レミリアの敗北宣言を聞いた後、

「さて、俺が勝ったんだからこの紅い霧を止めて貰おうか」

霊児はレミリアに紅い霧を消す様に言う。
紅い霧を消す様に言われたレミリアは、

「……はぁ、分かったわよ」

不満気な表情を浮かべるも分かったと返し、目を閉じて集中し始める。
すると、見えていた月が元の色へと戻り始めた。
どうやら、レミリアはちゃんと幻想郷中に漂わせていた紅い霧を消している様だ。
そして、月の色が完全に元の色に戻ってから少しすると、

「ほら、ちゃんと紅い霧は消したわよ」

レミリアは目を開き、幻想郷中に漂わせていた紅い霧を消した事を一同に伝える。
それを聞いた魅魔は周囲を見渡し、

「……確かに、漂っていた紅い霧は消えた様だね」

レミリアが伝えた事は本当だと呟く。
魅魔による裏付け取れた事で霊児、魔理沙、にとり、椛、文の五人の間で何処か気が抜けた様な雰囲気が漂い始めた時、

「はぁ……これで鬱陶しい太陽の光とさよならが出来ると思ったんだけどね……」

レミリアは肩を落とし、大きな溜息を一つ吐いた。
レミリアの言動から再び同じ事をやりそうだと言う雰囲気を感じた霊児は、

「また同じ事し様ものなら、今度はこの館を跡形も無く吹き飛ばすぞ」

釘を刺す様にまた紅い霧を幻想郷中に漂わせたら今度は紅魔館その物を吹き飛ばすぞと言う警告を行う。
霊児の警告を聞いたレミリアは、先の出来事で霊児ならば紅魔館その物を吹き飛ばす程度の事は容易く出来ると判断したからか、

「わ、分かってるわよ……」

少し冷や汗を流しながら分かったと言う返事をした。
その後、レミリアは改めて自分の周囲を見渡し、

「本当に、私の部屋が綺麗に吹っ飛んでるわね。と言うか、私の部屋以外のブロックにも被害が……」

自分の部屋だけでは無く、他のブロックにも被害が出ている事を知って再び肩を落とす。
再び肩を落としたレミリアを見ながら、

「あれでも加減はしたんだがな……」

霊児はあれでも加減はしたのだと漏らしながら後頭部を掻く。
霊児が漏らした発言が耳に入った文は、

「私は霊児さんが本気で霊力を解放したのを魔界での神綺さんとの戦いで見ましたが……先の霊力解放。あの時のに結構近くありませんでしたか?
本当にあれで加減したのですか?」

恐る恐ると言った感じで本当にあれで加減したのかと尋ねる。

「ああ、ちゃんと加減はしたさ。と言うか、あの時から何年も経ったんだ。あの頃よりも強くなっていても何の不思議は無いだろ」
「あの頃の霊児さんだって殆ど敵無しの状態だったと言うのに、あの頃よりも相当腕を上げたと来ましたか……」

霊児から返って来た答えを聞いた文は渇いた笑みを浮かべ、ある事を誓う。
霊児を本気で怒らせる様な真似は避け様と。
ともあれ、異変も無事に解決したと言う事で、

「……さて、これからどうする?」

魔理沙は霊児にこれからどうするかと問う。
どうすると問われた霊児は、

「どうするって……そうだな……」

少し考える素振りを見せた後、

「腹も減って来たし、ここで宴会をするか」

腹が減って来たので、紅魔館で宴会をする事を決める。
勝手に紅魔館で宴会をする事を決められたからか、

「……え?」

レミリアは驚いた表情を浮かべ、霊児の方に顔を向けた。
それもそうだろう。
紅魔館の主である自分の許可無く、紅魔館で宴会を開こうと言うのだから。
ここは文句の一つでも言ってやろうとレミリアが思った瞬間、

「ここで宴会か。これだけ大きい館なら、腹一杯食えそうだな」

魔理沙が紅魔館で宴会を開く事に賛成の意を示した。
他にも賛成する者が居るとは思わなかったからか、

「……え?」

レミリアは何処か唖然とした表情を浮かべながら魔理沙の方に視線を移す。
レミリアが魔理沙の方に視線を移している間に、

「ここにならワインとかも在るだろうし……久しぶりに飲んでみたいね。ワイン」
「胡瓜は出るんだろうね? 胡瓜は」
「本当なら妖怪の山にさっさと帰って今回の異変に付いての記事を書きたいところだけど……先ずは英気を養う事にしましょう」
「いや、先ずは今回の件を大天狗様に報告すべきでしょうに。ですがまぁ……今回は目を瞑りますよ。文さん」

魅魔、にとり、文、椛の四人も紅魔館で宴会を開く事に賛成の意を示した。

「え? え? え?」

何時の間にか紅魔館で宴会が開かれる事が確定したかの様な雰囲気を感じ、レミリアが思わず狼狽え始めると、

「と言う訳だから、さっさと宴会の準備をしろよ」

霊児はレミリアにさっさと宴会の準備をする様に言う。
場に流れている空気と狼狽えている所に命令する様な指示を出されたから、

「え、あ、はい」

レミリアはつい了承の返事をしてしまった。
が、

「え!? ちょ!? まっ……」

直ぐに自分の発言の意味に気付いたレミリアは、今の発言の撤回を行おうとする。
しかし、発言の撤回を行う前に、

「おや、あんたはこの館の主だろ? 主ともあろう者が自分の発言を易々と撤回するのかい?」

魅魔が主ともあろう者が易々と自分の発言を撤回しても良いのかと言って来た為、レミリアは押し黙ってしまう。
魅魔の言う通り、紅魔館の主として自分の発言を易々と撤回するのは宜しくないからだ。
序に言えば自分の発言を易々と撤回する事など、レミリアのプライドに触れる行為である。
だからか、

「……はぁ、分かったわよ。開くわよ、宴会」

レミリアは何処か諦めた様な表情を浮かべ、宴会を開く事を約束した。





















そして、紅魔館で宴会で開かれる事が決まってから幾らかの時間が経った頃。
紅魔館の中庭でドンチャン騒ぎの宴会が開かれていた。
参加メンバーは異変を解決に来た霊児達、宴会場所になっている紅魔館の面々、この騒ぎを聞き付けてやって来た者と言った感じだ。
皆が皆好きな様に騒いでいる中、

「うん、美味い美味い」

霊児はドンチャン騒ぎを無視するかの様にテーブルの上に乗っかている料理を片っ端から食べていた。
まぁ、それも無理はないだろう。
霊児が作る料理は基本的に鍋料理のみ。
よく博麗神社にやって来てご飯を作ってくれる魔理沙は、霊児の好みに合わせてか作る料理は和食が中心。
鍋料理、和食と言った物と違い、紅魔館で開かれた宴会で出されている料理は霊児が普段口にはしない洋食がメインなのだから。
それはさて置き、霊児が食べる事に集中し始めてから少し経つと、

「……さて、次は何を食うかな」

粗方食い終えたから、霊児は次は何を食べるかを決める為に顔を動かす。
顔を動かしている中、

「あれは……にとりか」

霊児の目に一心不乱に胡瓜をメインに使った料理を食べているにとりの姿が映った。
半ば強制的に開かれる事となった宴会ではあるがにとりが出したリクエストに応える辺り、レミリアもレミリアで宴会を楽しみにしていたのかもしれない。
そんなどうでも良い事を考えつつ霊児はにとりに声を掛け様としたが、途中で思い留まって声を掛けるのを止めた。
何故かと言うと、今のにとりに声を掛けても何の反応も返って来ないと判断したからだ。
にとりの食べっぷりを眺めつつ、霊児が別のテーブルが在る所にまで移動し様とした時、

「少し良いかしら?」

誰かが霊児に声を掛けて来た。
掛けられた声に反応した霊児は声が聞こえて来た方に顔を向ける。
顔を向けた先には、

「咲夜」

咲夜の姿があった。
霊児が咲夜の存在を認識している間に、

「貴方に少し聞きたい事が有るの」

咲夜は声色に若干の怒気を混ぜながら、霊児に聞きたい事が有るのだと言う。

「俺に聞きたい事?」

自分に聞きたい事が有ると言われた霊児が思わずに首を傾げた瞬間、

「ええ、そうよ。聞きたい事と言うのは紅魔館の門及び入り口付近が見事に破壊されている事と、ある一室の床が完全に抜けている事に付いてね」

咲夜は聞きたい事を口にした。
咲夜が口にした門と入り口付近が破壊されている事と、ある一室の床が完全に抜けている事。
この二つの被害を出した者は霊児だ。
その事実を咲夜に伝えれたら、咲夜は怒り心頭になる事だろう。
だと言うのに、

「ああ、それをやったのは俺だ」

霊児は馬鹿正直に自分がやったのだと言う事を咲夜に伝えた。
霊児から自分が犯人だと言う宣言をされた咲夜は当然の様に怒り心頭と言った雰囲気を見せ始めたが、

「……はぁ、良いわ」

直ぐに見せていた雰囲気を四散させ、溜息を一つ吐く。

「何だ、てっきり一戦交える事になると思ったが違うのか? 少し腹を空かす為に運動をし様と思ったんだけどな」
「冗談。今ここで貴方と戦えば確実に紅魔館の被害が増えるだろうし、宴会の空気を壊すなるわ。序に言えばお嬢様が今回の異変で紅魔館に出た被害は
全て不問にする仰られたしね」
「だったら、何で戦おうと言う雰囲気を見せたんだ?」

元々戦う積りが無かったのに何で戦う雰囲気を見せたのかと言う霊児の疑問に、

「単純に言えば、八つ当たりと憂さ晴らしね。宴会の準備と宴会の料理作りを誰がやり、宴会の後片付けと紅魔館の修繕を誰がやると思う?」

咲夜は宴会の準備と宴会の料理作りを誰がやり、宴会の後片付けと紅魔館の修繕を誰がやると思うのかと問う。
咲夜が問うて来た内容で、

「あー……」

霊児は理解した。
それ等を全て行い、やるのは咲夜であると言う事を。
しかし、

「そうか、頑張れよ」

だからと言って霊児の態度が変わる訳では無かった。

「頑張れと言うんだったら、私の仕事を増やさない努力をして欲しいものね」

霊児の発言を聞いた咲夜は頑張れと言うからには自分の仕事を増やさない努力をしろと言う言葉を漏らし、

「さて、私は追加の料理を作らなきゃいけないから行くわね。一応言って置くけど、くれぐれも余計な事はしない様に」

追加の料理を作らなければならない事と余計な事をしない様にと言う忠告を残して消える。
咲夜が姿を消す瞬間を全く感知出来なかった事から、霊児は時間を止めて移動したのだろうと推察した。
時間を操る力が無ければこうも早くに宴会を開催する事は出来なかっただろうなと思いつつ、霊児は他の食べ物を求めて宴会場内を彷徨い始める。
彷徨い始めてから少しすると、

「それは持ってかないでー!!」
「そう固い言うなって。あれだけの蔵書量何だ。数冊位良いだろ」

パチュリーと魅魔が言い争っている光景が霊児の目に映った。
宴会の場で何をやってるんだと思った霊児は、

「何やってるんだ、お前等?」

パチュリーと魅魔に近付き、何をやっているんだと声を掛ける。
声を掛けられたパチュリーは天の助けと言わんばかりの表情を浮かべ、

「聞いて!! この幽霊魔法使いが私の図書館の本を持って行こうとするの!!」

今、何が起こっているのかを伝えた。
どうやら、パチュリーは魅魔が自分の本を持って行くの霊児に止めて貰いたい様だ。
だが、

「別に良いんじゃね? 戦利品って事で」

霊児は大して興味が無さそうな表情で別に良いだろうと返す。
霊児の力が借りられなかった事を理解したパチュリーは、

「むきゅん」

絶望したかの様にがっくりと肩を落とした。
肩を落とし、落ち込んでいるパチュリーを見て、

「そんな顔をしなさんなって。書かれている内容を覚えたら返すからさ」

魅魔は本の内容を覚えたら返すを約束する。
持っていかれた本が帰って来ると言う事を取り敢えずは約束されたからか、パチュリーは幾分か持ち直した表情を浮かべた。
上手い具合に落ち着いた二人を見届けた後、霊児は食べ物を求めて再び宴会場内を歩き始める。
宴会場内を歩き回って行けば、様々な料理が霊児の目に映っていく。
どれを食べに行くべきかを少し悩んでいる霊児に、

「あ、霊児さん」

文が声を掛けて来た。
掛けられた声に反応した霊児を足を止め、文の方に顔を向ける。
顔を向けた先に居た文は、

「いやー、妖怪の山では食べられない物が多くて良いですね」

満足気な表情を浮かべながら様々な料理を口に運んでいた。
やはりと言うべきか、紅魔館に出されている料理は妖怪の山でも見られない物ばかりの様だ。
文も料理の味に満足している様なので次はここで食べ様かと決めた時、

「あれ? お前、肉は食ってないのな」

文が肉を食べていない事に霊児は気付く。
霊児の発言が耳に入った文は、

「食べれない事は無いのですが、このテーブルに乗っかているお肉の殆どが鳥肉なのですよ」

今自分が食事を取っているテーブルの上に在る肉の殆どは鳥肉で在る事を教え、

「私は烏天狗なので、鳥肉を食べるのは少々思う所が在るのですよ」

自分は烏天狗なので鳥肉を食べる事には少々思う所が在ると話す。
烏天狗である文は、一応鳥型の妖怪に分類される。
なので、文が鳥肉を食べると言う事は共食いをするのと同じ事だろう。
流石に共食いをする気は無いと言った態度を示している文の真横で、

「この鳥肉、美味しいですね。歯応えも有り、味も良く染み渡っていますし」

椛が見せ付けるかの様に鳥肉を食べていた。
何食わぬ表情で鳥肉を食べている椛の方に文が思わず顔を向けたタイミングで、

「私は白狼天狗ですので、鳥肉を食べる事に思う所は何も在りませんけどね」

椛はシレッとした表情で自分は白狼天狗なので鳥肉を食べる事に何の躊躇も無いと断言する。
そんな椛の態度に腹を立てからか、

「すいませーん、狼の肉って在りませんかー?」

文は狼の肉は無いのかと口にした。
すると何の前触れも無く咲夜が現れ、

「申し訳ございませんが、狼の肉は御用意しておりません」

狼の肉は用意されていない事を文に伝え、咲夜は姿を消す。
狼の肉が無い事を知った椛は何やら勝ち誇った様な表情を浮かべ、

「さて、次は果物の盛り合わせでも食べましょうか」

果物の盛り合わせを食べる事にし、果物の盛り合わせが乗っている皿にフォークを伸ばそうとする。
その刹那、

「……え?」

椛が食べ様としていた果物の盛り合わせが皿と一緒に消えてしまったではないか。
少し驚いた表情を浮かべながら果物の盛り合わせが乗った皿を椛が探そうとした瞬間、

「んー……この果物の盛り合わせは美味しいわね。新鮮だし程好い甘さだし」

文が椛の真横で果物に盛り合わせに付いての感想を漏らしていた。
果物の盛り合わせに付いての感想が耳に入った椛は少し慌てた動作で文の方に視線を移す。
視線を移した先に居る文は、果物の盛り合わせが乗った皿を手に持ちながら幸せそうな表情で果物を食べていた。
文が食べている果物は自分が食べ様としていた物だと椛が気付いたのと同時に、

「あら、地を走るしか脳が無い獣風情には空を優雅に飛ぶ鳥の飛行速度は見抜けなかったかしら?」

文は得意気な表情で挑発を行う。
文の挑発がイラッっと来たから、

「……人が食べ様としていた物を横から掻っ攫うとは。卑しさが増しましたね、文さん」

椛も挑発を返す。
が、

「あら、これは貴女が食べ様としていたの? それはごめんなさい。余りにも動きが遅かったからてっきり何を食べるのか迷っているものだと思っていたわ」

椛の挑発など何処吹く風と言った感じに、文は再び挑発を行う。
互いに挑発を行いあった後、

「「ッ!!」」

文と椛はかなりのスピードでテーブルの上に在る料理を食べ始めた。
お互い、相手が狙っている食べ物を奪い合うかの様に。
文と椛の様子を見て、食事を楽しむ事は出来ないと感じた霊児は、

「……お前等、もう少し仲良くしろよ」

もう少し仲良くしろと言う言葉を残し、二人の傍から離れて行った。
文と椛の二人から離れた霊児が再び宴会場内を彷徨っていると、

「あいつ等は……」

霊児の目に食事を取っているルーミアとチルノの二人の姿が映る。
どうやら、この二人も紅魔館の宴会に参加していた様だ、
霧の湖付近に住んでいるチルノは兎も角、ルーミアも居る事に霊児は少々疑問を覚えたが、

「……ま、あいつはその辺をフラフラとしている感じだったからな。この辺りに来て居ても不思議は無いか」

直ぐにルーミアはその辺をフラフラとしている感じなので、ここに居ても不思議では無いと言う結論を下す。
それはさて置き、折角知ってる顔を見掛けたので霊児はルーミアとチルノの二人に声を掛け様としたが、

「……止めるか」

霊児は何かに思い至ったと言う様な表情を浮かべ、声を掛けるのを止めた。
何故かと言うと、自分の存在に気付いたチルノが戦いを吹っ掛けて来ている未来が容易く予想出来たからだ。
なので、霊児はルーミアとチルノに気付かれない様に距離を取って行く。
ルーミアとチルノの二人からある程度の距離が取れた辺りで、

「お……」

霊児はまだ誰も手を付けていない料理が乗ったテーブルを発見した。
これ幸いと思った霊児は早速発見したテーブルに近付き、テーブルの上に置いて在る料理に手を付けていく。

「……うん、美味い美味い」

料理を食べ、満足気な表情を浮かべている霊児に、

「楽しんでいる様ね」

レミリアは声を掛ける。
声を掛けられた霊児は一旦食べるのを止めてレミリアの方に顔を向け、口に含んでいた物を飲み込み、

「よう」

一声掛けた。

「口に含んでいる物を飲み込んでから私の方を見て欲しかったけど……まぁ、良いわ」

口に物を含んだ儘の状態で自分の方に顔を向けた霊児にレミリアは呆れつつも、

「それはそうと、見事な宴会でしょう」

自慢気な表情を浮かべる。
レミリアの見事な宴会と言う発言に、

「ああ、そうだな」

霊児は同意を示した。
霊児が同意を示したからか、レミリアは鼻高々と言った感じになっていき、

「当然ね。咲夜が全ての準備をしたのだから」

胸を張り、咲夜が全ての準備をしたのだから当然だと言い切る。
自慢気な表情を浮かべ、胸を張っているレミリアを見ながら霊児は思い出す。
咲夜から宴会の準備、料理作りなどは全て一人でやっていると言う申告を受けた事を。
時間を操れる咲夜なら今回の様に短い時間で宴会の準備をしろと言われたら、一人で準備をする事になるだろう。
序に宴会の後片付けも咲夜一人でやる言っていた様な事も思い出したが、別に自分がやる訳でも無いので霊児は咲夜と会話の内容を記憶の彼方へと追いやり、

「さて、続き続き」

再び食事を取りに掛かった。
何処までも自分のペースを貫いてる霊児に、

「……何かペースを乱されるわね」

レミリアは自分のペースを乱されると言う感想を抱きながら、

「どう? 一緒にワインでも飲まない?」

ワインでも一緒に飲まないかと言って机の上に乗っかっているワイン瓶とグラスに指をさす。

「ワインか……」

ワインを飲む機会など殆ど無いからか、霊児は皿に乗っている料理を食べ様としたのを止め、

「そうだな……飲むか」

レミリアの提案を受け入れた。
霊児がレミリアの提案を受け入れた事で、

「ふふ、戦いの勝者と敗者が一緒にワインを飲むなんて普通は在り得ないけど……それもまた一興ね」

レミリアは戦いの勝者と敗者が一緒にワインを飲むのも一興と漏らし、グラスにワインを注いでいく。
ワインがグラスに注ぎえ終えると、霊児とレミリアはグラスを手に取り、

「「乾杯」」

グラスを合わせ、一緒にワインを飲み始めた。





















レミリアと一緒にワインを飲んだ後、霊児は再び宴会場内を彷徨っては片っ端から料理を食べて回っていた。
そして、腹が膨れると霊児は食べ歩くの止めて皆が騒いでいる少し離れた場所に移動する。
皆からある程度離れた場所に来た時、

「ふぅ……」

一息吐きながら腰を落ち着かせて空を見上げた。
もう既に紅い霧は存在しないので、見上げた空には星々が綺麗に輝いている事が分かる。
暫しの間、星空を見上げていると、

「なーにこんな所で黄昏てるんだ? 霊児」

何時の間にか霊児の傍にやって来ていた魔理沙が声を掛けて来た。
掛けられた声に反応した霊児は視線を星空から魔理沙の方に移し、

「よう」

片手を上げ、挨拶の言葉を掛ける。
掛けられた挨拶の言葉に返す様に、

「おう」

魔理沙も片手を上げ、霊児の隣に腰落ち着かせた。
その後、

「……ん?」

霊児は自分の肩に軽い重さを感じたので、自分の肩の方に視線を移す。
視線を移した先には、魔理沙の頭部が見えた。
どうやら、魔理沙は自分の頭を霊児の肩に預けている様だ。

「どうした?」
「別に良いだろ」

どうしたと尋ねた霊児に、魔理沙は別に良いだろうと返す。
まぁ、別に害が在る訳でも無いので霊児は特に咎めると言った事はせずに再び空に視線を戻した。
すると、霊児と同じ様に魔理沙も視線を空に向ける。
二人で星空を見始めてから暫らく経った頃、

「あ、流れ星」

流れ星が流れた。
流れ星が流れたのを見た魔理沙は目を閉じ、両手を合わせて何かをブツブツと呟く。
そんな魔理沙に、

「ん? 何やってるんだ?」

霊児は何をやってるだと問う。
霊児が問うて来た事に反応した魔理沙は目を開き、

「何言ってるんだ。流れ星が消えるまでに願い事を三回唱えれば願い事が叶うって言うだろ」

霊児の方を見ながら流れ星が消えるまでに願い事を三回唱えれば願い事が叶うと言う話をする。
魔理沙の話を聞き、

「……ああ、そう言えばそうだったっけか」

霊児は何かを思い出した表情を浮かべた。
霊児が浮かべた表情を見て、

「何だ、何も願わなかったのか?」

魔理沙は何も願わなかったのかと聞く。

「ああ。唯、流れ星をボーッと見てるだけだった」
「仕方ないな。じゃ、また流れ星が流れるまで待って様ぜ」

魔理沙が聞いて来た事を肯定し霊児に、魔理沙はまた流れ星が流れるまで待つ様に提案をする。

「そうだな……そうするか」
「おう!!」

魔理沙の提案を霊児が受け入れた事で、魔理沙は物凄く嬉しそうな表情を浮かべた。
そして、霊児と魔理沙の二人は流れ星が再び流れるまでのんびりと星空を眺めていく。























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