レミリアが起した異変を解決してから一日が経った今日。
異変が無事に解決されたと言う事もあってか、紅い霧は完全に消えて無くなっていた。
さて、紅い霧が消えて無くなったと言う事は日光が普通に入って来ると言う事。
そして、今の季節は夏。
つまり、どう言う事かと言うと、

「暑い……」

この一言に尽きるのである。
異変解決の時は紅い霧が出ていた事もあって霊児も暑さは気にならないと言った感じであったが、今は紅い霧が消えた事で暑くて仕方が無いと言った様だ。
異変解決しに行くのをもう少し遅らせれば良かったかなと思いつつ、

「これが無かったらもっとダレてただろうなー……」

霊児はこれが無かったらもっとダレていただろうなと呟く。
霊児の言うこれとは、以前香霖堂で買ったビニールプールの事だ。
因みに、今現在の霊児は海パン一丁でピニールプールの中に入れた水に入って団扇で自分を扇いでいる状態である。
正直な話、ビニールプールが無ければ暑いと漏らす事も出来なかっただろう。
今年の夏はビニールプールが必需品になりそうだと言う事を霊児は感じつつ、

「あー……今日は一日中この儘……いや、修行はしなきゃ駄目か……」

今日はビニールプールの中でずっと過ごそうかと考えたが修行の事が頭に過ぎった為、それは無理だと言う判断を下す事となった。
霊児は自身の役目を幻想郷を護る事と捉えている。
これは霊児が今代の博麗だからでは無く、霊児自身の意思だ。
故に、修行をサボって実力を落とすと言う事態は霊児としても避けたいのである。
もし、幻想郷に害を成す為に現れた存在が魔界の創造神である神綺と同等かそれ以上の力の持ち主であった場合。
霊児が実力を落としていたら、幻想郷に大きな被害が確実に出てしまうだろう。
何故ならば、今の霊児の実力は神綺と殆ど互角であるからだ。
余談ではあるが霊児が数年前に神綺と戦った際は神綺が余力を残す様な戦い方をし、運の要素がかなり絡んだ上で辛勝した。
しかも、満身創痍の状態でだ。
その事を考えたら、数年で神綺と互角に戦えるまで実力を上げた霊児は大したものだろう。
それはそれとして、今から修行をやり始めたとしてもこの暑さのせいでだれる可能性が非常に高い。
ならば、修行を始めるのは涼しくなる夜からが良いだろう。
本日の修行は夜から行う事を決めた後、

「にしても……今年の夏は本当に暑いな」

霊児は今年の夏は本当に暑いと呟き、太陽の方に視線を向ける。
空に浮かんでいる太陽は、これでもかと言わんばかりにギラギラと光り輝いていた。
放って置いたら襲い掛かって来そうな雰囲気が太陽から感じられたからか、

「あー……こうなったらいっその事、太陽の神やら夏の神やら暑さの神やらでも呼び出してボコボコにするべきか?」

霊児は物騒な事を考え始める。
考え自体は物騒ではあるが、考えた事を実行に移したら確実に涼しくはなるだろう。
だとしたら、迷う必要は無い。
霊児が早速考えた事を実行に移そうとした時、霊児の冷静な部分が仮にも神職に携わっている人間がそんな事をしても良いのかと訴えて来た。
自分に神降ろしをした神を霊力で縛って能力だけを行使させて用が済んだら体から追い出すと言う事までなら霊児の冷静な部分も何も訴えはしないだろう。
しかし、神を呼び出してボコボコにすると言う行為には流石に訴えて来た様だ。
兎も角、霊児の冷静な部分が余計な事を訴えて来たせいで、

「あー……どうすっかなー……」

霊児の頭の中に存在している天秤がグラグラと揺れ始めた。
片方の天皿には神を呼び出して倒し、涼しくし様と言う想いが。
もう片方の天皿には暑さを我慢し様と言う想いがそれぞれ乗っかっている。
最初はグラグラしていた天秤ではあるが、次第に天秤は神を倒して涼しくし様と言う想いの方へと傾いていった。
天秤が傾いていくにつれ、霊児は思う。
そもそもの話、自分は行くべき道を邪魔するのであれば神でも悪魔でも情け容赦なく叩き潰して先へと進むだろうと。
なので、自分の冷静な部分が訴えて来た事は暑さのせいで出て来た狂言だと霊児は判断する。
そして、霊児の頭の中の天秤が完全に神を呼び出して倒そうと言う方に傾こうとした瞬間、

「あらあら、レディの前でする様な格好じゃないわね」

何処からか呆れた声が聞こえて来た。
聞こえて来た声に反応した霊児は顔を動かし、声が聞こえて来た方に視線を移す。
顔を向けた先には、

「こんにちは、霊児」
「こんにちは」

レミリアと、レミリアに日の光が当たらない様に日傘を差している咲夜の姿が霊児の目に映った。
割と予想外の来客であったからか、霊児は少し驚きつつも、

「何しに来たんだ? お前等」

何しに来たんだと問う。
問われた事に、

「お嬢様がここに遊びに行くと仰られたもので。私はその御付きです」

咲夜がやって来た理由を答えてくれた。
レミリアと咲夜が博麗神社にやって来た理由を知った霊児は、

「……レミリア、お前って一応は悪魔の区分に分類されるんだよな?」

思い出したかの様にレミリアは悪魔の区分に分類されるんだよなと尋ねる。

「ええ、そうね。吸血鬼は悪魔の区分に分類されるわ」

霊児が尋ねた事をレミリアが肯定したので、

「ここ……神社だぞ」

霊児は少し呆れた声色でここが神社である事をポツリと漏らした。
神社に悪魔が遊びにやって来る。
字面だけを見たら中々にシュールだ。
まぁ、博麗神社には妖怪やら幽霊やら妖精やら魔法使いやら何やらが平気で遊びに来ているのだから今更悪魔の一人や二人が来ても何の問題も無いであろうが。
そんな多種多様な存在がやって来る博麗神社の雰囲気を察しているからか、

「別に気にしなくても良いじゃない」

レミリアは欠片も気にした様子を見せずに咲夜と共に霊児の方に近付き、

「それにここ、神社って言う割りには神の気配が微塵も感じられないけど?」

博麗神社には神の気配が微塵も感じられないと言って縁側に腰を落ち着かせた。
縁側に腰を落ち着かせたレミリアの方に視線を移しながら、

「俺も知らん。俺が今代の博麗を襲名した時にはもうここに神何て居なかったしな」

霊児は自分が今代の博麗を襲名した時にはもう博麗神社に神は居なかった事を話し、視線を正面へと移す。
その後、

「この神社には神が居ないって話だけど、ここの収入はどうなってるの? 見た感じ、参拝客は全然来て無い様だけど」

レミリアは霊児にどうやって収入を得ているのかを聞いて来た。
どうやら、神が居ない神社の懐事情に興味がある様だ。

「収入か? 収入の方は人里でお守りやらお札を売って得てる。序に言えば裏の畑で野菜とかを作ってるからな。参拝客が居なくても食う事には困ってねぇよ」
「畑ねぇ……あ、そうだ。咲夜」

霊児から畑の事を聞いたレミリアは思い出したかの様に咲夜の名を呼ぶ。
呼ばれた咲夜は、

「紅魔館の畑、及び収穫前の作物は全て無事です。幸い、お嬢様のお部屋が吹っ飛んだ際に散らばった破片などは畑に直撃はしませんでしたし」

紅魔館の畑と収穫前の作物がどうなっているかをレミリアに伝える。
レミリアが咲夜の名を呼んだだけで、レミリアが何を知りたいかを察したのは流石と言ったところか。

「そう。なら良いわ」

畑と収穫前の作物が無事である事を知ったレミリアは何処か安心した表情を浮かべ、

「処で……お客様である私達に対する御持て成しは無いのかしら?」

霊児に客人である自分達に対する御持て成しは無いのかと言って来た。

「……随分と図々しい客だな、おい」

レミリアが言って来た事に霊児は図々しい客だと言う突っ込みを入れながらレミリアの方に顔を向け、

「そう言うお前等こそ、何かお土産は無いのか?」

お土産は無いのかと返す。
霊児が返して来た発言は予想出来ていたからか、レミリアは勝気な笑みを浮かべ、

「咲夜」

咲夜の名を再び呼ぶ。
名を呼ばれた咲夜は、

「はっ」

何処からとも無く包みを取り出した。
取り出された包みを見た霊児は、

「何だ、それ?」

思わず首を傾げてしまう。
首を傾げてしまった霊児の疑問を晴らすかの様に、

「これはここに来る前に人里で買って来た最高級の羊羹よ」

レミリアは胸を張りながら包みの中に何が入ってるかを教える。
最高級の羊羹と言う言葉に、霊児は自身の心が思いっ切り揺るがされたのを感じた。
だからか、霊児は自分で驚く位に自然な動作で立ち上がってビニールプールから抜け出し、

「今、茶を淹れて来てやる」

茶を持ってる来ると言う言葉を残し、台所へと向かって行く。





















台所で茶を淹れ、茶が入った湯飲みを三つお盆に乗せて縁側に戻って来た霊児は、

「……どうしてこうなった」

何処か唖然とした表情を浮かべながらポツリとそう呟いた。
今、霊児の目には水着を着た魔理沙、魅魔、アリス、レミリアの四人がビニールプールで遊んでいると言う光景が映っている。
茶を淹れて戻って来て見れば見知った顔が自分の許可無く自分のビニールプールで遊んでいたのだ。
そんな事の一つや二つ呟いても可笑しくは無いだろう。
それはそれとして、どう言った経緯で魔理沙、魅魔、アリス、レミリアの四人が自分のビニールプールで遊んでいるのかが気に掛かった霊児は、

「咲夜」

レミリアに日の光が当たらない様に日傘を持ちながら動き回っている咲夜に声を掛ける。

「何かしら?」

声を掛けた咲夜が反応してくれたので、

「説明を頼む」

霊児は説明を頼んだ。

「良いわ。貴方が台所に向ってから少しした後、あの三人がやって来たの。魔法の森の中が蒸し風呂状態だからって」

霊児の頼みを了承した咲夜が魔理沙、魅魔、アリスの三人がやって来た理由を簡潔に説明すると、

「前に来たのと同じ理由か……」

少し前に魔理沙、魅魔、アリスの三人が避暑目的で博麗神社にやって来た事を霊児は思い出し、

「つまり、最初っから水遊びを楽しむ為にやって来たって訳か。御丁寧に水着まで持って来てた様だし」

この三人は最初っから自分のビニールプールで遊ぶ為にやって来たのだと結論付けた。
その後、

「魔理沙達は分かったが、何だってレミリアもビニールプールに入ってるんだ?」

霊児は何でレミリアも魔理沙達と同じ様にビニールプールに入っているのかと尋ねる。
尋ねられた事に、

「単純に、ビニールプールで遊んでいる三人が羨ましくなったからね。だから、お嬢様もこのビニールプールに入られたのよ。ああ、因みにお嬢様が
着ている水着は私が時の止めて紅魔館から持って来た物よ」

咲夜はこれまた簡潔な説明を返した。
取り敢えず魔理沙達四人がビニールプールで水遊びをしている理由を知った霊児は、

「そう言えば、お前は暑くないのか? そんなに動き回って」

話題を変えるかの様に咲夜に暑くないのかと問う。
咲夜はレミリアに日の光が当たらない様に常に動き回っている様な状態にあるので、普通に暑いだろうと思われたが、

「これ位はどうとも。この程度で暑いと言う様ではメイドの名折れですわ」

咲夜はシレッとした表情で暑く無いと答えた。
そう答えた咲夜は汗を少しでも掻いている様子が見られないので、暑くないと言った咲夜の言葉に嘘は無いだろう。
こんな暑い日に嘘偽り無く暑く無いと言い切った咲夜に霊児は感心しつつ、

「今思い出したんだけど、吸血鬼って水が弱点じゃなかったっけか?」

思い出したかの様に吸血鬼は水が弱点じゃなかったかと呟く。
霊児の呟きが耳に入った咲夜は、

「吸血鬼であるお嬢様が弱点としている物は流水……つまり流れる水。このビニールプールの様に留まった水であるならば、何の問題もこざいません」

吸血鬼が弱点としているのは流水であり、ビニールプールの様な留まっている水は弱点にはならないと話す。

「へぇー……」

咲夜の話を聞いた霊児は興味が有る様で無い様な返事をし、持って来たお盆を床に置いてビニールプールに入ろうとする。
どうやら、好い加減暑くなって来たのでビニールプールに入って涼みたい様だ。
霊児がビニールプールに入ろうとしたタイミングで霊児の存在に気付いた魔理沙、魅魔、アリスの三人は、

「お、邪魔してるぜ。霊児」
「いやー、こう言う暑い日は水遊びに限るね。まったく、自分だけこんな涼しい思いをし様だ何てズルイんじゃないかい? 霊児」
「事後報告になったけど、ビニールプールを使わせて貰っているわよ。霊児」

霊児に挨拶の言葉を掛ける。
挨拶の言葉を掛けられた霊児は、

「前に言ったがな、ここは避暑地じゃ無いんだぞ。お前等」

呆れた声色でここは避暑地では無いと言う。

「そうは言うがな、今の魔法の森は蒸し風呂状態何だぜ」
「それはさっき咲夜から聞いた」

今の魔法の森は蒸し風呂状態と言う魔理沙の主張を霊児が先程咲夜から聞いたと返し、溜息を一つ吐く。
溜息を吐いた霊児を見て、

「おいおい、そんな溜息を吐くなって。何時も通り、後でご飯を作ってやるからさ」
「そうね。只でこのビニールプールを使わせて貰うのもあれだし、ご飯を作る程度の事はしなくちゃね」

魔理沙とアリスはビニールプールを使わせて貰っている代価としてご飯を作る約束をする。
こんな暑い日に台所に立って料理を作るなど、霊児に取っては面倒臭い事この上無い。
序に言えば霊児が作れる料理は鍋料理とおにぎり位なので、暑くて作りたく無いと言う言葉を加わるだろう。
ならば、ビニールプールを魔理沙達に使わせるのも吝かでも無いと思っている霊児に、

「……と、そうだ。ご飯に対するリクエストは在るか?」

魔理沙はご飯に対するリクエストは在るかと聞いて来た。
聞かれた事に、

「冷たい物」

霊児は間髪入れずに冷たい物と答える。

「冷たい物だな……了解したぜ」
「冷たい物ね……何を作るかは食料庫を見てから決めましょうか」

霊児のリクエストを受けた魔理沙とアリスが了承の返事をした後、霊児は魅魔の方に顔を向け、

「で、お前は俺に何かしてくれないのか?」

魅魔は自分に何かしてくれないのかと聞く。
何かしてくれないのかと聞かれた魅魔は、

「え、あ、うーん……肩でも揉んでやろうかい?」

少し悩み、肩でも揉もうかと言う提案をした。
魅魔との付き合いもそれなりに長い分、今の返答は大体予想出来ていたからか、

「あ、そう」

霊児は別に驚いたり落胆したりと言った表情は浮かべずに素っ気無い言葉を漏らす。

「……もう一寸何か反応が有っても良かったんじゃないかい?」
「お前が魔理沙とアリスと一緒にご飯を作ると言ったら俺も驚いたけどな」

もう少し反応が有っても良いのでは言って来た魅魔に自分もご飯を作ると言ったら驚いたと霊児が口にすると、

「はは……あ、そうだ。あそこでのんびりとしているレミリアにちょっかいでも掛けようじゃないか!!」
「あ、ちょ、魅魔様!?」
「一寸、何で私まで!?」

魅魔は唐突に魔理沙とアリスの腕を掴み、少し離れた場所に居るレミリアの方に向かって行く。
露骨に逃げの一手を取った魅魔に霊児が少し呆れた感情を持った時、

「どうもー!! 清く正しい射命丸文でーす!!」

元気な声と共に文が霊児の近くに降り立った。
今日は千客万来だなと言う感想を霊児は抱きつつ、

「……何しに来た?」

何処か疲れた様な表情を浮かべ、何をしに来たのかを問う。

「あやややや、冷たい反応ですね」

霊児の反応に少し不満を覚えつつも、文は歩いて霊児へと近付き、

「霊児さんにお伝えするべき事が在り、やって来ました」

霊児に伝えたい事が在ると述べる。

「伝えたい事?」
「はい、そうです。昨日の異変の事を纏めた新聞を幻想郷中にばら撒いて来ましたのでその御報告に」

首を傾げた霊児に文は昨日の異変の事を纏めた新聞を幻想郷中にばら撒いたと話し、"文々。新聞"を手渡す。
手渡された"文々。新聞"を霊児は受け取り、書かれている内容に目を通していく。
今回の"文々。新聞"には霊児、魔理沙、魅魔、にとり、椛と言った面々が弾幕ごっこでレミリアが起こした異変を解決したと言った事が書かれていた。
文章以外にも、霊児達が弾真ごっこをしている様子を撮った写真が何枚も載っている。
思っていた以上に昨日の異変に付いて詳しく書かれていたからか、霊児は少し驚いた表情を浮かべてしまう。
そんな霊児に向け、

「これで弾幕ごっこは爆発的に広まると思いますよ」

文は胸を張りながらこれで弾幕ごっこ爆発的に広まるだろうと言う予測を述べる。
今回発刊された"文々。新聞"を読めば爆発的に広まるかは別としても、弾幕ごっこに対する興味は確実に覚えるだろう。
何せ、異変を遊びである弾幕ごっこで解決と言う前代未聞な事を仕出かしたのだ。
これで弾幕ごっこに興味を持たない者は居ない。
まぁ、それで今まで弾幕ごっこをやっていなかった者達が弾幕ごっこをやり始めるかは別ではあるが。
ともあれ、文は幻想郷中に"文々。新聞"をばら撒いたとの事なので弾幕ごっこの知名度は確実に鰻登りになるであろう。
だからか、

「そいつは重畳」

霊児は重畳と言う言葉を呟き、"文々。新聞"を床に置く。
そして、今度こそ水で満たされたビニールプールに入ろうした瞬間、

「それにしても、皆涼しそうで良いですねー」

文はビニールプールで遊んでいる魔理沙、魅魔、アリス、レミリアの様子を写真に収め、涼しそうにしている四人を羨ましがる様な言葉を零す。
丁度ビニールプールに入ろうとしていた霊児は文が零した言葉のせいで入るタイミングを逃したと言った感じになりつつ、

「……俺が居ない間に勝手に来て勝手に遊んでいるだけだがな」

文に魔理沙達が自分の居ない間にやって来て勝手に遊んでいるだけだと言う事を伝えた。
霊児から伝えられた情報を耳に入れた文は、

「でもでも、霊児さんに取っては嬉しい光景なのではないですか?」

四人が遊んでいる光景は霊児に取って嬉しい光景なのではと尋ねる。

「嬉しい光景? 何でだ?」
「ほらほら。皆可愛い子ばかりですし、おまけに水着姿なので露出も高い。これは霊児さんの短剣も暴走状態なのでは?」

何が嬉しい光景なのかを疑問に思った霊児に文が嬉しい内容を説明し、にやにやとした表情で霊児の短剣も暴走状態なのではと言って来たからか、

「ふん」
「あた!?」

霊児は文の頭頂部を殴り付け、

「俺のは短剣じゃねぇ。大剣だ」

文を睨みながら自分のは短剣ではなく大剣だと主張した。
その様に主張した霊児から若干の殺意が感じられた為、

「た、大変失礼致しました……」

文は頭頂部を押さえながら謝罪の言葉を口にする。

「たく……」

文の謝罪を聞いた霊児は幾分が機嫌を直し、今度こそビニールプールに入ろうとしたが、

「……またか」

また来訪者がやって来ているの感じたのでビニールプールに入るのを止め、上空の方に視線を移す。
視線を移した先には黒い点が見え、その黒い点どんどん大きくなっていく。
黒い点が大きくなった事で、黒い点が人影である事を霊児が知ったのと同時に人影は霊児の近くに降り立ち、

「元気そうで何よりだ、博麗霊児よ」

霊児に声を掛けて来た。
降り立ち、声を掛けて来た者が、

「だ、大天狗様!?」

大天狗であった為、文は慌てて姿勢を正す。
慌てて姿勢を正した文を見て、

「そう畏まらなくても良い。今は公の場では無いのだからな」

今は公の場では無いので畏まらなくても良いと言う。

「は、はぁ……」

大天狗に畏まらなくても良いと言われた為、文は少し姿勢を崩した。
それでもまだ若干の緊張を見せているが。
流石の文も、直属の上司の前では何時もの様子を見せる事は出来ない様だ。
若干の緊張を見せている文を余所に、大天狗はレミリアの方に顔を向け、

「貴公と会うのも久しいな。レミリア・スカーレットよ」

会うのも久しいと口にする。
大天狗の発言に反応したレミリアは、

「そうね、大天狗」

挑発的な笑みを浮かべながら大天狗の方に体を向け、

「で、態々私が居る時にここに来たって事は私と戦う積りかしら? 前の時は貴方と戦う事は無かったし」

自分と戦う気なのかと聞く。
聞かれた事を、

「貴公が起した異変は今代の博麗である博麗霊児が解決した。儂が今更どうこうする積りも言う積りも無い」

大天狗は否定し、手に持っている大きな包みを縁側に置いて霊児の方に顔を戻し、

「事の全ては犬走椛から聞いた。博麗霊児よ、貴公に取っては異変を解決する事は当たり前の事かもしれぬ。だが、これだけは言わせて貰おう。ありがとう」

異変を解決してくれた事に対する礼を述べ、頭を下げた。
頭を下げた大天狗に、

「別に礼なんていらねぇよ。別に礼が欲しくて異変を解決した訳じゃ無いし、序に言えば俺はお前から情報を貰った訳だしな。それよか、その包みの中身は何だ?」

礼は不要と言い、持って来た包みの中身は何だと霊児は尋ねる。

「ああ、これか」

尋ねられた大天狗が包みを開くと、中から大量の酒やら山の山菜やらが出て来た。
包みの中から出て来た酒と山菜に霊児が目を奪われている間に、

「今回の件の礼代わりに持って来た物だ」

大天狗が今回の異変を解決した礼だと伝えると、

「お、それだけ沢山在るなら今から宴会をやろうぜ!! 宴会!!」

霊児と同じ様に大天狗が包みを開いたのを見た魔理沙は、今から宴会をし様と言う提案をする。
まだまだ太陽が天を支配している時間帯であるが、

「……ま、結構人数が揃ってるし良いか」

人数はそれなりに揃っている事もあってか、霊児は今から宴会をする事に賛成の意を示した。
そんな霊児に同意するかの様に、

「お、今から宴会かい? 良いね良いね。真っ昼間からの宴会も乙なものさ」
「こんな昼間っからお酒を飲むのはどうかと思うけど……ま、偶には良いかしらね」
「ふむ……大天狗が持って来たお酒も山菜も結構な量が在るみたいだし、追加は必要なさそうね。咲夜、この宴会は自由にして良いわよ」
「畏まりました」
「射命丸文よ。貴公も儂が居る事など気にせずに楽しむと良い」
「あ、はい!! 了解致しました」

魅魔、アリス、レミリア、咲夜、大天狗、文の六人も今から宴会を開く事に賛成し出す。
全員が全員賛成した事で、真っ昼間から宴会が始まった。
因みに、この宴会は昼間だと言うのに大いに盛り上がったと言う。























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