太陽が昇り始めてから幾らか経った辺りの時間帯。
野菜を適当に突っ込んだだけと言う霊児としては何時もの鍋料理を朝食として食べた後、霊児は縁側に座りながら日向ぼっこをしていた。
しかし、その割には表情が少々険しく、

「……可笑しい」

更には、可笑しいと言う単語が霊児の口から零れてしまう。
ともあれ、どうしてそんな単語が零れてしまったのか。
その答えは宴会の開催期間に在る。
何と、ここ最近はずっと三日に一度のペースで宴会が開かれているのだ。
それも、博麗神社で。
はっきり言って、こんなペースで宴会が開かれ続けるのは今回が初めてである。
と言うより、異常と言った方が良いかも知れない。
だからこそ、可笑しいと零し、

「……今までも短い頻度で宴会が開かれた事が在ったけど、このペースで開かれ続けた事は無かったよな」

今回の一定のペースで開かれ続けている宴会に付いて霊児が考え始めたのは当然の流れとも言えるだろう。
何故ならば、霊児は今代の博麗なのだから。
さて、この様なペースで宴会を開かれていたら誰かしら疑問を抱いても可笑しくは無い。
だと言うのに、霊児を含めて誰も疑問を抱かなかった。
でなければ、こんなペースで宴会は開かれ続けないであろう。
以上の事から、

「精神に異常……いや、何かしらの行動を起こす様に促す異変か」

そんな異変が起こっているのではと言う判断を霊児は下す。
今までの異変と比べたら宴会を開き続ける事を自然に強制させると言うかなり平和なものであるが、異変は異変。
博麗霊児は博麗である為、異変を解決しなければならない。
それ故に、

「……たく、何所のどいつだ。異変何か起こしやがったのは。一々解決する俺の身にもなれっての」

愚痴を漏らしながら霊児は立ち上がった。
そして、異変解決に向かう準備をするかの様に軽いストレッチを行なっていると、

「……そういや、この宴会続きのせいで食料や酒の消費が激しかったな」

宴会続きのせいで食料、酒の消費が激しかった事を霊児は思い出す。
無論、食料と酒の消費が激しいのは霊児だけでは無い。
宴会に参加にする者達は皆、何かしらの食料、料理、酒を持って来ている。
こうも宴会が続けば宴会参加者達の食料や酒の消費も馬鹿に出来ないだろう。
思い出した事からそこまで考えが廻った霊児は、

「若しかして、異変の犯人の狙いは兵糧攻め?」

兵糧攻めの可能性を頭に過ぎらせたが、

「……いや、無いか」

過ぎらせた可能性を忘却の彼方へと追い遣った。
何故かと言うと、兵糧攻めが狙いならこんな方法を取らずに家主が留守の間に食料庫を襲撃した方が遥かに手っ取り早いからだ。
では、何が狙いなのか。
そう問われたところで答えられるのは異変を起こした犯人だけであるので、

「犯人倒して、異変を起こした理由を聞けば良いか」

答えは犯人を倒して聞けば良いと霊児は思い、ストレッチを止めて空中へと躍り出る。
空中へと躍り出てある程度の高さに達すると霊児は高度を上げるのを止めながらある方向に視線を向け、

「……さて、行くか」

行くかと言う言葉と共に視線を向けている方向へと素っ飛んで行った。






















異変を解決する為に博麗神社を飛び出し、飛行していた霊児は、

「うーむ……」

悩んでいると言う様な表情を浮かべていた。
何故かと言うと、今一つ勘が冴えないからだ。
今まで起こった異変を解決して来た際、霊児は進むべき場所を何となくではあるが解っていた。
そして、その進むべき場所を進んだ先には必ずと言って良い程に異変の犯人が居たのである。
なので、霊児は今回も自分の勘で進行方向を決め様とした。
だが、今回に限っては霊児の表情が全てを物語っている。
そう、幻想郷の空を幾ら飛んでもこっちに行けと言う様な感覚的なものを霊児は全くと言って良い程に感じないのだ。
だからか、

「……いっその事、適当に飛んでいる最中に目に付いた奴全て倒していくか? そうすりゃその内、犯人に辿り着くだろうし」

物騒と言える様な方法が霊児の口から飛び出して来た。
しかも、その物騒な事を実行に移すかの様に霊児は視線を眼下の方に向ける。
まるで、獲物を探すかの様に。
そんな霊児の目に、

「お……」

何者かの姿が映る。
すると、霊児は降下して目に映った者の傍に降り立ち、

「お前は……魅魔か」

目に映った者、魅魔に声を掛けた。
声を掛けられた魅魔は霊児の方に体を向け、

「おや、霊児じゃないかい」

霊児の存在を認識する。
互いが互いの存在を認識した後、

「私は散歩だけど、霊児も散歩かい?」

霊児も散歩かと言う問いを魅魔は投げ掛けた。

「いや、違う。異変の解決に来たんだ」

投げ掛けられた問いを霊児は否定し、異変解決に来たと言う事を教える。

「異変? 異変何て起こっていたのかい?」

教えられた事を受けて魅魔は疑問気な表情を浮べた為、

「起きてるだろ。ここ最近ずっと、三日に一回のペースで宴会が開かれてるって言う異変が」

どんな異変が起きているのかを教える事にした。

「あ、あー……そういやそうだったね。何で気付けなかったんだろ?」

異変内容まで教えられた事で納得がいったと言う表情に魅魔は成ったものの、直ぐに気付けなかった事に付いて考え始めた。
やはりと言うべきか、魅魔も一定のペースで開かれている宴会に付いて何の疑問も抱けなかった様だ。
この分なら宴会に参加していた者全員、ここ最近の宴会に付いて何の疑問も抱いて無さそうだと言う確信を霊児が得た時、

「で、異変解決の手掛かりは何か見付かったのかい?」

魅魔からそんな事を尋ねられた。
尋ねられた霊児を首を横に振り、

「全然だ。それに勘も働かないし」

手掛かりは何も見付かっていない事、自分の勘が働いていない事の二つを話す。

「……勘が働かない?」

話された内容の中に在った霊児の勘が働かないと言う部分が耳に入った瞬間、訝し気な表情を魅魔は浮べた。
霊児の勘の良さも精度も魅魔は十分と言える程に知っている。
だと言うのに、霊児の勘が働いていない。
魅魔が訝し気な表情を浮かべるのも無理はないだろう。
とは言え、勘が働いていないと言う霊児の言葉が嘘だとは魅魔も思ってはいない。
となれば霊児の勘が働かない理由が在る筈だと魅魔が考えた瞬間、

「まぁ、そう言う訳でだ。取り敢えず目に付いた奴であるお前を倒そうと思ってる」

宣戦布告の様な宣言が霊児から行き成り発せられた。
発せられた宣言が耳に入った魅魔は考え様としていた事を頭の隅に一旦追い遣り、

「いやいやいや、何だってそうなるんだい?」

何故そうなるのかと言う突っ込みを霊児に入れる。
入れられた突っ込みに返す様に、

「一々あれこれ考えるのは面倒だから、取り敢えず目の付いた奴は倒して行く事にした。そうすりゃ、その内犯人に辿り着くだろ」

あの様な宣言をした理由を霊児は話す。

「グータラ好きなのは相変わらずだけど、考えるのも面倒臭いと来たかい。と言うか、仮にも今代の博麗が通り魔紛いの事をするんじゃないよ」

話された内容を聞いて呆れた表情を浮べたが、

「お前、結構前に俺の神社に妖怪やら怨霊やらを嗾けただろ」

嘗て魅魔が仕出かした事を霊児に出された為、ついと言った感じで魅魔は押し黙ってしまう。
言外に博麗神社の乗っ取り及び自分の殺害を再び企てているのではと言われている様な気がして。
兎も角、一度何かを仕出かしているのだから二度目が無いと言い切れないと言う理論は否定し難い事もあり、

「やれやれ、仮にまた邪気に囚われてももう暴走する様なヘマはしないって言う自信は有るんだけどねぇ」

魅魔はそう呟きながら溜息を一つ吐くも、

「でもま、久々にあんたと戦うのも悪く無いかね。良いよ、やろうか」

久々に霊児と戦うのも悪く無いと言って先端に三日月を模した装飾が施された杖を右手に出現させ、構えを取った。
すると、それに応えるかの様に霊児は左手で左腰に装備している短剣を引き抜き、

「しっ」

先制攻撃だと言わんばかりに魅魔に突っ込んで短剣を振るう。
振るわれた短剣を、

「おっと、行き成りだねぇ」

涼し気な表情で魅魔は右手の杖を使って防いだ。
今の一撃を防がれた事は想定通りであるからか、霊児は欠片も動揺した様子を見せず、

「戦い何て、何時も行き成り起こるもんだろ」

魅魔の行き成りと言う発言に若干諦めが入った声色でそう返しながら短剣を連続で振るい始めた。
次から次へと振るわれて来る短剣を見た魅魔は杖を両手で持ちながら後ろに下がり、両手で持った杖で短剣を防ぎつつ、

「はは、そりゃそうだ」

返された事に軽い笑みを浮かべながら同意を示す。
戦いをしている最中だと言うのに雰囲気に穏やかなものが感じられるが、戦況の方はそうでは無い。
かなり短い間隔で杖と短剣が連続で激突し合い、激突音が響き渡っている。
だと言うのに、そんな軽口を叩き合えるのは霊児と魅魔に取ってこの状況は警戒する程では無いと言う事だろうか。
ともあれ、何時までこうしている訳にもいかないからか、

「やれやれ、私は幽香みたいに接近戦は得意じゃ無いんだけどねぇ」

仕方が無いと言う様な声色で魅魔はそう零しつつ、大きく後ろに跳んで霊児から少し間合いを取りながら左手を杖から離し、

「そら!!」

着地と同時に体を屈め、足払いを掛ける様にして杖を振るう。
振るわれた杖を避ける為に霊児は短剣を振るうのを止めて跳躍し、上半身と下半身の位置を入れ替える様に体を回転させて眼下の様子を探ろうとした刹那、

「ッ!!」

丁度真下に居た魅魔が杖の先端を掲げる様にして自分に向け、杖の先端から極太ビームを放って来ているのが霊児の目に映った。
極太ビームを防ぐ様に霊児が短剣を構えると、極太ビームは短剣の腹に当たり、

「く……」

極太ビームに押される形で霊児は強制的に高度を上げさせられてしまう。
ある程度の高度に達した辺りで霊児は極太ビームの射線上から弾かれる様にして逃れ、一息吐こうとしたが、

「……ッ」

背後に何かを感じた為、振り返りながら短剣を振るった。
振るった短剣は背後に迫って来ていた火球を真っ二つに斬り裂く。
真っ二つに斬り裂かれた火球が力を無くしたかの様に掻き消えたタイミングで、

「お、良く反応したね」

霊児の視線の先に居た魅魔が霊児を称賛する言葉を口にした。
そう口にした魅魔が杖を前方に突き出すと言う体勢を取っている事から、霊児は杖の先端部分から火球を放ったのかと考え、

「…………………………」

一気に距離を詰めて杖の先端部分を自分に向けれない様にするべきかと考えた時、

「さて、次々行くよ」

つい先程霊児が斬り裂いたのと同じ火球を魅魔は杖の先端部分から連続で放ち始める。
連続で放たれて来る火球を霊児は短剣で次から次へと斬り裂いていく。
火球を斬り裂いている霊児には負担と言えるものが全く見られなかったので、魅魔は火球を放つのを止め、

「なら、こっちはどうだい?」

杖の先端部分から火球の代わりに雷を放つ。
新たに放たれた雷は火球とは桁違いのスピードで霊児に迫って行ったが、

「喰らうかよ」

今まで斬り裂いて火球の延長線上だと言わんばかりの勢いで霊児は短剣を振るい、雷を斬り裂いた。
斬り裂かれて消失していく雷を見て、

「雷を斬り裂くかい……」

少し驚いた表情を魅魔は浮かべてしまう。
流石に雷を斬り裂いたのは予想外だったと言う事であろうか。
そんな魅魔に霊児は近付き、短剣による刺突を繰り出す。
しかし、繰り出された刺突は、

「な……」

前触れ無く魅魔の正面に現れた障壁に激突してしまった。
霊児から繰り出された刺突を防いだ魅魔は不敵な笑みを浮かべ、

「一寸隙を見せてやったら、やっぱり仕掛けて来たね。勇気が有る行動とも見れるが……若いねぇ」

狙い通りと言う様な事を口にし、霊児の事を若いと称する。

「ち……」

口にされた内容から魅魔の掌の上で踊っていた事を理解した霊児は舌打ちをし、間合いを取る為に後ろに跳ぼうとした瞬間、

「何……」

気付く。
短剣の切っ先から自身の肘までが氷り付いている事に。
気付いた事から氷り付いたのは障壁に攻撃したせいかと霊児が推察している間に、魅魔は霊児から間合いを取るかの様に後ろに下がって行く。
離れて行った魅魔に気付いた霊児は左腕に力を籠めて氷を砕き、離れていた魅魔との距離を詰めに掛かる。
スピードは霊児の方が上だったので、霊児と魅魔の距離はどんどんと縮まって行く。
そして、霊児と魅魔の距離が大分縮まったタイミングで、

「後ろ、危ないよ」

その様な言葉が魅魔から紡がれた。
紡がれた言葉に引っ掛かりを覚えた霊児は急停止を掛け、背後に体を向ける。
背後に体を向けた霊児の目には、幾つもの魔法陣から出現し様としている龍の姿が映った。
龍と言っても、本物の龍では無い。
龍を模した魔法による攻撃と言ったところか。
どう言う事かと言うと魔法陣から出現した龍はそれぞれ炎、水、氷、風、雷、土、木、光、闇、溶岩、魔力と言ったもので構成されていからだ。
兎も角、魔法陣から出現させた龍を模した魔法による攻撃は一斉に霊児に向かって行った為、

「くそ……」

軽い悪態を吐きながら霊児は回避行動を取る。
だが、

「追尾式か……」

出現した龍は追尾式だった様で回避行動を取った霊児を追う様にして進路を変えて来た。
これでは幾ら回避行動を取っても意味が無い。
だからか、霊児は体を反転させて右手を拳銃の形にしながら右腕を迫り来る龍の方に向ける。
右腕を向けた先に居る龍は比較的密集した陣形を取っていた為、迷う事無く霊児は右手の人差し指の先から霊力で出来た巨大な弾を放つ。
放たれた弾は龍と激突し、大爆発が発生する。
発生した爆発の影響で霊児の髪や羽織が靡いたが、それだけ。
だからか、霊児は相殺出来たのだと判断して魅魔の方に顔を向け、

「さっき俺が砕いた氷、あれの欠片の大半を魔法陣にしただろ」

先程砕いた氷の欠片を魔法陣に変えたのだろうと言う確認を取りに掛かる。

「正解。中々に使えるだろ」

取られた確認を魅魔は肯定しながら中々に使えるだろうと言い、

「見る分にも映えるからねぇ。今度、これをスペルカードにもし様って思ってるのさ。ま、その場合は幾らか性能を落とす必要が有るだろうけど」

スペルカードにもし様と思っている事を教えた。
確かに見た目も映えるし、範囲も広い。
幾らか性能を落とせばスペルカードとしては問題ないであろう。
そう考えながら霊児は構えを取り直し、

「しっかし、良くやるな。砕いた氷の欠片で魔法陣を作る何てよ」

軽口を叩きながら魅魔の出方を伺いに掛かる。
そんな霊児の狙いを知ってか知らずか、

「あの氷は私の魔力で作った物だからねぇ。砕かれた氷の欠片を媒介に魔法陣を作るのは容易いものさ。それに、私は魔法陣系統の魔法は得意だしね」

軽口に付き合う様な感じで魅魔はそう述べた。
述べられた事から推察するに魔力を用いた攻撃を迎撃した場合、魔力が離散し切る前ならその魔力で魔法陣を展開する事が可能なのだろう。
と言う事は、攻撃迎撃後も注意を払う必要が在ると言ったところか。
ならば迎撃よりも回避、若しくは魔力を残さない様に強力な霊力を用いた迎撃が取れる選択肢と言える。
無駄な消耗を避けるのなら前者の選択肢を取るべきだろうと言う考えを霊児が廻らせると、

「さて、一寸攻め手を変えてみ様かね」

攻め手を変えると言って魅魔は杖の先端を霊児に向け、杖の先端から無数の弾幕を放つ。
放たれた弾幕を見た霊児は身構えたが、

「何……」

弾幕が霊児に当たる事は無かった。
この距離で魅魔が攻撃を外すのが予想外であったからか、意外だと言った表情を霊児は浮かべてしまう。
が、直ぐに浮かべていた表情を失敗した言うものに変えてしまった。
何故かと言うと放たれた弾幕は途中で止まって弾幕同士が線で繋がり、面が発生して閉じ込められてしまったからだ。
こんな事なら弾幕が放たれた時に突っ込んで行けば良かったと霊児が思ったの同時に面の全てが光り始め、

「ッ!?」

大爆発を起こした。
当然、閉じ込められている霊児は避ける事も出来ずに爆発に呑み込まれてしまう。
それから少しすると爆発が消え、自身を護る様に結界を展開させている霊児の姿が露に成り、

「成程、二重結界で防いだか」

展開されている結界がどう言ったものであるかを見抜く。

「ああ、そうだ。二重結界が結界の中で一番発動が速いからな」

見抜かれた事を正しいと言いながら霊児は展開していた結界を消失させ、

「と言うか、お前も良くやるよ。弾幕を基点に結界を構築し、結界内を爆発させる何てのが出来る奴はそう居ないだろ」

先の攻撃を褒める様な台詞を発する。

「ま、魔法使いだからね」

発せられた台詞に魅魔がそう返した刹那、霊児は左手の短剣を魅魔に向けて投擲した。
投擲された短剣に反応した魅魔は、反射的に杖で短剣を弾いたが、

「しまっ!!」

直ぐに己が失態に気付く。
一見何の失態もしていない様に思えるが、二重結界式移動術と言うタイムラグゼロの移動術を霊児は持っている。
しかし、その移動術は常に出来ると言う訳では無い。
二重結界式移動術の術式を刻んだ何かが必要なのだ。
因みに、その術式は投擲された短剣の柄に刻まれている。
つまり、弾かれた短剣に霊児はタイムラグゼロで移動出来ると言う事。
そして、これから霊児が何をして来るのかを魅魔が察したのと同時に、

「しっ!!」

弾かれた影響で魅魔の近くで回転しながら宙を舞っていた短剣を霊児は左手で掴み、掴んだ短剣を魅魔に向けて振るった。
自身の失態に気付けたと言う事もあって二重結界式移動術で現れ、短剣を振るって来た霊児に反応する事が出来た魅魔は、

「ッ!!」

障壁を張りながら回避行動を取る。
張った障壁は容易く斬り裂かれたが、障壁を斬り裂いたせいで斬撃速度が幾らか遅くなり、

「危なっ」

何とかと言った感じで魅魔は短剣による斬撃を避けた。
避けたと言っても、あくまで第一陣を避けただけ。
魅魔との距離が詰まっていると言う状況で霊児が斬撃一発だけで終わらせる筈も無く、連続で短剣を振るい始める。

「やっぱり、そう来るよね」

連続で短剣が振るわれるのは予測していたからか、落ち着いた様子で障壁を連続で展開しながら魅魔は後ろに下がって行く。
展開された障壁は次から次へと斬り裂かれたが、斬り裂かれている障壁のお陰で魅魔にダメージが入る事は無かった。
しかし、何時までもこの状況が続くと言う訳では無い。
霊児ならば何れ障壁と自分を纏めて斬る位はしそうだと言う確信が魅魔には在った。
というより、創造神とも対等に渡り合える戦闘能力を誇っている霊児なら出来て当然だろう。
だからか、魅魔は障壁に爆発能力を付与した。
すると、

「ッ!!」

霊児が障壁を斬った瞬間に障壁が爆発し、爆発と共に発生した爆風にせいで霊児と魅魔の距離が離れてしまう。
霊児との距離が離れたのを理解した魅魔は軽い笑みを浮かべ、地面に急降下して行く。
急降下して地面に足を着けた魅魔は杖を構え、

「オーレリーズサン」

自身の周囲に色取り取りの玉を無数に出現させ、出現させら玉の一部を自分を追う様にして降下して来ている霊児に向けて射出する。
射出されて下方から迫って来る色取り取りの玉を視界に入れた霊児は着地地点を変更する様に降下進路を変えた。
降下進路を変えると射出された玉は魅魔の元に戻って行ったので、霊児はその儘着地して魅魔の方に顔を向ける。
顔を向けた霊児の目には五十を超える色取り取りの玉が魅魔を守護する様に浮いている光景が映った。
映った光景から、

「やっぱ、魔理沙よりも多く出せるんだな」

少し昔を思い出す様な表情を浮かべながら霊児は魔理沙よりも多く玉を出せるなと言う事を零す。
零された事が耳に入ったからか、

「まだまだ弟子に抜かれるには早いさ。ま、魔理沙なら何れこれ位は出来る様になるだろうけどね」

魅魔はそう返して展開している玉の半分から弾幕を、もう半分からレーザー放たさせた。
放たれ、迫り来る弾幕とレーザーを見た霊児は旋回するかの様に地を駆けて回避行動を取る。
弾幕やレーザーが着弾した箇所は次々と爆発していくが、移動スピードが速い事もあって霊児が爆発に巻き込まれる事は無かった。
だが、爆発音が煩過ぎて霊児の耳に爆発音以外の音が入って来ないと言う事態に陥ってしまう。
これでは魅魔が何かしらの魔法を発動するのに詠唱をした場合、詠唱を聞き取れない事態になるのは確実。
魅魔程の魔法使いが詠唱を必要とする魔法ならば、かなり強力な魔法になるだろう。
流石にそんな魔法を使われた面倒である為、霊児は左手に持っている短剣を魅魔に向けて投擲する。
短剣が投擲されたのを見た魅魔は玉の一つから弾幕を放たさせるのを止め、弾幕を止めた玉を投擲された短剣をかなり手前で弾く様に動かす。
そして、投擲された短剣が玉に当たる直前、

「なっ!?」

二重結界式移動術で霊児が投擲した短剣の直ぐ傍に跳んで来た。
このタイミングで跳んで来るのかと魅魔が驚いている間に霊児は左手で短剣を、右手で玉を掴み、

「そら!!」

右手に掴んだ玉を魅魔に向けて投げ飛ばす。

「ッ!!」

投げ飛ばされた玉に反応した魅魔は回避行動を取りつつ、玉から放たれている弾幕とレーザーを止める。
何故かと言うと、霊児と魅魔の距離が近いので下手に玉から弾幕とレーザーを出せば自分に当たる事に成りかねないからだ。
ともあれ、玉から遠距離攻撃が無くなった事で霊児は一直線に地を駆けて魅魔との距離を詰めに掛かった。
一直線で自分に向かって来る霊児に気付いた魅魔は、杖による突きを繰り出す。
繰り出され、迫り来る杖による突きを霊児は短剣で受け止め、

「らあ!!」

杖事押し込む様に地を蹴り、魅魔との距離を強引に詰めに掛かった。
地を蹴って突破力を底上げして来たせいか、

「くっ!!」

力負けしたかの様に魅魔は体勢を崩してしまう。
崩れた隙を突いたと言わんばかりに霊児は魅魔の眼前にまで踏み込み、魅魔の首に短剣を突き付ける。
首に短剣を突き付けられていると言う事もあり、

「……参った、降参」

降参すると言う台詞を魅魔は口にし、出現させている玉を全て消す。
魅魔が敗北を認めた事で霊児は短剣を左腰の鞘に収め、

「で、お前は本当に今回の異変の犯人じゃないんだな?」

改めてと言った感じで魅魔に異変の犯人がじゃないのかと尋ねる。
尋ねられた魅魔は息を軽く一つ吐き、

「私は犯人じゃないよ。今更、博麗に復讐する気も無いしね」

犯人では無いと言う主張を行なう。
行なわれた主張を受け、

「……まぁ、戦ってた時の感じは異変を起こした犯人と戦った時と同じ感じはしなかったな」

確かに魅魔は犯人では無さそうだと霊児は思い始める。

「そう思ってくれてたんなら、途中で戦いを止めてくれても良かったんじゃないかい?」

霊児が思い始めた事が耳に入った魅魔は途中で戦いを止めても良かったのではと言うと、

「お前との戦いは良い準備運動になるからな」

シレッとした表情で霊児は魅魔との戦いを続行していた理由を口にした。
口にされた事を聞いた魅魔は口元を引く付かせ、

「私を準備運動の相手にするとは、良い度胸してるよ。相変わらず」

霊児の事を良い度胸していると称しつつも、何処か穏やかな表情になり、

「でもま、私を準備運動扱い出来る程に強くなったんだねぇ。昔は私よりも幾らか強かったって言う程度だったのに。本当、強くなったねぇ」

感慨深いと言った感じで強くなったと漏らす。
漏らされた事が聞こえた霊児は、

「強くなければ博麗何てやってられないからな」

そう返しながら魅魔の方に顔を向けそう返し、

「と言うかだ。何、年寄り見たいな事を言ってんだよ」

何処か呆れた様な表情を浮かべてそんな指摘を行なう。

「お前さんよりは遥かに長く存在しているから、年寄り臭くなるのは仕方無いさね。ま、お前さんも年を取れば分かるさ。魔理沙やお前さんの様な若い世代が
成長していく姿を見続けている私の気持ちがね」

行なわれた指摘を肯定しながら魅魔は霊児も年を取れば今の自分の気持ちが分かると言う様な事を語り、

「それよか、これからどうする気だい?」

話を変えるかの様に霊児にこれからどうするのかと尋ねる。
尋ねられた霊児は少し考える素振りを見せ、

「勘が全然働かないから、取り敢えずは前に異変を起こした奴の所を回って見ようと思ってる」

これからの予定を魅魔に教えた。

「犯人の目星も行くべき場所の検討が付いていないから、前科が在る奴の所に行くか。良い手とは言えないが、悪い手とも言えないね」

教えられた予定から霊児が取ろうとしている方法は平凡と言える手だと魅魔は判断するも、

「……ま、霊児なら大丈夫か」

霊児ならば大丈夫かと言う結論を出す。

「当たり前だ。どんな異変だろうと、俺が必ず解決するさ。これまでも、そしてこれからもだ」

出された結論に対する返答として霊児はその様に断言し、空中へと躍り出る。
そして、何所かに向けて素っ飛んで行った。
飛んで行った霊児を見届けた後、

「さて……」

魅魔はある事を考え始める。
考え始めた事と言うのは、今回の異変の事。
一定のペースの宴会が開かれ続ける宴会に付いて自分と霊児は何の疑問も抱かず、更には霊児の勘も働いていない。
まだ未検証ではあるが、自分と霊児が疑問に抱いていなかったのなら宴会に参加していた他の者も疑問を抱いていないだろうと言う推察を魅魔はしている。
考えた中でパッと出て来たものは少ないが、それだけでも魅魔には分かっていた。
今までの異変と比べて異質である事を。
だからか、

「……私も私で、調べて見よう」

霊児だけに異変解決を任せるだけではなく自分も調べて見る事を魅魔は決めながら空中へと躍り出て、

「先ずは、異変が起こっている場所とも言える博麗神社から調べて見ようかね」

博麗神社に向けて飛んで行った。























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