弾幕ごっこと言う名の遊びが幻想郷中に広まってから、数週間程の時が経ったある日の朝。
霊児は何所かを目指すかの様に幻想郷の空を飛んでいた。
普段の霊児であればこんな朝っぱらから飛び回ると言った事はしないであろう。
では、何故朝っぱら飛び回っているのか。
答えは簡単。
霊児は弾幕ごっこ考案者の一人であるからだ。
弾幕ごっこと言う名の遊びが幻想郷中に広まってから数週間程の時が流れたが、弾幕ごっこがどれだけ普及しているのかを霊児は知らない。
故に、霊児は弾幕ごっこがどれだけ広まっているのか確かめ様としているのである。
そんな霊児が目指している場所は香霖堂だ。
天狗が広めた弾幕ごっこの情報の中に、弾幕ごっこの発案者の一人である霊児はスペルカードを香霖堂で売っている画用紙で作っていると言うのがあった。
ならば、弾幕ごっこをやろうと考えている者は香霖堂に足を運んで画用紙を買うと言う選択肢を取る者が多い筈だ。
なので、霊児は香霖堂に向かっているのである。
画用紙の売り上げから弾幕ごっこの普及率を推察する為に。
沢山売れてれば良いなと思っていると、

「……お」

霊児の目に香霖堂が映り始める。
香霖堂まで後少しと言った所にまで来たからか、霊児は一気に加速し、

「……よっと」

降下して香霖堂の前に降り立つ。
そして香霖堂の外観を見ながら、

「相変わらず、統一性のない物ばかりが飾られてるな。ここ」

統一性のない物ばかりが飾られていると呟く。
目に付いた物で言えば蛙の置物やら象の置物、赤、黄、青の順番で色の付いた横に長い何か、石の塊に鉄製の棒が刺さった物などなど。
店の外に置いてある物だけ見たら、香霖堂が何の店か分からないであろう。
この店は一体何を目指しているのだろうかと考えながら霊児は香霖堂の中に入り、

「香霖、居るかー?」

霖之助は居るかと言う声を掛けながら霊児は店の奥へと進んで行く。
すると、

「……ああ、霊児か。いらっしゃい」

カウンター方から霊児を出迎える声が聞こえて来る。
声の発生源に顔を向けると、霖之助は本から目を離して霊児の方に顔を向けていた。
どうやら、本を読んでいた様だ。

「よお」

霊児は挨拶の言葉を口にしながらカウンターに近付いた時、

「何だ、やけにご機嫌じゃないか」

霖之助に機嫌が良い事に気付く。

「あ、分かるかい?」

機嫌が良い事を指摘された霖之助は分かるかと言いながら本をカウンターの上に置き、

「ほら、君や天狗達が広めた弾幕ごっこ。あれのお陰で画用紙が飛ぶ様に売れてね」

機嫌が良い理由を説明した。

「ほう……」

画用紙の売り上げが好調な事に霊児が少し驚いていると、

「そんなに在庫が在った訳ではないが、画用紙は見事に完売したよ」

霖之助は画用紙が完売した事を口にする。
それを聞いた霊児は、

「そいつは重畳」

軽い笑みを浮かべた。
香霖堂に在った画用紙の在庫の数は分からないが、完売したとなれば出だしは好調と言って良いだろう。
後はこのまま流れに乗って行けるかどうかだなと言う事を霊児が考えていると、

「しかし、意外だったね」

霖之助が唐突に意外だったと呟く。

「ん? 何がだ?」

霊児が何が意外なのか言う様に促すと、

「弾幕ごっこ……制式名称スペルカードルールだっけ? 只こう言った遊びが在ると言う様に弾幕ごっこを広めただけで、これを絶対にやれ!! とか、
これ以外は禁止!! と言った様に強制したりした訳じゃないって事がさ」

霖之助は意外に思っている事を口にする。
結構な会議の末に決まったとの事なので、強制的に従わせるものだと霖之助は考えていた様だ。
そんな霖之助に、

「ああ、それは簡単。そうやって強制させて無理矢理強いたとしたら、抑えられた不満などが何時か爆発し……って事態になるだけだ。だから、
強制させる様な事はしなかったのさ」

霊児は強制させなかった理由を説明しながらカウンターに腰を落ち着かせ、

「皆が自主的にやる様にならないと意味が無いだろ」

皆が自主的にやる様にならなければ意味が無いと言う言葉で締め括った。

「成程……意外と考えているじゃないか」

先の事を考えてた霊児に霖之助は感心の言葉を口にする。

「そりゃな……」

霊児は考えていて当然と返しながら霖之助の方に顔を向け、

「で、だ。話は変わるが、あれはどの位進んでる?」

あれはどの位進んでいるか問う。

「あれ?」

霖之助は首を傾げると、

「何年か前に頼んだ緋々色金の強化だよ」

霊児は緋々色金の強化の事だと口にする。
その言葉で、

「ああ、あれか」

霖之助は何かを思い出した表情になった。
緋々色金の強化。
これを霊児が霖之助に頼んだのは、魔界での一件が終った後の事である。
神綺との戦いで霊児の持っている緋々色金製の短剣の刀身部分が砕かれてしまった。
なので、霊児は短剣の修復を霖之助に依頼するのと同時に緋々色金の強化を依頼したのだ。
何時か、神綺と同等の力を持つ様な者と戦う事態になったとしても良い様に。
短剣の修復は修復を依頼してから直ぐに完了したが、緋々色金の強化の方は、

「まだまだだよ」

大して進んではいない様だ。

「何だ、全然進んでないのか」

緋々色金の強化が全然進んでいない事を知って霊児が少し落胆した表情を浮かべていると、

「前にも言ったと思うが、緋々色金って言うのは希少価値が非常に高いのと同時に非常に頑丈で既に非の打ち所が無い程に完成された金属何だよ。だから、
そんな金属を強化するって言うのはかなり大変何だよ」

霖之助は改めて緋々色金がどの様な金属であるかを説明する。
霖之助の説明を聞いた霊児は左腰に装備してある短剣を抜き、抜いた短剣を観察していく。
刀身と柄頭の部分が緋々色金で、柄の部分が樹齢数万年の木でそれぞれ構成されているのが見て取れる。
非の打ち所が無く完成された金属と言う謳い文句の様だが、神綺には砕かれたけどなと霊児が思っていると、

「それに、君の短剣を十本も作るのに僕のコレクション用に持っていた緋々色金の大半を使ってしまったんだけどね」

霖之助は少し恨めしそうな顔をしながら霊児を見て来た。
恨めしそうな顔をしている霖之助に、

「ちゃんと金は払っただろ」

霊児はちゃんと金は払っただろう言いながら短剣を鞘に収める。
霊児の言っている事は事実であるからか、

「……ま、僕としては緋々色金を砕く様な存在が居ると言う事に驚いたけどね」

霖之助は話を変えるかの様に緋々色金を砕く様な存在が居る事に驚いたと口にした。

「安心しろ、俺も驚いたから」

実際のところ、霊児も緋々色金製の短剣を砕かれた事には驚いていたのだ。
何せ、神綺に砕かれるまではどれだけ力を籠めて振るってもどれだけ強力な攻撃を受けても罅処か掠り傷一つ付かなかったのだから。

「確か……魔界の創造神の神綺と言う者だったね。緋々色金を砕いたのは。いやはや、世界が広いとは正にこの事だね」

霖之助は緋々色金を砕いた存在である神綺の名を口にしながら溜息を一つ吐き、

「尤も、そんな存在に勝った君は豚でもないな」

霊児を称賛する言葉を述べる。

「勝ったと言っても本当に辛うじて勝ったってレベルだがな……ん? 何かとんの発言が変じゃなかったか?」

霊児は霖之助の称賛の発言を聞き、とんの発音が変じゃないかと言うと、

「おお、そこに気付いたか!!」

霖之助は嬉しそうな表情を浮かべながら霊児に詰め寄って行った。

「な、何だ?」

急に詰め寄ってきた霖之助に霊児が少し驚いていると、

「今のはとんでもないの"とん"と"豚"を掛けたんだ。この前読んだ外の世界の書物によると、これを親父ギャグと言うらしい」

霖之助はとんでもないのとんの発言は態と変えたもので、外の世界では親父ギャグと言うものなのだと説明する。
序に、

「親父ギャグと言う名前から、父親か店の店主など言った存在がよく使うものだと僕は考えている」

親父ギャグがどう言った存在に使われているのかも説明した。
外の世界の父親や店の店主は常日頃から親父ギャグを言っているのだろうか。
家に帰った時や店に入る度に親父ギャグが披露される世界と言うものを霊児が想像していると、

「そうそう、他にもこんなのがあるぞ」

霖之助は生き生きとした目で他にも親父ギャグがあるのだと伝えて来た。
それを聞き、霊児は何か嫌なものを感じていると、

「金曜日のおかずはフライデー」

霖之助はそんな事を言ってのけた。
その瞬間、霊児は反射的に体を震わせてしまう。
突如極寒の地に放り出された様な寒さを感じたからだ。
今なら地獄の業火でも暖かく感じられると思いながら、

「あー……うん、それよか緋々色金の強化は後どれ位で完成しそうだ?」

霊児は話題を少々強引に変え様とする。
自身の勘がこれ以上親父ギャグを続けさせるなと訴えていたからだ。
これ以上親父ギャグを続けられなくなったからか、

「うーん……そうだな……どれだけ掛かるかは僕にも分からないな」

霖之助は少し残念そうな表情をしながら何時になるか分からないと返す。
霖之助の返答は予想出来たからか、霊児は落胆の表情を見せずにカウンターの上から降り、

「俺が現役で居る間に頼むぜ」

自分が現役で居る間に緋々色金の強化が出来る様にしてくれと言う。

「君の場合は文字通り生涯現役でいそうだけどね」
「流石にそれは分からねぇよ。だから、出来るだけ早くに完成させてくれよ」
「ま、努力はするよ」
「ああ、努力してくれ」

そんな軽い会話をした後、霊児は香霖堂を後にした。





















香霖堂を後にした後、霊児は空を飛びながらこれから如何するかを考える。
香霖堂で売られていた画用紙が完売していると分かった以上、幻想郷中を回る必要が殆ど無くなってしまったからだ。
このまま神社に帰るべきか、それとも念の為に幻想郷中を飛び回って見るべきか。
どちらにするべき少し考えていた時、

「……ん?」

霊児は少し離れた場所で弾幕が飛び交っている事に気付く。
誰かが弾幕ごっこをしてるのかと思った霊児は誰が弾幕を放っているのかを確認する為に目を凝らすと、

「幽香に……魅魔か……」

幽香と魅魔の二人が弾幕を放ち合っている事が分かった。
二人とも相当な実力者であるからか、二人が放つ弾幕が飛び交い合う光景は中々に綺麗だ。
綺麗に見えると言うのは予想通りではあるが、実際に確認出来たと言うのは大きい。
これが確認出来ただけでも外出した甲斐があったと霊児が思っていると

「お……」

幽香と魅魔は懐に手を入れ、何かカード状の様な物を取り出した。
取り出した物はスベルカードであると霊児が確信した時、二人のスペルカードが発動される。
同時に、幽香からは極太のレーザーが。
魅魔からは無数のビームが放たれていた。
因みに幽香は傘の先端から、魅魔は背後に展開させた無数の魔法陣からそれぞれレーザーとビームを放っている。
見た感じで、二人が放つレーザーとビームは並大抵以上の実力を持つ者でも容易く消し炭にする威力はあるであろう。
だが、実際のところはそんな威力は無い。
人里に居る普通の子供に直撃したとしても、個人差はあるだろうが多少ボロボロにさせる程度の威力しかない。
まぁ、衝撃はそれ相応にあるので気絶はするだろうが。

「……ま、スペルカードで発動させた技で相手に致命傷を与えたら俺のミスって事になるけどな」

分かっていた事だが、幽香と魅魔が発動したスペルカードは正常に機能している。
流石俺と自画自賛する様な事を思った時、霊児の頭に少し先の未来の光景が過ぎった。
過ぎった光景と言うのは、魅魔との弾幕ごっこが終わった後に霊児の存在に気付いた幽香が霊児に戦いを吹っ掛けて来ると言うもの。
普段であれば頭に過ぎった未来の光景など只の気の迷いか変な妄想と断じれる事だが、幽香の望んでいる事と周囲の地形を見たらそれは出来ない。
幽香は霊児と戦いたいと思っている。
弾幕ごっこではなく普通の戦いを。
そして、眼下に見える地形に花は一本も見られない。
十中八九、幽香は霊児に戦いを挑んで来る事だろう。
幽香と戦っても霊児に負ける気は無いが、それでも大した理由も無いのに幽香の様な実力者と戦うのは御免である。
なので、

「気付かれる前にさっさと退散するか」

霊児は魅魔と幽香が自分の存在に気付く前にこの場を離れて行った。





















幽香と魅魔が弾幕ごっこをしている場所から無事に離れる事に成功した霊児は、進路を自分の家である博麗神社に向けていた。
香霖堂での画用紙の売り上げと幽香の魅魔の弾幕ごっこを見て、自分が動き回って探る必要は無いと判断した様だ。
神社に戻ったら縁側で茶でも啜るかなと言う予定を霊児が立てていると、

「ふっふっふ、見付けたわよ!!」

背後の方からそんな声が聞こえて来た。
見付けたと言うからには霊児の事を探していたのだろうか。
霊児は誰だと思いながら一旦止まって振り返ると、

「……チルノか」

腕を組んで自信有り気な表情をしているチルノの姿が目に映った。
声を掛けて来たのはこいつかと霊児は思いながら、

「何か用か?」

用件を尋ねる。
すると、

「ふっふっふ……」

チルノは強気な笑みを浮かべながら霊児に人差し指を突き付け、

「最強のあたいが、弾幕ごっこであんたを倒して上げるわ!!」

弾幕ごっこで霊児を倒すと宣言し、氷の弾幕を放って来た。
迫り来る弾幕を、

「おっと」

霊児は移動する事で避け、考える。
急に弾幕ごっこを吹っ掛けて来たのは、今までチルノが何かする度に拳骨で追い返したりした事に対するリベンジなのかと。
リベンジと言っても逆恨みに近い様なものだが。
しかし、逆恨みだろうと何だろうと相手がどんな存在でも気軽に戦える様に弾幕ごっこと言う遊びを作ったのだ。
こうやって行き成り弾幕ごっこを吹っ掛けて来る辺り、弾幕ごっこを作ったのは正解であろう。
これで幻想郷に活気が戻れば万々歳だと言う事を霊児が考えていると、

「ふっふっふ、最強のあたいの弾幕を前に手も足でない様ね」

チルノはそう言いながら勝ち誇った表情を浮かべていた。
どうやら、自分の弾幕を前に霊児は攻める事が出来ないと思っている様だ。

「降参するのなら、今の内よ!!」

既に勝った気でいるチルノ発言で意識を現実に戻した霊児は、

「勝ちを確信するのは……一寸早いんじゃないか?」

チルノの弾幕の間を縫う様にして弾幕を放つ。
霊児が行き成り攻めに転じた事でチルノは驚いて動きを止めてしまう。
が、直ぐに再起動をしてその場から離れ様とするも、

「あう!?」

離れ様としたタイミングが僅かに遅く、チルノは弾幕を何発か喰らってしまう。
弾幕を喰らった事でチルノは少し涙目になるも、

「うー……やったなあ!!」

直ぐに強気な目付きになり、懐に手を入れてスペルカードを取り出し、

「氷符『アイシクルフォール』」

スペルカードを発動させる。
チルノがスペルカードを発動させたのを見て、

「やっぱ、技名の前に何か付けた方が普通の技と区別が出来て良いな」

霊児はそんな事を呟いた。
幾らスペルカードで発動させた技とは言え、技名が普通に攻撃するのと同じでは対戦相手が変に身構えてしまうかもしれない。
天狗達に広めさせた弾幕ごっこのルールの中にスペルカードで放つ技には技名の前に何か付ける事を推奨と言うのを付けたのは正解だったなと思っていると、

「……左右に弾幕が集中しているな」

チルノの弾幕が左右に集中し始めた。
移動を制限させる様なスペルカードかと霊児は推察しながら弾幕が来ていないチルノの正面に移動して様子を見る事にする。
それから少しすると、

「…………あれ?」

ある事に気付く。
何に気付いたのかと言うと、正面には全く弾幕が来ていない事にだ。
しかし、

「いや、確かに絶対回避不可能な攻撃は禁止だけどさ……」

絶対回避不可能な攻撃は禁止とは言え、幾ら何でもこれはやり過ぎであろう。
正面に全く弾幕が来ないと言うのは。
仮に正面にも弾幕が来たとしても霊児には何の問題もないであろうが。
何処か呆れた視線を霊児はチルノに向けたが、対するチルノは何故か自信満々の表情をしている。
何をどうしたらそんな自信満々でいられるのかと言う疑問を霊児は抱きながら右手を拳銃の形に変え、左手を懐に入れてスペルカードを取り出し、

「弾丸『光霊弾』」

右手をチルノに向けながらスペルカードを発動させた。
このスペルカードは霊児が指先から霊力の弾を放つと言う技をスペルカードにしたものだ。
因みに、この技には元々名前が無かったのでスペルカードを作る時に霊児は少々難儀する事となった。
が、魔理沙の『霊力で出来ている弾丸何だから光霊弾で良いんじゃないか?』と言う発言を受けて光霊弾と言う技名になったのである。
尤も、普通に放つ際は技名を言わないで放つ事に慣れてしまっているので弾幕ごっこ以外で霊児が光霊弾と技名を言う事は殆ど無いが。
余談ではあるが、光霊弾と言う技名を付けられた時に霊児は魔理沙に霊と弾は解るが光は何所から来たんだと言う事を問うた。
霊児として少し疑問に思った事を問うただけである。
が、魔理沙はその問いに答える事なく『ど、どうでも良いだろ』と言って顔を少し赤く染めてしまった。
まぁ、大した事でもなかったので霊児はそれ以上答えを聞こうとはしなかったが。
それは兎も角、スペルカードを発動させた事で霊児の指先から霊力で出来た弾が放たれる。
放たれた弾は一直線にチルノへと向かって行って着弾し、爆発を起こす。
爆発が起こった事で爆煙が発生し、発生した煙が晴れると、

「うー……覚えてろー!!」

捨て台詞を残してチルノは何所かに飛んで行った。
飛んで行ったチルノの姿が見えなくなると、

「……覚えてろって、俺は兎も角あいつは覚えてるのか?」

チルノは覚えていられるのかと言う疑問を呟く。
覚えていたとしても自分に負けた事位でであろうかと考えながら、

「……さっさと帰るか」

霊児は自分の神社に向けて飛んで行った。






















神社に帰って来た霊児は早速茶の準備をし、準備が終わると縁側へと向かって行く。
そして縁側に着くと、腰を落ち着かせながら色々あったが今日も比較的平和であったと思いながら茶を啜っていく。
茶を啜り始めてから少しすると、

「おーっす、霊児」

魔理沙がやって来た。
やって来た魔理沙が地に足を着けると、

「よっ」

霊児は片手を上げて挨拶を返す。
その時、

「どうした、機嫌が良さそうだな」

霊児は魔理沙の機嫌が良い事に気付く。
機嫌が良い事を指摘された魔理沙は、

「あ、分かるか? 実はさ、ここに来る前にアリスと弾幕ごっこをしてな」

帽子を取りながら博麗神社に来る前にアリスと弾幕ごっこをしていた事を話し、

「私が勝ったんだぜ」

自分が勝ったと言って嬉しそうな表情を浮かべる。
それぞれ専門としているものが違うとは言え、アリスは魔理沙と同じ魔法使いだ。
故に、弾幕ごっことは言えアリスに勝てたのが嬉しいのだろう。

「やっぱ、弾幕に限らず戦いはブレインよりパワーだよな」

ご機嫌な魔理沙を見ながら霊児は魔理沙がパワー、アリスがブレインを信条にしている事を思い出す。
それならば、自分の信条は自身の戦闘スタイルと使用可能な技からバランスかと言う事を霊児が考えていると、

「あ、私にもお茶くれよ」

魔理沙は自分もお茶が欲しいと言って来た。

「ああ、一寸待ってろ」

霊児は魔理沙に待つ様に言って立ち上がり、湯飲みを取りに居間へと向かう。
居間に置いてあった湯飲みを取ると、霊児は再び縁側へと戻って湯飲みに茶を入れ、

「ほら」

腰を落ち着かせながら魔理沙に茶が入った湯飲みを手渡す。

「サンキュ」

魔理沙は礼を言いながら湯飲みを受け取り、縁側に上がって霊児の反対側に回る。
丁度霊児と背中合わせの様な形になると、魔理沙は腰を落ち着かせて霊児の背中に自分の背中を預けて茶を啜っていく。
背中から伝わる魔理沙の温もりと重さを感じながら霊児は再び茶を啜り、

「あー……平和だ……」

平和だと口にする。

「何だ、平和だと退屈か?」

平和だと退屈かと魔理沙が聞くと、

「まぁ、退屈と感じる時もあるが……俺はこうやってのんびりと茶が啜れる日々の方が好きだな」

霊児は平和で退屈と思う事もあるが、のんびりと過ごせる日々の方が好きだと返す。
霊児から返した発言を聞き、

「そうだな……私も賑やかなのは好きだけど、こうやって霊児と一緒にのんびりと過ごす方が好きだな」

魔理沙は霊児の発言に同意する事を口にする。

「そうか」

霊児は適当な返事をしながらボケーッとしていると、

「あ……うー……」

魔理沙は何かに気付いた表情になりながら顔を少し赤く染め、何か言葉を漏らしてしまう。

「ん? どうかしたか?」

霊児がどうかしたのかと問い掛けながら魔理沙の方に顔を向けると、

「な、なんでもないぜ!!」

魔理沙はなんでもないと言いながら少し慌て気味に茶を飲んでいた。
本人がなんでもないと言ってるなら別に良いかと考え、霊児は再び茶を啜っていく。
こうして、霊児は魔理沙とのんびりとした時間を過ごしていった。























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