深夜と早朝の間。
具体的に言うと、まだ天に太陽が姿が見せていない時間帯。
そんな時間帯に、

「よし、種植えをするぞー」

霊児は博麗神社の畑に出て、秋の作物の種植えのする為の準備に取り掛かろうとしていた。
普段であれば畑の種植えと言った事などは全て霊児一人で行っているのだが、今回に限っては、

「ふぁ……眠……」
「何で私が土いじり何て事を……」

霊児の他に魅魔とレミリアの二人も博麗神社の畑に出ているのだ。
それはそれとして、一緒に畑に出ている魅魔とレミリアに元気が感じられなかった為、

「何だよ、元気が無いな。お前等」

魅魔とレミリアの二人に霊児は元気が無いと言う指摘を行う。
指摘された事に、

「そりゃ、こんな時間に叩き起こされればね……ふぁ……」

こんな時間帯に叩き起こされたら当然だと魅魔は言い、欠伸をする。
そして、欠伸をした魅魔に続く様に、

「と、言うか何で私達なのよ?」

レミリアは眠い目を擦りながら何故自分達なのかと聞く。
確かに、畑仕事を手伝わせるのなら別に魅魔とレミリアの二人でなくとも良いだろう。
だと言うのに、何故自分達を手伝わせる事にしたのかと言う疑問を抱いているレミリアに対し、

「お前等、居候している連中の中で基本的に何もしてないじゃねぇか」

魅魔とレミリアを自分の手伝い抜擢した理由を霊児は話す。
その瞬間、

「「う……」」

魅魔とレミリアの二人は言葉を詰まらせてしまった。
現在、博麗神社に居候している者は魅魔とレミリア以外に魔理沙とフランドールの二人も居候している。
そして、魔理沙とフランドールの二人は魅魔とレミリアの二人と違って色々と働いてくれているのだ。
魔理沙は朝昼晩のご飯作りに掃除や洗濯と言った家事全般をしてくれているし、フランドールも頼めば何かしらの仕事はしてくれる。
だが、魅魔とレミリアの二人はどうだろうか。
この二人は基本的にボードゲームで遊んでいたり雑談していたりゴロゴロしたりと言った事しかしていない。
これでは霊児に何もしていないと言われて言葉を詰まらせるのも無理はないだろう。
二人の様子から何の反論出来ない事を悟った霊児は、

「と言う訳だから、少し位手伝え」

畳み掛ける様に種植えを手伝えと口にした。
すると、

「……まぁ、それはそれとしてだ。こんな時間帯に私等を叩き起こして種植えをし様とした理由は何だい?」

何故、こんな時間から種植えを始めるのかと言う疑問を投げ掛ける。
畑に種植えをするのなら、別に太陽が昇り切った時間帯でも構わないだろう。
と言うより、明るくない今の時間帯よりも太陽が昇り切った明るい時間帯に種植えをした方が効率は良い。
そこまでの考えには至っていたから、霊児はシレッとした表情で、

「太陽が出るとレミリアが使い物にならなくなるだろ」

まだ太陽が姿を見せていない時間帯に種植えを行おうとしている理由を答えた。
霊児の答えを聞いた事で、

「成程ねぇ……」

魅魔は納得した表情でレミリアの方に顔を向ける。
顔を向けられたレミリアは悔しそうな表情を浮かべ、

「……否定出来ないのが腹立たしいわ」

若干棘が有る声色でそう呟く。
吸血鬼であるレミリアに取って日光は天敵。
無論、レミリア程の吸血鬼ならば日の光に照らされた位で直ぐにどうこう成ると言った事は無い。
が、レミリアが日の光に照らされた状態で種植えを行えば作業効率は確実に落ちるであろう。
ならば日光を遮れる日傘を差せば良いと思われるだろうが、それは出来ない。
何故かと言うと、博麗神社には日傘が存在しないからだ。
更に言えばレミリアの家でもある紅魔館は現在復興中なので、レミリアは自分の日傘が何処に在るかが分かっていない。
尤も、仮に日傘が在ったとしても日傘を差しながらでは種植えの作業には支障が出てしまうであろうが。
つまり、端的に纏めると吸血鬼であるレミリアに畑仕事をさせる為には太陽が顔を見せていない時間帯でなければ駄目なのだ。
取り敢えず、話が纏まった事を感じ取った霊児は、

「と言う訳だから、さっさと始めて太陽が顔を出す前に終わらせ様ぜ」

改めてと言った感じでさっさと畑への種植えを終わらせる様に魅魔とレミリアの二人に指示を出す。

「なら、さっさと終わらせ様かね」
「……ま、家主の意向には一応従うわよ」

指示を出された魅魔はやれやれと言った感じで、同じく指示を出されたレミリアは渋々と言った感じでそれぞれ了承の返事をする。
同時に霊児、魅魔、レミリアの三人は三手に分かれて畑への種植え作業を開始した。
























太陽が姿を見せるまで後僅かと言う時間帯になった頃、

「終わったー。しっかし、思ってたよりも早く終わったな」

霊児は思っていたよりも早くに畑への種植えが終わった事を呟き、上半身を伸ばす。
それに続く様に、

「んー……こんな肉体労働をしたのなんて何時以来振りだろうねぇ……」

肉体労働なんて何時以来振りだと漏らし、魅魔も上半身を伸ばすと、

「ま、この私が手伝ったんだ。予定よりも早く終わるのは当然ね」

少し誇らし気な表情を浮べつつ、レミリアは自分が手伝ったのだから予定よりも早くに終わって当然だと言う。
因みに、レミリアは何だかんだで種植え作業を真面目に行っていた。
どうやら、幾ら面倒臭い作業でも手を抜くと言うのはレミリアのプライドが許さなかった様だ。
兎も角、畑の種植えが終わった事で、

「それで、この後はどうするんだい?」

魅魔がこの後どうするのかと言う問いを霊児に投げ掛けて来た。
疑問を投げ掛けられた霊児は、

「んー……」

少し頭を回転させていく。
畑に種を植えたのなら当然、水を遣る必要がある。
だが、博麗神社にはにとりが作成してくれた自動水遣り機が在るので水遣りをする必要は無い。
となれば、これ以上畑に出ていなくても良いので、

「良し、じゃあ……」

戻って朝食が出来るまでのんびり過ごそうかと言った提案を霊児が口にし様とした刹那、

「あら、この辺りの土……少し痩せてない?」

畑の方から土が少し痩せているのではと言う発言が聞こえて来た。
聞こえて来た発言に霊児は反応し、

「なら、後で肥料を混ぜた水でも撒くか」

後で肥料を混ぜた水を撒く事を考える。
流石に水を貯蔵しているタンクに肥料を入れたら風呂場の水なども肥料入りに成ってしまうので、肥料入りの水は自分自身の手で撒くしかない。
自分自身の手で水を撒くと言う行為は非常に面倒臭いが、痩せた土を放置すると言う訳にもいかないのでやれねばならないだろう。
そこまで考えが至った瞬間、

「……ん?」

霊児は今の発言が魅魔とレミリアのものでは無い事に気付き、発言が発せられた方に顔を向ける。
顔を向けた先には、

「穣子……」

秋の神様である秋穣子の姿が在った。
霊児が穣子の存在を認識している間に、

「私も居ますよ」

穣子の背後から静葉が顔を出し、自分の存在をアピールする。

「静葉も居たのか」

穣子以外にも静葉も来ていた事を霊児が理解した時、

「おはようございます、霊児さん」
「おはよう、霊児」

静葉と穣子が霊児に挨拶の言葉を掛けて来た。
挨拶の言葉を掛けられた事で、

「ああ、おはよう」

霊児は挨拶の言葉を返し、

「にしても、どうしたんだ? こんな早くから?」

こんな早くにやって来た理由を尋ねる。
理由を尋ねられた穣子と静葉の二柱は気合が入った表情を浮かべ、

「そんなの……決まってるじゃない!!」
「秋だからです!!」

声高々に秋だからと言う宣言をし出した。
はっきり言ってその宣言は尋ねた事に対する答えにはなっていなかったが、静葉と穣子は続ける様にして、

「今日!! 秋と言う私達の季節が始まりました!!」
「そして、喜びの余り私達は妖怪の山を飛び出した!!」
「その道中、秋が始まったばかりだと言うのに秋の気配を感じさせる感心な神社を発見しました!!」
「興味を持った私達は秋の気配を感じさせている神社にやって来ました!!」

かなり高めのテンションで博麗神社にやって来た経緯を話していく。
二柱の話を聞き、霊児は静葉と穣子の二柱は秋に成るとかなりテンションが上がる事を思い出す。
思い出した事に付随するかの様に、秋野菜の種を畑に植えた事でこの秋姉妹が釣れたのだろうと言う推察を霊児がしていると、

「それにしても……」

静葉は霊児達が居る方に近付き、魅魔とレミリアの方に視線を向ける。
静葉からの視線に気付いた魅魔とレミリアの二人は、

「どうかしたかい?」
「何かしら?」

静葉にどうかしたのかと問う。
問われた静葉は何処か遠くを見詰める様な表情を浮かべ、

「いえ……この神社は人間以外の存在は本当に良く来るんだなと言う事を思いまして」

博麗神社には本当に人間以外の存在は良く来るなと呟く。
静葉の呟きが耳に入ったからか、

「ほっとけ」

ほっとけと言う突っ込みを霊児は入れる。
入れられた突っ込みに静葉が何か返そうとした時、畑の方に居た穣子が静葉の隣にまでやって来て、

「魅魔はこの神社に来ると見掛ける事が結構在るけど、そっちの子は初めて見るわね」

少し疑問気な表情を浮べながらレミリアの方に視線を移し、

「貴女は誰?」

単刀直入に誰だと聞く。
聞かれたレミリアは、

「私の名はレミリア。レミリア・スカーレット。吸血鬼で紅魔館の主よ」

威厳が有る態度を見せながら簡単な自己紹介を行う。
レミリアの名に聞き覚えが在ったからか、

「レミリア……何処かで聞いた事が在る様な……」

静葉は頭を回転させ、記憶の発掘作業に入っていく。
そんな穣子に、

「ほら、確か文さんの新聞に載ってたじゃない。彼女の事」

"文々。新聞"にレミリアの事が載っていたと静葉は耳打ちをする。
耳打ちされた事で、

「ああ、思い出した!! 文の新聞に載ってたわね。貴女が異変を起こした事とか吸血鬼姉妹が博麗神社に居候してるって事が」

レミリアがどう言った存在で在るのかを穣子は思い出し、

「ほんと……人間以外は良く寄って来るわね、この神社」

姉である静葉と同じ事を呟いた。
だからか、

「ほっとけ」

霊児も静葉に入れた突っ込みと同じものを穣子に入れる。
短い時間で二度も人間以外が良く来る神社と称された事で霊児の機嫌を損ねたかと感じた静葉は、

「まぁ、博麗神社は神が居ない……もっと言うのなら神を祀っていませんからね。様々な存在が寄って来易いんじゃないでしょうか?」

フォローする様な発言をし、続ける様に、

「私達神からすれば余所の神の領土とか信仰とか全く気にしなくて良い訳ですからね。普段と変わらずに居られる事が出来るので気持ちの問題としては
非常に楽何ですよ。ここ、博麗神社は」

自分達の様な神からすれば博麗神社は非常に楽な場所であると言う。
神では無い霊児には静葉の発言は今一ピンと来なかったので、

「そうなのか?」

思わず首を傾げてしまった。
首を傾げてしまった霊児を見て、

「そうよ。私達神が余所の神社で好きにやった場合、下手をしたら信仰がその神社の神ではなく別の神に向く事になったりすると言った可能性も在ったりする
からね。勿論、その逆も然り。他にも加護が変わったり……などと言った事も起こる可能性は十分に在る。だから、神同士で会ったりするって言った時は神社
とかそう言った場所以外で会う事が殆どなのよ。勿論、例外も在るわよ。例えば、その神社に祀られている神が圧倒的に強い存在だとか言った場合がそうね」

穣子は軽く神と神社の関係に付いての説明をする。
穣子の説明で霊児、魅魔、レミリアの三人は神と神社の関係に付いてある程度理解出来たのだが、

「神って言うのは大変だね。色々と気を使う必要が在ってさ。ま、私は神が居ようが居まいが関係無いけどね」
「私もね。態々、神の都合を考えてやる必要なんて無いし」

元悪霊と吸血鬼は神の事情を理解した上でどうでも良いと言った態度を示した。
まぁ、この二人は神の加護と言ったものを重視する様なタイプでは無いのでその様な態度を取るのは当然と言えば当然だ。
尤も、神の加護を重視していないのは霊児もだが。
仮にも神職に携わる人間がそれで良いのかと思われるかも知れないが、霊児としてはそれで良いらしい。
それはそれとして、一応神社の事を気に掛けている秋姉妹と違って神社の事などどうでも良い言ってる魅魔とレミリアの二人。
これには流石に文句の一つで言ってやった方が良いと判断した霊児が二人の方に顔を向けた時、

「ん……?」

ある様子が霊児の目に映った。
そして、映ったものをその儘、

「レミリア、翼から煙が出てるぞ」

レミリアに伝えた。
すると、レミリアは顔を動かして自身の翼を確認する。
顔を動かしたレミリアの目に煙を出している自身の翼が映った為、

「あ!!」

レミリアは大慌てで影が見えている場所へと突っ込んで行った。
何やら大変な事に成っているレミリアを無視するかの様に霊児は顔を天に向け、

「ああ、もう日の出か……」

太陽が顔を見せている事に気付く。
顔を天に向けた霊児に続く様にして魅魔も顔を天に向け、

「おや、本当だ。良い日の出じゃないかい」

良い日の出だと言う感想を漏らした後、からかう様な表情をレミリアに向け、

「レミリア、あんたも見たらどうだい? 綺麗な日の出をね」

レミリアも日の出を見たらどうだと言う提案を行う。
提案を受けたレミリアは口元を引く付かせ、

「貴女、喧嘩売ってるでしょ……」

何とも言えない表情を魅魔に向ける。
二人の会話を聞いていた静葉と穣子は、

「……そう言えば、吸血鬼に取って日の光は天敵でしたね」
「だから、レミリアは慌てて影が在る場所に身を潜めたのね」

日の光が吸血鬼の弱点である事を思い出す。
吸血鬼の弱点を思い出している二柱を余所に、逃げる様に影が在る場所へと避難したから、

「忌々しい。たかが日の光如きに辛酸を舐めさせられるとは……」

レミリアは忌々し気な表情を浮かべた。
やはりと言うべきか、日の光に逃げ隠れる様な行為にレミリアは苛立ちを感じている様だ。
この儘レミリアを放って置いて癇癪を起こされてもあれなので、

「さて、種植えも終わったしそろそろ戻るか」

神社の中へ戻る事を霊児は提案し、

「あ、そうだ。お前等も朝飯食ってくか?」

秋姉妹に朝ご飯を食べていくかと尋ねる。

「良いんですか?」
「まぁ、妖怪の山を出てから飲まず食わずだったからそう言うのは嬉しいけどね」

尋ねられた静葉と穣子の二柱が嬉しそうな表情を浮べたのを見て、

「ああ、良いぞ。その代わり、今年も豊作と紅葉を宜しくな」

朝ご飯を食べさせる代償として豊作と紅葉の要求を行う。
豊作に関しては言わずもがな。
畑で取れる作物の量と質を上げる為。
紅葉の方は単純に、霊児が散り落ちる紅葉を見ながら酒を飲むのが好きだからだ。

「おっけーい。その程度の事なら任せなさい」
「まぁ、毎年の事ですけどね。それ」

穣子と静葉が霊児の要求を受け入れると、

「さて、神社の中に入るか」

霊児は神社の方に向けて足を動かし、他の面々も霊児の後に続く様にして足を動かし始めた。
























神社の中に入った霊児、魅魔、レミリア、静葉、穣子の三人と二柱は軽い雑談を交わしながら廊下を歩いていた。
その中で、流石に朝食が出来るまでにはまだ時間が掛かるかと霊児が思っていると、

「あれ、霊児」

進行方向上に魔理沙が現れる。
魔理沙が現れた事で霊児達は足を止め、

「よう、魔理沙。おはよう」

霊児は挨拶の言葉を掛けた。
掛けられた挨拶の言葉に、

「ああ、おはよう。霊児」

魔理沙も挨拶の言葉を述べ、

「霊児がこんな早くに起きてる何て珍しいな。何やってたんだ?」

こんな朝早くから何をやってたんだと問う。
問われた霊児は魅魔とレミリアの二人を指でさし、

「畑への種植え。こいつ等に手伝わせてたんだ」

指でさした二人に畑への種植えを手伝わさせていた事を話す。
霊児に指をさされた二人の方へと魔理沙は視線を向け、

「……ああ、成程」

何で霊児が魅魔とレミリアの二人に畑への種植えを手伝わさせたのかを理解した。
それはそうと、仮にも自分の師匠が扱き使われていると言うのに魔理沙が割りと冷たい反応を見せたからか、

「おおーい、魔理沙魔理沙。他に何か言う事は!?」

魅魔は少し慌てた動作で魔理沙に突っ込みを入れる。
が、

「良いんじゃないですか? ここ暫らくまともに動いて無かったんですから丁度良い運動になって」

突っ込みを入れられた魔理沙は再び冷たい反応を示し、

「おまけにここ最近、全然私に稽古付けてくれて無いじゃないですか」

愚痴の様なものを零し始めた。
どうやら、ここ最近魅魔が稽古を付けてくれ無い事が魔理沙には不満な様だ。
魔理沙が零した愚痴が耳に入ったからか、魅魔はここ最近の事を思い返す。
思い返した結果、碌に体を動かしていないと言う結論に至り、

「あー……分かったよ。朝食を食べた後、稽古を付けて上げるから」

魔理沙の機嫌を取ると言う意味合いも含め、朝食の後に稽古を付けると言う約束を魅魔は口にする。
すると、

「やった!! 約束ですからね、魅魔様!!」

魔理沙は急に機嫌が良くなったかの様に満面の笑顔を浮べた。
そんな魔理沙を見て、

「現金な子だねぇ……」

魅魔が少し呆れた感情を抱いたタイミングで、

「おっはよう!!」
「おはようございます、魔理沙ちゃん」

穣子と静葉が後ろの方から顔を出し、挨拶の言葉を掛ける。
掛けられた挨拶の言葉で魔理沙は秋姉妹の存在に気付き、

「お、秋の神様達じゃないか。少し久しぶりだな」

秋姉妹に会うのも少し久し振りだと言う感想を漏らす。
漏らした感想が耳に入ったからか、

「まぁ、私達は秋以外は殆ど妖怪の山に居るからねぇ……」

穣子は頬を指先で掻きながら秋以外の季節は妖怪の山から殆ど出る事が無いと呟き、

「……やはり、秋以外の季節も積極的に動く事を考えるべきでしょうか?」

相槌を打つかの様に静葉は秋以外の季節も積極的に動き回るべきかと考え始める。
そして、

「……でも、秋以外の季節だったらテンションが全然上がらないよ。私も姉さんも」
「……確かに、それは大きな問題ね。秋以外の季節でテンションを高く保てれるかどうかが鍵ね」

穣子と静葉の二柱は秋以外の季節でも大きく活動する為の話し合いを始めたが、

「貴女達は秋の神なのでしょ? 秋以外の季節に動き回っても大した意味が在るとは思えないのだけど?」

レミリアから秋の神が秋以外の季節に動き回っても意味は無いのではと言う突っ込みをいれられた為、思いっ切り肩を落としてしまった。
勝手に盛り上がろうとして勝手に落ち込み始めた秋姉妹を無視するかの様に、

「そうそう、こいつ等も朝食を食べて行く事になったから宜しくな」

霊児は魔理沙に秋姉妹も朝食を食べて行く事になったので、秋姉妹の分の朝食も作る様に言う。
そう言われた魔理沙は、

「了解、何時もよりも多めに作って置くな」

笑顔で何時もよりも多めにご飯を作って置くと返す。
どうやら、突如として作るご飯の量を増やされた事を魔理沙は欠片も気にしていない様だ。
兎も角、霊児が何時もよりも早く起きて作るご飯の量が増えたからか、

「じゃ、さっさとご飯を作って来るから居間で待っててくれ」

魔理沙はさっさとご飯を作るから居間で待っている様に伝え、台所へと向かって行った。
台所へと向かって言った魔理沙を見届けた後、

「ここの神社の料理ってあの子が担当だったっけ?」

何時の間にか立ち直っていた穣子が、博麗神社での料理担当は魔理沙だったかと言う疑問を投げ掛ける。
投げ掛けられた疑問に対する答えとして、

「料理担当って言うか、魔理沙が神社に来た時は殆ど作ってくれるな」

魔理沙が博麗神社に来た時は殆どご飯を作ってくれていると霊児が述べたタイミングで、

「それ以外は?」

続ける様に穣子が魔理沙が作る時以外はどうなのかと問う。
問われた事に、

「俺の鍋料理。無論、全部」

全て自分の鍋料理と霊児は返した。
それを聞いた静葉は、

「……そう言えば、そうでしたね」

鍋料理位しか霊児がまともに作れる料理が無い事を思い出し、

「この子、魔理沙が居ない時はずっと鍋料理だからねぇ……」

相槌を打つかの魅魔が呆れた表情を浮かべ、溜息を一つ吐く。
更に、

「そうなのよね、私とフランが泊まり始めた次の日の朝には鍋物だったし」

レミリアからも霊児の鍋料理に冠する事が発せられる。
口を開いた全員が全員、霊児の鍋料理に付いて言及したからか、

「何時も鍋料理で飽きないの?」

穣子は思わず何時も鍋料理で飽きないのかと霊児に聞く。
すると、

「いや、別に」

間髪入れずに霊児が全く飽きないと口にした為、

「ま、男の一人暮らし何てそんなものだろうさ」

男の一人暮らしはそんなものと言う発言で魅魔は会話を打ち切った。
これ以上霊児の鍋料理に付いて言及しても、イタチごっこにしかならないと判断した様だ。

「……そんなに変か? ずっと鍋料理って言うのは?」

自分以外の全員が何時も鍋料理と言うのに不満を覚えた事に、霊児は疑問を覚えたかの様に首を傾げたが、

「さて、私はつまみ食いでも行って来るかね」
「もう少しで朝食が出来るのなら、私はフランを起こす事にしましょうか」
「なら、私達は居間でのんびりしていましょうか」
「そうね、そうしよっか」

首を傾げた霊児を無視するかの様に魅魔、レミリア、静葉、穣子はそれぞれ思い思いの場所へと向かって行く。
結局、毎日鍋料理を食べる事に良い評価を得られなかったので、

「……美味いのにな、鍋料理」

少々不満気な表情を霊児は浮かべ、居間へと向かって行った。
























今現在の季節は秋。
秋と言えば文末に秋と言う単語が付くものが幾つもある。
例えば食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋、読書の秋等々。
朝食を食べ終えた後、博麗神社に居る面々はそれに倣ってか文末に秋を付けるかの様に色々と行動を起こしていた。
レミリアは縁側にある柱に背を預けながら読書。
補足すると、レミリアが読んでいる本は咲夜に頼んでパチュリーの図書館から持って来させた物だ。
そんな感じで読書の秋を満喫しているレミリアとは別に、妹のフランドールは博麗神社から見える景色を真っ白い紙に描いている。
こちらは芸術の秋を満喫している様だ。
因みに、フランドールが使っている画材道具も咲夜が持って来た物である。
紅魔館復興作業の指揮をしながらスカーレット姉妹の頼みを聞かねばならない辺り、咲夜も中々に大変そうだ。
それはそれとして、割と大人しく秋を満喫しているスカーレット姉妹とは対照的に魅魔と魔理沙の魔法使い師弟は博麗神社上空で激闘を繰り広げていた。
いや、激闘を繰り広げていると言うよりは魅魔が魔理沙に稽古を付けていると言った方が正しいであろう。
どうやら、魅魔はちゃんと魔理沙との約束を守った様である。

「前に手合わせした時よりも腕を上げたね、魔理沙」
「ありがとうございます、魅魔様」

魅魔と魔理沙は軽い会話を交わしながら大量の弾幕、魔法を放ち合っていた。
様々な弾幕や魔法が飛び交ったりする様子は、傍から見れば美しいものである。
懸念事項としては二人の流れ弾が博麗神社に当たるかもしれないと言う事だが、そこは魔理沙と魅魔を信じるしかないであろう。
さて、博麗神社に居候している面々が思い思いの方法で秋を満喫してしている中、

「1561……1562……1563……」

博麗神社の斉主である霊児は逆立ちをするかの様な体勢で指立て伏せを片手でしていた。
と言っても、只の指立て伏せではない。
地面に針を立て、針の先端に人差し指の先を乗せて指立て伏せを行っているのだ。
通常、その様な方法で指立て伏せをしたら針が指に刺さってしまう。
だが、霊児の指に針は刺さっていない。
何故かと言うと、指先に霊力を発生させて針と指先が接触しない様にしているからだ。
そして、最後の締めと言わんばかりに足の裏には大き目の岩が重ねられる様に幾つか乗っけられていた。
無論、指立て伏せの振動で岩を落とす言うヘマを霊児はしてはいない。

「1564……1565……1566……」

一歩間違えれば大惨事に成りそうな鍛錬を淡々の行っている霊児を見て、

「それにしても、良く続くわね」

縁側に座り、焼き芋を食べていた穣子が良く続くなと呟く。
穣子の呟きが耳に入った霊児は顔を穣子の方に向け、

「まぁ、昔からずっとやってるしな」

昔からずっとやっている事を伝え、

「てか、その芋……何処からから出した?」

穣子が食べている芋の出所を尋ねる。
尋ねられた事に、

「そこはほら、神の力です」

穣子の隣に腰を落ち着かせ、穣子と同じ様に焼き芋を食べていた静葉が神の力だと答えた。
要するに、神の力で焼き芋を生み出したと言う事であろうか。
ともあれ、片手間で食べ物を出せると言うのは便利だなと霊児は思いつつ、

「さよけ」

適当な返事を返しながら向けていた顔を元の位置へと戻し、

「まぁ、この修行は色々と効率が良いんだよ」

話を戻すかの様にこの修行は色々と効率が良いと口にする。
霊児が口にした事を聞いた静葉と穣子の二柱は、

「効率ですか?」
「効率?」

良く分からないと言った表情を浮べながら首を傾げてしまう。
それを感じ取ったからか、

「そ、これ一つで色々と鍛えられるんだよ」

霊児はこれだけて色々と鍛えられると言い、

「先ずは霊力のコントロール。俺が指先から放出している霊力が強過ぎれば針が折れたりしてしまうし、逆に弱ければ俺の指に針が刺さってしまう。おまけに
霊力の放出時間は長い。指立て伏せをしている間はずっと放出していなけりゃならないからな。これだけで霊力のコントロールが鍛えられ、霊力の放出加減を
ミスらない為の集中力が付き、俺自身の保有霊力が増大する」

先ずはと言った感じで鍛えられるものの幾つかを静葉と穣子の二柱の教え、

「次は単純に筋トレだな。これは見れば分かるか」

見れば分かるだろうと言った感じで筋トレも兼ねている事を述べる。
筋トレに関して文字通り見れば分かる事なので、

「そうですね」
「そうね」

静葉と穣子は肯定の返事を返した。
二柱から返って返答を聞き、

「最後はバランス感覚だな。この状態を維持するのと足の裏に乗っかている幾つもの岩を落とさない様にする必要が在るからな。これでバランス感覚が
鍛えられる。後、これでも集中力が鍛えられるな」

続ける様にバランス感覚とおまけでこれでも集中力が鍛えられると言う発言をする。
一通り今霊児がしている修行の意味を知った穣子が、

「こんな修行をずっとやってるの?」

思わずこんな修行をずっとやっているのかと問うと、

「そうだな……修行の密度の差はあれど、修行に関しては幼少期の頃から毎日ずっとやってるな。あ、流石に大怪我を負った時はしてないぞ」

密度の差は在っても修行は基本的に毎日していると言う事を霊児は穣子に伝えた。
穣子と同じ様に霊児がしている修行の意味を知り、霊児と穣子の会話を聞いていた静葉は、

「成程……継続は力なりと言う訳ですか」

継続は力なりと言う言葉で結論付け、

「まぁ、霊児さんも博麗ですからこんな無茶な修行も普通に出来て当然と言った感じでしょうか」

霊児も博麗なのだからこの様な無茶な修行も出来て当然かと呟く。
静葉の呟きに穣子は反応し、

「確かに、博麗ならこれ位平然と出来て当然かな。博麗って霊児を含めて滅茶苦茶な存在が多いし。尤も、その博麗の中でも霊児は飛び抜けているけど」

同意を示す様な発言を零す。
やはりと言うべきか、過去の博麗と比べても霊児は異質な存在である様だ。
まぁ、男の博麗と言う時点で霊児は既に異質ではあるが。
兎も角、中々に酷い言われ様ではあるが霊児は特に突っ込みを入れると言う事はしなかった。
何故かと言うと、似た様な事は昔から言われていたからだ。
故に、今更何を言っても無駄と判断したのだろう。
それはそれとして、

「あー……今ので何回目だっけ?」

途中で秋姉妹と会話を交わしていたからか、霊児は指立て伏せを何回していたか分からなくなってしまっていた。
秋姉妹との会話をしている間にも指立て伏せは継続していたので、分からなくなったとしても仕方が無いと言えば仕方が無い。
序に言えば、今現在も継続中である。
現在進行形ではあるが、指立て伏せの回数が分からなくなっている霊児に、

「今ので1632回目ですよ」

静葉は指立て伏せの回数を教えた。
どうやら、会話を交わしている中でも静葉は霊児の指立て伏せの回数を数えていた様だ。
理由はどうであれ、自分の指立て伏せの回数を数えてくれたからか、

「ありがと」

礼の言葉を霊児は口にし、

「1633……1634……1635……」

再び淡々とした指立て伏せをやり始めた。
そんな霊児を見ながら、

「皆、秋を満喫してる様ね」
「そうね。霊児、魔理沙、魅魔の三人はスポーツの秋、吸血鬼姉妹は読書の秋に芸術の秋。そして私達は食欲の秋。うんうん、皆秋を満喫してるわね」

静葉と穣子は自分達を含めた全員が秋を満喫しているのを感じ、物凄く満足気な表情を浮べる。
やはりと言うべきか、秋の神様に取って秋を満喫している事が知れたと言うだけでも嬉しい様だ。
と言った感じで、博麗神社に居る面々は思い思いの方法で秋の始まりの日を過ごしていった。























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