙が皆で沢山の料理を作っていると口にする。

「……ん? 皆で?」

魔理沙の言葉に霊児が軽い引っ掛かりを覚えた瞬間、

「ああ、宴会の準備をしているのは私と魔理沙だけじゃないって事さ」

魅魔が自分達だけで宴会の準備をしているのでは無いと言い、

「私等の他にアリス、サラ、ルイズ、ユキ、マイの五人が宴会の準備を手伝ってくれてるのさ」

宴会の準備を手伝ってくれている者の名を上げた。

「あいつ等もこっちに来てたのか……」

魅魔が口にした者達の名を聞き、霊児が少し驚いた表情を浮かべていたので、

「アリスは私と魔理沙が博麗神社に戻って来た時にはもう居たよ。何だかんだ言っても私等の事が心配だった様だね。他の四人はこっちに戻って来る道中に
居たから連れて来た。宴会の準備をするのには人手は多い方が良いからね」

魅魔は五人がどう言った経緯で博麗神社に来る事になったかを説明をする。
アリスは兎も角サラ、ルイズ、ユキ、マイの四人も博麗神社に来ていた事は霊児に取って少々予想外の事であった。
が、人数が多い方が宴会も盛り上がるだろうし別に良いかと霊児が思った時、

「……っと、これ以上は不味いか」

魅魔は霊児に回復魔法を掛けるの止める。
回復魔法を止めた事で霊児を包んでいた淡い光が消え、霊児が自分の体の調子を確かめていると、

「……右腕がまだ治ってないぞ」

霊児は魅魔にまだ右腕が治っていないと言う。
何で回復魔法を止めたんだ言う目をしている霊児に、

「回復魔法と言っても何もノーリスクで傷を治すって訳じゃ無い。傷を治されている者……この場合あんたにそれ相応の負担を強いているのさ」

魅魔は回復魔法は傷を治されている者にそれ相応の負担を強いている事を教える。
そして、

「普段のあんたなら兎も角、今の疲弊し切った状態のあんたじゃこれ以上は絶対に耐え切れないだろうね」

今の状態の霊児ではこれ以上は絶対に耐え切れないだろうと断言した。

「要するに、薬も過ぎれば毒となるって事か?」
「そう言う事」

霊児が口にした薬も過ぎれば毒となると言う例えを魅魔は正しいと言い、

「取り敢えず、右腕は三角巾辺りで吊るして固定して置けば良いと思うよ」

右腕を三角巾辺りで吊るして固定すれば良いと口にする。
完全に治らなかったのは残念だが、回復魔法を掛けて貰う前の右腕の状態と比べたら遥かにマシになっているのでまぁ良いかと霊児が思い始めたタイミングで、

「あ、じゃあ私が霊児の右腕を三角巾で吊るして上げるね!!」

魔理沙が右腕を三角巾で吊るすのは自分がやると言い出した。
片手だけで怪我をしている腕を三角巾で吊るすのはかなり手間が掛かる事が容易く予想出来たからか、

「ああ、頼む」

霊児は素直に魔理沙の助力を受け入れ、霊児は魔理沙を連れて自分の部屋に向かおうとすると、

「序だから、着替えて来たらどうかしら」
「私も余り人の事は言えませんが、着替えて来た方が良いと思いますよ。私と比較にならない程に今の霊児さんの服はボロボロですからねぇ……」

幽香と文が霊児に序に着替えて来たらどうだと言う提案を行う。
幽香と文の言い分を聞き、

「それもそうだな」

最もだと思ったからか、霊児は着替える事を決める。

「あ、じゃあ着替えるのも手伝って上げ様か?」
「着替えるの位、片手でも出来るって」

魔理沙と霊児はそんな会話を繰り広げながら、霊児の部屋と向かって行った。






















そして、時間が流れて夜になると、

「ま、こうなるわな」

博麗神社のある一室は大騒ぎの宴会状態に入っていた。
飲む、食う、歌うの大騒ぎ状態である。
まぁ、宴会を行うと言う事でこう言った事態は容易く予想出来た事ではあるが。
そんな宴会場内を霊児は酒を片手に歩き回っていると、

「そう言えば、私の事を足手纏いと言っていた様な気がするけど?」
「…………気のせい」

ユキとマイの会話が霊児の耳に入る。
折角なのでこの二人と会話し様と思った霊児はユキとマイに近付き、

「よう」

そう声を声を掛けた。
二人が霊児が存在に気付くと、

「あ、霊児!! 聞いてよ!! マイったら私の事を足手纏いって言ったみたいなのよ!!」

ユキはマイが自分の事を足手纏いと言っていたのだと言う。
それを聞き、霊児がユキとマイの二人と戦った時の事を思い出しながら腰を落ち着かせると、

「このお肉、美味しいみたいよ」

マイが霊児の口に肉を突っ込んだ。
突っ込まれた肉を食べながら美味いと言う感想を抱いている時、マイと視線が合う。
その瞬間、霊児は理解した。
今の肉で自分の味方に付けとマイが目で言っている事に。
美味い肉を食わせて貰ったし別に良いかと霊児は考え、

「お前の気のせいじゃないのか?」

マイの味方に付く事にした。

「……そうかな?」

少し疑問気な表情を浮かべながら首を傾げたユキに、

「そうだって」
「……私がユキにそんな事を言う訳が無い」

霊児とマイは畳み掛ける様に気のせいだと言う。
二人から気のせいだと言われたからか、ユキはマイが自分の足手纏いと言った事は気のせいだと結論付けた後、

「それはそうと、よく神綺様に勝てたわね」

話を変える様によく神綺に勝てたなと口にする。
驚いた表情を浮かべながら。

「……それは私も思った」

マイも驚いた表情を浮かべながらユキと同じ様な事を言って来たからか、

「勝ったって言ってもかなり運の要素が絡んで何とか勝てたって感じだけどな」

霊児は本当に辛勝であったと言う。
が、

「それでも勝てたっんだから凄いわよ。相手は魔界の創造神だって言うのに」
「……どうであれ、魔界の創造神に勝ったって言うのが凄い」

ユキとマイから驚きの表情が消える事は無かった。
それだけ、神綺に勝ったと言うのは凄い事である様だ。
そんな感じで霊児はユキとマイと雑談を交わしていく。
雑談が一段落着くと、霊児は二人と別れて宴会場内を歩いていくと、

「お、霊児じゃないかい」

魅魔に声を掛けられた。
声が聞こえた方に顔を向けると、魅魔と幽香が酒を飲んでいる光景が目に映る。
何か用かと思いながら霊児は二人に近付き、

「二人で飲んでるのか?」

そう声を掛ける。

「まぁね。少し幽香の愚痴に付き合いながらね」

魅魔は二人で飲んでいる事を肯定し、幽香の愚痴に付き合っているのだと言う。

「愚痴って……お前何か不満でも在ったのか?」

魅魔の発言を聞いた霊児は幽香の方に不満があるのかと言いながら顔を向けると、

「在るわね。私だけ大して暴れられなかったと言うのが」

幽香は自分だけ大して暴れられなかったのが不満だと口にする。

「それを言ったら、私と文も大して暴れられなかったんだけどね」
「貴女は元々魔理沙の付き添いで来てただけだし、天狗に関しては魔界の事を記事にしに来ただけの様だし暴れられなくても大して不満は無いでしょ」

幽香は魅魔と文の目的は暴れる事じゃ無いから別に暴れられなくても不満は無いだろう言い、

「本当、貴方ばかり暴れられて……ずるいわねぇ……」

霊児に意味有り気な視線を向けた。

「ずるいって……俺はお前と違って戦闘狂じゃないんだけどな……」

霊児が腰を落ち着かせながら自分は幽香と違って戦闘狂では無いと言ったからか、

「失礼ね。人の事をバトルジャンキー呼ばわりして」

幽香は不満気な表情を浮かべる。
戦闘狂呼ばわりされたのが気に入らない様だ。
不満気の表情を浮かべている幽香を見た事で、

「まぁ、幽香の場合は戦闘狂と言うよりは偶に強い刺激が欲しくなるって感じの様だけどね」

魅魔が幽香をフォローする様な事を言う。

「あら、珍しいわね。貴女が態々フォローしてくれる様な事を言う何て」

自分の事をフォローする様な事を言った魅魔に幽香が少し驚いた表情を向けると、

「何、宴会の席で暴れられても困るからね」

魅魔は宴会の席で暴れられる訳にもいかないからと返す。

「暴れるにしても時と場合位は選ぶわよ。少なくとも、宴会の空気を壊そうって言う気は無いわ」

心外だと言わんばかりに宴会の空気を壊す気は無いと言う発言をした幽香に、

「てか、暴れ足りないって言うんなら道中の相手を俺に任せっ切りにしなければ良かっただろうに」

霊児は道中に出て来た者達の相手を自分に任せっ切りしなければ良かっただろうにと口にする。

「弱い奴と戦っても仕方が無いでしょう。魔界に行って私が出会った者達の中で気絶していた神綺と夢子ってのを除くとアリスが一番の実力者だったのよね。
でも、彼女の相手は貴方に取られちゃったし。今度、勝負でも仕掛けてみ様かしら?」
「アリスの奴、厄介なのに目を付けられたな」

幽香がアリスと戦ってみたいと言う様な事を口にしたからか、霊児が心の中でアリスに同情していると、

「ま、魔界に咲いている花を沢山見られた事だし……総合的に見たらトントンってとこかしらね」

幽香は総合的に見たらトントンだな言いながら不満気な気持ちを収め、酒を飲む。
幽香が落ち着いた事を確認した後、

「やれやれ、やっと落ち着いたかい。さて、折角霊児も来た事だし……ちょいと飲み比べでもしないかい?」

魅魔は飲み比べでもしないかと提案する。

「良いわね、それ」

飲み比べをし様と言う提案を受けた幽香が乗り気な表情を浮かべた後、魅魔と幽香の視線が霊児に向く。
勿論、飲み比べに参加しろと言う意思表示だ。
先程、ユキとマイと一緒に居た時は食べるのを中心としていて酒は余り飲まなかった。
なので、そろそろ酒を飲みたいと思ったからか、

「……そうだな、やるか」

霊児は飲み比べをする事を承諾する。
そして、霊児、魅魔、幽香の三人による飲み比べが始まった。





















魅魔と幽香の所に在った酒の量がそれ程多くなかったからか、飲み比べ自体は比較的直ぐに終わってしまった。
酒が無くなって少々手持ち無沙汰になってしまったが、魔界で幽香と魅魔の二人と別れた後の話を霊児がした事で場はそれなりの盛り上がりを見せる事となる。
そして、話のネタが尽き始めると霊児は魅魔と幽香と別れて再び宴会場内を歩いて回っていた。

「んー……余り酒が飲めなかったな……」

飲めた酒の量に少々不満があると言った事を呟いていると、

「んー……地上の食べ物も美味しい」
「こんな宴会に参加できるだなんて……門番も悪くないわね」

ルイズとサラの話し声が聞こえて来た。
折角なので話しでも聞こうと思った霊児は二人に近付き、

「よう」

声を掛ける。
声を掛けられた二人の方に顔を向け、

「あ、神綺様を倒したとんでも無い奴」

ルイズはそんな事を言ってのけた。

「とんでも無い奴って……俺は只の子供だぞ」

ルイズの物言いに霊児は自分は只の子供と返すが、

「神綺様を倒す様なのが只の子供な訳無いじゃない」
「それ以前に、只の子供が魔界に突入出来る訳無いわ」

ルイズとサラは霊児が只の子供と言うのを否定する発言を口にする。

「……まぁ、自分で言って少し無理があるとは思ったけどな」
「少し処じゃ無く、霊児さんを只の子供と称するのは無理でしょうに」

霊児の発言を聞き、少し処か霊児を只の子供と称する無理があると言いながら文が現れた。

「どうもー、清く正しい射命丸文でーす!!」

現れた文は自分の名を名乗りながら腰を落ち着かせ、

「それでですね、ルイズさんとサラさんに魔界の事をお聞かせして貰おうと思いましてね……」

ルイズとサラにインタビューを行い始める。

「相変わらずだな、お前も」

ある意味、予想通りの事をした文に霊児は少し呆れつつも腰を落ち着かせて皿の上に乗っている料理を食べていく。

「そりゃもう!! 魔界の住人の方々に話を聞かせて貰えれば、"文々。新聞"の内容がかなり充実しますし!!」

文が二人から魔界の話を聞けば"文々。新聞"の内容がかなり充実するのだと言うと、

「へー……貴女って新聞を作ってるんだ」
「地上の新聞か……一寸興味があるわね」

サラとルイズが文の作る新聞に興味に示す。

「お、でしたらこれを機に"文々。新聞"を購読しては如何ですか? そうなったら、"文々。新聞"もとうとう魔界に進出ですか……」

文の台詞を聞いた霊児はとうとうと言える程、"文々。新聞"は人気があったけと思ったタイミングで、

「追加の料理、持って来たわよ」

夢子が追加の料理を持って来た。

「何だ、お前が配膳とかそう言うのをやってるのか」

少し驚いた表情を浮かべながら霊児が夢子の方に顔を向けた時、

「ええ、誰もこう言うのをやりそうになかったから私がやってるのよ」

夢子は他に誰もやりそうになかったから自分がやってるのだと口にする。

「夢子さんにそんな事をやらせている何て……私もやった方が良いのかな?」

夢子だけが働いているのを見て、ルイズが自分も何かやった方が良いかと呟くと、

「別に構わないわ。元々、こう言うのには私が一番慣れているだろうしね」

夢子はこう言うのは自分が一番慣れているので別に構わないと返す。
やはり、メイドをやっているからかこう言った得意な様だ。
持って来た料理を床に置いた後、夢子は霊児に顔を向け、

「しかし、驚いたわ。まさか、敗北した私達まで宴会に参加させられる事になるとはね」

自分達魔界の者達を宴会に参加させた事に驚いたと言う。

「別に可笑しな事じゃないだろ。お前等も参加させた方が今回の件……まぁ、俺にとっては異変か。異変が終わったって知らしめられるだろ」
「だったら後日、口頭なり書類で伝えも良かったんじゃない?」

霊児が魔界の住人達を宴会に参加させた理由を聞いた夢子はそれなら口頭や書類だけでも良かったのではと問うと、

「それは無理ですよ」

文がその方法は無理だと口にする。
そして続ける様に、

「幻想郷に住む者は馬鹿騒ぎが好きな者達が多いですからね。少なくとも、今回魔界に行ったメンバーの中で異変解決の終了の知らせを口頭や書類何て
言う味気無い方法で行おうとする者は居ませんよ。何か、この前の一件で異変の様な騒ぎの後は宴会で締めるって言うのがお約束になったと言うの感じ
になった様な気がしますしね」

無理だと言う理由を話す。
因みに、文の言うこの前の一件と言うのは夢美とちゆりが幻想郷にやって来た時の事だ。

「事の締めが宴会だ何て……随分と斬新な締め方ね」

文の発言を聞いた夢子は何処か呆れた表情を浮かべたものの、

「でもま、神綺様もこの宴会を楽しまれておられる御様子だから……事の締めが宴会と言うのも良いのかもしれないわね」

神綺が宴会を楽しんでいる様だからか、直ぐに表情が柔らかいものに変わった。
その後、

「そうですよー、こうやって騒いだりするのは楽しいじゃないですか」
「それに、地上のご飯も美味しいですし」

サラとルイズの宴会が楽しいと言ったのを合図にしたかの様に、一同は雑談を交わしていく。
酒を飲み、料理を食べながら。
そして雑談が一段落着くと、霊児はルイズ、サラ、文、夢子の四人と別れてまた宴会場内を再び回り始める。
歩きながら酒も食べ物もまだまだ入るなと言う事を考えている霊児の耳に、

「あ、霊児ー」

自分の名前を呼ぶ声が入って来た。
声が聞こえて来た方に顔を向けると、神綺とアリスを姿が目に映る。
笑顔で手を振っているのが神綺である事から、霊児は神綺が声を掛けて来たんだなと思いながら二人に近付き、

「よう」

そう声を書けながら霊児が腰を落ち着かせた瞬間、

「ねぇねぇ、聞いてよ霊児。アリスちゃったら酷いのよ。魔界に来たって言うのに私に会わずに帰っちゃったのよ」

神綺が愚痴を言い始めた。

「ああ、そう言えばアリスは途中で帰ったんだったな」

神綺の愚痴を聞き、霊児が魔界でアリスと戦った時の事を思い出していると、

「まぁ、霊児と戦って今回の件は霊児達に任せると決めたからね。それなのに何時までも魔界に居るって言うのも変な話でしょ。それに、私が霊児達と
会った場所は神綺様の居られる場所よりもずっと離れた場所でしたからね。魔界で私が神綺様に御会い出来なかったのも無理は無いですね」

アリスは霊児達に今回の件を任せると決めた事を話し、神綺に会わなかった理由を説明をする。
アリスの説明を聞いた神綺は何か思い付いた表情をしながら、

「あらー? 任せるって言った割りにはアリスちゃん、魔界から帰った後にここで待ってたらしいじゃない。本当は、心配で仕方がなかったんじゃないの?」

からかう様に本当は霊児達の事が心配で仕方がなかったのではと問う。

「べ、別に心配何てしていませんよ。ここに居たのは偶々です」

心配何てしていないし博麗神社に居たのは偶々だと言いながらアリスは少し頬を赤く染めながら二人から顔を逸らす。
そんなアリスを見て、

「ふふ、アリスちゃんてば可愛い」

神綺が微笑ましそうな表情を浮かべた。
その後、神綺は霊児の方に顔を向け、

「それにしても、油断した積りは無かったんだけど……まさか負ける何てね」

自分が霊児に負けた事に驚いたと口にする。

「勝ったって言っても運の要素がかなり絡んででの辛勝だったけどな」
「それでも、神綺様に勝ったって言うんだから十分に凄いわよ」

運の要素がかなり絡んででの辛勝だと言った霊児にアリスがそれでも勝ったんだから十分に凄いと返すと、

「一番の敗因は余力を残す様に戦った事かしら」

神綺は自分の一番の敗因に付いて呟く。
そして、

「今度貴方と戦う時は……余力を残す様な戦い方は絶対にしない様にしましょう」

神綺は今度霊児と戦う時は余力を残す様な戦い方は絶対にしないと決心する。

「今度って……また俺と戦う気か?」

霊児が嫌な表情を浮かべながら神綺の方に顔を向けると、

「何言ってるの、一度戦ったんだから二度や三度が無いとは限らないでしょ」

神綺は何れまた戦う可能性がある事を言う。

「勘弁してくれ」

霊児が何処か疲れた様な表情になると、

「何て顔をしてるの。貴方は創造神に余力を残す様な戦い方は出来ないと言わせたのよ。誇って良い事だわ」

創造神である自分に余力を残す戦い方は出来ないと言わせたのだから誇って良いと言い、

「それに……貴方なら何れ余力を残さない戦い方をする創造神が相手でも対等に戦える様になるわ。絶対に」

霊児なら何れ余力を残さない戦い方をする創造神が相手でも対等に戦える様になると断言した。
何やら厄介なのに目を付けられたと霊児が思っていると、

「……頑張りなさい」

アリスが同情するかの様に霊児の肩に手を乗せる。
どうやら、アリスも霊児と同じ様な結論に至った様だ。
何とも言えない雰囲気になってる二人を余所に、

「さて、小難しいお話はここまでにしてお料理を食べていきましょう。こっちの食べ物も美味しくて良いわー」

神綺は出されている宴会料理を幸せそうな表情を浮かべながら食べ始める。
幸せそうな表情を浮かべながら料理を食べていく神綺を見て、

「……本当にこいつって気分屋だな」

霊児は魔界でアリスが神綺の事を気分屋と言った意味を改めて思い知った気分になっていると、

「……ま、取り敢えず飲んだら? 付き合って上げるわよ」

アリスは霊児の肩から手を離し、自分も付き合うから酒を飲む様に勧めて来た。
酒でも飲んで気分を変え様と言う事だろう。

「……そうだな、飲むか」

霊児はアリスの提案を受け入れ、アリスと一緒に酒を飲んでいく事にする。
それから少しすると神綺も混ざって来たので結局、三人での酒盛りとなった。






















アリスと神綺との酒盛りが終わると、霊児は二人と別れてまたまた宴会場内を歩き回っていた。
相変わらず、宴会場内は盛り上がり続けている。
その様子を見ながら、霊児はまた誰かの所で酒を飲むなり料理を食べるなりするかと考えた時、

「霊児!!」

背後から声を掛けられた。
誰だと思いながら振り返ると、

「魔理沙」

魔理沙の姿が霊児の目に映る。
声を掛けて来たのが魔理沙だと認識した時、そう言えば宴会場内で魔理沙の姿が見えなかったなと言う事を霊児が思っている間に、

「あのね!! 霊児の好きなの沢山作って来たんだよ」

魔理沙は手に持っている大きな皿を霊児に見える様に突き出す。
皿の中には霊児の好きな物で埋め尽くされていた。
自分の好きな物を作っていたから宴会場内で魔理沙の姿を見なかったのかと霊児が納得していると、

「それで……その……食べてくれる……かな?」

魔理沙は少し不安気な表情を浮かべながら霊児に食べてくれるかと尋ねる。
どうやら、もう霊児のお腹は一杯なのではと考えてしまった様だ。
料理を作り終えるのに結構な時間が過ぎってしまっているので、魔理沙がそう思ってしまうのも無理は無い。
そんな風に不安がっている魔理沙を余所に、霊児は自分の状態を確認していく。
先程から色々と飲み食いして来たが、胃袋にはまだまだ余裕がある事が霊児には感じられた。
だからか、

「ああ、食うからくれ」

霊児は魔理沙が作った料理を食べる意思を示す。
すると、魔理沙は物凄く嬉しそうな浮かべ、

「じゃあ、私が食べさせて上げるね!!」

自分が食べさせて上げると言う。

「いや、別に……」
「片手だけじゃ、食べ難いでしょ」

霊児は何かを言おうとしたが、魔理沙の片手だけじゃ食べ難いと言う発言を受けて押し黙ってしまった。
色々な所に顔を出して飲み食いした時、少々食べ難かったのは事実であるからだ。
霊児が押し黙った事で文句は無いと判断したから、

「はい、あーん」

魔理沙は食べ物を突き出しながら口を開ける様に促す。
殆どされるが儘に霊児が口を開くと、魔理沙が箸を使って食べ物を霊児の口の中に入れる。
そして、口の中に入った食べ物を霊児が飲み込むと、

「どう? 美味しい……かな?」

魔理沙は上目遣いで美味しいかと問う。

「ああ、美味い」

霊児がそのままの感想を伝えると、魔理沙はまたまた嬉しそうな表情を浮かべ、

「一杯作ったから、沢山食べてね!!」

再び箸を使って霊児の口の中に食べ物を入れていく。
そして、皿の中の食べ物が半分程になった時、

「ねぇ、霊児。私、頑張るね」

魔理沙は頑張ると宣言して来た。
頑張ると言う言葉から、魔界で魔理沙が幻想郷に戻る時に強くなると言っていた事かと霊児は考え、

「そうか、頑張れ」

当たり障りの無い様な言葉を返す。
だが、当たり障りの無い様な言葉でも魔理沙に取っては嬉しかった様で、

「うん!! 頑張る!!」

魔理沙は満面の笑顔を浮かべ、再び箸を使って霊児の口に食べ物を入れていった。























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