異変解決に向かう為に霊児達が博麗神社から飛び立ち、幾らかの時間が経った頃、

「そう言えば……レミリア・スカーレットって言う吸血鬼は何所に居るんだ?」

霊児は椛にレミリア・スカーレットが何所に居るのかを聞く。
霊児からレミリア・スカーレットの居場所を聞かれ、

「あ、はい。レミリア・スカーレットの住居は霧の湖方面にある紅い館であると聞いています」

椛は思い出したかの様にレミリア・スカーレットの居場所を話す。
どうやら、居場所を伝える事をすっかり忘れていた様だ。
霧の湖方面と言われ、

「霧の湖方面ね……」

霊児は霧の湖の景色を思い出す。
畑の水遣りや風呂場の浴槽に水を入れると言った事に使われているメインタンクに水を入れる為。
そして、魚を釣る為と言った様に霊児は霧の湖にそれなりの頻度で足を運んでいる。
なので、霊児は霧の湖の光景は割と鮮明に思い描く事が出来るのだ。
だが、霊児が思い描いた霧の湖の光景に紅い館と言う建物は存在してはいなかった。
まぁ、霧の湖は霧がとても濃い場所なので霊児の目に紅い館が映らなかったとしても何の不思議も無いが。
何はともあれ、

「ま、行けば分かるか」

行けば分かると霊児は判断し、前方を見据える。
幸いな事に、今の霊児達の進行方向は霧の湖だ。
先陣を切った霊児の勘の良さが発揮されたのか、それとも偶々運が良かったのか。
どちらにせよ、進路変更をして今まで移動に費やした時間が無駄にならなくて良かったと霊児が思っていると、

「にしても……何だってそのレミリアって言う吸血鬼は今になって動き始めたんだ?」

魔理沙はどうしてレミリアは今になって行動を起こしたのかと言う疑問を口にする。

「単純に考えれば今まで力を蓄え、力を十分に蓄え終えたから今になって行動を起こしたと考えられますが……」

魔理沙の疑問に椛が自分の意見を述べるが、

「復讐が目的だって言うなら、こんな紅い霧を出さずに一番居場所がハッキリしている妖怪の山に襲撃を掛けるんじゃない?」

それなら先ずは妖怪の山に襲撃を掛けるのではと言う考えをにとりが口にした為、

「そう言われれば……そうだね」

椛は自分の意見が見当違いである事を悟る。
にとりの考えに補足する様に、

「紅い霧が出てから霊児さんの所に向かうまでに色々と見て回りましたが、何所かで破壊活動が行われているって事は無かったですね」

文は紅い霧が出てから自分が動き回って見た範囲の中で破壊活動は見られなかった事を話す。
文の話から考えるに、レミリアは過去に成せなかった幻想郷の支配を成す為に再び動き始めたと言う訳ではなさそうだ。
ならば、何故レミリアは紅い霧を充満させる様な事をしたのか。
その事に付いて霊児が考え始め様とした時、

「……おや、誰か来たみたいだよ」

魅魔が何者かが近付いて来ている事を口にする。
魅魔の発言で霊児は考える事を止め、顔を上げた。
顔を上げた霊児の目には、

「……ん?」

妖精達の姿が映る。

「妖精か? こんな紅い霧が出ている日だって言うのに珍しいな」

魔理沙が紅い霧が出ていると言うのに出歩いている妖精に珍しいと言う感想を漏らした瞬間、

「何……」

妖精達は霊児達に向けて行き成り弾幕を放って来た。
行き成り攻撃を加えられた事で多少驚きはしたものの、霊児達は直ぐに回避行動を取って弾幕を避けていく。
弾幕を避けながら、

「悪戯などは兎も角、出会い頭に妖精が行き成り攻撃するか……魔界に突入した時の事を思い出すな」

霊児は魔界に突入した時の思い出す。
あの時も、妖精は出会い頭に攻撃を仕掛けて来た。

「……若しかして」

今襲い掛かって来ている妖精は魔界の妖精なのではと霊児は一瞬考えたが、

「いや……違うな」

直ぐにその考えは違うと言う事に気付く。
何故ならば、現れた妖精からは魔界の妖精から感じられたもの感じなかったからだ。
今襲い掛かって来ている妖精は幻想郷の妖精だと霊児が判断した時、

「うーん……この紅い霧のせいで変に興奮でもしてるのかね?」

魅魔が紅い霧のせいで妖精が興奮しているのではと言う推察を述べる。
この紅い霧のせいで興奮状態になり、現れた霊児達に攻撃を仕掛けて来た。
確かに、そう考えれば行き成り攻撃を仕掛けて来た妖精の行動にも納得がいく。

「ふむ……変に興奮しているだけではなく、戦闘能力そのものも上がっていますね。この紅い霧には妖精の力量を上げる効果でもあるのでしょうか?」

文は余裕の表情で迫り来る弾幕を避け、妖精の戦闘能力が上がっている事を口にしながら手帳に何かを書き込んでいく。

「貴女は……」

手帳に何を書き込んでいるのかを大体察した椛は文に呆れた視線を向けつつ、

「どうします?」

霊児にどうするかを問う。
問われた霊児は、

「どするって」

掌を妖精に向け、

「倒して先へと進んで行くだけだ」

倒して先へと進んで行くだけと言いながら弾幕を放ち、妖精を撃ち落していく。
霊児が弾幕を放ったのを合図にしたかの様に魔理沙、魅魔、にとり、椛の四人は弾幕を放って妖精達を撃ち落す。
因みに、文は弾幕を放たずに霊児達が弾幕を放っている様子を写真に撮るだけであったが。
妖精達を全て撃ち落しすと一同は弾幕を放つのを止め、

「文さん……少しは手伝おうとは思わないんですか?」

椛は呆れた声色で手伝おうとは思わないのかと言いながら文の方に顔を向ける。
顔を向けられた文は、

「そうは言っても、私が手伝う必要性なんて微塵も感じられなかったし。事実、私が手を出さなくても何の問題も無かったじゃない」

少しも悪びれた様子を見せずに、自分が手伝う必要性を微塵も感じられなかったと返す。
文の反応が何時も通りであったからか、

「……お前が何時も通りで何か安心したよ」

霊児は思わず安心したと呟く。

「いやー、そう言われる何か照れますね」
「褒めてねーよ」

若干頬を染めながら照れると言った文に褒めてはいない言う突っ込みを霊児が入れると、

「ねぇ、霊児」

魔理沙が霊児の服の端を引っ張って来た。

「ん? どうした?」
「あれあれ」

霊児が魔理沙の方に顔を向けると、魔理沙はある方向に指をさしていたので霊児は魔理沙が指をさした方向に顔を向ける。
魔理沙が指をさした先には、

「おおう……」

妖精の姿があった。
しかも、大量に。

「……眼下には無数の木々が見えるから妖精が現れても何の不思議は無いが……幾ら何でも多過ぎだろうに」
「ですね。私もこんな大量の妖精が闊歩をしているのを見た事何て殆ど無いですね……」

同じ様に魔理沙が指をさした方向を目を向けていた魅魔と文の二人は面倒臭そうな表情でそう口にする。
流石にあの数の妖精を相手にするのは面倒と感じている様だ。
まぁ、文に関しては自分も戦う破目になる可能性が出て来たからであろうが。
二人の発言を聞き、

「若しかして、妖怪の山も同じ様に大量の妖精が暴れていたりするんじゃ……」

椛は現時点での懸念事項を呟く。
が、

「それは大丈夫じゃない? 仮に妖怪の山で暴れられたとしても、直ぐに天狗達が鎮圧するだろうし」

仮に暴れられても直ぐに天狗達に鎮圧されるだろうと言うにとりの意見を聞き、

「あ、それもそうか」

椛は何処か安心した表情を浮かべた。
その後、

「どうする?」

にとりが霊児にどうするかと尋ねる。

「どうするって言われたら……」

尋ねられた事に対する答えの様に霊児は体を僅かに屈め、

「強行突破……だ!!」

気合を入れるかの様に強行突破だと言い、妖精の群れの中に突っ込んで行く。
霊児が動いたのと同時に妖精達は弾幕を放つ。
しかし、放たれた弾幕が霊児に当たる事は無かった。
体を僅かに動かしたり回転させたりと言った方法で霊児が射線上から体を離したからだ。
そして、妖精の群れの中心に来た所で霊児は止まり、

「……そら」

縦横無尽に回転しながら弾幕を放ち、妖精達を次々と撃ち落としていく。
霊児が弾幕を放ったのを合図にしたかの様に魔理沙、魅魔、にとり、椛の四人も弾幕を放って突っ込んで行った。
但し、文は弾幕を放たずに最後尾から写真を撮りながらではあるが。
幾ら妖精の数が多いと言っても霊児、魔理沙、魅魔、にとり、椛の五人が弾幕を放てば、

「……と、片付いたみたいだな」

然程時間を掛けずに妖精達を一掃する事が出来た。
妖精達を一掃し終えると霊児達は弾幕を放つのを止め、再び先へと進んで行く。
無論、進んでいる途中で邪魔する様に現れた妖精達を撃ち倒しながら。
そんな風に進んでから暫らくすると、

「……お?」

突如、妖精の襲撃が止んだ。
丁度、妖精が出て来ない場所にでも来たのだろうか。
理由はどうあれ、妖精の襲撃が止んだと言う事で霊児達は一旦進行を止め、

「……たく、本当に幾らでも出て来るんだな。妖精って言うのは」
「まぁ、仕方が無いんじゃないか? 妖精って言うのは自然そのものの様な存在だからな」
「序に言うなら、私等が妖精達のテリトリーの近くを通ってるか入ってるかだね。大量の妖精が現れて来るのは」
「普段であれば例え妖精達のテリトリーに入ったとしても、こんな風に襲い掛かられる事は無いんだけどね。やっぱり、この紅い霧が原因の様だね」
「うーん……大量の妖精相手と激闘……と言うのは珍しさはあってもインパクトには欠けれるわね」
「……本当に貴女はブレないですね。不本意ですが、そう言うところは尊敬出来ます」

霊児、魔理沙、魅魔、にとり、文、椛の六人はそれぞれ思い思いの事を口にし、そこから雑談に発展していく。
雑談にまで発展したのは、妖精の襲撃が止んだからであろう。
交わしていた雑談が落ち着き始め、そろそろ移動を再開し様と霊児達が思い始めた瞬間、

「……ん?」

前方の方から霊児達の方にふよふよと言った動作で黒い塊が近付いて来た。

「何だあれ? 新種の妖怪か?」

黒い塊を見て、魔理沙は新種の妖怪かと呟く。
魔理沙の呟きを聞き、

「あれは宵闇の妖怪、ルーミアですね。それと、彼女は"闇を操る程度の能力"を持っています」

文は近付いて来る者の名と有している能力を口にした。
"闇を操る程度の能力"。
名前だけなら相当強力な能力に聞こえる。
今近付いて来ている妖怪、ルーミアと言う妖怪は相当の力を有しているのではと霊児は考えたが、

「ですが、出来る事と言ったらあの様に自分の周囲を暗くする事位です」

ルーミアが"闇を操る程度の能力"で出来る事を文が言った為、直ぐに考えた事を忘却の彼方へと追いやり、

「……何か急に安っぽい能力に聞こえて来たな」

"闇を操る程度の能力"が急に安っぽくなったと漏らした時、黒い塊が消えて女の子が姿を現した。
肩口付近にまで伸ばした金色の髪に赤いリボンを付け、黒っぽい服を着た女の子が。
おまけに、何故か両手を広げている。
こいつがルーミアかと霊児、魔理沙、魅魔、にとり、椛の五人が思っていると、

「ねぇねぇ、皆で何所に行くのー?」

ルーミアが何所に行くのかと尋ねて来た。

「異変解決だ」
「異変?」

霊児が異変解決だと言うとルーミアが首を傾げてしまったので、

「この紅い霧だよ紅い霧。これを止める為に私等は動いているんだ」

魔理沙が異変解決の中身を説明する。

「そーなのかー」

魔理沙の説明でルーミアは分かったと言う様な返事をするが、表情から分かったのか分かっていないのかを察する事が出来なかった。
が、直ぐにどちらでも良いかと霊児は思い、

「処で……」
「何?」
「何で両手を広げてるんだ?」

ルーミアに両手を広げている理由を問う。

「これ? 聖者は十字架に磔にさられたって言う風に見えない?」

問われた事にルーミアが聖者は十字架に磔にされたとは見えないかと言って来たので、

「通行止めになら見える」
「私は人類は十進法を採用したに見えるぜ」

霊児と魔理沙は通行止めと人類は十進法を採用したになら見えると言う突っ込みを入れる。
霊児と魔理沙の突っ込みを聞き、ルーミアは顔を引き付かせながら一歩後ろに下がった。
自分のポーズにあの様な感想を抱かれてるとは思わなかった様だ。
少々ショックを受けた感じではあったが、ルーミアは直ぐに表情を戻し、

「ねぇねぇ、貴方達二人は食べれる人類?」

霊児と魔理沙に食べれる人類かと聞いて来た。
衝撃的な発言の様に思えるが、ルーミアは妖怪なので人間を食べても何の不思議も無い。
まぁ、食べて良いかと聞いて来る妖怪は滅多にいないであろうが。
それはそうと、大人しくルーミアに食われてやる気は霊児にも魔理沙にも無い。
先に進む為にも身の安全を確保する為にもさっさとルーミアを倒してしまおうと霊児と魔理沙が考えた時、

「ちょーっと待ったー!!」

にとりが大きな声を出しながら前へと出る。
そして、

「盟友を食べるだ何で私が許さないよ!!」

霊児と魔理沙を食べるのは自分が許さないと言う宣言を行う。
にとりの宣戦布告とも取れる発言を聞き、

「それじゃ……どうするの?」

ルーミアはどうするのかと尋ねる。
尋ねられた事に対し、にとりは不敵な笑みを浮かべ、

「勿論……これで勝負さ」

懐からスペルカードを取り出し、ルーミアに見せる。
どうやら、にとりは弾幕ごっこで勝負する気の様だ。
態々弾幕ごっこで戦いを仕掛けてたのは、体力の消耗や怪我の度合いの事を考えての事だろうか。
弾幕ごっこは遊びである為、通常の戦闘と違って決着を着けるまで戦ったとしても疲労や怪我の度合いと言ったものが圧倒的に少ないのである。
とは言え、弾幕ごっこは戦いごっこと言えるものなので何らかの過失や事故で大きな怪我を負う可能性は幾らか在るのだが。
兎も角、これからの進行の事を考えてにとりは弾幕ごっこで勝負を仕掛けたのだろう。
更に言うのあれば、にとりとルーミアは種族は違えど同じ妖怪だ。
霊児と魔理沙の事を食べたいと言ったとはいえ、同じ妖怪であるルーミアを不必要に傷付けたくは無いと考えたのかもしれない。
問題はルーミアが弾幕ごっこによる戦いを受け入れるかだが、

「良いよ。弾幕ごっこで」

ルーミアは簡単に弾幕ごっこでの勝負を受け入れた。

「決まりだね」

決まりと言いながらにとりが取り出していたスペルカードを懐に戻した瞬間、にとりとルーミアの弾幕ごっこが始まる。
弾幕ごっこが始まって弾幕が飛び交い始めた為、流れ弾に当たらない様にする為に霊児達は弾幕ごっこをしている二人から距離を取って行く。
ある程度距離が取れると、霊児達は離れるのを止めてにとりとルーミアの弾幕ごっこを観察する。
にとりは小さめの弾幕を放った後に、大き目の弾幕を放つと言うスタイルを。
対するルーミアは直線に並べた弾幕を三列程放ち、全方位に弾幕を放つと言ったスタイルを取っている。
弾幕を放ち合うにとりとルーミアを見ながら、

「いやー、弾幕ごっこは写真映えしますねー」

文は弾幕ごっこの様子を写真に撮っていく。

「また貴女は……と言いたいところですが、始まった弾幕ごっこに横槍を入れるのは無粋ですからね。今回は何も言いませんよ」

また写真を撮っている文に文句を言いたそうな表情を椛は浮かべたが、始まった弾幕ごっこに横槍を入れるのは無粋と言う事で椛は何も言わなかった。

「んー……私は基本的に弾幕ごっこをやる側だから、こうやって弾幕ごっこを観戦するってのは中々に新鮮だな」
「そうだね……基本的に弾幕ごっこをやる側だからね。私等は。私等の弾幕ごっこもこんな感じで見えていると言うのなら……中々に綺麗じゃないか」

基本的に弾幕ごっこをやる側である魔理沙と魅魔もそんな感想を漏らす。
この事から、文、椛、魔理沙、魅魔の四人は静観を決め込む様だ。
いや、正確には観戦する事を決め込んだと言ったところか。
文、椛、魔理沙、魅魔が写真を撮ったり応援の言葉を掛けたりと言った事をしている中、霊児はある事を考えていた。
考えている事と言うのは、弾幕ごっこの普及率に付いてだ。
ルーミアが弾幕ごっこによる戦いを素直に受けた事から、弾幕ごっこがそれなりに普及している事が分かる。
が、それでも完全に普及していると言う訳では無い。
幻想郷全体で見たら普及率は精々三割と言ったところだ。
しかし、弾幕ごっこが生み出された経緯を考えればこの程度の普及率では足りない。
最低でも八割は欲しいところだ。
と言う様な事を考えている間に、

「……っと」

流れ弾が飛んで来たので霊児は顔を傾けて弾幕を回避し、考え事を中断してにとりとルーミアの弾幕ごっこの観戦に意識を向ける。
意識を向けた先には、

「にとりが優勢だな」

弾幕を集中的に放っているにとりに対し、ルーミアは弾幕を放つのよりも回避行動を取る事を優先していると言う光景が映った。
ルーミアが回避行動に専念しているのは、弾幕を放つ事に集中していては容易く被弾してしまうと思ったからであろう。
だが、回避行動に専念しているだけでは敗北するのを先延ばしにするだけ。
その事にはルーミアも気付いている様で、状況を打開する為に懐に手を入れてスペルカードを取り出し、

「夜符『ナイトバード』」

スペルカードを発動させる。
スペルカードが発動した瞬間、ルーミアから横一列にばら撒く様な弾幕が幾つも放たれた。
迫り来る弾幕を見て、にとりは一旦弾幕を放つのを止めて回避行動に専念し始める。
どうやら、スペルカードが発動されたと言う事で用心している様だ。
が、にとりは直ぐにルーミアのスペルカードの突破口を見付けてしまった。
ルーミアが発動したスペルカードは展開がかなり早いのだがその反面、隙が結構あるのだ。
言うなれば、ルーミアが今回発動させたスペルカードは展開速度に惑わされずに如何に冷静に弾幕の特性を見極められるかどうかが鍵となる。
無論、霊児もルーミアが発動させたスペルカードの特性には気付いており、

「博打要素が高いが……中々に面白いスペルカードだな」

面白いスペルカードだと言う感想を漏らす。
同時に、にとりはスペルカードにはスペルカードだと言う様に懐に手を入れてスペルカードを取り出し、

「洪水『ウーズフラッディング』」

スペルカードを発動させる。
すると、にとりとルーミアが弾幕ごっこを行っている場の真横の方から水で出来た弾幕が現れた。
現れた弾幕は当然の様にルーミアを押し潰す様に迫っていく。
迫り来る弾幕を見たルーミアはスペルカードの発動を止め、慌てて弾幕と弾幕の間に体を滑り込ませる。
これで一安心とルーミアが思ったのも束の間、今度はにとりが弾幕を放って来た。
両サイド、正面から迫る弾幕。
一見逃げ場が無い様に見えるが、弾幕ごっこのルール上必ず逃げ場が存在する。
それ故にルーミアは逃げ場を探す為に慌てて顔を動かすが、

「ッ!!」

逃げ場を見付ける前にルーミアはにとりの弾幕に呑み込まれしまう。
にとりが発動したスペルカードがルーミアに呑まれていく様子を見ながら、にとりのスペルカードも中々に面白いと言う感想を霊児は抱く。
弾幕の量に気圧されて慌ててしまえば容易く弾幕の海に呑み込まれてしまうが、冷静さを失わなければちゃんと突破口が見えて来る。
今回、にとりが発動させたスペルカードはそんな特性を持っているものだ。
やはり、スペルカードは作る者によって色々と個性が出て来るなと霊児が思っていると、

「……お」

ルーミアが墜落して行く様子が目に映った。
今現在の高度は中々に高いが、妖怪であるルーミアなら真っ逆さまに墜落しても何の問題も無いだろう。
決着が完全に着いたと判断したからか、にとりはスペルカードの発動を止め、

「勝ったよー!!」

自身の勝利を宣言しながら霊児達の所へと戻って行く。
自分達の所へ近付いて来るにとりを見た魔理沙と椛は、

「おう、お疲れ」
「やったね、椛」

労いと勝利を祝う言葉を掛ける。
魔理沙と椛の発言を聞き、

「ありがとー」

にとりは礼の言葉を述べながら二人とハイタッチを交わす。
三人がハイタッチをしている間に、

「んー……中々に良い写真が撮れました」

文は良い写真が撮れたと言う事でホクホクとした表情を浮かべていた。

「んー……今回の感じだと、この先の道中でも戦いを仕掛けられそうだね」
「その時はまた倒して進めば良いさ」

魅魔と霊児そんな会話を交わした後、魔理沙、にとり、椛、文の四人が霊児の方に視線を向ける。
四人の視線を受け、四人が何かを言いたいのかを察した霊児は、

「よし、行くか」

移動を再開する旨を口にし、霊児は先へと進んで行く。
先へ進んで行った霊児の後に続く様に魔理沙、魅魔、にとり、椛、文の五人も移動を再開した。























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