「ふあ……んー……」
朝、目が覚めた霊児は上半身を起き上がらせ、
「今日は随分とすんなり目が覚めたな……」
今日は随分とすんなり目が覚めたと言いながら首を回し、腕を伸ばす。
「んー……」
腕を伸ばしながら霊児は思う。
これだけすんなり目が覚めたのだから、今日は何か善い事が起こるかもしれないと。
「……よし」
頭も体もある程度覚醒すると、霊児は布団から抜け出して寝巻き用の着物を脱ぎ始める。
脱いだ寝巻き用の着物を部屋の隅の放り投げた後、霊児は箪笥が置いてある方に向かう。
箪笥の中から代えの下着、背中に陰陽のマークが描かれた白いシャツ、黒いズボンと言った物を取り出して着替えていく。
着替えが完了すると、霊児は朝食を取る為に居間へと向かって行くが、
「……そう言えば、まだ今日の天気を確認していなかったな」
向かっている途中で今日の天気を確認していなかった事に気付き、足を止める。
どうやら、朝食を取る前に天気の確認をし様か考えている様だ。
考えた結果、
「……まぁ、大した手間でもないから先に確認しとくか」
霊児は先に天気の確認をする事に決め、進路を居間から縁側へと変える。
「……そうだ。天気が良かったら洗濯でもするかな」
天気が良かったら洗濯でもし様かと言う予定を立てながら。
そして、縁側に辿り着いた時、
「………………は?」
霊児の目には晴れでも曇りでも雨でも無い光景が映った。
どの様な光景が映ったのかと言うと、
「紅い霧だと……」
紅い霧が充満し切っていると言う光景だ。
霊児は思わず何度か瞬きしてもう一度外に目を向けるが、
「……変わってないな」
見える光景は相変わらず紅い霧が充満しているものであった。
目に映る光景が変わらなかったからか、
「………………………………………………」
霊児は腕で目を擦り始める。
ある程度擦った後、今度はゆっくりとした動作で目を開く。
が、
「……やっぱりか」
やはりと言うべきか、目に見える光景に変化は無かった。
変化の無い光景を見た後、霊児は無言で頬に手を持っていって自分の頬を抓る。
その結果、頬から痛みを感じた。
痛みを感じると言う事は、今見えている光景は夢でも幻覚でもないと言う事。
つまり、現実だ。
霊児は今見えている光景が現実であると言う事を理解し、嘆くかの様に顔面を片手で押さえ、
「はぁ……」
溜息を一つ吐く。
今日も平穏な一日がやって来ると思われたのだが、それは違った様である。
やって来たのは平穏な一日とは程遠い、厄介事への片道キップのみだ。
「自然現象で紅い霧が出る訳がないし……これは異変か……」
この充満している紅い霧は異変の証しであると霊児は判断し、
「……はぁ、何所の誰がこんな事をしやがったんだか」
また一つ溜息を吐き、文句の言葉を口にした。
異変が起こってしまった以上、霊児は異変解決の為に動かなければならないからだ。
それを面倒臭がっているのだろう。
しかし、幾ら面倒臭いと言っても霊児は博麗の名を持つ存在。
博麗の名を持つ以上、起こった異変を解決する事は義務の様なもの。
と言っても、仮に博麗の名を持つ者が異変を解決する必要が無かったとしても霊児は解決の為に動いただろう。
霊児は自身の博麗としての役目を幻想郷を護る事と捉えているが、これは霊児個人としての意思でもあるからだ。
まぁ、どっちにしろ面倒臭がったりぶつくさと文句を言う事に変わりは無いであろうが。
「……よし」
霊児は今起こっている異変を解決する事を決め、頬を叩いて気合を入れる。
気合が入った処で、霊児は羽織と装備を取って来る為に自分の部屋に戻ろうとした時、
「あ……」
盛大に霊児の腹が鳴ってしまった。
だからか、
「…………飯を食べてから出発しよう」
自分の部屋に戻るのを取り止めて、居間の方へと向かって行った。
霊児は適当に切った野菜を鍋に入れて煮込んだ鍋料理を居間で食べていた。
霊児が作る、何時もの料理だ。
と言うか、霊児はこれ以外の料理を作る事など殆ど出来ないであろうが。
それはさて置き、霊児がそろそろ鍋料理を食べ終わると言う頃合になった時、
「霊児、起きてるか?」
魔理沙が襖を開けて居間の中に入って来た。
居間の中に入って来た魔理沙に霊児は反応し、魔理沙の方に顔を向けると、
「おや、また鍋料理かい? 飽きないねぇ」
魅魔がそんな事を言いながら魔理沙の後ろから顔を出す。
どうやら、やって来たのは魔理沙と魅魔の二人であった様だ。
霊児が食べている鍋料理を見て、
「全く、私が作らなきゃ何時もそれだな」
魔理沙は少し呆れた表情を浮かべた。
「別に良いだろ」
霊児は別に良いだろと返し、箸を卓袱台の上に置き、
「で、何か用か?」
やって来た魔理沙と魅魔に用件を問う。
用件を問われた事で、
「霊児、外の紅い霧の事は気付いてるか?」
魔理沙は霊児に紅い霧の事に付いて聞く。
「ああ、気付いてる」
「あれって……」
「察しの通り、あの紅い霧は自然現象で現れたものじゃない。異変だ」
「やっぱり……」
霊児があの紅い霧は異変である事を教えると、魔理沙は何かを決意した表情を浮かべた。
そんな表情を浮かべた魔理沙を見て、
「若しかして、付いて来る気か?」
霊児は自分の異変解決に付いて来る気かと尋ねる。
尋ねられた事を、
「当然だぜ」
魔理沙は胸を張りながら当然と言う言葉で返し、
「私はあの時よりもずっと強くなったんだ。もう霊児の足手纏いになったりはしないぜ」
もう霊児の足手纏いになったりはしないと自信満々の表情で断言した。
確かに、魔界に突入した時と比べて魔理沙は格段に強くなっている。
なので、魔理沙の霊児の足手纏いにはならないと言う発言に嘘は無いだろう。
魔理沙から発せられる自信と言うものを感じながら霊児は魅魔の方に視線を移し、
「お前はどうするんだ?」
どうするのかと聞く。
「私も付いて行くよ」
魅魔は付いて行く旨を伝え、
「この紅い霧を出してる奴には興味があるからね」
紅い霧を出している者に興味がある事を口にする。
「お前も物好きだな……」
魅魔の事を物好きと言いながら霊児は残っている鍋料理を全て平らげ、空になった鍋を台所に持って行く。
持って行った鍋に水を入れた後、霊児は再び居間に戻り、
「着替えて来るから、外で待っててくれ」
魔理沙と魅魔に外で待つ様に言って自分の部屋へと戻る。
自分の部屋に着くと、霊児は先ず自分の武器である短剣を装備していく。
左腰に一本、背中に四本の計五本を。
短剣を装備し終えた後、霊児は壁に掛けてある五着の羽織に目を向ける。
白を基調としていて縁が赤く、背中に赤い文字で"七十七代目博麗"と書かれた羽織りを。
そして、壁に掛けられている羽織りを手に取って、
「よ……っと」
羽織を着込む。
最後に、夢美から貰ったグローブを手に着ける為にグローブを置いてある机に目を向けた時、
「あ……」
霊児は気付く。
机の上にはグローブの他にスペルカードと封魔陣用のお札が置いてある事に。
スペルカードは兎も角、何故封魔陣用のお札があるのか。
答えは簡単。
魔界でアリスと戦った時の反省を踏まえてちゃんと作って置いたのだ。
と言っても、封魔陣用のお札は作るのが面倒なので数枚程しか作っていないが。
「……………………………………………………………………」
スペルカードと封魔陣用のお札。
この二つは別に無視しても良かったが、
「……異変解決の道中、何が起こるから分からないからな」
霊児は異変解決の道中で何が起こっても対応出来る様にスペルカードと封魔陣用のお札を持っていく事にした。
スペルカードと封魔陣用のお札を懐に仕舞い、夢美から貰ったグローブを手に着けて準備が完了した霊児が外に出ると、
「お……」
霊児の到着を待っていた魔理沙と魅魔の姿が目に映る。
霊児が外に出て来た事に気付いた魔理沙は、
「お、準備は終わったのか?」
準備は終わったのかと聞く。
「ああ、準備完了だ」
準備が終わった事を肯定しながら霊児は魔理沙と魅魔の方に足を進め、異変解決に向かう為に空中へと躍り出様としたその瞬間、
「ん? 誰か来るな」
「あ、ほんとだ」
「物好きな奴も居るもんだねぇ。こんな紅い霧が充満している時に出歩く何て」
霊児、魔理沙、魅魔の三人は博麗神社に誰かがやって来ている事に気付き、空中に出るのを止めて神社にやって来ている者の方に顔を向ける。
顔を向けた三人の目には神社をやって来ている者の人影が映った。
映った人影はどんどんと大きくなり、全貌が明らかになったタイミングで、
「にとり」
霊児は神社にやって来ている者の名を口にする。
そう、来訪者はにとりであったのだ。
霊児が口にした言葉はにとりの耳に入った様で、
「あ、霊児。それに魔理沙に魅魔さんも」
にとりは霊児、魔理沙、魅魔の三人の存在に気付き、降下して三人の傍に降り立つ。
降り立ったにとりを見ながら、
「で、こんな紅い霧が出ている日にどうしたんだ?」
博麗神社にやって来た理由を霊児は尋ねる。
「あ、実はね。この紅い霧が出てからと言うもの、妖怪の山全体がピリピリしててさ。それで、この紅い霧が異変なら霊児に解決して貰いたいなって……」
理由を尋ねられたにとりは少し声をトーンを落としながらこの紅い霧を何とかして欲しいと言う。
つまり、異変解決の依頼に来た様である。
それを聞いた魔理沙は、
「それなら安心しろ。これから私達が異変解決に行くところだからな」
自分達がこれから異変解決に向かうので安心しろと話す。
「え、ほんと!? 良かったー……」
霊児達が異変解決に向かうと言う事を知ったからか、にとりは嬉しそうな表情を浮かべた。
「何だ、私達が異変解決に行くのがそんなに嬉しいのか?」
「そりゃね。霊児達が異変解決の為に動くって事は異変の解決が約束されたって言ってる様なものだしね。さっきも言ったけど、今の妖怪の山は全体的に
ピリピリとしているからね。それが解消されるとなれば、嬉しくもなるよ」
魔理沙の自分達が異変解決に向かうのがそんなに嬉しいのかと言う疑問に、嬉しい理由をにとりが答える。
まぁ、常にピリピリとした雰囲気の中で生活する事になりそうだったのだ。
嬉しくなるのも無理はないだろう。
嬉しそうな表情を浮かべているにとりを余所に、霊児は考える。
幾ら通常は発生しない紅い霧が発生したとは言え、にとりが助けを求める程に妖怪の山はピリピリするものなのかと。
今の妖怪の山の現状に付いて霊児が考えている間に、
「ん? また誰か来たみたいだよ」
魅魔はまた誰かが来た事を口にした。
その言葉で霊児が意識を現実に戻した時、魅魔の言うやって来た者が霊児達の近くに降下して地に足を着ける。
にとりに続いてやって来た者は、
「椛」
椛であった。
「どうも、皆さんお揃いで」
地に足を着けた椛は挨拶の言葉と同時に頭を下げる。
頭を下げた椛を見て、
「あれ、椛」
にとりは少し驚いた表情を浮かべた。
どうやら、椛の来訪はにとりにとって予想外の事であった様だ。
同じ様ににとりがここに居る事は予想外であったからか、
「あれ、にとり。にとりもここに来てたんだ」
椛も少し驚いた表情を浮かべた。
にとりと椛の二人が驚いた表情を浮かべている間に、
「で、どうしたんだ? 俺に何か用か?」
霊児は椛にやって来た用件を尋ねる。
用件を尋ねられた事で椛は表情を戻して霊児の方に向き直り、
「はい、実はですね。私はこの紅い霧を出している首謀者の情報提供と霊児さんのサポートをする様にと言う密命を大天狗様から受けて来たのです」
椛は博麗神社にやって来た理由を話す。
「首謀者の情報提供と俺のサポート? て事は、大天狗は既に紅い霧を出している奴の目星を付けてるって事か……」
「はい。大天狗様は充満しているこの紅い霧を見て、直ぐに犯人の目星を付けられた御様子でした」
椛の話を聞いて霊児がそんな推察を立てると、椛は霊児が立てた推察が正しいと言う様な事を口にし、
「話は変わりますが、霊児さんは吸血鬼異変と言う異変をご存知ですか?」
吸血鬼異変と言う異変を知っているかと尋ねる。
「吸血鬼異変?」
霊児は吸血鬼異変の名を呟きながら記憶を探っていく。
記憶を探っていった結果、
「………………いや、知らないな」
知らないと言う結論に達し、霊児はその事を椛に伝える。
その事を伝えられた椛は、
「そうですか。まぁ、無理もないですね。吸血鬼異変が起きた当時は霊児さんは生まれていなかったでしょうし、博麗の巫女も居ませんでしたからね」
霊児が知らないのも無理は無いと言い、吸血鬼異変の説明を始めた。
「当時、吸血鬼が幻想郷にやって来たばかりの時です。吸血鬼異変が起きたのは」
「吸血鬼がやって来たばかりの時?」
「はい。それだけだったら問題は無かったのですが……吸血鬼は幻想郷にやって来て早々に異変を起こしたのです。もうお分かりでしょうが、これが
吸血鬼異変です」
「異変ねぇ……どんな異変だったんだ?」
「端的に纏めると、幻想郷中に居る妖怪達を力尽くで従わせて幻想郷を支配し様とした……と言う異変です」
「ああー……そんな事もあったねぇ……」
椛が説明している吸血鬼異変の事を聞き、にとりは思い出したと言う表情になる。
やはりと言うべきか、にとりも吸血鬼異変の事は知っていた様だ。
「異変であれば博麗の名を持つ者が解決の為に動くのですが……その異変が起きた当時、博麗の名を持つ者はいなかった」
「まぁ、俺と先代の間には結構な開きがあるからなぁ……」
吸血鬼異変が起きた当時には博麗の名を持つ者が居なかった事を口にした椛に、霊児は自分と先代の間には結構な開きがあると返す。
実際のところ、よく霊児が今代の博麗を襲名するまでの間に致命的な事が起こらなかったものである。
まぁ、博麗の名を持つ者が居ようが居まいが世界は回ると言う事であろう。
「ですので、吸血鬼異変は力ある妖怪達の手で解決されました」
「その力ある妖怪達の中に……」
椛が口にした力ある妖怪と言う言葉に霊児が何かを察した反応を見せる。
霊児の反応を見て、
「はい。その異変解決には何人もの大天狗様達が参加されました。勿論、私や文さんの直属の上司である大天狗様も。唯、大天狗様達は異変解決の際に
直接吸血鬼と戦われた……と言う訳では無いそうです」
椛は先読みをする様に自分と文の直属の上司である大天狗も異変解決に参加していた事と、その際に大天狗達は吸血鬼と戦ってはいないと話す。
椛の話を聞き、霊児は意外そうな表情を浮かべていた。
大天狗程の実力を持つ者なら戦っていて当然だと考えていたからだ。
実力者である大天狗が戦っていないのならば、吸血鬼と戦ったのは天魔か天狗以外の妖怪かと霊児が考えていると、
「話しを戻しますが、異変解決後は様々な条約を結んで吸血鬼は大人しくなりました。これが吸血鬼異変の話ですね」
吸血鬼は様々な条約を結んで大人しくなったと言う発言で吸血鬼異変の出来事の話を締め括った。
椛から教えられた吸血鬼異変の情報を霊児は頭の中で反復し、
「成程……つまり、この紅い霧を生み出しているのはその時異変を起こした吸血鬼だって事か」
吸血鬼異変の首謀者と今回の紅い霧を充満させた者は同一人物であると考える。
「はい、その通りです」
霊児の考えを椛は正しいと言い、
「ずっと大人しくしていた吸血鬼が急に紅い霧を充満させると言った事を仕出かした。その事を怪しんだ大天狗様は、霊児さんと最も付き合いのある天狗と
言う事で私を派遣しました。異変解決に向かうであろう霊児さんへの情報提供とサポートをする様にと言う密命を下して」
大天狗が自分を霊児の所に行かせた理由を説明した。
「成程……」
霊児の実力は大天狗も知っているのに態々こうやって手助けして来る辺り、大天狗は心配性なのかもしれない。
「本当は文さんも来る筈だったのですが……あの人、昨日から取材に出掛けていて行方が知れないんですよね。ですので、私だけが来たんです」
椛はそう言って溜息を一つ吐き、
「それは兎も角、紅い霧を充満させた吸血鬼の情報をお教えしますね」
今回の異変の首謀者の情報を話し始めた。
「名前はレミリア・スカーレット。背格好は……私と初めて会った時の霊児さん位ですかね。因みに、性別は女性です。後、背中から蝙蝠の様な翼を
生やしています。戦闘スタイルは遠近全てに高レベルで対応できる万能型。この辺は霊児さんと同じですね。得物は真紅の槍を使うらしいです」
「成程……」
椛から伝えられた今回の異変の首謀者、レミリア・スカーレットの情報を霊児は頭に入れていく。
十中八九、レミリア・スカーレットと戦う事になると感じたからだ。
だからか、
「やれやれ、ここ暫らくは平和だったのにな……」
霊児は気怠そうに愚痴を零す。
霊児が零した愚痴が聞こえたからか、
「まぁまぁ、これさえ終わればまたのんびり出来るって。それにさ、私も一緒だから直ぐに終わるさ」
魔理沙が慰める様な言葉を掛ける。
魔理沙の言う通り、のんびりしたければさっさと終わらせるのが吉だろう。
そろそろ異変解決に向かおうと霊児が考えていると、
「取り敢えず、伝えるべき事は伝えましたが……他に何か聞きたい事は在りますか?」
椛が他に聞きたい事は在るかと聞いて来た。
「いや、特に無い」
霊児は聞きたい事は特に無いと返し、異変解決に向かおうとした瞬間、
「間に合ったー!!」
そんな声と共に、霊児達の近くに砂埃が舞い上がる。
そして、舞い上がった砂煙が吹き飛び、
「どうもー!! 清く正しい射命丸文でーす!!」
砂煙が在った場所から文が現れた。
「あ、文さん……」
現れた文を見て、椛は思いっ切り呆れた表情を浮かべた。
今まで何をしていたんだと言う想いを籠めながら。
が、文は椛が抱いている想いを無視するかの様に、
「あら、椛じゃない」
笑顔で片手を上げて椛に挨拶をして霊児に近付いて行き、
「霊児さん霊児さん、この紅い霧は異変ですよね!?」
詰め寄る様にこの紅い霧は異変なのかと尋ねる。
「あ、ああ」
詰め寄って来た文に少々圧倒されながらも霊児が異変である事を肯定した。
すると、
「と言う事は、霊児さんはこれから異変解決に向うのですよね!?」
文は更に霊児に詰め寄ってこれから異変解決に向かうのかと問う。
「そうだな」
霊児が何処か面倒臭そうな表情をしながらそうだと返すと、文は嬉しそうな表情を浮かべ、
「ならば、私も付いて行きます!!」
自分も付いて行くと言う宣言をする。
「……は?」
突然の文の宣言に霊児が呆気に取られている間に、
「霊児さんが異変解決する様子をバッチリ記事にさせて貰います!! これで今度の新聞大会は貰いましたね!! 後、購読者の増加も!!」
文は勝手に霊児達に付いて行く事を決め、今後の予定を立てていく。
文の立てた予定を聞いた椛は、
「……はぁ」
頭を押さえ、大きな溜息を一つ吐いた。
文に対して呆れ切った表情を浮かべている椛を余所に、
「……ま、いっか」
霊児は文が同行する事に対する許可を出す。
異変を解決した後にあっちこっちに異変解決の報告をするのはかなり面倒な作業であるからだ。
だから、文が異変終了後に今回の異変を記事にしてばら撒いてくれるのなら霊児としては大助かりなのである。
まぁ、文だったら勝手に記事にしてばら撒いてた可能性が大いにあるが。
もうこれ以上神社に留まっている理由は無いからか、
「それじゃ、行くか」
霊児は空中に躍り出て、異変を解決しに向かう。
「あ、待ってくれよ。霊児」
魔理沙はそう声を掛けて懐から二個の陰陽玉を取り出し、それ等を自分の傍らに佇ませる。
そして、箒に腰を落ち着かせながら空中に躍り出て霊児の後を追って行く。
「さーって、レミリア・スカーレットって言う吸血鬼ははどんな輩なんだろうね……」
「折角だし、私も付いて行こっと」
魅魔とにとりも空中に躍り出て、霊児達の後を追って行った。
「文さん、私は大天狗様より霊児さんのサポートをする様に言われました。くれぐれも、霊児さんの邪魔をしない様に」
「それぐらい分かってるわよ」
「本当ですか?」
「何よ、信用ないわね」
「普段の行いのせいですよ」
「何処か? 私はこんなにも清く正しい天狗だと言うのに……」
「強いて言うなら、全部ですかね? 頭の天辺から爪先まで」
「……ほんと、可愛気のない後輩ね」
「それは仕事を真面目にしない先輩のせいですよ」
椛と文はそんな言い合いながら空中に躍り出て、霊児達を追い掛けて行く。
こうして、霊児、魔理沙、魅魔、にとり、椛、文の総勢六人の異変解決が始まった。
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