「はい、点呼ー」

霊児が点呼する様に言うと、

「一!!」
「二です」
「三!!」
「……四」

魔理沙、静葉、穣子、妹紅の二人と二柱からそれぞれ一、二、三、四と言う声が発せられた。
点呼を掛けた際の反応から全員居る事が確認出来たからか、

「良し、全員居るな」

若干満足気な表情を霊児は浮べる。
そんな霊児を見た妹紅は、

「……ねぇ」

何かを言いたそうな声色で霊児に声を掛けた。
掛けられた声に反応した霊児は妹紅の方に顔を向け、

「何だ?」

何か用かと問う。
問われた事で、

「何で私もここに連れて来たの?」

何故、自分もここに連れて来たのかと言う疑問を投げ掛ける。
妹紅の言うここと言うのは、玄武の沢の事。
つまり、霊児、魔理沙、静葉、穣子、妹紅の三人と二柱は玄武の沢に来ているのだ。
それはそうと、投げ掛けられた疑問に対する答えとして、

「だってお前、さっき会った時に暇だって言ってただろ」

先程妹紅と会った時に暇だと口にしていたからだろうと霊児は言う。
霊児にそう言われた事で、妹紅はここ玄武の沢に来るまでの経緯を思い出す。
今日は朝から特に何かをすると言った気分になれなかった。
更に言えば、珍しく怨敵や宿敵とも言える存在と戦う気分にもなれなかったのだ
だからと言っても、自宅でボケーッとした状態で過ごすのもあれだと考えた妹紅は散歩に出掛ける事に決める。
だが、歩き慣れている迷いの竹林を散歩すると言うのも芸が無いと思った妹紅は迷いの竹林外を散歩する事にした。
そして迷いの竹林の外に出てから暫らく経った辺りで空を飛んでいる霊児達と遭遇し、霊児から暇かと尋ねられる。
実際暇だったので暇だと答えた瞬間、霊児に手を掴まれて拉致られ気味に妹紅は玄武の沢に連れて来られてしまった。
ここ、玄武の沢にまで来た経緯を思い返し妹紅は、

「まぁ、確かに暇とは言ったけどね……」

右手で自分の後頭部を掻き、

「それはそれとして、私をここに連れて来た理由は?」

玄武の沢にまで自分を連れて来た理由を聞く。
理由を聞かれた霊児はシレッとした表情を浮かべ、

「単純に人手が欲しかったからだな」

人手が欲しかったからと言う答えを述べる。

「人手?」

霊児からの答えを耳に入れた妹紅が首を傾げてしまったので、

「ああ、実はな……」

人手が欲しかった理由を霊児は妹紅に説明し始めた。
昨日、破損した緋々色金製の短剣の修理を霖之助に依頼しに行った霊児。
依頼内容を告げ、破損した短剣を見せた時の霖之助の表情が余りにも悲痛に満ちた表情であったらしい。
そんな霖之助が流石に可哀想に思えたからか、霊児は霖之助に何かお詫びの品を上げる事を考えた。
考えた結果、緋々色金かそれに準ずる金属かお宝をプレゼントする事を決める。
プレゼントをする事を決めた翌日、霊児はプレゼントを探す為に玄武の沢へと向う事にした。
向かう時に何時もの様に遊びに来ていた魔理沙、魔理沙と同じ様に遊びに来ていた静葉と穣子の二柱を連れて。
因みに、玄武の沢に向う事にしたのは霊児の勘がそこに何かが在ると訴えていたかららしい。
つまり、話を纏めるとお宝を探す為の人手が欲しかったから霊児は妹紅を連れて来たのだ。
取り敢えず、玄武の沢にまで連れて来られた理由を知った後、

「あそこの店主も災難ねぇ……」

妹紅は霖之助に同情の感情を抱いた。

「あれ、妹紅って香霖の事を知ってるのか?」
「ええ、知ってるわ。偶に迷いの竹林で用途不明の道具を拾った時に、その道具の事を聞きに香霖堂へ足を運ぶ事がそれなりあるのよ。まぁ、拾った道具の
殆どは売っちゃうんだけどね」

霖之助の事を知っていた妹紅に霊児が少し驚くと、妹紅は拾った道具の事で香霖堂に足を運んだりすると話し、

「それより、こんな所に緋々色金何て在るの?」

話を変えるかの様に玄武の沢に緋々色金が在るのかと言う疑問を口にする。
緋々色金と言う金属は、非常に希少性が高いに金属だ。
その様な金属がそう易々と見付かるとは、妹紅には到底思えないのだろう。
無論、それは霊児も重々承知している様で、

「さぁな。だが、探して見る価値は有ると思うぜ。緋々色金は無くとも、それなりのものは在りそうだしな」

緋々色金が在る事に関しては特に肯定も否定もしなかった。

「んー……それなりのものねぇ……」

霊児の返答を聞いた妹紅は改めと言った感じで周囲を見渡し、

「それなりのもの探すにしても……探すのはかなり苦労すると思うわよ? この広さなら」

探すにしても玄武の沢の広さならかなり苦労すると漏らす。
が、

「だから、暇そうにしていたお前を誘ったんじゃないか」

霊児から苦労しそうだから暇そうにしていた妹紅を誘ったと言われてしまった為、妹紅は溜息を一つ吐いた。
溜息を吐いた妹紅を見た魔理沙、静葉、穣子の一人と二柱は、

「まぁ、良いじゃないか。どうせ暇だったんだろ」
「そうですよ」
「そうそう。妹紅は不老不死何だからこんな風に時間を使わなきゃ勿体無いわよ」

それぞれそう声を掛ける。
何の慰めにも成らない言葉を掛けられた後、

「魔理沙は兎も角としても貴女達二柱は神様な訳だけど、こんな風に使われてる事に疑問を覚えないの?」

妹紅は静葉と穣子の二柱に人間である霊児に使われている現状に疑問は無いのかと問う。
確かに、もの探しを手伝わせる為に神を借り出す様な事をする者は居ないかもしれない。
と言うより、普通はしないだろう。
まぁ、静葉と穣子がもの探しの神であったのなら話は別だったであろうが。
兎も角、霊児に使われる事に疑問は無いのかと問われた静葉と穣子の二柱は顔を見合わせ、

「別に無いわよね」
「そうね。それにこれも一種の神遊び何だから、楽しまないと損よ」

特に疑問は無いと言う事を言ってのけた為、妹紅は再び溜息を一つ吐いた。
そして、観念したかの様に、

「分かったわ。ここまで来た訳だし、私も手伝うわよ」

自分もお宝になりそうなものを探す事を手伝うと言う旨を口にする。
少々余計な時間を喰ってしまったものの、全員が全員お宝探しを手伝う事を約束してくれたので、

「よし、それじゃ早速分かれて行動開始な。あ、腹が減ったらまたここに集合って事で」

これから予定を霊児は皆に伝えていく。
伝えられた予定を魔理沙、静葉、穣子、妹紅が頭に入れたのと同時に、一同はそれぞれが思う方へと向って行った。
























霊児達が探索を始めてから幾らかの時間が流れ、昼過ぎと言う時間になった頃。
霊児、魔理沙、静葉、穣子、妹紅の三人と二柱は最初に分かれた場所へと戻って来ていた。
戻って来た面々の傍には結構な数の戦利品の山と言える様なものがあるので、探索結果は先ず先ずと言った感じの様だ。
だが、金塊などの単純に値打ちの高い金属は見受けられたが緋々色金の様な希少価値の高い金属は見受けられ無かった。
まぁ、緋々色金の様な金属がそう簡単に見付かる訳は無いのだが。
それはそうと、分かれた場所に戻って来た霊児達は雑談を交わしながら昼食を取っていた。
因みに、昼食を作ったのは魔理沙、静葉、穣子の一人と二柱である。
兎も角、そんな感じで昼食を取っていると、

「そう言えば、霊児の短剣って緋々色金製何でしょ。緋々色金ってそんな簡単に破損する物なの?」

妹紅は思い出したかの様に、緋々色金製は簡単に破損する物なのかと言う疑問の声を上げた。
そんな妹紅の疑問に、

「そんな事は無いと思いますよ。仮にも緋々色金は世界最強の金属ですし」

静葉の口から緋々色金はそう簡単に破損する金属では無いと言う答えが発せられる。
となると、益々緋々色金製の短剣が破損したと言う事実が不可解なので、

「それじゃあ、何で破損したのよ?」
「そう言えば、短剣が破損した原因と霊児さんが怪我を負っている理由を私達は聞いてなかったですね」
「そうね、霊児が負っている怪我の事も含めてどうして短剣が破損したのかって言う理由を聞かせて貰おうかしら」

妹紅、静葉、穣子の一人と二柱は霊児に短剣が破損した原因と負った怪我に付いての説明を求めた。
説明を求められた事で霊児は魔理沙以外に夢幻世界での出来事を説明していなかった事に気付き、

「ああ、実はな……」

どうして短剣が破損したのか、どうして怪我を負ったのかと言う事に付いての説明をしていく。
霊児からの説明を受けた事で、

「夢幻世界の創造神相手に戦ったねぇ……」

呆れた視線を妹紅は霊児に向け、

「確か、何年か前にも魔界の創造神と戦ったんでしょ?」

嘗て、魔界の創造神である神綺とも戦った事があるだろうと言う確認を取る。
取られた確認に、

「ああ」

霊児が肯定の返事を返した時、

「よくもまぁ、世界を丸ごと一つ創る様な存在と戦う気になれたわね」

再び呆れた視線を妹紅は霊児に向けた。
向けられた視線に応えるかの様に、

「ま、あの場で戦いを避けるって言う選択肢はなかったからなぁ……」

あの場で戦いを避けると言う選択肢が無かった事を霊児は話し、幻月と戦った時の事を思い出し始めたタイミングで、

「緋々色金製の短剣が破損したまでは兎も角、霊児さんにそんな怪我を負わせる様な存在がまだ居ただなんて言う事実が私には信じられませんけどね」

霊児に大怪我を負わせる様な存在がまだ居た事に驚いたと言った事を静葉は漏らす。
今現在の霊児の風貌は、肌が曝け出されている部分の大半に包帯が巻かれていると言う状態。
特に右腕は素肌が見えない程に包帯が巻かれている。
首から上に関しては額以外に包帯は巻かれていないが、頬などには塗り薬などを塗った痕などが見られた。
見えている部分でこれなのだから衣服で肌が見えない部分の大半も包帯が巻かれているのだろと静葉が推察している間に、

「確かに、歴代の博麗の中でも頭抜けて最強って言われている霊児が大怪我を負うってのは驚きよね」
「昔っから向かう所に敵無しって感じだったしね」

妹紅と穣子の一人と一柱が、静葉の霊児に大怪我を負わせらる存在がまだ居るのかと言う部分に同意を示す。
示された同意に、

「世界を丸ごと一つ創る様な存在と戦って無傷で居られると思える程、自惚れてはいねぇよ。大怪我を負うのも当然と言えば当然だ」

創造神と戦って無傷で居られると思える程に自惚れては居ないと言う様な事を霊児は返しつつ、

「けど、別にここまで包帯を巻く必要性は無かった思うんだがな」

ここまで包帯などを巻く必要性は無かったと言う愚痴を零す。

「じゃあ、何でそんなに包帯を巻いてるのよ?」
「ああ、それは……」

零された愚痴が耳に入った妹紅が霊児に何でそんなに包帯を巻いているのか問うと、霊児は魔理沙の方に視線を向ける。
霊児の視線が自分に向いている事に気付いた魔理沙は、

「ちゃんと薬を塗って、包帯を巻かなきゃ傷口が化膿するかもしれないだろ」

薬を塗り、包帯を巻かなければ傷口が化膿するかもしれないだろうと言う。
どうやら、霊児が包帯だらけなのは魔理沙に原因がある様だ。
とは言え、霊児は大人しく包帯を巻かれた儘の状態で居るので、

「これは尻に引かれてるって言うのかしら?」

霊児は魔理沙の尻に引かれているのではと穣子は推察する。
霊児と魔理沙の関係に付いての推察をしている穣子を余所に、

「……右腕全体に包帯が巻かれている姿を見ると、妖怪の山に住んでいるある仙人が頭に過ぎりますね」

姉の静葉は霊児の風貌を見て、妖怪の山に住んでいるある仙人の存在を頭に過ぎらせていた。

「仙人?」
「はい。その仙人も今の霊児さんと同じ様に右腕全体に包帯を巻いているんですよ」
「へぇー……」

静葉から今の自分の風貌と似ている仙人の存在を教えられた霊児は、その仙人に一寸した興味を抱く。
と言っても、その仙人は妖怪の山に住んでいるらしいのでそう簡単に会う事は出来ないだろう。
妖怪に山に侵入し、態々天狗達と事を構える気は霊児には無いのだから。
会えるとしたらその仙人が妖怪の山から出て来た時に位であろう。
一応、今の自分の風貌に似ている仙人の事は頭の片隅にでも入れて置こうかと霊児は考え、

「それはさて置き、この短剣に加護でも付いてたもう少し軽い怪我で済んだんだろうけどな」

話を戻すかの様に自分が負っている怪我の話題を出し、おにぎりを頬張る。
短剣に加護と言う部分を聞き、

「だったら、短剣に加護を付けて貰えば良いじゃない。ここに神様が二柱いるんだし」

だったら静葉と穣子の二柱に加護を付けて貰ったらどうだと言う提案を妹紅は行なう。
確かに、今この場には静葉と穣子の神が二柱居る。
加護の一つや二つ、ここで付ける事位は朝飯前だろう。
だが、

「あ、それは無理ですね」

加護を付けるのは無理だと言う言葉が静葉から発せられた。

「あら、どうして?」

静葉が発した言葉で、ある意味当然とも言える疑問を抱いた妹紅に、

「霊児さんの持っている短剣……何時も持ち歩いているせいか短剣に霊児さんの霊力が纏わり付いていると言うかこびり付いているんですよね。そのせいで、
短剣に加護を与えようとして弾かれてしまうんですよ。反面、そのお陰で呪いとかも弾かれる様ですけど」
「尤も、私達は戦いの神とかじゃないから短剣に加護を付けても霊児の役に立つかどうかは疑問だけどね。と言うか、神の加護を弾く程の強力な霊力何て
聞いた事が無いわよ」

静葉と穣子の二柱は霊児の短剣に加護を付けられない理由と、戦いの神では無い自分達が加護を付けたとしても余り意味が無い事を話す。
その後、静葉は霊児の方に視線を向け、

「まぁ、霊力の質とか特性とかそう言ったものの問題だとは思いますけど……霊力自体の感じ方は普通何ですけどね。霊児さんの霊力は。とは言え、
神の加護を弾くなんて事が出来る人間なんて霊児さんが初めてだと思いますよ」

補足するかの様に霊児の霊力に付いての説明と、神の加護を弾く事が出来る人間は霊児が初めてであると口にする。

「あー……確かに。私も結構長い間生きてるけど、神の加護を弾く様な人間を見たのは霊児が初めてだわ」

口にされた事に妹紅も同意を示した辺りで、

「でもま、そんな力が有っても霊児だからの一言で片が付くと思うぜ」

神の加護を弾く様な霊力を持っていても霊児だからの一言で済むと言うフォローに成っていない様なフォローを魔理沙が入れると、

「そうね」
「まぁ、確かにそれ位の出鱈目さがなければ博麗何て勤まりませんしね」

妹紅と静葉は納得した様な表情を浮かべ、焼き芋を食べ始めた。
妙な納得をされ、少々不満気な表情に霊児がなった瞬間、

「そう言えばさっきの姉さんの初めての発言で思い出したけど、自分の霊力を餌にして神を呼び寄せて神降ろしをし、降ろした神を自身の霊力で縛って
神に能力だけを行使させ、用が済んだら体から追い出す……って事をやらかしたのもあんたが初めてだと思うわ」

霊児の行なう神降ろしのやり方も、霊児が初めてやらかしたものだと穣子は呟く。

「どう言う事?」

余り神職の事に詳しくは無いからか、妹紅は良く分からないと言った感じで首を傾げてしまう。
首を傾げた妹紅から説明を欲している雰囲気を感じ取った為、

「本来、神降ろしをするには先ず儀式等を行なって神を呼び寄せて神をその身に降ろし、その儘儀式を続けるか、降ろした神が満足する様な事をして
初めて神の力を行使する事が出来るのです。まぁ熟練者などは最初の過程などを無視したり、神を降ろした後に自身の霊力の一部を代価として支払う
事で能力を行使させるって言う様な事が出来ますね」
「要するに、霊児はその過程の全てを無視してるのよ。解り易く言うのであれば利用するだけ利用し、用が済んだらボロ雑巾の様にポイ捨てするって
言うのが霊児の神降ろしなのよ」

静葉と穣子の二柱が神降ろしの説明と、霊児が行なう神降ろしの説明をした。
しかし、二柱の説明をその儘受け取れば博麗霊児と言う人間がとんでもない極悪非道な存在である様に聞こえる。
だからか、

「……おい」

霊児は静葉と穣子の秋姉妹、正確には自分を悪しき者の様に言ってのけた穣子に突っ込みを入れ様としたが、

「今の発言だけを聞くと、霊児が最低な男にしか聞こえないわね」

その前に妹紅が穣子の発言だけを聞いたら霊児が最低な男にしか聞こえないと言い、

「大丈夫だぜ。私は霊児がそんな男でも気にしないぜ」

再びフォローになっていない様なフォローを魔理沙は入れる。
一応フォローが入ったからか、霊児は言葉は不要と言った感じで体中から軽い殺気と霊力を漏らして静葉と穣子の方に視線を向けた。
すると、静葉と穣子の二柱は慌てた表情になり、

「で、でも!! あくまでそう言った事が出来ると言うだけで霊児さんはそんな事はしてませんよ!! ええ!!」
「そ、そうそう!! あくまでも出来るってだけだし!!」

弁明を始めた。
取り敢えず弁明の言葉が聞けた事で、霊児は漏らしていた殺気と霊力を引っ込める。
尤も、実際に霊児が神降ろしをしたら穣子が語ったやり方でやったであろうが。
それはそれとして、また同じ様な話題が出ても面倒であるからか、

「大怪我を負って服もボロボロになったが、こいつが無事だったのは幸いだったがな」

話題を変えるかの様にポケットの中から夢美から貰ったグローブを取り出す。
そして、

「あ、そのグローブって確か……岡崎夢美だったっけ? そいつが起こした異変の賞品の」
「ああ、そうだ。このグローブは夢美の居た世界で作られた物だから代えが効かないんだよ。こいつの頑丈性と言うか丈夫性は俺が一番良く知ってるが、
陰陽混合弾や陰陽混合拳に耐え切れたかは疑問だ。突発的な戦闘でグローブを着けれなかったのは幸いだったかな」
「それにしても、懐かしいですね。あの異変」
「あー……あの時、姉さんとちゃんと手を組んでいれば私達にも願いを叶えるチャンスがあったかも」
「私の場合、最初の相手が魅魔様だったからなぁ。私に願いを叶えるチャンスは無かっただろうな」

妹紅、霊児、静葉、穣子、魔理沙の三人と二柱は昔話に華を咲かせながら昼食を取っていった。























昼食を取り終えた霊児達は再び分かれてお宝探しに向って行った。
そして日が暮れた辺りで霊児達は再び分かれた場所に戻り、手に入れた物を一箇所に集め、

「結構集まったが……」

集めた物を検分している霊児に、

「緋々色金の様な希少性の高い金属は見付かりませんでしたね」

静葉は緋々色金の様な希少性の高い金属は見付からなかったと言う声を掛ける。
一箇所に集められている物の中には金塊、銀塊、白金などの値打ちが高い金属がそこそこ見受けられるが、緋々色金の様な金属は見受けられなかった。

「せめて、オリハルコンでも見付かれば良かったんだがな……」

オリハルコンでも見付かれば良かったにと言う愚痴を零した霊児に、

「ま、無い物強請りをしても仕様が無いわ。魔理沙が帰って来るのを待ちましょう」
「そうそう。後は魔理沙が持って来る物に期待しましょ」

妹紅と穣子がまだ戻って来てない魔理沙に期待し様と言う声を掛けた時、

「おーい!!」

分かれた場所に箒に腰を落ち着かせた魔理沙が戻って来た。
戻って来た魔理沙は箒から飛び降りる様にして地面に着地し、

「霊児、これを見てくれよ!!」

自信満々と言った表情で見付けて来た物を霊児に手渡す。
霊児に手渡された物は、

「これは……宝塔か?」

掌サイズの宝塔であった。
手渡された物を霊児は受け取り、注意深く観察していく。
そんな霊児を見て、

「……どうだ?」

魔理沙がどうだと声を掛けた時、

「これは……凄いな。相当な力が内包されてる」

率直な感想を霊児は漏らす。
中々に高評価な感想が聞けた為、

「本当か!?」

魔理沙が目を輝かせながら霊児を見ると、

「ああ。力の性質そのものはまだ分からないが、勝手に発動する様な物じゃない。多分、かなり希少価値が在る物だ」

この宝塔はかなりの希少価値が在る物だと言う判断を霊児は下し、

「これなら香霖の機嫌も何とか直るだろ。ありがとな、魔理沙」

これなら霖之助の機嫌も直りそうと言う事もあり、魔理沙に礼の言葉を述べる。
霊児に礼を言われた事で、

「えへへ……」

嬉しそうな表情を魔理沙は浮べた。
一通り話が纏まったからか、

「じゃあ、こっちはどうするの?」

宝塔以外の金属類はどうするのかと穣子は霊児に問う。
問われた霊児は、

「一緒に香霖の所に持って行こうぜ。香霖が要らないって言ったら山分けにするか」

集めた金属の処遇を決める。
金属の処遇に関しては霊児の独断で決めた様なものだが、誰からも反対の声は上がらなかった。
皆、金銀と言った物に余り興味を抱いていないのかもしれない。
兎も角、見付けた物を届ける為に一同は手分けして金属などの物を持って香霖堂へと向って行った。























玄武の沢で見付けた物を霖之助に届けると、霖之助は強い興味を引かれたと言った表情を浮べた。
勿論、霖之助は興味が引かれた物は金塊などの金属の類ではなく宝塔であるが。
兎も角、持って来た宝塔のお陰で霖之助の機嫌も大分良くなった。
この分なら、ちゃんと短剣を修復してくれる事だろう。
尤も、短剣の修復には後数日は掛かるらしいが。
因みに羽織などの衣服の類の物はもう既に修繕が完了してたので、霊児達は修繕が済んだ衣服だけを持って帰って行った。
余談であるが香霖堂を後にした霊児、魔理沙、静葉、穣子、妹紅の三人と二柱はその儘流れ解散するのはあれだったからか、博麗神社で軽い宴会を開いたらしい。























前話へ                                          戻る                                              次話へ