にとりが弾幕ごっこでルーミアを倒し、霊児達が移動を再開してから幾らかの時間が経ったが、

「……平和だな」
「……平和だぜ」
「……平和だね」
「……平和だ」
「……平和ですね」
「……平和ねぇ」

妖精の襲撃が無く、平和な道中であった。
どの位平和であるのかと言うと、霊児、魔理沙、魅魔、にとり、椛、文の六人が口々に平和だと言う程にだ。
襲撃が無かった事で何時妖精の襲撃が来ても良い様に少々気を張っていた六人は、肩透かしを喰らった気分になっていた。
と言っても、本当に妖精が襲撃を仕掛けて来たら面倒臭い事此の上ないが。
そんな感じで少々気が抜けた雰囲気を霊児達が見せている時、

「……ん、霧が濃くなって来たな」

霊児は霧が濃くなって来た事に気付く。
霊児の発言を聞き、

「と言う事は、霧の湖に大分近付いたって事か?」

魔理沙は霧の湖に大分近付いたのかと尋ねる。
それに対し、

「そうですね……霧の湖は霧が充満している事が非常に多い場所です。ですので、霧が濃くなったと言う事は霧の湖に近付いて来ていると考えても
問題は無いでしょう」

椛は霧の湖に近付いていると判断しても良いと口にした。

「と言う事は、レミリア・スカーレットが居る館までもう少しって事?」
「そう言う事になるね。この先は更に霧が濃くなっている事だろうし、少し用心した方が良いかもね」

にとりの考えを魅魔は肯定し、この先は霧も更に濃くなっているから少し用心する様に言う。
魅魔の忠告とも言える助言を聞き、一同は少し気を引き締め直す。
それから少しすると、

「お……あれは……」

霊児達の眼下に大きな湖が見え始めた。
大きな湖が見えたと言う事から、

「霧の湖に着いたみたいだな」

霊児は霧の湖に着いたのだと判断する。
同時に一同は一旦進行を止め、

「……しっかし、流石霧の湖と言った感じですね。霧が濃い濃い」
「でも……霧の湖ってこんなに霧が濃かったっけ?」
「多分……ここの霧と紅い霧が混ざった事で何時もより霧がかなり濃くなっているんだと思う」
「濃くなるにしても……限度ってものがあるだろうに……」
「これじゃあ、一寸先は闇……と言うより一寸先は霧って感じですね」

文、にとり、椛、魅魔、魔理沙の五人は口々に霧が濃いと漏らした。
確かに、この五人が漏らした通り今の霧の湖の霧は非常に濃い。
普段の霧の湖であれば霧が濃くても少し先程度なら見えるのに、今は紅い霧と混ざってその少し先すら見えない。
レミリア・スカーレットが充満させた紅い霧は、こんな所にも弊害を残していた様だ。

「……ま、この紅い霧はレミリア・スカーレットを倒せば消えるだろ。で、椛。この霧だけどレミリア・スカーレットが居る館が在る方向は分かるか?」

紅い霧はレミリア・スカーレットを倒せば消えると口にしながら、霊児は椛にレミリア・スカーレットが居る館の居場所は分かるかと問う。
問われた椛は、

「あ、はい。少し待ってください」

少し待つ様に言い、集中し始める。
そして、集中し始めてから幾らかの時間が過ぎると、

「……………………あっちの方ですね」

椛はある方向に向けて指をさす。
にとりは少し驚いた表情を浮かべながら椛が指をさした方向に視線を向け、

「椛にしては時間が掛かってたね。この霧の濃さだと、椛の"千里先まで見通す程度の能力"でも時間が掛かるもの何だ」
「時間が掛かったのは霧が濃いせいと言うより、紅い霧のせいだね」

椛の能力でも時間が掛かるのかと呟くと、椛は時間が掛かった原因は霧が濃い事と言うよりも紅い霧のせいだと返す。

「どう言う事?」
「んー……私の能力で何かを探す場合、真っ暗闇でも霧が濃くても結構確りと見えるんだ。けど、今回に限っては見える光景全てが紅い霧で覆われていた。
つまりはそう言う事」

首を傾げて疑問気な表情を浮かべたにとりに、椛は自分の能力の中身と見えた光景に付いて簡単に説明する。
椛の説明を聞き、

「成程。つまり、この紅い霧には映像から情報を得る事を邪魔する力が有るって事……だね」

にとりは紅い霧には映像から情報を得る事を邪魔する力が有ると言う判断を下す。
紅い霧にまた別の能力がある事が分かり、少し緊張した雰囲気が場に流れ始める。
流れ始めた雰囲気を感じ取ったからか、

「でもま、直接目で見る分には色以外は普通の霧と大差無いんだ。そう悲観する事も無いだろ」

霊児は直接目で見る分には色以外は普通の霧と大差無いんだから悲観する必要は無いと断言した。
そんな霊児の発言で場に流れた雰囲気が払拭され始めた中、

「写真を撮る側からすれば、霧が出ている時点で悲観する事何ですけどね……」

文は写真を撮る側からすれば十分に悲観する事だと漏らす。
確かに、写真を撮る者からすればこの霧のせいで被写体を綺麗に写す事は出来ないであろう。
だが、霊児、魔理沙、魅魔、にとり、椛の五人はカメラを持っている訳では無い。
なので、五人は文の訴えを無視するかの様にレミリア・スカーレットが居る館が在る方に体を向ける。

「一寸、無視しないでくださーい」

文が自分の事を無視するなと主張しているが、

「さて……一寸した休憩になったし、そろそろ行くか」
「だな。さっさとレミリア・スカーレットって言う吸血鬼を倒してこの紅い霧を晴らさせて貰おうか」
「意気込むのは良いけど、この霧の濃度だ。逸れない様に気を付けなよ」
「ですね。一回逸れたら合流するのはかなりの手間が掛かると思いますし」
「私の能力で探す事は出来るだろうけど……館と比べたら探す対象物がかなり小さいからね。見付けるのにはかなり時間が掛かると思う。ですから、
逸れない様に細心の注意を払ってください」

霊児、魔理沙、魅魔、にとり、椛の五人は文の主張を無視しながら移動を再開する旨と注意事項を伝え合う。
またも無視された事に文は不満気な表情を浮かべるが、霊児達は移動を再開してしまったので、

「あ、待ってくださーい!!」

文は慌てた表情になりながら霊児達の後を慌てて追い掛けて行った。
自分達の後を慌てて追い掛けて来ている文を見て、

「何してるんですか、文さん。逸れない様に細心の払ってくださいと言ったばかりじゃないですか」

椛は逸れない様にと言ったばかりなのに何をしているのかと言う文句を言う。
椛の文句を皮切りに、

「逸れない様にって……貴女達が私を置いて先に行ったんでしょうが」
「おや、文さんのスピードなら余裕で付いて来れると思ってたんですけどね。買い被り過ぎでしたか?」
「……言ってくれるじゃない」
「言いましたが何か?」

何時の間にか椛と文が喧嘩しそうな雰囲気になり始めた。
こんな状況下で喧嘩されたら堪ったものじゃないと思った魔理沙が仲裁に入ろうとしたが、

「大丈夫大丈夫。あれで結構仲が良いから」

それを遮る様ににとりがあれで結構仲が良いから心配要らないと口にする。
その瞬間、

「「誰が!!」」

椛と文の視線がにとりの方に向いた。
二人の矛先が自分の方に向いたのを感じ取ったにとりは、

「ひゅい!?」

悲鳴を上げながら魔理沙の後ろに隠れてしまう。
つい先程まで喧嘩しそうだったと言うのに共通の敵とも言える様な存在が現れたら直ぐに手を結んだ事から、

「ほんとだ。確かに結構仲が良いな」

魔理沙はにとりが口にした椛と文は結構仲が良いと言う発言に納得する。

「「だから誰が!!」」

魔理沙が納得した内容に椛と文は心外だと言わんばかりの表情を浮かべた時、

「……ん?」
「……お?」
「……む?」
「……あれ?」
「……と?」
「……あや?」

霊児達が居る場所に向けて弾幕が飛んで来た。
普通の霧と紅い霧が合わさって視界が非常に悪いこの状況。
避けるのは困難と思われたが霊児、魔理沙、魅魔、にとり、椛、文の六人は一旦進行を止め、苦も無く迫り来る弾幕を避けていく。
弾幕を避けながら、

「ふむ……弾幕の射線を見るに、弾幕を放っている者は私等の正確な位置を特定出来てはいない様だね」

魅魔は弾幕を放っているものは自分達の正確な位置を特定出来ない無いと推察する。
魅魔の推察を聞き、

「と言う事は、何か居るのを感じ取ったから取り敢えず攻撃して来たって事か」

何か居るのを感じ取ったから取り敢えず攻撃をして来たのかと霊児は考え、弾幕が飛んで来た方に弾幕を何発か放つ。
霊児が放った弾幕は霧の中へと突っ込んで行き、爆発を起こす。
爆発が発生した影響で、

「……おお」

充満している霧が少しだけ吹っ飛んだ。
少しだけとは言え霧が吹っ飛んだ事で僅かだが視界が良くなり、弾幕を放って来た者の正体が分かる。
弾幕を放った来た者は回転する謎の飛行物体であった。
回転する謎の飛行物体は何体も居るが、その内の数体程は墜落して行っている。
どうやら、墜落して行っているのは霊児が弾幕を当てた者の様だ。

「あや、流石ですね。弾幕の射線だけで弾幕を放っている者の正確な位置を掴むとは」

濃い霧の中で回転する謎の飛行物体に弾幕を当てた霊児に文が称賛の言葉を掛けた時、回転する謎の飛行物体は霊児達に向けて一斉に弾幕を放って来た。
今度はお互いの姿がある程度明確になっているからか、回転する謎の飛行物体が放つ弾幕は綺麗に霊児達の方へと向って行く。
しかし、射線が正確になったからと言って弾幕が当たるとは限らず、

「よっと」
「ほっと」
「おっと」
「とと」
「っと」
「んー……一応、何枚かは写真に収めて置きますか」

霊児、魔理沙、魅魔、にとり、椛、文の六人は余裕の表情で迫り来る弾幕を避けていく。
そして、文を除いた五人がお返しと言わんばかりに回転する謎の飛行物体に向けて弾幕を放つ。
霊児達が放った弾幕は回転する謎の飛行物体に次々と着弾し、爆発が発生する。
爆発が発生した事でまた霧が吹っ飛び、回転する謎の飛行物体が墜落していく様子が一同の目に映った。
それを見ながら、

「……ここから先もこの霧の中から攻撃を仕掛けて来る者が多そうですね」

椛はこの先も霧の中から攻撃を仕掛けて者が多そうだと考える。
椛の考えを聞き、

「まぁ、ある程度神経張ってれば攻撃をされたって言うのは感じ取れるけど……ずっと神経張ってるのは疲れるよね」

ずっと神経を張っていれば攻撃を察知する事は出来るが、それでは疲れるとにとりは言う。
そんな二人の話を聞き、

「と言っても、霧の湖全域の霧の濃度が全て一定と言う訳でも無いでしょう。少し進めば霧が晴れてる所にも……そうだ。そう言えば霊児はそれなりの
頻度でこの霧の湖に足を運んでいますよね。でしたら、どの辺りから霧が薄くなると言うのが分かるのでは?」

文は霧の湖全域の霧の濃度が全て一定では無いと口にし、思い出したかの様に霊児ならどの辺りで霧が薄くなるのか知っているのではと尋ねる。
尋ねられた事に、

「分からないぞ。霧の湖に足を運んでるって言っても俺は水を汲むか魚を釣るって事位しかしていないしな」

霊児は霧の湖に足を運んでいると言っても水汲みと魚釣り位しかやっていないので何所から霧が薄くなっているかは分からないと返し、

「と言うか、お前なら知ってるんじゃないのか? ネタ集めで幻想郷中を飛び回ってるんだろ」

ネタ集めで幻想郷中を飛び回ってる文なら霧が薄くなる地点を知っているのではと言う尤もらしい発言を行う。
霊児の発言を聞き、尤もだと思った魔理沙、魅魔、にとり、椛が文の方に顔を向けると、

「ご期待を裏切る様で悪いのですが、私も知らないんですよ。と言うのも、霧の湖はこれと言ってネタにする様な出来事が無いのです。あったとしても
精々……妖精同士がいざこざを起こしたり、人里の人間が釣りに来ると言う事位ですからね」

ネタにする様な出来事が特に起こったりしないので、自分も霧の湖にはそこまで無い事を文は話す。
結局、誰もどの地点から霧が薄くなる事を知らなかった。
だが、直ぐに進んで行けばそのうち霧が薄くなるだろうと言う少々楽観的な結論に霊児達は達する。
なので、霊児達はこの霧が濃い地帯を抜ける為に移動を再開した。
ある程度進んで行けば霧の密度が薄くなっている場所に着く。

「おー!! かなり見易くなったな」

先程までと比べて周囲の光景がかなり見易くなった事で、魔理沙は感嘆の声を漏らす。
魔理沙が漏らした声の通り、先程までの霧が濃かった場所と比べたら見易さにはかなり差がある。

「……ふーむ、この程度ならかなり近付かなくても写真は撮れそうね」

文が霧の濃度を見て写真を撮るのにもかなり近付く必要は無い判断している間に、

「そう言えば、あれっ切り攻撃されるって事は無かっね」
「そうだね。一応用心はしてたから、少し拍子抜けした気分」

にとりと椛は霧が濃い場所で回転する謎の飛行物体が襲撃を仕掛けて来て以来、何の襲撃も無かった事を話題に出した。
その瞬間、

「どうやら、拍子抜けた気分にはならなさそうだよ」

魅魔は拍子抜けした気分にはならなさそうだと言う。
魅魔の発言が耳に入った一同が魅魔の方に顔を向けた時、霊児達に向けて無数の弾幕が飛んで来た。
飛んで来た弾幕を避ける為に霊児は再び進行を止めて回避行動を取り、顔を動かしながら誰が弾幕を放って来ているのかを確認する。
顔を動かした霊児の目には、

「弾幕を放って来てるのは……妖精か」

何体もの妖精が弾幕を放ってる様子が映った。
弾幕を放って来た者の正体は妖精であった様だ。
妖精の姿を見るのはさっき振りだなと霊児が思っていると、

「今、弾幕を放って来ている妖精……こっちに来る前に襲って来た妖精と比べて強くなってないか?」

同じ様に回避行動を取っている魔理沙が今弾幕を放って来ている妖精は先程現れた妖精と比べて強くなっていないかと呟く。
魔理沙の呟きを聞き、

「んー……言われて見れば確かに。弾幕の量、弾速、密度の全てが今現れてる妖精の方が上だね」

これまた同じ様に回避行動を取っているにとりも今弾幕を放って来ている妖精の方が強いと言う反応に同意を示す。
どうやら、霊児以外の面々も進行を止めて回避行動に専念している様だ。
魔理沙とにとりの二人が妖精が強くなったと言っている事から、

「……やはり、文さんの考え通りこの紅い霧には妖精を強くする効果でも有るのかな? 先程出会った妖精と比べてこっちの妖精の方が強いのは紅い霧を
出している者がこっちの方が近いからと言う事で説明が着くし」

椛は文の考え通り紅い霧には妖精を強くする効果が有るのではと悩み始める。
椛が悩んでいるのを余所に、

「ふむ……問題は妖精の戦闘能力の上昇が興奮しているからなのか、それとも紅い霧そのものの効果なのか。この二つの内、どちらかなのかで今後の対応が
少し変わって来ますね」

文は妖精の戦闘能力上昇を興奮しているからか、それとも紅い霧そのものの効果のどちらかなのかを考え始めた。
悩み事や考え事に集中し始めた椛と文の二人を見て、

「そう考え込む必要は無いよ。強かろうが弱かろうが倒す事には変わりは無いんだ。紅い霧には妖精を強くする効果が有るって事だけ分かれば十分さ」

魅魔が考え込む必要は無いと口にする。
それを聞き、

「確かに……そう言われればそうですね」
「そう……ですね。今、考えるべき事ではないですね」

文と椛は納得した表情を浮かべて考え事と止め、悩んでいた事を頭から追いやった。

「そうそう。考え事に集中し過ぎて攻撃を避けれずにダメージを負うって言うのは馬鹿らしいからね。とは言え……確認だけはして置くか」

考え事に集中し過ぎて被弾すのは馬鹿らしいと言いつつも、確認だけはして置くと呟きながら魅魔は自身の杖を前方に突き出す。
すると、杖の先端から無数のレーザーが放たれた。
放たれたレーザーは全て妖精達に向かって行き、着弾して妖精達を撃ち落していく。
妖精達が居なくなり、弾幕が放たれなくなった事で霊児達は回避行動を止めた。
同時に、

「流石魅魔様!! 鮮やかなお手並みでした!!」

瞬く間に妖精達を一掃してしまった魅魔に魔理沙は尊敬の眼差しを向け、称賛する言葉を述べる。

「ま、この程度は朝飯前さ」

特に謙遜する様子を見せずに魅魔が杖を自身の肩に掛けた時、

「どうだ? 何か分かったか?」

霊児は魅魔に何か分かったのかと問い掛けた。
問い掛けられた事を、

「ん? ああ、勿論さ」

魅魔は肯定し、

「紅い霧のお陰かまでは分からんが、妖精達は確かに強くなってる。けど、強くなっているのは攻撃性能だけさ。防御力やスピード、反射神経と言ったものは
大して変わっていないみたいだよ」

強くなっているのは攻撃性能だけで他は平時の時と変わってはいないと言う事を霊児達に伝え、

「纏めると、妖精の放つ弾幕の量、範囲、密度、弾速に気を付けろって事だね」

弾幕の量、範囲、密度、弾速に気を付けろと言う言葉で締め括る。
魅魔から得た情報で霊児達は今後の立ち回りを決め、再び移動を再開した。
再び移動を再開してから少し経つと、

「……ん?」

霊児達の進行方向上に一体の妖精が現れる。
緑色の髪をサイドテールにし、青と白で構成された服を着た妖精が。
今まで現れた無数の妖精達とは何かが違う。
その様な事を霊児達が感じて動きを止めた時、妖精は弾幕を放って来た。
迫り来る弾幕を避ける為、霊児達は当然の様に回避行動を取る。
回避行動を取っている中、

「……ん?」

霊児はある事に気付く。
気付いた事と言うのは、この妖精が放つ弾幕は今まで現れた妖精が放つ弾幕とは違うと言う事だ。
今まで現れた妖精は取り敢えず弾幕を放つと言った感じであったのだが、この妖精は違う。
この妖精はある程度考えながら弾幕を放っているのだ。
何故、この妖精だけがそんな事を出来るのか。
それが気に掛かった霊児は、相手の出方を伺う様に弾幕を何発か放つ。
霊児が弾幕を放ったのを見た妖精は弾幕を放つのを止め、姿を消した。
姿を消した妖精を見て、

「消えた……いや、ワープしたのか」

霊児はワープをしたのだと推察し、顔を動かす。
ワープした妖精が何処に姿を現すかを探す為だ。
再び姿を現すまで時間が掛かると思われたが、思いの外妖精は早くに姿を現して再び弾幕を放って来た。
放たれた弾幕に反応した霊児は体を傾けながら再度妖精に向けて何発かの弾幕を放つ。
すると、妖精はまた弾幕を放つのを止めてワープを行って姿を消す。
そして、再び姿を現して弾幕を放って来た。

「……おっと」

迫り来る弾幕を避け、霊児が妖精の方に顔を向けると妖精は三度ワープを行って姿を消す。

「……俺が攻勢に出始めてから急にワープを使い始めた……か」

霊児が攻勢に出始めたのを見て、妖精は急に戦い方を変えた。
この事から、霊児はこの妖精には考えながら戦っている事を確信する。
しかし、考えながら戦っていると言ってもこの妖精の戦い方は複雑なものではない。
妖精の戦い方はワープで姿を消し、相手を攪乱しながら姿を現して弾幕を放つと言った行為を繰り返すだけの単純なものだ。
妖精の戦い方を直ぐに理解する事が出来たからか、

「……さて、さっさと終わらせて貰うか」

霊児はさっさと戦いを終わらせる事を決め、まだ妖精が現れていないと言うのに左腰に装備している短剣を左手で引き抜いて投擲を行う。
投擲された短剣は何も無い空間を突き進んで行ったが、ある空間を通過した瞬間に消えていた妖精が姿を現す。
妖精が現れた場所はたった今、短剣が通過した場所だ。
狙い通りと霊児は思いながら、二重結界式移動術を発動して投擲した短剣へと跳ぶ。
跳んだ霊児は妖精と背中合わせになる様な形で現れ、投擲された短剣を左手で掴みながら霊力で出来た弾を右手から生み出し、

「そら」

振り返りながら生み出した弾を妖精の後頭部に叩き込む。
叩き込まれた弾が爆発を起こし、爆発の流れに乗る様にして霊児が後ろに下がると、

「あ、あれ?」

妖精は我に返ったかの様に周囲の様子を伺う様に顔を動かす。
顔を動かしている中で妖精の目に魔理沙、魅魔、にとり、椛、文、そして霊児の姿が映る。

「え、えーと……」

六人の姿を見た後、妖精は何かを考え込み、

「ッ!!」

驚いた表情を浮かべながら勢い良く顔を上げ、何所かへと逃げ去って行った。
逃げて行った妖精を見送りながら霊児が短剣を鞘に収めた時、

「お疲れ、霊児」

右手を上げながら魔理沙が霊児の方に近付いて来る。
近付いて来た魔理沙を見て、魔理沙が何をしたいのかを察した霊児は、

「おう」

右手を振るい、魔理沙とハイタッチを交わす。
そのタイミングで魅魔、にとり、椛、文の四人も霊児の傍まで近付き、

「それで、何か分かったのかい?」

魅魔が霊児に何か分かったのかと尋ねる。

「ああ。どうも、ある一定以上の強さを持っている妖精なら完全に暴走するって訳じゃ無いみたい何だ。実際、今の妖精はある程度考えながら弾幕を
放ってたしな」

尋ねられた事を霊児は肯定しながら分かった事を四人に話し、

「と言っても、あれ位かそれ以上の強さを持った妖精はそんなに多くは居ないからな。また今の様な戦い方をする妖精が出て来る事は……有るかもな」

今の妖精程の強さを持った妖精はそんな多くは居ないので、今の様な戦い方をする妖精に会う事は無いと言い掛けたところで思い出す。
今の妖精よりも強い妖精がこの霧の湖で頻繁に見られている事を。

「あや? 霊児さんは今の妖精よりも強い妖精を御存知で?」
「ああ、チルノって言う妖精だ」

文が霊児に今の妖精よりも強い妖精を知っているのかと問うと、霊児からチルノと言う妖精の名が出される。
チルノの名前を聞き、

「チルノ……ああ、あの氷精ですか。確かに、あの妖精はそこ等の妖精よりもずっと強いですからね。あの妖精が只現れては弾幕を放って来ると言う
戦い方をするとは思えませんね」

文はチルノなら今まで襲い掛かって来た大多数の妖精の様な戦い方はしないであろうと呟く。
元々それなりの強さを誇っているチルノが他の妖精達と同じ様にこの紅い霧で強化されているのであれば少々厄介ではあるが、

「……ま、チルノが出て来たら何時も通り倒せば良いだろう。さっさと先へ進もうぜ」

どれだけ力を上げていたとしても出て来たら倒せば良いだけと霊児は言い、早く先に進む様に促して再び先へと進んで行く。
一人で先へ進んで行ってしまった霊児の後を追う様に魔理沙、魅魔、にとり、椛、文の五人も移動を再開する。
霊児達が移動を再開してから少し時間が経てば、

「……またか」

当然の様に襲撃者が現れた。
最初に現れたのは何体もの回転する謎の飛行物体。
回転する謎の飛行物体は現れて早々に弾幕を放って来た。
放たれた弾幕を見た霊児達は散開する事で弾幕の射線から逃れ、お返しと言わんばかりに回転する謎の飛行物体に向けて弾幕を放つ。
因みに、弾幕を放っているのは霊児、魔理沙、魅魔、にとり、椛の五人だけで文は写真を撮る事に専念している。
兎も角、霊児達が放った弾幕は次々と回転する謎の飛行物体を撃ち落していく。
弾幕を放っているのが五人と言う事もあり、そう時間も掛けずに回転する謎の飛行物体を一掃し終える事が出来た。
回転する謎の飛行物体を一掃し終え、霊児達が一息吐こうと思った矢先にまた襲撃者が現れる。
回転する謎の飛行物体の次に現れたのは鳥を思わせる様な白い塊状の物体だ。
しかも、現れたのは一体や二体ではない。
文字通り、大量に現れたのだ。
それだけなら良かったのだが、現れた白い塊状の物体は次から次へと体当たりを仕掛けて来た。
言うなれば、自分の体そのものを使った弾幕であろうか。
しかし、霊児達に取っては狙う対象が弾幕を放つ者から弾幕に変わっただけ。
この白い塊状の物体も然程時間を掛けずに一掃された。
白い塊状の物体を一掃し終えたのと同時に襲撃がピタリと止んだ為、霊児達は今ので最後だと判断して弾幕を放つのを止めて進行ペースを戻す。
襲撃者が来ない平和な道中を進んでいる中で、

「大分進んで来てるけど、何時になったら湖の終わりが見えて来るんだ?」

魔理沙は何時になったら湖の終わりは見えるのか言う疑問を漏らす。
魔理沙の疑問が耳に入ったからか、

「んー……そろそろ終わりが見えて来る筈だ」

霊児がそろそろ終わりが見えて来る筈だと返す。
霊児から返って来た返答を聞き、

「そっか。じゃ、そろそろレミリア・スカーレットって言う吸血鬼が居る館が見えて来るのか」

魔理沙がそろそろ目的地が見えて来るのかと口にすると、

「そうですね……ここまで来れば後少しですね」

椛はレミリア・スカーレットの館まで後少しだと言う。
その瞬間、

「ふっふっふ、こんな所で会うとはね……」

チルノが腕を組み、不敵な笑みを浮かべながら霊児達の進行方向上に現れた。
自分達の進行方向上にチルノが現れた事で霊児達は進行を止め、

「あやや、噂をすれば影……と言うのは、この事を言うのかもしれないですね」

噂をすれば影と言うのはこの事を言うのではと文は呟く。

「確かにな」

霊児は文の呟きに同意しつつ、

「一応聞いて置くが、何の用だ」

何の用かと尋ねる。
用件を尋ねられたチルノは、

「何の用かって……そんなもの決まってるわ!!」

霊児に指先を突き付け、

「この前のお返しよ!!」

この前のお返しだと大きな声で宣言した。

「お返し?」

霊児は首を傾げながら、過去の記憶を遡っていく。
チルノが宣言したこの前と言う台詞から、ここ最近の出来事を。
記憶を遡っていった結果、霊児は前にチルノを弾幕ごっこで負かした事を思い出す。
これ以外に仕返しをされる出来事がなかった為、

「…………ああ、前に弾幕ごっこで負けた事に対する仕返しか?」

霊児は確認する様に以前弾幕ごっこに負けた事に対する仕返しかと尋ねる。
すると、

「あれは負けたんじゃない!! あれはあたいが見逃してやっただけよ!!」

負けたのではなく見逃してやったのだと言う主張をチルノがして来た。
あの弾幕ごっこは普通に霊児の勝ちであったが、ここでそれを否定すると話が拗れると感じたからか、

「あー……はいはい。それで良いよ」

霊児は面倒臭そうな表情を浮かべ、チルノの言い分を肯定する。
少々気が立っているチルノに面倒臭がっている霊児。
そんな二人を余所に、チルノが普通に霊児と会話している事から、

「今までの妖精と違って普通に話してる。霊児さんが言った通りなら、この妖精は今まで現れた妖精よりもずっと強いと言う事になりますね」

椛はチルノを今まで現れた妖精よりもずっと強い妖精であると考える。
考えていた事が自然に口から漏れ、漏れた言葉がチルノに耳に入ったからか、

「ふふん、当然よ。何たって、あたいは最強だからね!!」

チルノは機嫌が良さそうな表情を浮かべ、胸を張り出した。
機嫌が良くなったチルノを見て、

「ああ、お前は最強だからな」

霊児はチルノを煽て、

「じゃ、そう言う事で」

先へと進もうとする。

「うん、じゃ……って違う!! あんたはこのあたいと戦うのよ!!」

余りに自然な動作で先に進もうとした霊児をチルノは思わず通してしまいそうになったが、寸前で気付いて止めに入った。

「……ちっ」
「今日のあたいは絶好調だからね!! あんたはこの最強のあたいが倒して上げるわ!!」

今の状況を有耶無耶にして素通りする作戦が失敗した事で舌打ちする霊児とは対照的に、チルノは自信満々の表情で霊児を倒してやると言い放つ。
確実に一戦交える事になった事を確信した霊児は思いっ切り面倒臭そうな表情を浮かべ、自分を指名して来たのだから一歩前に出ようとする。
が、その前に、

「あっはっは!! 中々に元気の良いお嬢ちゃんじゃないか」

魅魔はご機嫌と言った表情になりながら一歩前に出た。
魅魔が前に出た事で、

「? 誰よ、あんた?」

チルノは疑問気な表情になりながら誰だと問う。
自分の事を問われたからか、

「私かい? 私は魅魔って言う魔法使いさ」

魅魔は不敵な笑みを浮かべながら自己紹介を行い、

「あんたみたいな元気の良いのは結構好きでね。どうだい、一寸私と遊ばないかい?」

霊児とではなく自分と戦わないかと言い出した。
魅魔の宣戦布告とも言える宣言を聞き、

「あんたと? 別にあたいはあんたに用はないんだけど……」

チルノは余り乗り気じゃない表情を浮かべる。
それも無理はない。
チルノの狙いはあくまで霊児なのだから。
しかし、そんなチルノの反応は予想出来ていた様で、

「おや、逃げるのかい? 最強と言っている割には、意外と臆病なんだね」

魅魔は待っていましたと言わんばかりに臆病だなと言う言葉を発した。
誰の目から見ても明らかな挑発であったが、

「良いわ!! だったら先にあんたから倒してやる!!」

チルノはその挑発に容易く乗り、氷の弾幕を魅魔に向けて放つ。
迫り来る弾幕を見ながら、

「と言う訳で、この子の相手は私がするよ」

魅魔はチルノの相手は自分がすると言い残し、弾幕の中へと突っ込んで行った。
チルノが放った弾幕の流れ弾が霊児達の方にまで来た為、霊児達は各々の方法で弾幕を避けていく。
その中で霊児はチルノ戦い振りを観察し、

「……今のチルノの動き、真冬の時を思わせるな」

チルノの動きなどが真冬の時に近いと言う事に気付く。
妖精はその日その日で強さが変わって来るのだが、チルノ氷の妖精であるので季節によっても強さが変わってくる。
具体的に言うのであれば、チルノが最も強さを発揮出来る季節は冬。
そして、今の季節は冬の反対とも言える夏。
だと言うのに、今のチルノの戦闘能力は冬の時に近い。
今まで出て来た妖精とチルノの戦闘能力の上昇度合いが明らかに違う事から、

「……紅い霧で強くなる度合いには妖精によって個人差があるのか?」

紅い霧による妖精の戦闘能力の上昇度合いには個人差があるのではと霊児が推察していると、

「ここに居ると流れ弾が来るから、少し移動しないか? 魅魔様なら任せても何の問題もないし」

魔理沙が流れ弾が来るからこの場は魅魔に任せてここから離れないかと言って来た。
魔理沙の言う通り、ここでは流れ弾を常時避ける必要が出て来る。
序に言えば、魅魔の実力ならば一人でチルノの相手をさせても何の問題も無い。
だからか、

「そうだな、一旦下がるか」

霊児は魔理沙の意見に同意し、魅魔とチルノから距離を取る。
同時に魔理沙、にとり、椛、文の四人も霊児と同じ様に魅魔とチルノから距離を取った。
二人からある程度距離が取れると、霊児達は距離を取る事を止めて再び魅魔とチルノの戦いに視線を移す。
視線を移すと無作為に氷の弾幕を放っているチルノの対し魅魔は端にレーザー、中央に密度の高い弾幕を集中させると言うスタイルを取っている事が分かった。
二人の戦いを観察し始めてから少し時間が経った時、

「……ん? 弾幕の威力が弱い?」

霊児は魅魔とチルノが放っている攻撃の威力がかなり低い事を感じ取る。
チルノは兎も角、魅魔は牽制だとしてもあそこまで低い攻撃をする必要はないだろう。
ならば何故と言う疑問を抱いた瞬間、霊児は理解した。
魅魔とチルノは弾幕ごっこをしているのだと言う事に。
別に殺し合いをし様と言う雰囲気の中で戦いを始めた訳では無いので、弾幕ごっこで戦い始めたとしても別に不思議は無い。
とは言え、打ち合わせも無しに弾幕ごっこで戦いを始めたと言う事は、

「……思っていた以上に弾幕ごっこは普及してるって事か?」

霊児が思っていた以上に弾幕ごっこが普及している可能性がある。
だとしたら重畳だが、チルノは元々弾幕ごっこを知っていた。
これだけで思っていた以上に普及していると判断するのは早計だろう。
楽観視は禁物かと霊児が考え始めると、

「……ん?」

魅魔とチルノが弾幕ごっこをしている周囲を文が飛び回っているのが目に映り始めた。
文があんな所に居る理由を霊児は何となく察したが、一応確認の為に椛の方に視線を移す。
霊児の視線に気付いた椛は、

「何でも、この紅い霧に邪魔されない距離まで行って写真を撮るとの事です」

文が魅魔とチルノの周囲を飛び回っている理由を話し、大きな溜息を一つ吐く。
態々流れ弾が飛び交う中に突っ込んで行くとは、何とも記者魂が溢れる事である。
まぁ、文の力量なら流れ弾程度を避ける事など位造作も無い事であろうが。
取り敢えず文の事は放って置く事を決め、二人の弾幕ごっこに視線を戻す。
戻した視線の先には、余裕の表情を浮かべている魅魔と苦しそうな表情を浮かべているチルノが見えた。
どうやら、弾幕ごっこの主導権は完全に魅魔が握っている様だ。
魅魔が優勢であるからか、

「魅魔様ー!! 後少しです!! その儘押し切れますよ!!」

魔理沙は魅魔にその儘押し切る事を促す様な声援を掛ける。
そのタイミングで、魅魔は弾幕とレーザーの量を倍増させた。
魔理沙の声援の声援に応えたのだろうか。
兎も角、攻撃が激しくなった事で魅魔の勝利は揺ぎ無いものとなったであろう。
魅魔の勝利が確定するまで後少しと思われたその時、チルノは懐に手を入れてスペルカードを取り出し、

「凍符『パーフェクトフリーズ』」

スペルカードを発動させた。

「……む」

チルノがスペルカードが発動させた事で、魅魔はレーザーと弾幕を放つのを止めて様子を見始める。
どうやら、チルノが発動させたスペルカードに一定の警戒を払っている様だ。
魅魔が警戒している間に、チルノは結構な広範囲に弾幕を放つ。
放たれた弾幕は範囲が広いと言う事もあり、魅魔に弾幕が当たる事はなかったが、

「……囲んで来たか」

代わりに周囲を弾幕で囲まれてしまう。
だが、囲まれていると言っても抜け出せる隙間は多々ある。
これならば直ぐに包囲網も突破する事も、弾幕の隙間を縫う様にしてチルノに攻撃を加える事も可能だ。
しかし、スペルカードで発動した技がこの程度で終わる筈が無い。
そう考えた魅魔がもう少し様子を見る事を決めた時、

「……弾幕が氷った?」

チルノが放った弾幕が氷り、弾幕の動きが止まる。
自分の放った弾幕を氷らせ、弾幕の動きそのものを止めると言う斬新な発想に魅魔が驚いている間に、

「いっ……けー!!」

チルノは直線上に何個かの弾が配置されたタイプの弾幕を幾つか放って来た。
相手の動きを制限した状態で攻撃を加えるのがチルノが発動させたスペルカードの特性かと魅魔が考えた瞬間、

「何……」

氷った事で動きを止めていた弾幕が一斉に動き始めた。
それも無作為に。
自分を狙って来る弾幕と無作為に動く弾幕。
方向性の異なる二種類の弾幕を魅魔は器用に避けていく。
魅魔が弾幕を避けていく事で場に残っていた弾幕が減っていくと、チルノは減った弾幕を補充するかの様に再び結構な広範囲に弾幕を放つ。
放たれた弾幕は先程と同じ様に氷って動きを止め、チルノが直線上に何個かの弾が配置されたタイプの弾幕を幾つか放ってばまた無作為に動き始める。
二人の弾幕ごっこをしている様子を見て、チルノが発動したスペルカードがどう言った特徴を持っているのかを理解した霊児は、

「へぇー……中々にランダム性が高いスペルカードだな」

中々にランダム性が高いスペルカードだと呟く。
氷って動きが止まった弾幕が再び動き出す際、どの方向に進むかは毎回完全にランダムの様なのだ。
氷っていた弾幕が何処に動くか次第で、このスペルカードの難易度は大きく変わってくる。
魅魔も霊児と同じ様な考えに至った様で、

「中々に面白いスペルカードだね」

中々に面白いスペルカードであると呟く。
魅魔の呟きが耳に入ったからか、

「ふふん、当然よ」

チルノは得意気な表情を浮かべながら胸を張る。
得意気な表情を浮かべているチルノを見ながら魅魔は不敵な笑みを浮かべ、

「面白いスペルカードを見せてくれたお礼に……私のスペルカードも見せ様か」

懐に手を入れてスペルカードを取り出し、

「包囲『マジックサークル』」

スペルカードを発動させる。
魅魔がスペルカードを発動させた瞬間、チルノの上下左右前後に無数の魔法陣が現れた。

「え、何々!?」

自分が魔法陣によって完全に囲まれてしまった事に気付いたチルノはスペルカードの発動を止め、周囲の様子を伺う様に顔を動かす。
魔法陣の数は多いが、それでも抜け出す隙間は有る。
なので、チルノは魔法陣による包囲網から脱出し様とするが、

「そう易々と脱出させはしないよ」

脱出する前に魔法陣の一つからレーザーが放たれてしまった。

「わっ!?」

レーザーの発射に気付いたチルノは反射的に体を逸らし、レーザー避ける事に何とか成功する。
そして、放たれていたレーザーが消えると、

「ふ、ふん!! あ、あんなので、このあたいを倒せるとは思わない事ね!!」

チルノは冷や汗を流しながらも、強気な台詞を言い放つ。

「勿論、その程度で仕留められるとは思っていないさ」

チルノの台詞に返す様に魅魔がこの程度で仕留められるとは思ってないと言うと、二つの魔法陣からレーザーと弾幕が放たれた。

「ッ!?」

再び魔法陣から攻撃が放たれた事にチルノは驚きの表情を浮かべるも、直ぐに表情を戻して回避行動を取る。
攻撃を放っている魔法陣が二つと言う事もあってか、チルノは被弾する事も無くレーザーと弾幕を避け切った。
これで一安心と思うも束の間、今度は三つの魔法陣からレーザーと弾幕と火炎放射は放たれる。
三度目の攻撃もチルノは何とか避け切る事が出来たが、避け切った後に四つの魔法陣からレーザーと弾幕と火炎放射と雷が放たれた。
ここまでの魔法陣から放たれた攻撃を見るに、魅魔が発動したスペルカードは一定のタイミングで攻撃を放つ魔法陣が増えていくタイプの様だ。
そのタイミグと言うのは、魔法陣から放たれる攻撃が途切れた時だろう。
攻撃を放つ魔法陣の数が増えていく様子を見ながら、霊児は魅魔のスペルカードも面白いスペルカードであると思った。
魅魔が発動させているスペルカードのタイプに名前を付けるとしたら、耐久型スペルカードと言うのが似合うかもしれない。
スペルカードの発動時間が終わるまで耐えると言うのも面白そうだと霊児が思い始めた時、

「ぎゃん!!」

チルノは魔法陣から放たれた攻撃に当たり、墜落して行ってしまう。
墜落したチルノが湖に叩き付けられそうになったが、

「チルノちゃん!!」

妖精が湖に叩き付けられる前に先程逃げて行った妖精がチルノを受け止め、チルノを連れて何所かへと飛んで行った。
チルノが居なくなった事で魅魔はスペルカードの発動を止め、

「ただいま」

魅魔が霊児達が居る場所へと戻る。
戻って来た魅魔を見て、

「お疲れ様です!! 流石魅魔様!! お見事でした!!」

魔理沙は魅魔に労いの言葉を掛けた。
同時に、

「いやー……結構良い写真が撮れました」

文がホクホク顔で結構良い写真が撮れたと言いながら戻って来た。
そんな文を見て。

「全く、貴女って人は……」

椛は呆れた表情を浮かべる。

「まぁまぁ……」

呆れている椛をにとりが宥め、少し時間が経つと、

「さて、そろそろ行こうぜ」

霊児がそろそろ行こうと言う。
その言葉を合図にしたかの様に、一同は再び先へと進んで行った。























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