とある夏の日。
霊児は縁側に在る柱に背を預け、

「今日も暑いな……」

団扇で自分を扇ぎながら今日も暑いなと言う愚痴を漏らす。
暑いと言う愚痴を漏らしているのにビニールプールを使っていない辺り、我慢出来ない程の暑さと言う訳では無い様だ。
それはさて置き、

「そうね、ここ最近はかなり暑いわね」

霊児の暑いと言う愚痴に同意する発言をレミリアは零した。
自身に同意する発言が耳に入った霊児はレミリアの方に顔を向け、

「……最近、良くここに来るよな。お前」

レミリアに最近は良く来るなと言う言葉を掛ける。
その様な声を掛けられたレミリアは、

「あら、別に良いじゃない。お土産にワインも持って来たんだし」

少しも悪びれた様子を見せずに、お土産としてワインを持って来ているのだから別に良いだろうと言いながら居間の方に指をさす。
レミリアが指をさした居間には、レミリアの言うお土産のワイン瓶が卓袱台の上に一つ乗っかっていた。

「……まぁ、ワインとかは飲む機会が余り無いから嬉しいと言えば嬉しいけどよ」

ワインとかは飲む機会は余り無いのでお土産にワインを持って来てくれるのは嬉しいと呟いた後、

「そういや、今日は咲夜と一緒じゃないのな」

霊児は少し気に掛かった事を口にする。
そう、霊児が口にした通り今日のレミリアは従者である咲夜を連れずに一人で博麗神社に来ていたのだ。
外出する時は必ずと言って良い程に咲夜を連れていたので、霊児がその様な事を口にするのも無理はないとレミリアは感じ、

「ええ、今日は咲夜には内緒で来たの。言うなれば、お忍びでのお出掛けね」

霊児に咲夜が居ない理由を話す。

「ふーん……」

咲夜が居ない理由を聞き、咲夜は今頃レミリアを必死になって探しているとではと言う事を霊児が考えていると、

「おーっす!!」

上空の方から元気な声が聞こえて来た。
聞こえて来た声に反応した霊児とレミリアが顔を上げると、箒に腰を落ち着かせた魔理沙の姿が目に映る。
二人の目に映った魔理沙は流れる様な動きで降下して地に足を着け、

「よう」

改めてと言った感じで片手を上げ、挨拶の言葉を掛けた。
掛けられた挨拶の言葉に、

「あら、いらっしゃい。魔理沙」

レミリアが我先にと言わんばかりに出迎えの言葉を掛けたので、

「って、お前がそう言うのかよ」

霊児は思わず突っ込みを入れてしまう。
普通は来客が来たら家主である霊児が出迎えの言葉を掛けるべき立場なので、突っ込みを入れてしまうのも仕方が無いと言えば仕方が無い。
故に霊児の突っ込みは正当性が有るのだが、突っ込みを入れられたレミリアは何の反応も示さなかった。
なので、霊児が更なる突っ込みを入れ様とした時、

「……てか、最近お前を良くここで見掛けるよな」

魔理沙がレミリアに最近良く博麗神社で見るなと言う疑問を投げ掛ける。
投げ掛けられた疑問に、

「あら、別に良いじゃない」

レミリアは自分が博麗神社に居ても別に良いだろうと返す。
確かに、レミリアが博麗神社に居てはならない理由は無いので、

「まぁ、別に良いけどさ……」

魔理沙は何処か拗ねた様に別に良いけどさと呟き、霊児の隣に腰を落ち着かせ、

「そう言えば……レミリア、咲夜はどうしたんだ?」

レミリアに咲夜はどうしたのかと聞く。
聞かれたレミリアは咲夜が居ない理由を答え様としたが、

「咲夜に内緒でここに来たんだとよ」

レミリアが答える前に霊児が咲夜が居ない理由を伝えた。
自分が伝え様としていた答えを先に言われた為、レミリアは思いっ切り不満気な表情を浮かべてしまう。
霊児は不満気な雰囲気を醸し出しているレミリアに気付いてはいたが、そんなレミリアを無視するかの様に、

「あ、そうだ魔理沙。後でご飯を作ってくれないか?」

霊児は魔理沙に後でご飯を作ってくれないかと頼む。
ご飯を作ってくれと頼まれた魔理沙は、

「おう!! 構わないぜ!!」

快くご飯を作る件を引き受け、

「で、リクエストは何か有るか?」

リクエストは有るかと尋ねた。
尋ねられた霊児は、

「そうだな……冷たい物を頼む」

冷たい物をリクエストする。

「冷たい物だな。了解したぜ」

霊児のリクエストを受けた魔理沙が了承の返事をしたタイミングで、

「……貴方達、私を無視するとは良い度胸じゃない」

レミリアは体を振るわせ、体中から魔力を溢れ出させた。
どうやら、霊児と魔理沙のレミリアを無視するかの様な会話でレミリアの機嫌を損ねてしまった様だ。
この機嫌が悪いレミリアがストレス発散の名目で暴れでもしたら確実に博麗神社に被害が出るので、

「あー……悪かった。悪かったって」

霊児はレミリアを宥め始めた。
宥められたレミリアは、

「………………………………………………………………」

ここで暴れたりするのも大人気無いと判断し、体を震わせるのと魔力を溢れ出させるのを止める。
レミリアの様子からレミリアが暴れて博麗神社に被害を齎す可能性が無くなった為、

「……ふぅ」

霊児は安心したかの様に一息吐いた。
その後、霊児、魔理沙、レミリアの三人は雑談を交わしていく。
暫らくの間、霊児達はのんびりとした雰囲気の中で雑談を交わしていたが、

「お?」
「ん?」
「あら?」

何の前触れも無く雷が落ちる音が鳴り響いた為、霊児達は雑談を中断させて空を見上げる。
空を見上げながら、

「雷が鳴ったって事は近い内に雨でも降るのか?」

霊児が近い内に雨でも振るのかと呟くと、

「それは困ったわね。雨が降ったら帰れなくなるじゃない」

続ける様にしてレミリアはこの儘では紅魔館に帰れないと漏らす。
吸血鬼であるレミリアは流水を弱点としている。
つまり、雨もレミリアの弱点となるのだ。
と言っても、レミリアなら雨で深刻なダメージを受ける前に紅魔館に帰る事も出来るだろうが。
兎も角、雨が降りそうと言う事でレミリアのテンションが目に見えて落ち始めていく。
しかし、幾ら待っても雨が降って来る気配は見られなかった。
だからか、

「…………ちっとも雨が降らないな」

魔理沙は訝し気な表情を浮かべ、周囲を見渡す様に顔を動かす。
顔を動かした結果、

「ん? あれは……雨雲か?」

魔理沙が雨雲を発見した。

「雨雲? 何所だ?」
「ほら、あそこ」

雨雲は何所だと問うた霊児に魔理沙が雨雲が在る方向に指をさすと、霊児は魔理沙が指をさした方向に目を向ける。
目を向けた先には、確かに雨雲が在った。
但し、雨雲が在る場所は博麗神社から大きく離れた場所。
正確に言えば、

「ん? 雨雲が在る場所は……紅魔館か?」

紅魔館の真上だ。
霊児が紅魔館の真上に雨雲が在る事を知ったのと同時に、

「え!? 嘘!?」

レミリアは慌てた動作で紅魔館が在る方に顔を向け、己が目で確認し様とする。
顔を動かしたレミリアに目には、

「あら、本当に紅魔館じゃない」

紅魔館の真上に雨雲が発生しているのがはっきりと映った。
博麗神社と紅魔館は結構な距離が開いているので詳しい状況は分からないが、雨が降り注いでいると言う事だけは分かったので、

「何よあの雨。まるで私を紅魔館に帰らせない為だけに振ってるみたいじゃない」

レミリアは何とも言えない表情を浮かべてしまう。
降っている雨はレミリアの言葉通りレミリアを紅魔館に帰らせない様な形で降っているので、レミリアがそんな表情を浮かべるのも無理はない。
紅魔館の方に顔を向けた儘動かないレミリアに、

「お前を帰さない為に雨でも降らせてるんじゃないか?」
「何だ、追い出されたのか?」

霊児と魔理沙はからかいの言葉を掛けた。
二人のからかいの言葉に反応したレミリアは、

「いやいやいやいや、違うから。多分」

慌てた動作で右手を何度も横に振り、自分は追い出された訳では無いと言う主張を始める。
レミリアの慌て振りを見つつ、

「まぁ、レミリアが追い出されたとか追い出されていないとかはどうでも良いが……」

霊児は改めて紅魔館の方に顔を向けながら立ち上がり、

「ある一定の場所にだけ雨雲が発生する……何てのは普通は無いからな」

近くに置いておいた羽織を手に取り、入れ替えるかの様に持っていた団扇を置く。
手に取った羽織は白を基調としていて縁が赤く、背中の部分に赤い文字で"七十七代目博麗"と書かれている霊児に取っては何時もの羽織り。
その羽織を霊児は勢いを付けるかの様にして着込み、ポケットに手を入れて夢美から貰ったグローブを取り出し、

「この前に異変が発生したばかりだが……新たな異変の前兆だったら面倒だ。少し調べてみるか」

グローブを手に着けて紅魔館に行く事を決める。
霊児が紅魔館に向かう様子を見せた事で、

「お、だったら私も行くぜ」

魔理沙は自分も紅魔館に行くと言って立ち上がり、自身の箒に腰を落ち着かせた。
紅魔館に行く事を決めた二人が早速出発し様とした時、霊児と魔理沙は何かを思い出したかの様にレミリアの方に顔を向け、

「と言う訳だから留守番しとけよ」
「大人しくしてろよ」

大人しく留守番してろと言う言葉を残し、空中に躍り出て紅魔館へと向って行く。
空中に躍り出て、紅魔館に向かって行く霊児と魔理沙を見送っている時、

「……あ、思い出したわ。紅魔館にだけ雨が降ってる理由」

レミリアは紅魔館にだけ雨雲が発生し、雨が降っている理由を思い出す。
紅魔館にだけ雨が振っているのは別に異変でも何でも無いのだが、それを伝え様にも霊児と魔理沙は既に声が届く距離には居なかった。
ここは追い掛けてでも紅魔館にだけ雨が降っているのは異変では無いと教えに行くべきなのだろう。
だが、

「……ま、いっか」

レミリアは面倒臭いからか、霊児と魔理沙に情報を伝えに行こうとはせず、

「十中八九あの子が暴れているのだろうけど……あの二人は弾幕ごっことは言え私と咲夜、パチェに勝った存在。ま、深刻な事態にはならないでしょ」

少々楽観的な事を呟いた。





















博麗神社を出発した霊児達が紅魔館の近くにまで来ると、

「おー……確かに、紅魔館にだけ雨が降っているな」

魔理沙は本当に紅魔館にだけ雨が降っていると口にする。
魔理沙が口にした言葉が耳に入った霊児は、

「紅魔館にだけ雨が振っていると言う事は、この雨は自然のものじゃなくて人為的なものって事になるな」

紅魔館に降り注いでいる雨は人為的なものであると判断した。

「となると、やっぱり紅魔館の連中がこの雨を降らせているのか? レミリアを帰さない為に」
「どうだろうな? 紅魔館に住む者以外の誰かがレミリアを帰らせない為に雨を降らしたって可能性も考えられる」

魔理沙と霊児が雨を降らせている者が紅魔館の内外のどちらかなのかに付いて話し合っている間に、

「おっと、もう紅魔館に外壁にまで来ていた様だな」
「ありゃ、本当だな」

紅魔館の外壁近くにまで来ていた為、二人は進行を止める。
その時、

「……結界?」

霊児は紅魔館全体を覆う様に結界が張られている事に気付いた。
霊児が結界の存在に気付いたのと同時に魔理沙は結界に目を向け、

「これは……魔術的な結界か」

紅魔館に張られている結界は魔法で張られたものだと断定する。
魔術的な結界と言われ、霊児が魔法使いと言われる存在を思い浮かべ様とした時、

「結界から感じられる魔力を見るに……この結界を張ったのは多分パチュリーだな」

魔理沙は結界を張ったのはパチュリーであると口にした。
結界を張ったのがパチュリーとなれば、

「パチュリーに会いに行くべきだろうな」

パチュリーに会いに行くのが妥当だろう。
霊児がパチュリーに会いに行く事を決めた事で、

「さて、紅魔館は結界に覆われてる訳だが……どうやって中に入る?」

魔理沙はどうやって紅魔館の中に入るかを尋ねる。
普通に考えれば結界の構成を調べたりして解除と言った方法を取るのが常道だろう。
だが、

「どうするもこうするも……」

霊児はそんな常道と言った方法を無視するかの様に体を屈め、

「こうするだけだ!!」

弾かれる様に結界へと突っ込んで行き、結界に当たる直前に体を一回転させ、

「だりゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

結界に飛び蹴りを叩き込んだ。
霊児が飛び蹴りを叩き込んだ結界は、飛び蹴りが叩き込まれた場所を中心にして物凄いスピードで結界全体に罅が走っていき、

「……よし」

甲高い音を立てながら砕け散る様に崩壊していった。
崩壊していく結界を見ながら、

「おー……綺麗に壊れたなー」

魔理沙が暢気な感想を漏らしている間に霊児の足が紅魔館の外壁に当たり、外壁を砕いて霊児は紅魔館の内部へと進入する。
内部に侵入した霊児は勢い良く床に両足を着け、滑る様に前方へと進んで行き、

「よ……っとっと」

体を回転させながら減速して行く。
そして、完全に止まったタイミングで、

「……うっし、完璧。流石俺」

霊児は自画自賛をする様な発言を漏らし、周囲を見渡す。
周囲を見渡し、何か変な物でも無いかと探している霊児に、

「相変わらず力尽くな方法を取るな。霊児は」

後ろの方からやって来た魔理沙が呆れと感心を入り混ぜた様な声を掛けて来た。
魔理沙の声に反応した霊児は振り返り、

「ま、力尽くの方が手っ取り早いからな」

力尽くの方が手っ取り早いと返し、

「魔理沙だって、力尽くは嫌いじゃ無いだろ」

魔理沙も力尽くは嫌いじゃ無いだろうと聞く。
聞かれた事を、

「ま、そりゃ嫌いじゃ無いけどな」

魔理沙は肯定し、軽い笑みを浮かべる。
まぁ、弾幕はパワーと言うのを信条としている魔理沙だ。
力尽くが嫌いと言う事は無いだろう。
一応敵陣の真っ只中に居るのに暢気な雰囲気を見せ始めた霊児と魔理沙であったが、

「「ッ!!」」

唐突に、二人は飛び上がる様にして今居る場所から離れた。
何故、二人は今居る場所から離れたのか。
答えは簡単。

「やれやれ、手厚い歓迎だな」
「全くだぜ」

霊児と魔理沙に向けて弾幕が飛んで来たからだ。
飛び上がった二人は空中に留まり、弾幕が飛んで来た目を向ける。
霊児と魔理沙が目を向けた先には、

「やっぱり妖精メイドか。しかも大量の」
「ま、ここでこんな事をして来る奴等と言ったらこいつ等位しか居ないけどな」

大量の妖精メイドの姿があった。
現れた妖精メイドは弾幕を放つ体勢を取っていた為、弾幕を放って来たのは妖精メイドで間違い無いだろう。
行き成り弾幕を放って来た妖精メイドを視界に入れながら、

「そういや、魔理沙は良くここに来て本を持って行っているよな。その時はこんな風に妖精メイドに襲われたりするのか?」

霊児は魔理沙に紅魔館に来る時は何時も妖精メイドに襲われるのかと尋ねると、

「いんや。ここに来て妖精メイドに襲われたのはこの前の異変以来だな」

魔理沙は否定の返事を返す。

「んー……となると、紅魔館にのみ雨が降っているって言うのは異変に近いものなのか?」

魔理沙の返事から今回の件は異変に近いものなのではと霊児が考えている間に、妖精メイド達は再び弾幕を放って来た。
放たれた弾幕を見て、

「弾幕の量に密度、そして弾速が妖精が放つものとは思えないな」

霊児は妖精の放つ弾幕とは思えないと言う感想を抱く。
霊児が抱いた感想に、

「だな。まるで異変の時の妖精みたいだぜ。それも最後の方の」

魔理沙は同意する様な発言を口にする。
その後、霊児と魔理沙は紅魔館で確実に何かが起こっている思いながら顔を見合わせ、

「行くぞ」
「おう」

妖精メイドが居る方へと突っ込んで行った。
妖精メイドの方に突っ込むと言う事は弾幕の中に突っ込むと言っている様なものなのだが、

「この程度じゃ……」
「私達を倒す事は出来ないってな」

霊児と魔理沙は余裕が感じられる表情で全ての弾幕を避け、反撃と言わんばかりに弾幕を放つ。
二人が放った弾幕は妖精メイド達が放った弾幕を掻い潜るに突き進み、妖精メイド達に次々と命中していく。
弾幕が命中した妖精メイドは次から次へと撃ち落されていき、霊児と魔理沙が妖精メイド達が居た場所を通り抜けた頃には、

「ま、こんなものか」
「だな。弾幕性能が高いだけ耐久面はそこ等の妖精の変わらなかったし」

現れた妖精メイドの全てを一掃し終えていた。
妖精メイド達を全て一掃し終えた霊児と魔理沙は振り返ると言った事をせずに、

「そういや、咲夜から妖精メイドは殆ど仕事をしないって聞いてたんだが……こう言う邪魔はしてくるんだな」
「こいつ等にとっちゃ、私達の邪魔は仕事じゃなくて遊びって事何だろ」
「その遊びで有無を言わずに弾幕を放って来るってか。物騒な遊びも在ったものだな」
「それ、弾幕ごっこって言う遊びをやってる私等が言える台詞じゃ無いと思うぜ」
「確かに。俺達が言える台詞じゃないな」
「だろ」

弾幕を放つのを止め、雑談を交わしながら先へと進んで行く。
先に進んで行く道中で当然の様に邪魔をしに出て来た妖精メイド達を片手間で倒し、霊児と魔理沙が順調な道中だと思い始めた頃、

「これ以上、先へは進ませないわ」

二人の行く手を遮るかの様にパチュリーが現れた。
自分達の進行方向上にパチュリーが現れた事で二人は進行を止める。
そして、

「よう、パチュリー」

魔理沙は片手を上げて暢気な声色で挨拶の言葉をパチュリーに掛けた。
挨拶の言葉を掛けられたパチュリーは霊児と魔理沙の存在を認識し、

「私が張った結界が破られたものだから慌てて来て見たら……貴方達だったのね」

少し驚いた表情を浮かべる。
が、直ぐに浮かべていた表情を怒りが入ったものに変え、

「て言うかそこの白黒!! また来たの!?」

魔理沙にまた来たのかと言い放つ。
パチュリーが怒っているのを感じた魔理沙は、

「おいおい、何を怒っているんだ?」

何で怒っているのかを尋ねる。
尋ねられたパチュリーは、

「貴女が私の本を盗んでいくからでしょうが!!」

魔理沙が自分の本を盗んでいくからだろうと返す。

「おいおい、人聞きの悪い事を言うなよ。私は死ぬまで借りてるだけだぜ。それに本を借りていくのは弾幕ごっこで私が勝った際の報酬だろ」
「……それ、私が貴女の犯行現場を発見したら済し崩し的に弾幕ごっこで決着を着けるって話になってるだけじゃない」
「まぁ、そうだけど……お前だって結構乗り気で私と弾幕ごっこでしてただろ」
「う……」

魔理沙が言っている事に思い当たる部分が在るからか、パチュリー思わず押し黙ってしまう。
そんなパチュリーを見て、

「何だ、やっぱりパチュリーも弾幕ごっこを楽しんでるんじゃないか」

魔理沙はからかいの言葉を掛けながら胸を張り、

「ま、お前との弾幕ごっこは私が勝ち越してるけどな」

パチュリーとの弾幕ごっこは自分が勝ち越してると言って得意気な表情を浮かべた。

「く……何で毎回このパワー馬鹿に勝てないのかしら……」
「ふふん、弾幕はパワーだぜ」

何で魔理沙に弾幕ごっこで勝てないのかと呟いたパチュリーに、魔理沙がパワーが足りていないと返した時、

「……俺達は紅魔館の周辺にのみ雨が降っている原因を探りに来た。単刀直入に聞くが……お前等、また何か異変を起こそうとしているのか?」

この儘では話が進まないと判断したからか、霊児は二人の話を無理矢理中断させるかの様に自分達が紅魔館にやって来た理由を少し大きな声で述べる。
霊児と魔理沙が紅魔館にやって来た理由を知ったパチュリーは表情を真面目なものに変え、

「この前の異変は殆どレミィの独断のものだったとは言え、私達はレミィの行いを特に止めると言った事はしなかった。だから、貴方が今回の事……紅魔館にのみ
雨が振っているのを見て私達が何かを企んでいると思うのも無理はないわ」

紅魔館の面々が何かを企んでいると思っても無理はないと口にした。

「……まるで自分達は何も企んでいないって言いたげだな」
「ええ、そうよ」

霊児から疑う様な視線を受けつつも自分達は何も企んでいないとパチュリーが断言した後、霊児は今までの会話を思い返し、

「さっき言ったよな? 『これ以上、先へは進ませないわ』って。それはつまり……この先に見られたら不味い何かが在ると解釈しても良いのか?」

パチュリーにこの先には見られたら不味い何かが在るのではと聞くと、

「……御自由に」

パチュリーは一瞬だけ間を空け、どう取るかは御自由にと言う。
御自由にと言って来たパチュリーに、

「…………………………………………………………………………」

霊児は違和感を覚えた。
パチュリーならばもっと上手い返し方が出来た筈だと考えたからだ。
上手い返しが出来なかったのは、それだけ切羽詰った状況になっているのかと霊児は思いつつ、

「……先へ進ませて貰うぞ」

先へ進む意志を示す。
霊児の先へ進むと言う意志を受けたパチュリーは、

「……そう簡単に通すとでも?」

パチュリーは体中から魔力を少しだけ溢れ出させ、戦闘体勢を取った。
こうなってしまった以上、先に進む為にはパチュリーを倒す必要がある。
だが、霊児はパチュリーと一戦交える気にはなれなかった。
何故かと言うと、自分の勘が早く先に進めと言っているからだ。
もし、霊児一人で紅魔館に来ていたのなら確実にパチュリーの足止めを喰らっただろう。
そう、霊児一人であるのならば。
今、ここに居るのは霊児一人では無い。

「……魔理沙」
「何だ?」
「ここ、任せても良いか?」
「おう!! 任されたぜ!!」

魔理沙も居るのだ。
魔理沙が快くこの場を引き受ける件を承諾してくれたので、霊児はパチュリーの真横を通り抜けるかの様に突っ込んで行く。
当然、

「そう易々と通すとでも……」

パチュリーは霊児の進行を妨害する行動を取ろうとした。
が、

「ッ!!」

パチュリーが行動を起こす前に魔理沙が霊児を護る様にレーザーを幾つも放って来た為、パチュリーは起こそうとしていた行動を慌てて取り止めて回避行動を取る。
その瞬間、

「しまっ!!」

霊児はパチュリーの隣を通り抜けてしまった。
通り抜けた霊児の方にパチュリーが体を向けて攻撃を仕掛け様とした時、

「私に背中を見せても良いのか?」

魔理沙から自分に背中を見せても良いのかと言う言葉が発せられた為、パチュリーは霊児の方に体を向けるのを止めて魔理沙の方に体を向ける。
体を向けた先に居る魔理沙は、

「……成程、どうあっても私に彼の邪魔をさせないと言う訳ね」

二個の陰陽玉を左右に佇ませ、戦闘体勢を取っていた。
魔理沙が戦闘体勢を取っているからか、

「……………………………………………………………………」

パチュリーは意識を霊児ではなく魔理沙の方に向ける。
パチュリーの意識が自分の方に向いているの感じ取った魔理沙は、

「霊児の後を追いたかったら追っても良いぜ。そしたら、私は私に背を向けたお前を倒して直ぐに霊児の後を追えるからな」

軽い挑発を行う。
魔理沙の挑発を受けたパチュリーは、

「……良かったの? 彼を先に進ませても?」

霊児を先に進ませても良かったのかと尋ねる。

「? どう言う意味だ?」
「……弾幕ごっことは言え、レミィに勝った博麗霊児の実力は本物。けど、彼女が有している能力は極めて危険で強力。例え、彼が如何なる攻撃を防ぐ様な
肉体的強度を持っていたとしても……全くの無意味。確実に死ぬわよ、彼」

尋ねた事に魔理沙が喰い付いて来たからか、パチュリーは魔理沙の不安を煽る様な言葉を紡いでいく。
魔理沙の不安を煽り、不安から生まれて来るであろう隙を突いてパチュリーは一気に勝負を決めに掛かろうとしたのだが、

「ああ、それなら問題無いさ」

当の魔理沙は欠片も不安がってはいなかった。
自分の目論見が綺麗に外れた事で

「……え?」

パチュリーが思わず間の抜けた表情を浮かべてしまった間に、

「だって、私は霊児の事を信じているからな」

魔理沙は満面の笑顔で不安がっていない理由を話す。
博麗霊児に対する絶対的な信頼。
それが在るから霊児の身の危険の話を出しても何の意味も無い事を理解したパチュリーは、

「随分と、彼の事を信じている様ね」

感心と呆れを混ぜた様な表情を浮かべた。

「当然。私は霊児の事を誰よりも信じている女だぜ」
「……成程、何をするにしても先ずは貴女を倒さなければならないみたいね」

魔理沙が変わらずの笑顔で霊児の事を誰よりも信じていると言い切った為、先ずは魔理沙を倒す必要が在るとパチュリー判断し、

「短期決戦でいかせて貰うわ」

自分の周囲に赤、青、黄、緑、橙の色をした五つのクリスタル状の物体を出現させる。
現れた物体を見た魔理沙は、

「……そいつが、お前のオプション兵装か」

少し驚いた表情を浮かべた。

「ええ、そうよ。これが、私のオプション兵装」

パチュリーは自分の周囲に浮かんでいる物がオプション兵装である事を肯定し、

「けど、オプション兵装……私の賢者の石は単純なオプション兵装じゃ無いわよ」

自分のオプション兵装である賢者の石は単純な物では無いと口にする。

「……賢者の石? 賢者の石って言うと……あの賢者の石か?」
「いえ、私のこれは賢者の石と言う名前を付けているだけであって実際の賢者の石では無いわ。言うなれば、パチュリー・ノーレッジ式賢者の石よ」
「……紛らわしい名前を付けるなよ」
「確かに、実際の賢者の石と私の賢者の石では使用用途など色々と異なるけど……賢者の石と言う名に恥じない程の力を有しているとは思っているわ」

パチュリーが出現させた賢者の石に付いて、魔理沙とパチュリーが軽い会話を交わした後、

「さて、もう話す事は話したし……好い加減戦おうぜ」

魔理沙は場の雰囲気を一変させるかの様に好い加減戦おうと言う提案をした。
魔理沙の提案通り、話す事はもう話したので、

「そうね、好い加減戦いましょうか」

パチュリーは魔理沙の提案に同意を示し、掌を魔理沙へと向ける。
そして、魔理沙とパチュリーの戦いが始まろうとした刹那、

「……と、そうだ。戦いのルールはどうする? 普通に戦うか? それとも弾幕ごっこで戦うか?」

思い出したかの様に魔理沙はパチュリーにどの様にして戦うかを聞く。
聞かれたパチュリーは、

「そうね、別に普通に戦っても良いのだけど……後の事を考えると消耗の少ない弾幕ごっこの方が良いわね」

少し考える素振りを見せながら消耗が少ない弾幕ごっこで戦いたいと言う。

「……その口振りだと、まるで勝つのは自分だと言っている様に聞こえるぜ」
「あら、そう言ったのよ。何時までも、パワー馬鹿の貴女に負け続ける私と思って?」
「ああ、思ってるぜ。お前がそのパワー馬鹿に負け続けるってな」

二人が互いを挑発する言葉を合図にしたかの様に、

「なら、今からその減らず口を叩けない様にして上げるわ」
「やれるものならやってみろ。私は霊児にここを任されたからな。霊児の信頼を裏切る様な真似は絶対にしないぜ!!」

パチュリーと魔理沙の弾幕ごっこが始まった。





















魔理沙とパチュリーが弾幕ごっこを始めた頃、霊児は変わらずに紅魔館の廊下を突き進んでいた。
無論、道中で霊児の邪魔をする様に現れた妖精メイドを蹴散らしながら。
先を急ぎつつ、

「……妖精メイドが襲い掛かって来る事以外、普段と大して変わりは無いな」

妖精メイドが襲い掛かって来る事以外は普段と大して変わらないと霊児が呟いた時、

「貴方……誰?」

霊児の進行方向上に何者かが現れた。
自分の進行方向上に何者かが現れた事で霊児は移動を止め、誰が現れたのかを確認する為に顔を上げる。
顔を上げた霊児の目には金色の髪に紅い瞳、レミリアと似た様な帽子に枯れ枝から宝石を吊るした様な翼を生やした女の子が映った。
現れた女の子の顔付きがレミリアに似ているなと言う感想を抱きつつ、

「そう言うお前こそ誰だ?」

霊児は聞き返すかの様にお前こそ誰だと問う。
問われた女の子は、

「私? 私はフランドール・スカーレットよ」

何の抵抗も無く、自分の名前を口にした。
フラランドールが口にしたスカーレットと言う名字から、

「スカーレット……お前、レミリアの親族か何かか?」

霊児はフランドールはレミリアの親族か何かかと推察すると、

「え? 貴方、お姉様の事を知ってるの?」

フランドールは少し驚いた表情を浮かべ、お姉様の事を知っているのかと聞く。
お姉様と言う単語からフランドールはレミリアの妹なのかと霊児は考えつつ、

「ああ」

フランドールから聞かれた事を肯定する。
霊児がレミリアの事を知っていると言う情報を得られたフランドールは、

「お姉様の事を知ってる男の人……若しかして、貴方が博麗霊児?」

目の前に居る存在が博麗霊児なのではと考えた。
フランドールの口振りからレミリアから自分の事を聞かされていたのかと思いながら、

「ああ、俺が博麗霊児だ」

霊児は自分が博麗霊児である事を断言する。

「へぇー……貴方が……」

目の前に居る存在が博麗霊児である事を知ったフランドールは笑みを浮かべ、

「お姉様から聞いてるわ。何でも、お姉様と楽しく遊んだって」

レミリアから楽しく遊んだ事を聞いたと話す。
フランドールが話した事が耳に入った霊児は、

「ああ、この前の異変の時だな」

レミリアが少し前に起こした異変の事を思い出し、

「……あれ? そう言えば、異変解決に来た時にお前の姿は見なかったな」

異変解決に来た時にフランドールの姿を見ていない事を指摘する。
この前の異変を解決しに来た時は、紅魔館の主要メンバーに霊児達は出会った。
だと言うのに、紅魔館の主であるレミリアの妹には出会わなかったのだ。
霊児がその事を指摘するのも無理はない。
そんな霊児の指摘に、

「それはそうよ。私、普段はずっと地下室に居るんだもの」

自分は基本的に地下室に籠もっているので、会わなくても当然だと言う答えを返す。
パチュリーの図書館も位置的には地下に当たるが、そこで出会わなかったのを考えるにフランドールは更に下の方に居るのだろうか。
まぁ、紅魔館はかなり大きな館だ。
図書館よりも更に下に地下室が在っても不思議は無いだろう。

「ふーん……」

異変の時にフランドールに会わなかった理由に霊児が納得した時、

「ねぇ、お姉様と楽しく遊んだって事は強いんでしょ?」

フランドールは唐突に霊児は強いのかと尋ねて来た。
尋ねられた事を、

「ああ、強いぜ」

霊児は肯定する。
すると、フランドールは嬉しそうな表情を浮かべ、

「じゃあさ、私とも遊んでよ!!」

霊児に自分のとも遊ぶ様に言って来た。
遊ぶと言う事は、十中八九戦えと言う事だろう。
霊児として面倒な事はパスしたいところではあるが、

「……………………………………………………」

ここでフランドールが言って来た事を呑まなければ、かなり面倒な事になると自分の勘が言っていたので、

「……良いぜ、遊んでやるよ」

霊児はフランドールと遊ぶ件を承諾する。
霊児が自分と遊んでくれる事を承諾してくれた事で、

「やった!!」

フランドールは全身で喜びを表現しつつ、右手から悪魔の尻尾の様な物を出現させた。
フランドールが出現させた悪魔の尻尾の様な物を見て、変わった得物だと言う感想を霊児が抱いた瞬間、

「へぇ……」

悪魔の尻尾の様な物から炎が噴き出し、噴き出した炎は剣の形を形成していく。
どうやら、フランドールが出現させた悪魔の尻尾の様な物は炎の大剣の柄の様な部分であった様だ。
それはそうと、準備が完了したからかフランドールは悪魔の尻尾の様な物を両手で掴んで大きく振り被り、

「いっくよー!!」

勢い良く振り下ろした。
振り下ろされた炎の大剣が自分の目の前に来たタイミングで霊児は左手で左腰に装備してある短剣を引き抜き、

「おっと」

引き抜いた短剣で炎の大剣を受け止め、

「らあ!!」

振り払う様に短剣を振るってフランドールを弾き飛ばす。
弾き飛ばされたフランドールは、

「あはははは!! 凄い凄い!!」

楽し気な表情を浮かべながら体勢を立て直し、炎の大剣の出力を上げながら大きく振り被る。
その時、炎の大剣を振り被った影響で紅魔館の天井部分が破壊されたがフランドールは欠片も気にした様子を見せずに、

「えい!!」

再び炎の大剣を振り下ろした。
が、フランドールが炎の大剣を振り下ろした位置では霊児に攻撃は届かない。
故に、霊児は軽い疑問を覚えたのだが、

「……成程」

覚えた疑問は直ぐに氷解する事となる。
何故ならば、振るわれた炎の大剣には爆炎が迸っていたからだ。
爆炎が迸った炎の大剣が振るわれた事で炎の大剣から爆炎が放たれ、放たれた爆炎は霊児へと向かって行く。
迫り来る爆炎を見て、霊児はかなりの熱量が在りそうだと言う事を思いながら、

「しっ」

短剣を斬り上げる様にして振るう。
すると、霊児に迫って来ていた爆炎は真っ二つになった。
真っ二つになった爆炎はその儘突き進んで行き、霊児の両サイドを通り抜けた刹那、

「おっと」

霊児は短剣を構え、何時の間にか直ぐ近くにまで迫って来ていた炎の大剣を受け止める。
自身の斬撃を受け止められたフランドールは驚いた表情を浮かべながら、

「凄ーい。今の反応出来たんだ」

霊児を称賛する言葉を述べた。
フランドールの称賛の言葉が耳に入った霊児が、

「爆炎を隠れ蓑にして近付くって言うのは良いアイディアだが……その程度の不意打ちでやられてやれる程、弱くは無い積りだ」

不意打ち程度でやられる程弱くは無いと返すと、霊児の両サイドを通り抜けて行った爆炎が失速したかの様に墜落して爆発を起こす。
背後の方で爆発が発生しているのを感じ取った霊児は、発生した爆発を合図にしたかの様に右手を伸ばしてフランドールの左腕を掴み、

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおりゃ!!」

体を反転させ、一本背負いの要領でフランドールを真下に向けて投げ飛ばした。
投げ飛ばされたフランドールは勢い良く床に激突し、床を崩壊させながら眼下の方へと消えて行ってしまう。
床を崩壊させてしまったからか、

「……少し、強く投げ過ぎたか?」

霊児は強く投げ過ぎたかと呟き、消えて行ったフランドールを追う様にして降下して行く。
降下し、幾らかの階層を下げて行くと、

「ここは……地下か?」

地下と呼べる様な場所に辿り着いた。
いや、地下に設けられた大きな一室に辿り着いたと言った方が正しいであろう。
パチュリーの図書館以外にも地下にこんなに広い場所が在ったのかと思いながら霊児は周囲を見渡し、

「……ん?」

ある事に気付く。
気付いた事と言うのは、目に映る壁などの色が紅では無いと言う事だ。
紅魔館は内も外も使われている色は紅ばかりなのだが、この地下室は紅と言う色が殆ど使われていないのである。

「……いや、そう言えばパチュリーの図書館も紅だけって訳でも無かったな」

この地下室だけでは無く、パチュリーの図書館も紅だけで構成されている訳では無いと言う事を霊児は思い出し、

「お……っと」

唐突に上半身を後ろに倒す。
何故、霊児は上半身を後ろに倒したのか。
答えは簡単。
フランドールの炎の大剣が霊児の上半身を薙ぎ払うかの様に振るわれたからだ。
どうやら、霊児がこの地下室を見ている間にフランドールは体勢を立て直していた様である。
フランドールが既に行動を起こせる状態になっている事で、霊児は意識を戦いに戻しながら上半身を元の位置に戻し、

「……ッ」

間合いを取るかの様に後ろに跳ぶ。
当然、離れた間合いをフランドールは直ぐに詰め、

「えーい!!」

炎の大剣を振るう。
振るわれた炎の大剣を霊児は短剣で受け止め、

「今更だが、遊ぶって言っても弾幕ごっこじゃ無いんだな」

遊びと言っても弾幕ごっこでは無いのだなと呟く。
霊児の呟きが耳に入ったからか、

「弾幕ごっこ? 何それ?」

フランドールは疑問気な表情を浮かべた。
フランドールの言動と表情から、フランドールが弾幕ごっこの存在を知らない事を理解し、

「レミリアの奴、弾幕ごっこの事を教えて置いても良いだろうに……」

レミリアに対する愚痴を零す。
フランドールは基本的に地下で過ごしているらしいので外界の情報に疎いのは仕方が無いが、少なくてもここ最近の間にレミリアはフランドールに会っている。
ならば、会いに行った時に弾幕ごっこの事をフランドールに教えてくれても良かっただろうが今更言っても後の祭り。
レミリアへの不満を頭から追い出しながら霊児は意識をフランドールとの戦いに戻すと、フランドールは自分を押し切ろうとしている事が分かったので、

「……………………………………………………」

霊児は全身の力を何の前触れも無く抜いた。
力で押し切ろうとしていた相手が急に力を抜いてしまった事で、

「え?」

フランドールは間の抜けた表情を浮かべ、霊児を押し倒す様に倒れ込んでしまう。
フランドールの表情を見るに、霊児が力を抜く事は全くの想定外であった様だ。
フランドールが間の抜けた表情を浮かべている間に霊児の背中が床に向いたので、

「そら!!」

霊児は両足でフランドールの胴体に蹴りを叩き込む。
蹴りを叩き込まれたフランドールは何の抵抗も無く蹴り飛ばされ、天井に激突し、

「ッ!?」

天井を貫通して階層をどんどんと上げて行ってしまう。
天井に穴を空け、姿を小さくして行くフランドールを見ながら霊児は体を回転させて床に足を着け、

「……しっ!!」

フランドールの後を追う様に飛翔する。
飛翔した霊児は先とは逆に幾つかの階層を上げて行き、最初にフランドールと出会った階層に辿り着いた時、

「……ん?」

霊児は頭上の方から何かが迫って来ているのを感じ取り、上昇を止めて顔を上げた。
顔を上げた霊児の目には、

「弾幕か……」

大量の弾幕が映った。
ここで弾幕が放たれたと言う事はフランドールがこの階層に居るのだと霊児は判断し、弾幕を避ける様に移動を行う。
無論、フランドールが放っている弾幕は移動している霊児を追う様に射線を変えて来たが、

「ま、当然だな」

霊児は想定の範囲内と言わんばかりの表情を浮かべて体を向きをフランドールが居る方に変え、右手を拳銃の形に変える。
そして、右手の人差し指の先に霊力を集中させながらフランドールに狙いを定め、

「行け!!」

足を止めて指先から霊力で出来た大きな弾を放つ。
放たれた弾は弾幕を蹴散らしながら突き進み、

「ッ!?」

フランドールの真横を通り抜け、紅魔館の天井に大きな穴を空けてその儘突き進んで行った。

「あ……」

霊力の弾が通り抜けた余波で自分が被っていた帽子が何所かに飛んで行ってしまったが、フランドールは飛んで行った帽子を無視するかの様に視線を上方へ向ける。
視線を上方に向けたフランドールの目には、曇り空が映った。
映った曇り空を見て、

「へー……雨は降って無いんだ。パチュリーに何か遭ったのかな?」

雨が降っていないのはチュリーに何か遭ったからではとフランドールは考える。
が、フランドールは直ぐに考えた事を頭の隅に追いやって霊児の方に顔を向け、

「ふふ……凄いね、霊児は。紅魔館の天井を簡単に貫通する様な攻撃を放っても息一つ切らさない何て」

感心したと言った表情になっていた。
フランドールが霊児の強さに感心している間に、霊児はフランドールの様子を観察していく。
観察した結果、フランドールに目立ったダメージは見られない事が分かった。
床や天井を貫通する程の威力で攻撃を加えたと言うのにだ。
まぁ、この程度の威力の攻撃が直撃してもピンピンしていられる連中を霊児は結構知ってはいるが。
それはそれとして、フランドールにダメージを与える為にはもっと力を上げていく必要が在ると霊児が判断した時、

「だから……そんな凄い霊児に私も凄いのを見せて上げる」

フランド−ルは自分も凄いのを見せると言い、

「フォーオブアカインド」

己が技を発動させ、四人に分身した。

「分身か……」

四人に分身したフランドールを霊児が一人一人目に入れたのを合図にしたかの様に、

「「「「いっくよー!!」」」」

四人のフランドールは一斉に行動を開始した。
先ず、二人のフランドールが霊児の両サイドに回り込み、

「「えーい!!」」

己が爪で霊児を引き裂こうとする。
両サイドから仕掛けられた攻撃を、

「おっと」

霊児は数歩後ろに下がって回避し、攻撃を空振った事で体勢を崩した二人のフランドールに攻撃を加え様としたが、

「今度はこっち!!」

霊児が攻撃を加える前に斜め上の方から三人目のフランドールが炎の大剣による刺突を行って来た。
この儘では炎の大剣による刺突の直撃を受けてしまうので、

「……ち」

霊児は舌打ちをしながら攻撃を取り止め、左手に持っている短剣でフランドールの刺突を受け止める。

「……ッ」

予想よりも重い一撃に霊児が驚いていると、

「次はこっち!!」

背後から四人目のフランドールがかなり密度の高い弾幕を放って来た。
二人が隙を作って一人が足止めをし、最後の一人が避け様の無い攻撃を仕掛ける。
中々に上手い連携だと言う感想を霊児は抱きながら右手を拳銃の形に変え、人差し指の先に霊力を集中させながら、

「らあ!!」

左手に持っている短剣を振り切り、

「きゃ!?」

三人目のフランドールを弾き飛ばす。
弾き飛ばされた三人目のフランドールの姿を見届けた後、霊児は自身の背後に体を向け、

「……甘い」

迫り来る弾幕を短剣で片っ端から斬り払っていく。
大量の弾幕を片っ端から斬り払っていくと言うのは流石ではあるが、迫り来る弾幕が殆ど無尽蔵と言う事を考えたら焼け石に水。
更に言えば体勢を崩したり弾き飛ばされた三人のフランドールは直ぐ体勢を立て直して霊児に攻撃を仕掛けて来る事だろう。
これでは只総攻撃が行われるのを待っているだけと思われた瞬間、霊児は唐突に弾幕を斬り払うのを止める。
弾幕を斬り払うのを止めた事で弾幕の進行を阻む物が無くなってしまったが、斬り払いの代わりだと言わんばかりに霊児は右手を突き出し、

「行け!!」

右手の人差し指の先から霊力で出来た超巨大な弾を発射した。
どれ位巨大かと言うと、弾自体が天井、床、壁、窓硝子と言った物に接しても余りある程。
文字通り、逃げ場など無いと言う様な弾が天井、床、壁、窓硝子などを破壊し尽くしながら突き進んでいるのを見て、

「後、三人」

霊児は一人は仕留めたと考え、三人居るフランドールの方に体を向け直す。
体を向け直した先に居る三人のフランドールは、宙に浮かびながら三方向に別れる様にして距離を取った。
どうやら、今霊児が放った弾を警戒している様だ。
三方向に別れられた以上、各個撃破していくのが良いだろうと言う結論を霊児は下して一番近い位置に居るフランドールへと向かって行き、

「しっ!!」

短剣を振るう。
振るわれた短剣を、

「くう!!」

フランドールは両手で確りと握った炎の大剣で受け止める。

「へぇ……」

自分の攻撃を受け止め切ったフランドールに霊児が感心した刹那、

「「やあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」

両サイドから二人のフランドールが己が爪で突き刺そうとして突っ込んで来た。
両サイドから迫って来るフランドールに軽い既視感を感じつつも、

「おっと」

霊児は両足を開く様に動かし、両サイドから迫って来ている二人のフランドール腹部に蹴りを叩き込む。
蹴りを叩き込まれた二人のフランドールが吹き飛んで行くのを見届けた後、

「そら!!」

短剣を振り切り、正面に居るフランドールを弾き飛ばす。
そして、弾き飛ばされたフランドールに追撃を掛け様としたが、

「……ち」

両サイドから大量の弾幕が迫って来ていた為、霊児は仕掛け様としていた追撃を止めて高度を上げる。
高度を上げてから少しすると弾幕同士が激突して爆発と爆煙が発生したので、霊児は高度を上げるのを止めて周囲を見渡す。
その結果、

「……居ないな」

三人のフランドールの姿が見えない事が分かった。
つい先程まで普通に見えていたのに急に見えなくなったと言う事から、

「そうか、爆煙の中に隠れたのか」

霊児は爆煙の中に隠れたのかと判断し、視線を真下に向ける。
視線を向けた先には当然の様に爆煙が存在しているが、

「……やっぱり見えないか」

爆煙の中の様子は欠片も見えなかった。
爆煙の中に居るであろう三人のフランドールの様子も分からないのに何か行動を起こすのは愚策であるからか、

「……………………………………………………………………」

霊児は爆煙の様子を観察し始める。
何時、爆煙の中から三人のフランドールが飛び出して来ても良い様に。
だが、

「がっ!?」

爆煙に注意を向けて何時爆煙の中から三人のフランドールが飛び出して来ても良い様に身構えている霊児を嘲笑うかの様に、霊児の背中に大きな衝撃が走った。
走った衝撃から背後から攻撃を受けたのだと霊児は思い、体を背後に向ける。
体を向けた先には、

「フランドール……」

倒したと思われていた四人目のフランドールが居るではないか。
いや、居ると言う事は倒せなかったのだろう。
序に言えば、四人目のフランドールに大きなダメージを負った様子は見られない為、

「あれを避けたのか……」

先の一撃を避けたのだと霊児は判断する。
自身が絶対に当たったと確信した一撃を避けた四人目のフランドールに霊児が驚きの感情を抱いている間に、

「「「隙有り!!」」」

三人のフランドールが爆煙の中から飛び出し、霊児の動きを封じるかの様に抱き付いて来た。

「くそっ!!」

不意打ちを受けた事と爆煙から意識を外していた自分自身の間抜けさに霊児は腹を立てつつ、自身を拘束している三人のフランドールを引き剥がそうとしたが、

「何ッ!?」

どう体を動かしてもフランドールを引き剥がす事が出来なかった。
別に拘束されていても大した害は無いが、鬱陶しい事に変わりは無い。
ならば、霊力を解放して強引にでも引き剥がそうかと霊児が考えた時、

「……ん?」

霊児の目に四人目のフランドールが自分に右手の掌を向けているのが映った。
フランドールが霊児に掌を向けていると言う行為に不思議は無い。
動きを制限されている相手に攻撃を仕掛けるのは別段可笑しな事では無いだから。
そう、可笑しくは無いのだが、

「ッ!?」

霊児はその可笑しくは無い行為に今まで感じた事がない様な危険を感じていた。
魂の奥底から訴えて来る様な危険を。
それを感じ取った霊児は、

「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

反射的に体中から霊力を解放し、自身を拘束していた三人のフランドールを弾き飛ばす。
霊児が解放した霊力は三人のフランドールは弾き飛ばすだけには留まらず、周囲の壁、床、天井、窓硝子と言った物も吹き飛ばした。
尤も、最後の四つはおまけみたいなものではあるが。
兎も角、体の自由が確保された事で霊児は左の短剣をフランドールの右手の掌の直線上にへと持って行って霊力の解放を止める。
同時に、フランドールの掌が握られ、

「な……」

霊児の左手に持っている短剣の刀身部分が砕け散った。
極めて頑丈で、完成された金属とも言われている緋々色金で出来ている短剣がだ。
過去に一度、霊児の短剣は神綺に破壊された事がある。
但し、神綺の場合は己が力で在る魔力と神力で破壊したのだ。
魔界と言う世界そのものを創った神綺ならば、緋々色金で出来た物を破壊したとしても不思議は無いだろう。
が、神綺と同じ様に緋々色金製の短剣を破壊したフランドールは創造神では無い。
吸血鬼だ。
無論、吸血鬼であるフランドールは強大な力を有している。
しかし、フランドールが緋々色金を破壊する程の力が在るのかと問われた霊児は首を傾げてしまう。
フランドールは強大な力を有してはいるが、緋々色金を破壊する程の力は無いと霊児は感じていたからだ。
だと言うのに、フランドールは緋々色金製の短剣を破壊した。
しかも、直接的な力ではなく手を翳しただけで。
今回は短剣を盾にする事で直撃を免れたが、もし直撃していたら、

「……俺の体は粉々に吹っ飛んでいたかもな」

自分の体は粉々に吹っ飛んでいたかもしれないと霊児は呟き、冷や汗を流した。
出来る事ならば緋々色金製の短剣を一撃で破壊したフランドールの力に付いて考察をして対策を練りたいところだが、そんな時間は無いだろう。
幸いと言って良いのかは分からないが、フランドールが右手を翳してから対象物を破壊するまでにはある程度のタイムラグがある。
取り敢えず、長時間フランドールが翳した掌の直線上に居てはならないと言う事を霊児が頭に入れ終えると、

「……考え事はここまでか」

三人のフランドールが四人目のフランドールの周りに集まっていた。
なので、霊児は考え事はここまでと漏らして左手に持っている刀身が砕け散った短剣に目を向ける。
刀身が無くなってしまった以上、剣の役割を成す事は出来ないので、

「やれやれ」

霊児は溜息混じりに左手に持っている刀身が砕け散った短剣を左腰に収める。
そして、左手を背中に持って行って背中に隠し持っている四本の短剣の内の一本を引き抜き、

「さて……と」

何かを決意したかの様な表情を浮かべて構えを取った。
新たな短剣を取り出した霊児を見て、

「へぇー、まだ短剣を持ってんだ」
「でも、またきゅっとしてドカーンって壊しちゃうもん」
「そうそう。何個新しいのを出しても無駄だよ」
「全部ぜーんぶ壊しちゃうんだから」

四人のフランドールは思い思い言葉を口にし、一斉に霊児に向けて右手の掌を向ける。
右手の掌を向けたと言う事は、緋々色金製の短剣を破壊した技をまた使って来ると言う事で間違い無いだろう。
一人の時は何とか防ぐ事が出来たが、四人ともなると流石に防ぎ切る事は出来ない。
確実に直撃を受けてしまうだろう。
緋々色金製の短剣を容易く破壊する技の直撃を受ければ勝負が決してしまう可能性が極めて高いので、

「……本気でいくぜ」

霊児は本気を出す事を決める。
その瞬間、

「……え?」

一人のフランドールが真っ二つに斬られていた。
斬られたフランドールが何が起こったのか解らない儘消えていったのと同時に、

「「「ッ!?」」」

残る三人のフランドールは斬られたフランドールの方に体を向ける。
体を向けた三人のフランドールの目には、短剣を振り切った体勢の霊児の姿が映った。
霊児の接近に全く気付けなかった事に三人のフランドールが驚いている間に、霊児は右手を拳銃の形に変えながら一番近い位置に居るフランドールに右手を向け、

「遅い」

人差し指の先から霊力で出来た超巨大な放つ。
放たれた弾は一人のフランドールに直撃し、通路などを破壊しながらフランドールを何所かへと連れ去るかの様に突き進んで行った。
瞬く間に二人のフランドールが倒された事で残った二人のフランドールは慌てて霊児から距離を取る。
自分から離れていく二人のフランドールを見ながら霊児は両手を片方のフランドールに向け、指先から霊力で出来た弾を連続して放っていく。
弾と弾の継ぎ目が見えない様な速さで。
本来であれば両手の十本の指で弾を発射するのだが、今回は左手に持っている短剣を親指で支えているので九本の指から弾が放たれている。
と言っても、威力、弾速、連射力、制圧力と言ったものは九本の指でも十分に有るが。
兎も角、霊児の放った弾幕に呑み込まれたフランドールは大した時間を掛けずに消えてしまった。
消えたフランドールを見届けた後、霊児は霊力で出来た弾を放つのを止めて両手を下ろし、

「後一人……」

最後のフランドールが居る方に体を向ける。
三人のフランドール倒したのに四人目のフランドールが消えない事から、最後のフランドールがオリジナルであると言う判断を霊児は下し、

「…………………………………………」

さっさと決着を着ける為に動こうとした瞬間、

「やあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

フランドールは体中から魔力を溢れ出させ、霊児に突撃を仕掛けて来た。
どうやら、形振り構わずに己が力を最大限に生かした一撃を持って霊児を打倒する気の様である。
瞬く間に三人のフランドールを倒したと言うのに、全く戦意を衰えさせないフランドールに霊児は感心しつつ、

「……おっと」

突っ込んで来たフランドールを避ける為に体を逸らす。

「ッ!?」

自身の突撃を避けられた事でフランドールは驚くも、直ぐに急ブレーキを掛けて止まり、

「えい!!」

振り向きながら炎の大剣を振るう。
振るわれた炎の大剣を霊児は短剣で受け止め、

「そら!!」

カチ上げる様にして短剣を振るい、フランドールの胴体をがら空きにさせる。
がら空きになった胴体を守る為にフランドールは慌てて炎の大剣を下げたが、その間に霊児はフランドール背後に回り、

「夢想封印・脚!!」

己が技を発動させた。
技が発動された事で霊児の右脚が七色の光を発し始め、光っている脚をフランドールの背中に叩き込む。
蹴りを叩き込まれたフランドールは勢い良く床に激突し、床に穴を空けてどんどんと階層を落として行った。
床に穴を空けて姿を消したフランドールを追う様にして霊児は降下して行く。
降下して行った結果、

「また地下か……」

霊児は再び地下に降り立つ事となった。
今日は地下に縁があるなと言うどうでも良い様な事を思いながら霊児は地下に落ちたであろうフランドールを探す為に顔を動かすと、

「あれは……」

霊児の目に瓦礫の山にから宝石がくっ付いた枯れ枝の様な飛び出しているのが映る。
どう見ても、フランドールの翼だ。
瓦礫の山の中にフランドールが居る事を察した霊児は、見えている瓦礫の山に近付き、

「よっと」

翼を掴み、瓦礫の中に埋もれているフランドールを引っこ抜く。
引っこ抜いたフランドールは気絶している様で、何の反応をしめさなかった。
ともあれ、勝敗は決したので霊児はフランドールを床に降ろし、

「……はぁ」

溜息を一つ吐き、左腰に装備してある短剣に目を向けて改めて思う。
緋々色金製の短剣を破壊さるとはと。
はっきり言って、霊児は創造神クラスの力を持つ者以外が緋々色金製の短剣を破壊出来るとは思っていなかった。
まぁ、フランドールは直接的な方法で破壊した訳では無いが。
それはそれとして、壊れた短剣は後日霖之助に修理して貰おうと言う事を頭に入れながら、

「にしても、本来なら今頃縁側でのんびり過ごしたんだがな……」

本来の予定には無い事をしてしまった事に対する愚痴を零し、近くの瓦礫の上に腰を落ち着かせた。























前話へ                                           戻る                                             次話へ